銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

162 / 164
友の力

 

 

 

 

(あら、耐えきりましたか)

 

 デュエルは互いのライフを削り合う戦いである。そのためライフが0にならない限り、基本的に負けることはない。しかし、それ以外でも負けになってしまうケース自体は存在する。例えばデュエル中に体調不良を起こして倒れてしまう、などというケースがそれだ。その場合は倒れた相手の不戦勝となるが、そんなことはまず起きないのであくまで非常事態の時の対応策だ。

 

(3体の精霊、それも残り2体は自分のものではない精霊を従え、そして私の精霊による攻撃でライフを削られた。ここまで星乃 鈴がデュエルをしてこなかったとはいえ、これだけの攻撃が重なれば立っていることすら辛いはずですが)

 

 銀河衛竜の効果が適用されているため、遊望の与える戦闘ダメージは半分になる。それでも10000超えの攻撃力を得た精霊の一撃だけあって、数値以上のダメージが鈴に襲い掛かっていることになる。精霊を宿したデュエリストでなければこの一撃で戦闘不能になりかねないほどのものなのだが、鈴は踏みとどまっており、遊望はそれが俄かに信じられなかった。

 

(まあいいでしょう。遅かれ早かれ星乃 鈴は斃れる運命にある。そしてお姉さまと私を引き裂くものはいなくなるのですから)

「私はこれでターンエンドです。なにやら我慢しているようですが、我慢は身体に毒ですからね。時には苦しまずに膝をつくことも大事だということを、覚えておいてくださいね?」

 

 

遊望 LP3000 手札3枚

デッキ:32 メインモンスターゾーン:1(No.107 銀河眼の時空竜 ORU:2)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:14 除外:15 EXデッキ:5(0)

鈴 LP4100 手札1枚

デッキ:34 メインモンスターゾーン:1(白き霊龍)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:4 除外:2 EXデッキ:15(0)

 

 

遊望

 □□□□□

□□□時□□

  □ □

 □霊□□□□

 □□□□□

 

 

☆TURN04(鈴)

 

「あたしのターン、ドロー! これなら……あたしは魔法カード、トレード・インを発動! 手札のレベル8、青眼の白龍をコストに2枚ドロー!」

「……あなたもドロー加速カードを引くとは。なんとも奇妙なデュエルですね」

「奇妙?」

「私も、あなたも少ない手札を補うカードをこのタイミングで引き当てる……私たちのデッキがこのデュエルを長引かせたいのではないか、と思ってしまいます。最も、そのトレード・インでいいカードを引けなければ意味がありませんが」

 

 遊望は強欲で貪欲な壺でドローした2枚のカードで、銀河眼の時空竜のX召喚に繋げてみせた。そのため鈴もこのドローで状況を打開できるカードを引かなければならなかった。

 

「……あたしは手札からチューナーモンスター、太古の白石を召喚! そしてレベル8の白き霊龍に、レベル1のチューナーモンスター、太古の白石をチューニング!」

「レベル9のS召喚……以前と比べて数こそ増えましたが、どのようなモンスターをS召喚するのでしょうね?」

 

 そう言う遊望の顔はどのモンスターをS召喚するかを完全に見抜いているように見えた。そもそも青眼におけるS召喚の選択肢はだいたい2体のSモンスターに絞られる。そしてそのうちの片方は非チューナーモンスターに通常モンスターを指定しているので、今のフィールドの状況ではそもそもS召喚自体が行えない。そうなると鈴がS召喚するモンスターは1体。

 

「S召喚! 現れなさい、青眼の精霊龍!」

 

 Sモンスター、青眼の精霊龍が鈴のフィールドに守備表示でS召喚される。通常の青眼の白龍の攻守が逆転したステータスであるため、守備表示にしておけば銀河衛竜などの攻撃力上昇カードがない限りは時空竜の攻撃から鈴を守る盾になれるのだ。

 

「……あたしはこれでターンエンド」

「壁モンスターを出すだけで精一杯ですか。やはり、不甲斐ないですね」

「それはどうかしら? 確かにあたしが出せたのは精霊龍だけだけど、本当の狙いはそこじゃないわ! ターン終了時に墓地に送られた太古の白石の効果を発動!」

 

 確かに壁モンスターとして精霊龍を出すこと自体は状況を好転させるだけのものではない。しかし、鈴の本当の狙いは精霊龍をS召喚するために使用したチューナーモンスター、太古の白石の効果を発動させることだった。太古の白石は墓地に送られたターン終了時にデッキから青眼モンスター1体を特殊召喚できる効果を持っている。

 

「あたしはデッキから深淵の青眼龍を守備表示で特殊召喚するわ!」

「深淵の青眼龍……それがあなたの精霊ですか。青眼にしてはずいぶんと貧弱なモンスターですね」

―――っ……!

 

 遊望の青眼を軽視する物言いに深淵の青眼龍は苦々しい表情を浮かべる。ステータス自体は白き霊龍などと同じ攻守2500と通常の青眼よりも一段階劣っているため、戦闘面ではその力を活かし辛いということは青眼龍自体がよく理解していた。

 

(青眼、気にしなくていいよ。あんな煽り真に受けちゃだめ)

―――鈴……うん、ありがとう

「貧弱だからなんだっていうの? 力だけでモンスターの価値を決めるのは間違ってるわ! ターン終了時に墓地に青眼の白龍が存在するため、深淵の青眼龍の効果を発動するわ!!」

「深淵の青眼龍の効果……?」

 

 深淵の青眼龍が特殊召喚された時の反応を見てわかったことではあるが、遊望は深淵の青眼龍の存在を把握していなかった。そのためこのモンスターの存在は彼女の計算を狂わせるのには十分な存在だった。

 

「深淵の青眼龍は墓地の青眼の白龍が存在する時に発動できる3つの効果を持っている! 1つ目の効果は特殊召喚成功時にデッキから儀式魔法もしくは融合カード1枚を手札に加える効果! あたしは儀式魔法、高等儀式術を手札に加える! そして2つ目の効果、自分ターンの終了時にデッキからレベル8以上のドラゴン族モンスター1体を手札に加える! あたしはレベル8のブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンを手札に加えるわ!」

「2つのサーチ効果を同時に発動するとは……」

 

 

遊望 LP3000 手札3枚

デッキ:32 メインモンスターゾーン:1(No.107 銀河眼の時空竜 ORU:2)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:14 除外:15 EXデッキ:5(0)

鈴 LP4100 手札3枚

デッキ:28 メインモンスターゾーン:2(青眼の精霊龍、深淵の青眼龍)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:8 除外:2 EXデッキ:14(0)

 

 

遊望

 □□□□□

□□□時□□

  □ □

 □精□深□□

 □□□□□

 

○凡例

 

精・・・青眼の精霊龍

 

 

☆TURN05(遊望)

 

「私のターン、ドロー。なるほど、ステータスだけでモンスターの価値を決めるのは早計でした」

 

 鈴のエースモンスターであるブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンの攻撃力は4000。素の時空竜のままでは一方的に戦闘破壊されてしまう相手であり、そんなモンスターの儀式召喚の準備を1枚で整えることができるカードの存在はさすがに遊望にとっては予想外だった。

 

(カオス・MAX……いざ出されると実に厄介なモンスターですね)

「私は手札から魔法カード、貪欲な壺を発動します。墓地のモンスターカード5枚をデッキをデッキに戻して2枚ドローします。私は墓地のドラゴンメイド・シュトラール、ドラグニティナイト-アラドヴァル、ドラグニティナイト-ロムルス、天球の聖刻印、守護竜ピスティの5枚をデッキに戻して2枚をドローします」

 

 実質メインデッキの数を増やさずに2枚のドローを行う遊望。しかし、そのドローカードの中にはカオス・MAXの“儀式召喚”を止められるカードはなかった。

 

(……儀式召喚そのものを封じるカードはない。そうなれば私の取れる手は……)

 

 この時、遊望は自分が鈴の布陣をどう突破するかを考え込んでいた。以前デュエルをした時や、前のターンの終了時までは特に考えずともあるがままに対応できていた。しかし、今は違う。考えて行動しなければならない状況にさせられているのだ。

 

「っ、煩わしいですね……お姉さまならいざ知らずあなた程度が私に考える時間を取らせるとは……」

 

 遊望からしてみれば、格下と思っている相手を前にしてのことである。それが彼女を必要以上に苛立たせていた。

 

「あら、それもあたしがデュエリストとして成長したってことでいいのかな? ま、急かしたりはしないからじっくり考えていいからね?」

―――……鈴、なんか煽ってなーい?

(青眼龍を馬鹿にされたお返しだってば、べー)

―――鈴……

―――煽るのは構わないが、変に煽って手痛いしっぺ返しを食らうことは避けることだな。カオス・MAXの儀式召喚に成功していない以上、戦況はいいとは言い切れない。

 

 デュエルに限った話ではないが、頭を使うゲームやスポーツをしている場合、先に崩れ落ちるのは決まって冷静さを失った方だ。そう言った意味ではボードアドバンテージなどの要因を差し引いても流れは鈴に傾きつつあった。

 

「私は輝光竜セイファートを召喚。そして墓地の闇属性モンスター、ストライカー・ドラゴンをゲームから除外し、2体目の輝白竜ワイバースターを特殊召喚。セイファートとワイバースターをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! 2体目の銀河衛竜をリンク召喚します」

「銀河衛竜……!!」

「墓地に送られたワイバースターの効果で2体目のコラプサーペントを手札に加えます。メインフェイズ1を終了し、バトルフェイズに―――」

―――鈴!

(オッケー!)

「待って、あたしはメインフェイズ1終了時に青眼の精霊龍の効果を発動するわ! S召喚された精霊龍をリリースし、EXデッキからドラゴン族・光属性のSモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!」

 

 精霊龍が光の粒子となって消滅した場所には、光り輝く赤い薔薇のような翼を纏ったドラゴンが代わりに咲き誇っていた。

 

「さあ、月に向かって咲き誇りなさい! 《月華竜 ブラック・ローズ》!!」

 

《月華竜 ブラック・ローズ》

シンクロ・効果モンスター

星7/光属性/ドラゴン族/攻2400/守1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが特殊召喚に成功した時、または相手フィールド上にレベル5以上のモンスターが特殊召喚された時に発動する。相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して持ち主の手札に戻す。

「月華竜 ブラック・ローズ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

「月華竜 ブラック・ローズ!? そんなレアカードをどうして……」

 

 遊望の言うように、月華竜 ブラック・ローズはとても稀少価値の高いカードであり、一般には流通していないカードの1枚だ。少なくとも手に入れるにはプロデュエリストが参戦するようなトーナメントに勝ち抜くだけの力が無ければならない。

 

 

 

―――……私が、鈴に渡した! スカーライトと共にな!!―――

 

 

 

「っ!?」

 

 目を見開いた遊望の視線の先には満身創痍になりながらも、鈴の後を追ってきたエヴァの姿があった。ダーク・リベリオンとのデュエルで疲弊しきった彼女であったが、同じように鈴の後を追ってきた千春と皐月の手を借りてここまでやってきたのである。

 

「月華竜 ブラック・ローズ……私がプロデュエリストとして手に入れたカードだったが、持て余し気味でな。だったら青眼の精霊龍の効果で特殊召喚できる鈴ならば使いこなせると思い渡しておいたのさ!」

「エヴァちゃん、千春、皐月!」

「待たせたわね、鈴! 私たちが来たからには百人力よ!」

「……とはいえ、私たちにできることは鈴さんをここから応援することくらいしかできませんが……」

「そんなことないよ。みんながいてくれるだけで、あたし頑張れるから! それよりも、遊希を守ってあげて!」

 

 エヴァたちは覚束ない足取りをしながらも、なんとか臥せっている遊希の下へと歩み寄る。遊望とのデュエルの真っ最中である鈴は、意識を失っている遊希までも守れるだけの余裕がなかったため、いざという時を任せられる三人の存在は大きかった。

 

「さあ、月華竜 ブラック・ローズの効果を発動するわ! このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されているモンスター1体を持ち主のデッキに戻すわ! 消えなさい、銀河眼の時空竜!!“退華の叙事歌”(ローズ・バラード)!!」

 

 月華竜の咆哮と共に舞い上がる薔薇の花びらに巻かれる形で時空竜が消えていく。これで遊望のフィールドはがら空きになり、攻撃できるモンスターはいなくなる―――はずだった。

 

「……生憎ですが、あなたのその一手は私には届かない!! 手札より速攻魔法発動!《RUM-クイック・カオス》!!」

 

《RUM-クイック・カオス》

速攻魔法

(1):「CNo.」モンスター以外の自分フィールドの「No.」Xモンスター1体を対象として発動できる。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」モンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからX召喚する。

 

「クイック・カオス……速攻魔法のRUM!?」

―――これは、サクリファイス・エスケープか……

 

チェーン2(遊望):RUM-クイック・カオス

チェーン1(鈴):月華竜 ブラック・ローズ

 

「チェーン2のクイック・カオスの効果により、私はNo.である銀河眼の時空竜をランクが一つ上かつ同じ数字を持つCNo.へとランクアップさせる!! 私は、銀河眼の時空竜1体でオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! ランクアップ・カオス・エクシーズチェンジ!!」

 

 月華竜の舞い上がる花びらを振り払い、銀河眼の時空竜の魂が1つの光となって混沌の渦に飲まれていく。轟音と激しい地響きが周囲を包み込んだ。

 

「こ、これは……っ!!」

「なんなのよ、この揺れ!! 明らかに異常でしょ!!」

「まさか、これも精霊の力……?」

 

 以前相対した時よりも力を増している遊望の精霊の力。その力の源にして、かつて遊希を、エヴァを、鈴を打ち倒した金色の龍が遊望の下に舞い降りた。

 

 

 

―――さあ、目覚めよ! そして全てを破壊せよ! 我が力の化身!!―――

 

 

 

 

 

―――CNo.107 超銀河眼の時空龍!!―――

 

 

 

 

 

 黄金に光り輝く、美しくも禍々しい三つ首の竜が咆哮した。チェーン1の月華竜 ブラック・ローズの効果は対象不在により不発となる。最も鈴のフィールドの2体のモンスターはいずれも守備表示であるため鈴にはダメージは発生しない。それでも溢れんばかりの力の塊が激流となって鈴に襲い掛かろうとしていた。

 

「バトルです! 超銀河眼の時空龍で深淵の青眼龍を攻撃!!“アルティメット・タキオン・スパイラル”!!」

 

CNo.107 超銀河眼の時空龍 ATK4500 VS 深淵の青眼龍 DEF2500

 

「きゃああっ!!」

―――きゃあああっ!!

「鈴!!」

 

 青眼龍を破壊された鈴、そして直接超時空龍の攻撃を受けて撃破されてしまった青眼龍の悲鳴が周囲に響き渡る。先の時空竜の攻撃でもそうだったが、貫通効果を持たないモンスターによる守備表示モンスターへの攻撃であるため、戦闘ダメージは本来生じないのだ。しかし、超時空龍をはじめとした遊望の精霊による攻撃はデュエルモンスターズというゲームの根本的なルールすら飛び越えて鈴の精神と身体に確かに傷を負わせていた。

 

「さて、このターンの間の命ではありますが、目障りなのでその雑草は刈り取っておきましょう。銀河衛竜で守備表示の月華竜 ブラック・ローズを攻撃」

 

銀河衛竜 ATK2000 VS 月華竜 ブラック・ローズ DEF1800

 

「ふふっ、残念でした。私の攻め手を挫くどころか逆に自分の首を絞める形になってしまいましたね」

「っ……このっ……!」

 

 息も絶え絶えに、満身創痍になりながらもなんとか立ち上がる鈴。このまま倒れてなるものか、という意地と絶対に遊希を助け出す、という意志が鈴を支えていた。

 

「バトルフェイズを終了。私はこれでターンエンドです。今ならまだ命だけは助けてあげますので、早めのサレンダーをお勧めしますよ。あなたがお姉さまを諦めれば、あなたもあなたもお友達もみんな無事にお家に帰ることができるのですから」

「……冗談! あたしたちだけで帰るつもりなら、はじめからここまでやってこないわ!!」

「……そうですか。まあ、不要な質問でしたね。では、あなたたちにはここで私とお姉さまの幸せのための人柱になってもらいましょう」

 

 

遊望 LP3000 手札2枚

デッキ:28 メインモンスターゾーン:1(CNo.107 超銀河眼の時空龍 ORU:3)EXゾーン:1(銀河衛竜)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:12 除外:16 EXデッキ:8(0)

鈴 LP4100 手札3枚

デッキ:28 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 墓地:11 除外:2 EXデッキ:13(0)

 

 

遊望

 □□□□□

□□□C□□

  衛 □

 □□□□□□

 □□□□□

 

 

○凡例

C・・・CNo.107 超銀河眼の時空龍

 

 

☆TURN06(鈴)

 

 デュエルはライフが残っている限り負けることはない。しかし、それはデュエリストが心身ともに健康である場合である。そして、今の鈴はそのケースに当てはまるような状態ではなかった。

 

「鈴! しっかりしろ! ライフはまだ……!」

「うん……だいじょうぶ……あたしの……ター……」

 

 鈴は心配するエヴァたちに対して笑顔を見せて答えるが、その顔はもはや笑顔と呼べるものではなかった。デッキの一番上のカードをドローしようとするが、カードに手をかけるも引くことができない。本来自分の精霊ではない光子竜とスカーライトをその身に宿し、体力・精神力ともに摩耗していた中、超時空龍の攻撃がそれに追い討ちをかけた。

 

(あれ……カード……ひけない……めがかすむ…こえが……でな……)

―――鈴! おい、鈴!

―――鈴! ちょっと、ねえ、鈴!!

 

 光子竜やスカーライトが必死に鈴の名を呼び続ける。しかし、今の光子竜たちの言葉は鈴の耳には届いていなかった。ぐらりと大きく、鈴の身体が揺れる。ここで自分が倒れたら誰が遊希を助けるんだ。そんな想いを糧に燃えていた心の炎が今、消えようとしていた。

 

(あれ……まだ、まだ……デュエルは……おわってないのに……なん……)

「鈴!!」

「鈴さん!!」

(ごめん……ゆうき……わたし……もう……)

 

 

 鈴の身体が崩れ落ちようとしたその瞬間である。鈴の身体は優しくも暖かいものに抱き抱えられた。

 

(え……っ……)

「……無理し過ぎよ。あんた」

 

 潤んだその眼にぼやけて映るのは。ずっと、ずっと会いたかった友の、遊希の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。