☆TURN06(遊希)
「私のターン、ドロー」
(……相手フィールドにはヴァレルロードに2体のヴァレット。ヴァレルロードのフリーチェーンの効果で皐月はいつでも2体のヴァレットモンスターの効果を発動できる)
皐月のフィールドにはアネスヴァレット・ドラゴンとシェルヴァレット・ドラゴンの2体のヴァレットが存在する。マスタールールの変更によってEXゾーンが追加され、デュエルモンスターズにどこのモンスターゾーンにどのモンスターを召喚するか、というプレイングスキルも求められていた。
―――片方のEXゾーンの真正面にはシェルヴァレット・ドラゴンか。モンスターの召喚位置次第ではその効果でまとめて除去される恐れがあるな。
シェルヴァレット・ドラゴンは散弾銃をモチーフにしたモンスターだ。その効果はこのカードが存在していたゾーンと同じ縦列に存在していたモンスター1体の破壊。そしてメインモンスターゾーンのモンスターを破壊した場合、その両隣のゾーンに存在するモンスターをも巻き込んで破壊するというものだ。そのためシェルヴァレットと対面する形になる左側おEXゾーンは封じられたも同然である。
(さらにアネスヴァレット・ドラゴンは相手フィールドのモンスター1体の効果を無効にし、攻撃をも封じる。この局面を覆すには、どちらか1つを敢えて発動させてヴァレルロードの効果を空撃ちにさせる必要がある)
しかし、この時の遊希は冷静であった。何故ならこの時、彼女の手にはこの局面を覆すだけの力が揃っていたからだ。
(確かに懸念する材料は多い……けど、これで決まりよ)
「私は墓地の光属性モンスター、フォトン・スラッシャー、フォトン・バニッシャー、銀河眼の煌星竜の3体をゲームから除外し、手札から混源龍レヴィオニアを特殊召喚するわ!」
《混源龍レヴィオニア》
特殊召喚・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守0
このカードは通常召喚できない。自分の墓地から光・闇属性モンスターを合計3体除外した場合に特殊召喚できる。このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):この方法でこのカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。その特殊召喚のために除外したモンスターの属性によって以下の効果を適用する。このターン、このカードは攻撃できない。
●光のみ:自分の墓地からモンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。
●闇のみ:相手の手札をランダムに1枚選んでデッキに戻す。
●光と闇:フィールドのカードを2枚まで選んで破壊する。
「光属性のモンスターのみを除外して特殊召喚に成功したレヴィオニアの効果を発動するわ! 私の墓地のモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する!」
このデッキにおいて、遊希がレヴィオニアの効果で狙うのは光属性のみのモンスターを除外して発動できるモンスター1体を蘇生する効果。レベル8の多いこのデッキではこのカードを特殊召喚するだけでランク8XモンスターのX召喚に繋ぐことができるのだ。もちろん遊希はそれを狙っている―――と皐月は踏んだ。いや、踏んだというより踏まされたというのが正しいのだろうか。
(……レヴィオニアの効果でランク8のX召喚を狙うというのですね。そうはさせません!)
「レヴィオニアの効果にチェーンしてヴァレルロードの効果を発動します! 対象はアネスヴァレット・ドラゴンです! そしてヴァレルロードの効果に対象になったアネスヴァレット・ドラゴンの効果を発動します!」
チェーン3(皐月):アネスヴァレット・ドラゴン
チェーン2(皐月):ヴァレルロード・ドラゴン→アネスヴァレット・ドラゴン
チェーン1(遊希):混源龍レヴィオニア
ヴァレルロードの身体に弾丸となって装填されたアネスヴァレットがレヴィオニアに撃ち込まれる。レヴィオニアはまるで眠ったかのように力無く項垂れた。
「チェーン3のアネスヴァレット・ドラゴンの効果。リンクモンスターの効果の対象になったことで破壊されます! そしてフィールドのモンスター1体の効果を無効にし、そのモンスターは攻撃ができなくなります! 対象は混源龍レヴィオニアです!」
「チェーン2のヴァレルロードの効果は不発。チェーン1のレヴィオニアの効果はアネスヴァレットの効果で無効化されたため、発動できないわね……」
「これで天宮さんのフィールドには攻撃ができなくなったレヴィオニアが残りました。次のターンでダークマターと同じようにヴァレルロードの効果でコントロールを頂きます」
遊希にとって乾坤一擲、逆転の一手であったレヴィオニアを無力化した皐月は安堵の様子を見せる。フィールドに残ったシェルヴァレットとヴァレルロードの効果で奪うモンスターでさらにリンク召喚に繋げれば、いくら遊希であっても容易には覆せない盤面を築き上げることができる。
「……見事ね、皐月。でも、これで私に勝った気になるのは早いわよ?」
「えっ……」
「あなたはさっき1枚のあるカードで戦況を覆した。だったら私もその1枚のカードで戦況を覆す! 手札から魔法カードを発動―――死者蘇生!!」
「死者蘇生!?」
皐月は前のターン、死者蘇生によってエースであるヴァレルロードを蘇生した。召喚制限すら満たしていれば、ほとんどのモンスターを特殊召喚することができる死者蘇生はその強さが故に制限カードとなっている。もちろん1枚で流れを変えられる可能性の高いカードを遊希がデッキに入れないわけがない。
「私は墓地の巨神竜フェルグラントを特殊召喚する! そして墓地からの特殊召喚に成功したフェルグラントの効果を発動!」
《巨神竜フェルグラント》
効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻2800/守2800
(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合、相手のフィールド・墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外しこのカードの攻撃力・守備力は、除外したモンスターのレベルまたはランク×100アップする。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、「巨神竜フェルグラント」以外の自分または相手の墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
「相手のフィールドまたは墓地のモンスター1体を除外し、このカードの攻撃力・守備力をそのモンスターのレベルまたはランク×100アップさせる。お誂え向けにあなたのフィールドには高ランクのXモンスターがいるわね」
「!? ダークマター・ドラゴン……!!」
「対象はもちろんダークマター・ドラゴン。フェルグラントによって除外されたダークマターのランクは9。よってフェルグラントの攻守は900ポイントアップする!」
巨神竜フェルグラント ATK2800/DEF2800→ATK3700/DEF3700
「これでヴァレルロードの攻撃力をフェルグラントが上回った。そしてもうヴァレルロードの攻守ダウンの効果は使えない! バトル! 巨神竜フェルグラントでヴァレルロード・ドラゴンを攻撃!“巨神竜猛撃(フェルグラント・クラッシュ)!”」
巨神竜フェルグラント ATK3700 VS ヴァレルロード・ドラゴン ATK3000
皐月 LP4200→3600
除外したダークマターの力を帯びて巨大化したフェルグラントの一撃がヴァレルロードの身体を貫いた。砕け散ったヴァレルロードの身体から発する光と共に、遊希の墓地からはフェルグラントの咆哮に呼応するかのように光子竜が舞い上がる。
「巨神竜フェルグラントが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、墓地のレベル7または8のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。特殊召喚するのはレベル8でドラゴン族の銀河眼の光子竜! そして光子竜でシェルヴァレットを攻撃!」
銀河眼の光子竜 ATK3000 VS シェルヴァレット・ドラゴン DEF2000
「この瞬間、銀河眼の光子竜の効果を発動。光子竜とシェルヴァレットをゲームから除外するわ!」
「シェルヴァレットを……今の効果に意味は……」
「リバースカードオープン。速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動!」
《異次元からの埋葬》
速攻魔法
(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体まで対象として発動できる。そのモンスターを墓地に戻す。
「異次元からの埋葬……? 何故このタイミングで?」
「除外されているモンスターを3体まで対象として発動。そのモンスターを墓地に戻すわ。私は自分のフォトン・バニッシャーと煌星竜を、皐月のシェルヴァレット・ドラゴンを墓地に戻すわ」
(どうしてシェルヴァレットを……あっ!!)
カードの効果を熟知している皐月であるが、銀河眼の光子竜の効果についてどのように処理されるははっきりとはわからない。しかし、このタイミングで遊希が光子竜の効果によって“一時的に”除外されているシェルヴァレットを墓地に戻したということで彼女の狙いを知った。
「バトルフェイズ終了。このタイミングに光子竜の効果で除外されているモンスターはフィールドに戻る。私のフィールドには光子竜が戻ってくるわ」
遊希のフィールドには自身の効果で除外されていた光子竜が戻ってきた。しかし、皐月のフィールドには同じように除外されているはずのシェルヴァレットは現れなかった。
「えっ? なんで皐月のシェルヴァレットは戻ってこないのよ!」
「光子竜の効果はバトルフェイズ終了時に除外されたモンスターをフィールドに戻す……シェルヴァレットは除外ゾーンにいない……!!」
「はい、鈴正解。光子竜の効果で除外されたモンスターは……除外されている間に除外ゾーンから消えた場合はフィールドに戻ってこれなくなるのよ。破壊されることで後続を呼ぶヴァレットはできるだけ破壊以外の方法で除去してしまいたいから」
皐月のヴァレットは遊希の言うように、戦闘・効果問わず破壊されることでのみ後続のヴァレットを呼び出すため、破壊以外の方法による除去が弱点の一つだ。遊希からしてみれば、光子竜の効果とのコンボで異次元からの埋葬を入れていたのかもしれないが、そのカードを早々と引き当てては発動の機を伺っていたことに皐月は動揺を隠せなかった。
(……なんということ、まさかここまでのコンボが……)
「メインフェイズ2に移るわ。私はフェルグラントとレヴィオニアでオーバーレイ! 2体目の光子卿をエクシーズ召喚するわ。そしてこの光子卿を更にエクシーズチェンジ! ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴンをエクシーズ召喚」
数日間期間を空けていたとはいえ、ダークマターやFA・フォトンといったモンスターをデュエルで使用することは間違いなく遊希の身体に負担はかけている。しかし、その負担にすら気づかないほど遊希はこのデュエルを、ここで経験したデュエルに熱中していた。一度は消えかけたデュエルに対する情熱が、眠っていた感情がふつふつと湧き上がってきていたのだ。
「X素材を1つ取り除いて効果を発動。リボルブート・セクターを破壊。これでターンエンドよ」
「エンドフェイズに破壊されたアネスヴァレットの効果を発動します! デッキから《オートヴァレット・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚します!」
《オートヴァレット・ドラゴン》
効果モンスター
星3/闇属性/ドラゴン族/攻1600/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードを対象とするリンクモンスターの効果が発動した時に発動できる。このカードを破壊する。その後、フィールドの魔法・罠カード1枚を選んで墓地へ送る。
(2):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキから「オートヴァレット・ドラゴン」以外の「ヴァレット」モンスター1体を特殊召喚する。
皐月 LP3600 手札0枚
デッキ:28 メインモンスターゾーン:1(オートヴァレット・ドラゴン)EXゾーン:0 魔法・罠:0 墓地:9 Pゾーン:青/赤 除外:3 エクストラデッキ:14(0)
遊希 LP4000 手札0枚
デッキ:21 メインモンスターゾーン:1(銀河眼の光子竜)EXゾーン:1(ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ORU:2)魔法・罠:0 墓地:16 Pゾーン:青/赤 除外:2 エクストラデッキ:8(0)
皐月
□□□□□
□オ□□□
□ F
□□光□□□
□□□□□
遊希
凡例
オ・・・オートヴァレット・ドラゴン
☆TURN07(皐月)
「私のターン、ドロー!……どうやら、ここまでのようですね。私はこのままターンエンドです」
皐月はドローのみを行っては何もせずターンを終えた。この時点でこのデュエルの勝敗はもはや決まったものと言っていいだろう。しかし、皐月の顔には悔いは微塵も感じられなかった。
皐月 LP3600 手札1枚
デッキ:27 メインモンスターゾーン:1(オートヴァレット・ドラゴン)EXゾーン:0 魔法・罠:0 墓地:9 Pゾーン:青/赤 除外:3 エクストラデッキ:14(0)
遊希 LP4000 手札0枚
デッキ:21 メインモンスターゾーン:1(銀河眼の光子竜)EXゾーン:1(ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ORU:2)魔法・罠:0 墓地:16 Pゾーン:青/赤 除外:2 エクストラデッキ:8(0)
皐月
□□□□□
□オ□□□
□ F
□□光□□□
□□□□□
遊希
☆TURN08(遊希)
「私のターン、ドロー。皐月、私あなたとデュエルできて良かった。このデュエルは私の勝ちだけど、もし次同じようにデュエルする時はこうはいかないと思う。だから、二人で……いやみんなでデュエリストとして頑張りましょう?」
「天宮さん……はい」
「ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴンの効果を発動。X素材を1つ取り除き、オートヴァレット・ドラゴンを破壊。そしてバトルフェイズ! ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴンでダイレクトアタック。“壊滅のフォトン・ストリーム”!」
ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ORU:1 ATK4000
皐月 LP3600→0
*
「……はぁ、負けてしまいました」
自分でもある程度は予想できていたことではあるが、やはり負けることは喜ばしいことではない。その場にへたり込む皐月の元に鈴と千春が歩み寄った。この時二人は期待以上のデュエルを魅せてくれた皐月に対する喜びに溢れていた。
「何言ってんのよ! 皐月凄かったじゃない!」
「ええ。もしかしたら遊希の次に強いのは皐月かもしれないわね」
鈴と千春に褒められた皐月は顔を紅潮させては両手で覆い隠す。あまり褒められ慣れていないのか、かなり恥ずかしそうだった。
「うう……そんなに褒めないでくださいぃぃ……恥ずかしいです」
(皐月にとっては褒め殺しってやつなのかしら)
―――それは生まれ持った本人の気性が関係しているからな。部外者の我々にどうこう出来る問題ではないだろう。
(でも、素晴らしいデュエリストを称賛することは悪いことではないわよね?)
―――無論だ。
「私、そんなにデュエルは得意ではないですが……少しだけ自信が付いたような気がします」
「ねえ、皐月。あなたは自分でデュエルが得意じゃないって言っているじゃない? それ、もうやめた方がいいわよ」
「えっ?」
「だってそうでしょう? 実技試験ではいい結果を残せなかったかもしれないけど、ここまでのデュエルができるデュエリストがデュエルが得意じゃないって……それを言ったらほとんどのデュエリストがデュエルが得意じゃなくなってしまうわ。もちろんそう言われてすぐに自信になるなんてことはないと思う。だから、これからゆっくりとでいいから自信を付けていきまし―――」
「天宮さん!?」
遊希の優しい言葉に微かに目を潤める皐月。そんな中、皐月に微笑みかけていた遊希は彼女にもたれかかる。遊希自身は自覚していないようだが、二回連続の全力デュエルはブランクの長かった遊希にはやはり負荷が大きかったようだった。
「ご、ごめんなさい……ちょっと身体に力が入らなくて。重いでしょう?」
「そんなことありません。私に比べたら……その……」
「……」
「天宮さん?」
「皐月の身体ふわふわしていて気持ちいい……マシュマロボディってこういうことを言うのかしら? まるで人をダメにするソファって感じで」
「ふぇっ!?」
皐月の胸に顔をうずめながらどこか気持ちよさそうな声を上げる遊希。思わず一時期インターネット上などで流行した家具に例えてしまうほどに、彼女の醸し出す包容力の虜になっていたのだ。さすがに衆目でこのようなことをされるのには抵抗のある皐月は、遊希を離すように鈴と千春に懇願する。しかし、残念ながらその願いは聞き届けられることはなかった。皐月の身体の左右から、飛びつくように鈴と千春も彼女を抱きしめたのである。
「あー、本当だ。皐月柔らかくて暖かい。お日様の匂いがするー」
「あ、あの、私は取り込んだばかりの布団ではないのですが」
「同い年なのにどうしてこうも差が出るのかしらねー……あー、私も皐月みたいなナイスバディに生まれ変わりたーい」
「日向さんまで! み、みなさん離れてくださーい!!」
皐月の悲痛(?)な叫びが自分たち以外誰もいない屋上に木霊する。しかし、この一日で四人の結束がより深まったのは言うまでもなかった。