銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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幻魔の覚醒

 

 

 

 

(―――な、なんだ……この力は?)

 

 遊希を変に不安にさせないためにも、光子竜は不審者の後ろに立つ力のことを口にはしなかった。精霊である光子竜は自身と同じ精霊、そしてそれに準ずるもの、比肩しえるものの力を感じ取ることができる。エヴァと初めて出会った時にスカーライトの存在に気付くことができたのもその力のおかげと言っていい。

 

(―――これは精霊、ではない。だが、精霊の力に匹敵する力であり、そして……あまりにも邪すぎる。こんな力を人間が制御できるとは思えないが……)

(ちょっと光子竜。あんたデュエルの最中に何考えてるの?)

―――!?

 

 しかし、ほんのわずかな動揺を遊希に悟られる。光子竜をその身に10年以上も宿している彼女からしてみれば、もはや彼は自身の一部のようなものなのだ。

 

―――……

(黙ってちゃわからないわ。あんたが素直に思ったことを教えて)

―――後悔するなよ。

(うん)

―――対峙して気付いたのだが、相手には精霊ではないが、それに準ずるものが宿っている。しかも邪極まりないもので、普通の人間ではまず扱い切れないような強大なものだ。そんなものを相手取ったらお前もただでは済まないぞ?

(……そっか。でもだからといって尻尾を撒いて逃げたくはない)

 

 遊希は周囲を見回した。翔一をはじめ、倒れた生徒の状態を一人一人エヴァが見て回っている。もし遊希一人だけであったら不審者に倒された生徒たちのことが気になってデュエルに集中できなかったかもしれないが、彼女がいてくれるおかげでそちらを任せることができた。

 

(私はあいつが許せない。どんな奴かなんて興味がないけど、デュエルをこんな形で悪用するあいつが。だから、光子竜……)

―――……皆まで言うな。私も同じ気持ちだ。ならばどこまでもお前と共に戦おうぞ。

 

 決意を新たにした遊希と光子竜が改めて不審者と対峙する。不審者は遊希を見て不気味な笑みを浮かべていた。

 

『相談タイムハオシマイ? 精霊ノデュエリストサン?』

(……あんたの存在まで感付いてるわよ)

―――そのようだな。ますますここで止めなくてはいけなくなった。

『ジャア再開スルヨォ! アタシハマダ召喚権ヲ残シテイル! 手札カラ《幻銃士》ヲ召喚!!』

 

《幻銃士》

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1100/守800

(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した時に発動できる。自分フィールドのモンスターの数まで、自分フィールドに「銃士トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する。

(2):自分スタンバイフェイズに発動できる。自分フィールドの「銃士」モンスターの数×300ダメージを相手に与える。この効果を発動するターン、自分の「銃士」モンスターは攻撃宣言できない。

 

『召喚ニ成功シタ幻銃士ノ効果ヲ発動! アタシノフィールドノモンスターノ数マデアタシノフィールドニ銃士トークンヲ特殊召喚! アタシノフィールドニハ幻銃士ヲ含メテ4体ノモンスターガイル! ヨッテ余ッテルモンスターゾーン全テニトークンヲ守備表示デ特殊召喚!!』

 

 不審者のフィールドにはEXゾーンのスカルデッドを含めて4体のモンスターが存在し、メインモンスターゾーンの空きは2つ。よって2体のトークンが特殊召喚される。

 

(フィールドを全て埋めた……? スカルデッドがいるのに更にリンク召喚を狙うというのかしら)

『アハハァ……コレデ準備ハ済ンダヨォ。アタシハ―――フィールドノ幻銃士トトークン2体ヲリリースシテ特殊召喚!!』

「3体のモンスターをリリース!?」

 

 幻銃士と2体の銃士トークンが闇へと消えていく。次の瞬間、遊希は光子竜が感じ取っていたであろう強大な力がフィールドに溢れ出ていることに気が付いた。全身に寒気が走り、頬には冷や汗がしたる。これが光子竜の感じ取った力の正体なのか、その事実に遊希は言葉を失った。

 

(何なの、この瘴気は……! こんなの、体感したことがない)

 

 

 

 

 

―――“天地ヲ蹂躙セシ魔ノ化身ヨ! ソノ力ヲ以テ万物ヲ闇ヘト還セ!!”―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――覚醒セヨ!!《幻魔皇ラビエル》!!―――

 

 

 

 

 

 

 現れたのは巨大な青い身体を持った悪魔のようなモンスターだった。遊希はその存在を授業で聞いたことがある。

 かつてアカデミアの理事長だった男がその力に取りつかれ、暴走したことを。かつてあらゆるカードから力を奪い取り、世界を破壊しつくさんとその力を奮ったことを。あまりに危険すぎるが故にそれらのカードは破棄され、そしてそのカードを実際に目にした者はもういないと思われていた―――しかし、ここにその【三幻魔】の一角が覚醒した。

 

 

《幻魔皇ラビエル》

特殊召喚・効果モンスター

星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。自分フィールドの悪魔族モンスター3体をリリースした場合のみ特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、リリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):相手がモンスターの召喚に成功した場合に発動する。自分フィールドに「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)1体を特殊召喚する。このトークンは攻撃宣言できない。

 

 

「幻魔皇ラビエル……!? そんな、現実にはもう存在しないはずじゃ」

『幻魔ノ力ハ不滅! 依代デアルカードガ破棄サレタ程度デ滅ビナイノサ!! スカルデッドノリンク先ニ特殊召喚サレタコトデ、ソノ攻撃力・守備力ハ300アップ!』

 

幻魔皇ラビエル ATK4000/DEF4000→ATK4300/DEF4300

 

『アタシハカードヲ1枚セット。ターンエンドダ』

 

 

不審者 LP8000 手札1枚

デッキ:31 メインモンスターゾーン:3(幻魔皇ラビエル、インフェルノイド・アドラメレク、インフェルノイド・ヴァエル)EXゾーン:1(鎖龍蛇-スカルデッド)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:19 除外:6 EXデッキ:10(0)

遊希 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

 

不審者

 □□伏□□

 ヴ□□幻ア□

  □ 鎖

□□□□□□

 □□□□□

遊希

 

○凡例

鎖・・・鎖龍蛇-スカルデッド

幻・・・幻魔皇ラビエル

ア・・・インフェルノイド・アドラメレク

ヴ・・・インフェルノ・ヴァエル

 

 

☆TURN02(遊希)

 

「私のターン、ドロー!」

 

 不審者のフィールドには攻撃力4300かつ自身の効果でフィールドのモンスターをリリースして更に打点を上げられるラビエルが存在する。上級以上のインフェルノイドモンスターが墓地から自己蘇生できることを考えると、毎ターンのように攻撃力6000は軽く超えるモンスターが現れるのだ。もちろん最上級インフェルノイド2体にスカルデッドも当然厄介なモンスターであるが、まず最優先に対処すべきはラビエルであることは明白だった。

 

(手札が悪いわね……でも、あれだけの力を持ったモンスターをそのままにはしておけない!)

「私は手札から魔法カード、増援を発動! デッキからレベル4の戦士族、フォトン・スラッシャーを手札に加える。そして自分フィールドにモンスターが存在しない時、フォトン・スラッシャーは手札から特殊召喚できる!」

 

 手に持った大剣で空間を切り裂き現れるフォトン・スラッシャー。レベル4のモンスターとして破格の攻撃力を持つが、ラビエルには遠く及ばない。しかし、相手が圧倒的な個の力で臨むのであれば、こちらはモンスター同士の結束で臨むのだ。

 

「フィールドにフォトンモンスターが存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる。フォトン・バニッシャーを特殊召喚。そして特殊召喚に成功したフォトン・バニッシャーの効果。デッキから銀河眼の光子竜1体を手札に加える。そして私はレベル4のフォトン・スラッシャーとフォトン・バニッシャーでオーバーレイ!」

『エクシーズ……ネェ』

「2体の光属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!“銀河の中心より生まれるは光子を纏った戦士。その力を以て万物を鎮めよ!”ランク4《輝光子パラディオス》!」

 

《輝光子パラディオス》

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻2000/守1000

光属性レベル4モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を2つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を0にし、その効果を無効にする。

(2):フィールドのこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

「ラビエルを対象にパラディオスの効果を発動! このカードのX素材を2つ取り除き、ラビエルの効果を無効にして攻撃力を0にする!」

 

幻魔皇ラビエル ATK4300→ATK0

 

『ヘェ……ヤルネェ』

「バトル! 輝光子パラディオスでラビエルを攻撃!“フォトン・ディバイディング”!」

 

輝光子パラディオス ORU:0 ATK2000 VS 幻魔皇ラビエル ATK0

 

不審者 LP8000→LP6000

 

 強大な力を持った幻魔であってもモンスターの1体であることには変わらない。そしてモンスターであるということはこうやって戦闘で破壊することができるということだ。

 

『アヒャヒャヒャヒャ! 普通ノデュエリストダッタララビエルヲ見テ戦意喪失シチャウノニネェ!!』

「……私をそんじょそこらのデュエリストと一緒にしないでちょうだい。メインフェイズ2。私はカードを2枚セットしてターンエンドよ」

 

 

不審者 LP6000 手札1枚

デッキ:31 メインモンスターゾーン:2(インフェルノイド・アドラメレク、インフェルノイド・ヴァエル)EXゾーン:1(鎖龍蛇-スカルデッド)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:19 除外:6 EXデッキ:10(0)

遊希 LP8000 手札3枚

デッキ:32 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:1(輝光子パラディオス ORU:0)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):2 フィールド:0 墓地:3 除外:0 EXデッキ:14(0)

 

不審者

 □□伏□□

 ヴ□□□ア□

  パ 鎖

□□□□□□

 □□伏伏□

遊希

 

○凡例

パ・・・輝光子パラディオス

 

 

☆TURN03(不審者)

 

 

『アタシノターン、ドローォ! アタシハ手札カラ永続魔法《煉獄の消華》ヲ発動!!』

 

《煉獄の消華》

永続魔法

「煉獄の消華」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):手札を1枚捨ててこの効果を発動できる。デッキから「煉獄の消華」以外の「煉獄」魔法・罠カード1枚を手札に加える。このターン、自分は「インフェルノイド」モンスター以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

(2):自分の「インフェルノイド」モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算後に、魔法&罠ゾーンの表側表示のこのカードを墓地へ送って発動できる。その戦闘を行ったお互いのモンスターを除外する。

 

『手札1枚ヲ捨テテ1ツ目ノ効果ヲ発動! デッキカラ同名カード以外ノ煉獄魔法・罠カードヲ手札ニ加エルヨォ……アタシハ《煉獄ノ虚夢》ヲ手札ニ加エル アハハハハッ!!』

「一々喚かないで貰えるかしら。うるさくてしょうがないんだけど」

『ゴメンネェ……デモ、アタシ愉シクテショウガナインダァ! アンタトコウシテ命ノヤリトリガデキルナンテネェ!! アタシハ今手札ニ加エタ永続魔法《煉獄の虚夢》ヲ発動!』

 

《煉獄の虚夢》

永続魔法

(1):自分フィールドの元々のレベルが2以上の「インフェルノイド」モンスターは、レベルが1になり、相手に与える戦闘ダメージは半分になる。

(2):表側表示のこのカードを墓地へ送って発動できる。自分の手札・フィールドから、「インフェルノイド」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドにのみ存在する場合、自分のデッキのモンスターも6体まで融合素材とする事ができる。

 

『煉獄の虚夢ガ存在スル限リ、アタシノレベルガ2以上ノインフェルノイドノレベルハ1ニナル!』

 

インフェルノイド・アドラメレク 星8→星1

インフェルノイド・ヴァエル 星7→星1

 

『コノカードガ存在スル限リ、インフェルノイドガアタエルダメージハ半分ニナル。デモ墓地カラモーットタクサンノインフェルノイドヲ呼ビ出セル!! アタシハ墓地ノ《インフェルノイド・リリス》トインフェルノイド・ルギフグスヲゲームカラ除外シ、2体目ノヴァエルヲスカルデッドノリンク先ニ特殊召喚! モチロンコノカードノレベルモ1ニナル!』

 

インフェルノイド・ヴァエル 星7→星1 ATK2600/DEF0→ATK2900/DEF300

 

『バトル! マズハスカルデッドデパラディオスヲ攻撃!“チェーン・ドラゴンズ・クラッシュ”!!』

 

鎖龍蛇-スカルデッド ATK2800 VS 輝光子パラディオス ATK2000

 

(パラディオスは相手によって破壊されることでデッキからカードを1枚ドローできる。ダメージを受けるのは仕方ないけれど、これで手札を充実させられる!)

 

遊希 LP8000→LP7200

 

「―――っ!?」

 

 8000ライフ制において800のダメージはデュエル開始直後であればまだそれほど痛くはないと言ってしまっていいだろう。時にはライフを犠牲にしなければ勝てないこともあるからだ。しかし、今回ばかりはそれは違った。何故ならスカルデッドの攻撃がパラディオスを破壊し、ライフを失った瞬間―――遊希の身体にはまるで刺すような痛みが走ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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