銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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親友

 

 

 

 

 

(……降雷皇ハモン。最後の幻魔をこうも容易く手札に。でもハモンの特殊召喚には条件がある)

 

 このデュエルにおいて未だフィールドには出ていないハモンであるが、その存在はラビエル・ウリアと共にアカデミアの授業で習ったことがある。

 ウリアの特殊召喚の条件が、フィールドに表側表示で存在する永続罠3枚を墓地に送る必要があるのに対し、ハモンはフィールドに表側表示で存在する永続魔法3枚を墓地に送る必要がある。

 現在不審者のフィールドには永続魔法の煉獄の虚夢と煉獄の消華の2枚が存在している。ハモンを特殊召喚するためには、更に後1枚の永続魔法が必要なのだ。

 

『オマエガ今何ヲ考エテイルノカ当テテアゲヨウカ?』

 

 考え込んでいる遊希を見て、不審者は彼女が何を思っているのかを見通しているようだった。

 

『ズバリ、ハモンヲ特殊召喚スルタメノ永続魔法ガナイ! ソウ思ッテルンダロウ?』

「……」

『沈黙ハ肯定ッテ受ケ取ルヨ。アタシハ手札カラ永続魔法《王家の神殿》ヲ発動』

 

《王家の神殿》

永続魔法

「王家の神殿」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分は罠カード1枚をセットしたターンに発動できる。

(2):自分フィールドの表側表示の「聖獣セルケト」1体とこのカードを墓地へ送ってこの効果を発動できる。手札・デッキのモンスター1体またはエクストラデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する。

 

「3枚目の……永続魔法!」

『トイウコトデ、アタシハフィールドノ永続魔法3枚ヲ墓地ニ送ル。出デヨ! 3体目ノ幻魔!!』

 

 雷鳴が轟く。三幻神において太陽の神とされる《ラーの翼神竜》に酷似したそのモンスターは無慈悲な雷をもって全てを打ち砕く神とは正反対の存在であると言えた。

 

 

 

 

 

 

―――“天地ヲ雷霆デ覆イシ魔ノ化身ヨ! ソノ力ヲ以テ万物ヲ穿テ!!”―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――覚醒セヨ! 《降雷皇ハモン》!!―――

 

 

 

 

 

 

《降雷皇ハモン》

特殊召喚・効果モンスター

星10/光属性/雷族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できない。自分フィールドの表側表示の永続魔法カード3枚を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。

(1):このカードがモンスターゾーンに守備表示で存在する限り、相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。相手に1000ダメージを与える。

 

「幻魔が2体……」

―――精霊でないにも関わらず、この力か……化け物め。

『永続魔法ノ煉獄の虚夢ガ墓地ニ送ラレタコトデ、アドラメレクノレベルハ元ニ戻ル』

 

インフェルノイド・アドラメレク 星1→星8

 

『ソレデコレハオマケ! 手札カラ魔法カード《マジック・プランター》ヲ発動!!』

 

《マジック・プランター》

通常魔法

(1):自分フィールドの表側表示の永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

『リビングデッドの呼び声ヲ墓地ヘ送リ、2枚ドロー! 墓地ニ永続罠ガ1枚増エタコトデ、ウリアノ攻撃力ハ更ニアップ!』

 

神炎皇ウリア ATK3000→ATK4000

 

「攻撃力4000のモンスターが2体……」

『アタシハカードヲ1枚セット。コレデターンエンド!!』

 

 

 

不審者 LP5800 手札2枚

デッキ:24 メインモンスターゾーン:3(神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、インフェルノイド・アドラメレク)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:18 除外:9 EXデッキ:13(0)

遊希 LP7200 手札2枚

デッキ:24 メインモンスターゾーン:2(銀河眼の光子竜×2)EXゾーン:1(輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン ORU:1)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:12 除外:0 EXデッキ:13(0)

 

 

不審者

 □□□伏□

 □炎雷ア□□

  竜 □

□□□□銀銀

 □□□□□

遊希

 

○凡例

炎・・・神炎皇ウリア

雷・・・降雷皇ハモン

 

 

☆TURN06(遊希)

 

(相手フィールドには攻撃力4000の幻魔が2体……か)

 

 暗黒の召喚神の効果を発動したため、不審者は攻撃することができない。ただ、戦闘を行わずとも相対しているだけで膝を無理やり屈せられそうなほどの圧を放っている幻魔。もし光子竜がいてくれなければ、遊希もここで倒れている学生たちと同じように為すすべなく倒されていただろう。

 

(……私のデッキは攻撃力では負けていない。正直言って4000くらいなら恐るるに足らない)

 

 だが、このデッキを相手取るにおいて大事なのは攻撃力ではない。相手はただのカードではないということを理解しなければならなかった。言ってしまえば、普通のデュエルであればデュエルをするモンスターはデータに過ぎず、攻撃を受けても破壊されてももう一度召喚すれば蘇る。現実に生きているわけではない、仮想の世界の住人だ。

 しかし“幻魔”は違う。人間によって生み出されたカードでありながら、生みの親である人間を自身の邪な力で取り込み、敵とみなしたものは容赦なく攻撃する。そしてその攻撃で生じたダメージは実際のダメージとなって人間に危害を及ぼす。人知を超えた力を持った存在であり、ここで止められなければまず間違いなく多くの人間がその力の犠牲になるだろう。

 

(絶対に止めなければならない。でも、私にそれができるの?)

―――遊希。

 

 心に生じた迷いを感じ取ったのか、光子竜が遊希の名を呼んだ。

 

(光子竜……)

―――怖いか?

 

 怖くなんてない。そう言おうとした遊希だったが、口から出たのは真逆の言葉。

 

(……うん)

―――そうか。ならば、それでいい。

(えっ?)

―――恐れるな、と言うのは簡単だ。だが、高い知能と意志を持った人間に恐怖を捨てることなどまず不可能だ。ならばいっそ自分に素直になれ。怖い時は怖い、辛い時は辛い、嬉しい時は嬉しい。正直でいた方が肩の力を抜ける。それに恐れていても問題はないだろう? お前には、この私がいる。

(大きく出たわね。じゃあその大船に乗らせてもらうわ)

「私のターン、ドロー!!」

 

 幻魔を恐れる心は受け入れる。しかし、遊希は孤独ではない。自分には精霊が、銀河眼の光子竜がいる。例え幻魔に力で劣っていたとしても、デュエリストを恐怖と力で支配する幻魔にはない絆がある。そしてその絆を信じた時、デッキはデュエリストに応えてくれるのだ。

 

「私はライフを1000ポイント支払い、魔法カード《フォトン・ハンド》を発動!!」

 

《フォトン・ハンド》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分フィールドに「フォトン」モンスターまたは「ギャラクシー」モンスターが存在する場合、1000LPを払い、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのコントロールを得る。発動時に自分フィールドに「銀河眼の光子竜」が存在しない場合には、Xモンスターしか対象にできない。

 

遊希 LP7200→LP6200

 

『フォトン・ハンド!?』

「私のフィールドに銀河眼の光子竜が存在する場合、相手フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動。そのモンスターのコントロールを得る! 対象は……降雷皇ハモン!!」

『ハモン……ノコントロールヲ奪ウダト!?』

「幻魔! その力、その命を私のために使いなさい!!」

 

 遊希の左手が光を放つと同時に、不審者を守るように立っていた降雷皇ハモンが遊希の側に移る。光子竜が間に入っているとはいえ、ハモンが遊希の側についた途端身体がグッと重くなるのを感じた。これが幻魔を使役するということなのだろう。

 

(っ……わかる。光子竜がいるから、私は幻魔を操っていても正気を保っていられるって。でも相手は精霊の類を持っていないのに幻魔3体を使っている……もしこのデュエルが終わったら相手の身体は? 心は? どうなってしまうの?)

『幻魔ヲ奪ッタトコロデ何ガデキル!! コッチニハ同ジ攻撃力ノウリアガイルンダゾ!!』

「そうね……自分で使ってみてわかったわ。こんな力、早々に潰さなきゃいけないって。フォトン・ブラスト・ドラゴンを攻撃表示に変更」

 

輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン ATK1800

 

「バトル! 降雷皇ハモンで神炎皇ウリアを攻撃!!“失楽の霹靂”!!」

 

降雷皇ハモン ATK4000 VS 神炎皇ウリア ATK4000

 

『チッ!! 迎撃セヨ、神炎皇ウリア!“ハイパーブレイズ”!!』

 

 雷の幻魔と炎の幻魔。二つの強大な力は互いの力の反発に巻き込まれて消えていった。ハモンとウリアが消えたことで、遊希の身体に圧し掛かっていた見えない力が消える。存在自体がデュエリストを苦しめる。そんな力であることを改めて実感した。

 

「幻魔は消えた。もうお前に勝ち目はない! 銀河眼の光子竜でインフェルノイド・アドラメレクを攻撃!」

 

銀河眼の光子竜 ATK3000 VS インフェルノイド・アドラメレク ATK3100

 

「銀河眼の光子竜の効果を発動! バトルフェイズ終了時まで光子竜とアドラメレクをゲームから除外する! これであんたを守るモンスターは消えた!」

『ッ……!』

「輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴンでダイレクトアタック!“フォトン・ライト・バースト”!」

 

輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン ATK1800

 

不審者 LP5800→LP4000

 

「もう1体の銀河眼の光子竜でダイレクトアタック!“破滅のフォトン・ストリーム”!!」

 

銀河眼の光子竜 ATK3000

 

不審者 LP4000→LP1000

 

『グギャアアッ!!』

 

 迸る光の奔流が不審者を飲み込む。銀河眼の光子竜の直接攻撃を受けた不審者は大きく吹き飛んだ。フード付きのコートを身にまとっていたことから分かり辛かったのだが、不審者はかなり小柄であったため、この一撃は遊希以上に身体に響くようだった。

 

「……このターンで決めたかったけど仕方ないわね。バトルフェイズを終了。この瞬間、光子竜とアドラメレクはフィールドに戻る。ちなみに一度フィールドを離れたことでスカルデッドの効果は消える。アドラメレクの攻撃力は元に戻るわ」

 

インフェルノイド・アドラメレク ATK2800

 

「私はフォトン・ブラスト・ドラゴンと光子竜をリンクマーカーにセット! 銀河眼の煌星竜をリンク召喚。煌星竜の効果で墓地のフォトン・オービタルを手札に戻す。そしてオービタルを煌星竜に装備」

 

銀河眼の煌星竜 ATK2000→ATK2500

 

「そして装備されているオービタルの効果。このカードを墓地に送り、デッキからフォトンもしくはギャラクシーモンスター1体を手札に加える。銀河騎士を手札に加えるわ。そして自分フィールドにギャラクシーモンスターが存在する場合、銀河騎士をリリースなしで召喚。自身の効果で召喚に成功した銀河騎士はターン終了時まで攻撃力を1000下げ、墓地の銀河眼の光子竜1体を守備表示で特殊召喚する」

 

銀河騎士 ATK2800→ATK1800

 

銀河眼の光子竜 DEF2500

 

「そして銀河眼の光子竜と銀河騎士でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! No.90 銀河眼の光子卿を守備表示でエクシーズ召喚。これでターンエンドよ」

 

 

不審者 LP1000 手札2枚

デッキ:24 メインモンスターゾーン:1(インフェルノイド・アドラメレク)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:20 除外:9 EXデッキ:13(0)

遊希 LP6200 手札2枚

デッキ:22 メインモンスターゾーン:2(銀河眼の光子竜、No.90 銀河眼の光子卿 ORU:2)EXゾーン:1(銀河眼の煌星竜)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:16 除外:0 EXデッキ:11(0)

 

 

不審者

 □□□伏□

 □□□ア□□

  煌 □

□卿□□銀□

 □□□□□

遊希

 

 

☆TURN07(不審者)

 

 このターンは相手のターンとなっているが、不審者は倒れたまま動かなかった。思えば不審者もこれまで数多くのデュエルを行ってきた影響か身体に疲労がたまり切っていたのだろう。精霊を持たない身でありながら、幻魔を使ったこともそれに拍車をかけていたようだった。

 

「……どうやらこのデュエルはここで終わりのようね。どうせならトドメを刺してやりたかったけど」

 

 そう言って遊希がデュエルを中断して不審者の元に歩み寄ろうとした瞬間、不審者は奇声を上げて飛び上がるようにして立ちあがった。

 

「何よ、驚かせて。まだデュエルできるんじゃない」

―――なっ……!

『デュエル……デュエルゥ……』

 

 上を見上げながら、うわ言のように繰り返す不審者。遊希が振り返って元の場所に戻ろうとすると不審者は戻ろうとする遊希に突如声をかけてきた。

 

 

 

 

 

『サスガダネ天宮 遊希……コレマデ戦ッテ来タ誰ヨリモ強クテ可憐デ美シイ……』

 

 

 

 

 

 

 デュエルの途中であるにも関わらず、急に遊希のことを褒めだす不審者。最もこのような卑劣なデュエリストに美辞麗句を並べられても何も嬉しくない。遊希は背を向けたままその言葉に答えることは無かった。

 

『コノ身体ノ元ノ持チ主ガオ前ニ勝チタイト強ク願ウワケモ分カルヨォ……』

 

 だが、この瞬間遊希の中に疑問が浮かぶ。それは不審者の発した「この身体の元の持ち主」という言葉である。これまで遊希はアカデミアのデュエルディスクや制服を何らかの方法で手に入れた外部の人間が侵入し、生徒を襲っているのだと思っていた。

 しかし、この不審者の言葉が真実であるならば、別の誰かが無関係の人間を操ってデュエルをさせていることになる。当然このようなことをする人間の言うことなど信用できないが、伝説上のカードとされている幻魔を持っていること、ダメージを受けた瞬間に実際に身体に痛みが感じることといい、このデュエルはいくらなんでも腑に落ちないことが多すぎる。それがその言葉の説得力を大きく増していた。

 

「ねえ、今の言葉どういうことかしら? この身体の元の持ち主って―――」

―――駄目だ、振り返るな! 遊希!!

 

 真実を確かめるべく振り返る遊希。次の瞬間、彼女は言葉を失った。光子竜は遊希に咄嗟に声をかけるが遅かった。

 

 

 

 

 

「えっ……なんで……どうして……」

 

 

 

 

 

 身体も心も限界を越えている。それでもなお気丈に振る舞っていた遊希であったが、この瞬間遊希の両方の目からは大粒の涙が堰を切ったかのように流れ出してきた。

 

 

 

 

 

 

「どうして?……どうして……どうして私はあんたとデュエルをしているの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、答えてよ。千春」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 倒れた不審者が立ち上がった時、勢いをつけて立ち上がったために被っていたフードが取れていたのである。そして、そのフードの下から現れたのは間違いなく今朝共に予選を勝ち抜くことを誓ったはずの親友の顔であった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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