銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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神を制する神

 

 

 

 

 遊希とエヴァ、そして髑髏の仮面の三人は深夜のデュエル場へと移動した。デュエルでの勝負を受け入れた相手であるが、つい先ほどまで遊希の命を奪おうとしていた者である。デュエルの前に襲ってくる可能性もあったため、遊希とエヴァは移動中も後ろに目配せしながら警戒していたが、髑髏の仮面は何もしてこなかった。

 闇討ちという手段を取っておきながら、ゴムのナイフを用い、最終的にデュエルに応じたこともあって髑髏の仮面もデュエルで遊希を倒したかったのだろう。千春と違って仮面をつけているため、誰が操られているのかはまだわからないが、操られてもなおデュエリストとしての誇りは残っているのかもしれなかった。

 

「さて、ここでいいでしょう」

「アア」

 

 デュエル場は夜だけあってさすがに暗かったが、常夜灯がついており、また差し込む月明りによってデュエルをするには十分な明るさだった。それでもデュエルの相手は黒のローブに髑髏の仮面とだけあってまるで幽霊や死神とデュエルしているようで普通にデュエルをする以上に妙な恐ろしさがあった。

 

(……なんか不気味)

―――お前は昔からホラーは苦手だったな。恐れるなよ?

(それとこれとは話は別よ!)

「天宮 遊希、貴様ハ我ガ手デ仕留メル」

「悪いけどそう簡単に仕留められるわけには行かないわ。倒れた仲間のためにもあんたたちの黒幕を引きずり出してやるんだから」

 

 デュエルディスクによって先攻後攻の決定権は遊希に与えられる。近年このゲームは基本的に先攻有利となっていたが、遊希は後攻を選んだ。敢えて後攻を選ぶことで相手がどのようなカードを使ってくるか。それを確かめたいという思惑もあったのだ。

 

「自ラ後攻ヲ選ブ、カ。ソノ選択ニ後悔スルコトニナラナイトイイナ」

「そちらこそ。後攻ワンキルを食らった時の言い訳にしないでよね」

 

 やたら饒舌な髑髏の仮面であるが、遊希も負けてはいない。一見無意味なやり取りに見えるが、こうしたやり取りを行える、ということに一抹の希望を感じていた。会話ができるということはコミュニケーションが取れる。コミュニケーションが取れるということは話が通じるということ。

 もちろん相手は遊希を狙ってきている相手であり、恐らくではあるが正気ではなく黒幕に操られてしまっている。それならばデュエルを通してその洗脳から解き放つことができるのではないか。可能性は限りなく低いが、無駄な血を流さずに終えられるのであれば、それに越したことはないのだ。

 

(……千春)

 

 遊希は病床の千春から告げられたある言葉を胸に戦いに臨んだ。

 

「「デュエル!!」」

 

 

先攻:髑髏

後攻:遊希

 

 

髑髏 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

遊希 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

 

 

☆TURN01(髑髏)

 

「私ノ先攻ダ。私ノフィールドニモンスターガ存在シナイ場合。コノカードハ手札カラ特殊召喚デキル。現レヨ《SRベイゴマックス》」

 

《SRベイゴマックス》

効果モンスター

星3/風属性/機械族/攻1200/守600

「SRベイゴマックス」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「SRベイゴマックス」以外の「スピードロイド」モンスター1体を手札に加える。

 

(ベイゴマックス……相手のデッキは【SR】? でもエクシーズ召喚にもリンク召喚にも使えるモンスターだからこれだけでは相手のデッキはわからないわ)

 

「特殊召喚ニ成功シタベイゴマックスノ効果ヲ発動。デッキヨリ同名カード以外ノSRモンスター1体ヲ手札ニ加エル。私ハ《SRタケトンボーグ》ヲ手札ニ加エル。ソシテ自分フィールドニ風属性モンスターガ存在スル場合、タケトンボーグハ手札ヨリ特殊召喚デキル」

 

《SRタケトンボーグ》

効果モンスター

星3/風属性/機械族/攻600/守1200

自分は「SRタケトンボーグ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):自分フィールドに風属性モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをリリースして発動できる。デッキから「スピードロイド」チューナー1体を特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は風属性モンスターしか特殊召喚できない。

 

「マダダ。私ノフィールドニコノカード以外ノレベル3モンスターガ存在スル場合。チューナーモンスター《サイコウィールダー》ハ手札カラ特殊召喚デキル」

 

《サイコウィールダー》

チューナー・効果モンスター

星3/地属性/サイキック族/攻600/守0

このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「サイコウィールダー」以外のレベル3モンスターが存在する場合、このカードは手札から守備表示で特殊召喚できる。

(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合、このカードをS素材としたSモンスターより低い攻撃力を持つフィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。

 

 髑髏の仮面のフィールドには下級ではあるが、モンスターが3体並ぶ。遊希は召喚権を一度も使わずにこれだけのモンスターを並べられるというのは敵ながら見事と思わざるを得なかった。

 

(これで相手ができるのはレベル6か9のシンクロ召喚、もしくはランク3のエクシーズ、そして水晶機巧-ハリファイバーなどのリンク召喚……やっぱり掴めない)

―――次の一手を待つしかないな。これで終わりではないはずだ。

「ソシテ私ハ……永続魔法《冥界の宝札》ヲ発動」

 

《冥界の宝札》

永続魔法

(1):自分がモンスター2体以上をリリースしたアドバンス召喚に成功した場合に発動する。自分はデッキから2枚ドローする。

 

「冥界の宝札!?」

―――まさか、アドバンス召喚軸とはな……

「冥界の宝札ハ自分ガモンスター2体以上ヲリリースシテアドバンス召喚ニ成功シタ場合ニ、デッキカラカードヲ2枚ドロースルコトガデキルカード。貴様ハ運ガイイナ、天宮 遊希ヨ」

「……どういう意味?」

「ドウイウ意味モ何モ……私ガ従エル―――【邪神】ノ姿ヲスグニ拝メルノダカラナ! 私ハベイゴマックス、タケトンボーグ、サイコウィールダーノ3体ヲリリース!!」

 

 3体のモンスターが闇へと消えていき、強い力の生贄となる。そして現れたのは銅のような色をした身体を持った竜のような、蛇のようなモンスターであった。

 

「このモンスターは……!?」

―――三幻魔に匹敵する力を感じる……

 

 

 

 

 

―――“神ヲ制スルタメニ産ミ落トサレシ第一ノ邪神ヨ。全テノ命ヲ奪イ取レ。全テノ生キトシ生ケルモノニ死ノ宣告ヲ!”―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――降臨セヨ!《邪神イレイザー》!!―――

 

 

 

 

 

 

《邪神イレイザー》

効果モンスター

星10/闇属性/悪魔族/攻?/守?

このカードは特殊召喚できない。自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。

(1):このカードの攻撃力・守備力は、相手フィールドのカードの数×1000になる。

(2):自分メインフェイズに発動できる。このカードを破壊する。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動する。フィールドのカードを全て破壊する。

 

 

 

 

「邪神イレイザー……まさか、現存していたなんて」

―――邪神……あれからの幻魔同様邪な力を感じる。気を付けろ、遊希!

 

 遊希が千春が使用した【三幻魔】同様、失われた過去のカードという点で【三邪神】というカードについても授業で学んでいた。三体の邪神は、強すぎる力を持った【三幻神】を抑制するためにデュエルモンスターズの創始者であるペガサス・J・クロフォードが作り出した3枚のカードであるが、神を抑えるための邪神が強い力を持ち過ぎたということで往年のデュエルキングであった武藤 遊戯や海馬コーポレーションの2代目社長である海馬 瀬人によって破棄されたと聞いていた。

 

「モンスターヲ2体以上リリースシテアドバンス召喚ニ成功シタコトデ、冥界の宝札ガ発動。2枚ドロースル。邪神イレイザーノ攻撃力・守備力ハ相手フィールドノカードノ数×1000トナル。ヨッテ今ノイレイザーノ攻守ハ0ダ」

 

邪神イレイザー ATK0/DEF0

 

 邪神イレイザーは特殊召喚できず、モンスター3体をリリースしなければ召喚することができないなどまさに神にふさわしい召喚条件の重さを持っている。しかし、攻撃力は相手である遊希に依存しているため、その抜け道は多い。

 

(モンスター1体だけを出せばイレイザーの攻撃力は1000。下級モンスターの一撃で倒せる。モンスター1体だけならイレイザーの全体破壊効果も少ないリスクで回避することができるはず)

「私はカードを1枚セット。ターンエンドだ」

 

 

髑髏 LP8000 手札2枚

デッキ:32 メインモンスターゾーン:1(邪神イレイザー)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):2(冥界の宝札)フィールド:0 墓地:3 除外:0 EXデッキ:15(0)

遊希 LP8000 手札5枚

デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)

 

髑髏

 □□冥伏□

 □□イ□□□

  □ □

□□□□□□

 □□□□□

遊希

 

○凡例

イ・・・邪神イレイザー

冥・・・冥界の宝札

 

 

☆TURN02(遊希)

 

(邪神と言えどモンスターに過ぎない。モンスターなら倒すことができる……だったらイレイザーの攻撃力を上げられる前に倒すだけ!)

「私のターン、ドローよ!」

「デハコノスタンバイフェイズニリバースカードヲ発動サセテモラウ。罠カード《おジャマトリオ》ダ」

 

《おジャマトリオ》

通常罠

(1):相手フィールドに「おジャマトークン」(獣族・光・星2・攻0/守1000)3体を守備表示で特殊召喚する。このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできない。

「おジャマトークン」が破壊された時にそのコントローラーは1体につき300ダメージを受ける。

 

「おジャマトリオですって!?」

「相手フィールドニおジャマトークン3体ヲ守備表示デ特殊召喚。コノトークンハアドバンス召喚ノタメニリリースデキズ、コノトークンガ破壊サレタ時、ソノコントローラーハトークン1体ニツキ、300ノダメージヲ受ケル」

 

 遊希のフィールドにはおジャマモンスターである《おジャマイエロー》《おじゃまブラック》《おジャマグリーン》の3体を模したトークンが現れる。お世辞にも綺麗な見た目をしたモンスターではない3体がニヤニヤと遊希の方を見つめている様は気色が悪くてたまらない。

 

(しまった、これではフォトン・スラッシャーが……)

「相手フィールドニハトークントハイエカードガ3枚増エタ。ヨッテイレイザーハ攻撃力・守備力ハ3000トナル」

 

邪神イレイザー ATK3000/DEF3000

 

 かつて海馬 瀬人はこの邪神イレイザーのことを「人頼みの神」「紛い物」と称していたという。後世の今でもその口の悪さが伝わる人間の言葉ではあるが、確かに邪神イレイザーの効果は相手依存ということは否めない。

 しかし、おジャマトリオのように相手フィールドに強制的にモンスターを増やすカードとコンボされれば話は別だ。そしてこのおジャマトークンはアドバンス召喚のリリースに使えないため、遊希は光子竜のような最上級モンスターを召喚することもできないのだ。

 

(どれだけ不甲斐なくても邪神は邪神ということかしら)

―――遊希、どうする?

(どうするも何も、邪神であれ打ち倒す以外他にないわ)

「私は手札の銀河眼の光子竜をコストにトレード・インを発動。デッキからカードを2枚ドローする」

 

 トレード・インでドローしたカードを見た遊希は一瞬ではあるが、渋い顔を浮かべる。髑髏はその一瞬を見逃さなかった。

 

「ドウヤラ逆転ノカードハ引ケナカッタヨウダナ。邪神ノ力ニ屈スルトイイ、天宮 遊希」

「……誰が屈するですって?」

「何……?」

「イレイザーとおジャマトリオのコンボは確かに強力で理にかなっているわ。でも、相手のデッキも把握した上でカードを選ぶべきだったわね。私は光属性のおジャマトークン2体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! 現れなさい、リンク2! ハイパースター!!」

 

 そう、おジャマトークンの属性は光。そのため光属性のモンスター2体を素材に要求するハイパースターの召喚条件を満たすのだ。ハイパースターはフィールドに存在する限り、光属性モンスターの攻撃力・守備力を500アップさせ、闇属性モンスターの攻撃力・守備力を400ダウンさせる。邪神イレイザーは闇属性であり、遊希のフィールドのカードはトークン含めて2枚。よって邪神イレイザーの攻撃力は2000となる。

 

邪神イレイザー ATK2000/DEF2000

 

「邪神イレイザーの攻守が変化した後、ハイパースターの効果が適用される」

 

ハイパースター ATK1900

 

おジャマトークン ATK500/DEF1500

 

邪神イレイザー ATK2000/DEF2000→ATK1600/DEF1600

 

「イレイザーノ攻撃力ガハイパースターヲ下回ッタカ……」

「バトル! ハイパースターで邪神イレイザーを攻撃!“ハイパー・スターライト”!」

 

ハイパースター ATK1900 VS 邪神イレイザー ATK1600

 

髑髏 LP8000→LP7700

 

「グッ……ダガ、邪神イレイザーハ一人デハ死ナナイ。死ナバ諸共。全テノカードヲ道連レニスル!!」

 

 煌びやかな星の光によって、邪神の身体が砕け散る。しかし、砕け散ったイレイザーの身体からは真っ黒なヘドロのような液体が流れ出し、遊希のフィールドのハイパースターとおジャマトークン、そして髑髏のフィールドの冥界の宝札をも飲み込んで消えていった。

 

「ソシテ破壊サレタおジャマトークンノ数×300ノダメージヲ受ケテモラウ!」

 

遊希 LP8000→LP7700

 

「っ!!」

―――遊希!

「……300くらい、どうってことないわ」

 

 千春の時と同じように、やはりこのデュエルでもダメージが現実のものとなっていた。しかし、千春とのデュエルでそれを体験した遊希はそのダメージが来ることを予測していたため、前ほどのショックは受けていないようだった。何事においても情報というものの大事さを改めて思い知らされる。

 

「破壊されて墓地に送られたハイパースターの効果を発動するわ! 墓地の光属性モンスター、銀河眼の光子竜を手札に戻す。これでバトルフェイズは終了。メインフェイズ2に移るわ」

 

 イレイザー=抹殺者の名が表す通り、フィールドのカードを全て破壊し尽くして邪神は消える。だが、フィールドからモンスターがいなくなったことで遊希は更に反撃の舞台を整えることができるようになっていた。

 

「私のフィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる! 現れなさい、フォトン・スラッシャー! そして手札の光属性モンスター1体を墓地に送り、銀河戦士の効果を発動! 光子竜を墓地に送り、銀河戦士を特殊召喚! 特殊召喚に成功した銀河戦士の効果でデッキから銀河騎士を手札に加える。そして銀河騎士をリリースなしで召喚! 召喚に成功した銀河騎士の効果、自身の攻撃力を1000下げて墓地の光子竜を守備表示で特殊召喚する!」

 

 遊希のフィールドにも一度の召喚権で4体のモンスターが揃う。千春とのデュエルは遊希にとっては決して楽しいものではなかったが、そのデュエルを乗り越えたことで彼女の決意はまさに刃のように鋭く研ぎ澄まされていた。

 

「私はフォトン・スラッシャーと銀河戦士をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! 銀河眼の煌星竜をリンク召喚! リンク召喚に成功した煌星竜の効果で墓地の銀河戦士を手札に戻す。そして銀河眼の光子竜と銀河騎士でオーバーレイ! No.90 銀河眼の光子卿を守備表示でエクシーズ召喚! カードを1枚セットし、これでターンエンドよ」

 

 

髑髏 LP7700 手札2枚

デッキ:32 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:6 除外:0 EXデッキ:15(0)

遊希 LP7700 手札4枚

デッキ:31 メインモンスターゾーン:1(No.90 銀河眼の光子卿 ORU:2)EXゾーン:1(銀河眼の煌星竜)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:3 除外:0 EXデッキ:12(0)

 

髑髏

 □□□□□

 □□□□□□

  煌 □

□卿□□□□

 □□伏□□

遊希

 

 

 

 

 

 

 

 

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