☆TURN03(髑髏)
「私ノターン、ドロー。私ハ手札カラ魔法カード《強欲で金満な壺》ヲ発動」
《強欲で金満な壺》
通常魔法
(1):自分メインフェイズ1開始時に、自分のEXデッキの裏側表示のカード3枚または6枚をランダムに裏側表示で除外して発動できる。除外したカード3枚につき1枚、自分はデッキからドローする。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はカードの効果でドローできない。
「EXデッキノカード6枚ヲランダムデゲームカラ除外シ、デッキカラカードヲ2枚ドロースル」
(EXデッキのカードを……と思ったけど邪神を軸にしたアドバンス召喚軸ならEXデッキのカードはほとんど使わないか)
「その効果にチェーンして光子卿の効果を発動するわ!」
チェーン2(遊希):No.90 銀河眼の光子卿
チェーン1(髑髏):強欲で金満な壺
「チェーン2の光子卿の効果で私はデッキから2体目の銀河眼の光子竜を手札に加えるわ」
「チェーン1の強欲で金満な壺で2枚ドロースル。ソシテ相手フィールドノモンスター1体……銀河眼の光子卿ヲリリース。《海亀壊獣ガメシエル》ヲ相手フィールドニ特殊召喚」
《海亀壊獣ガメシエル》
効果モンスター
星8/水属性/水族/攻2200/守3000
(1):このカードは相手フィールドのモンスター1体をリリースし、手札から相手フィールドに攻撃表示で特殊召喚できる。
(2):相手フィールドに「壊獣」モンスターが存在する場合、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚できる。
(3):「壊獣」モンスターは自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
(4):相手が「海亀壊獣ガメシエル」以外の魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、自分・相手フィールドの壊獣カウンターを2つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし除外する。
「壊獣……」
―――如何に強力な耐性を持っていたとしても、リリースされてしまうと元も子もないな。
光子卿のサーチ効果を予め発動できただけまだ救いがあったと言うべきか。ただ相手のデッキに壊獣が投入されているということは、例え強力なモンスターを出しても即リリースで対処されてしまうということになる。EXデッキのモンスターも駆使する遊希にとってはなるべく敵に回したくないデッキであった。
「ソシテ相手フィールドニ壊獣ガ存在スル場合、《怒炎壊獣ドゴラン》ハ特殊召喚デキル」
《怒炎壊獣ドゴラン》
効果モンスター
星8/炎属性/恐竜族/攻3000/守1200
(1):このカードは相手フィールドのモンスター1体をリリースし、手札から相手フィールドに攻撃表示で特殊召喚できる。
(2):相手フィールドに「壊獣」モンスターが存在する場合、このカードは手札から攻撃表示で特殊召喚できる。
(3):「壊獣」モンスターは自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。
(4):1ターンに1度、自分・相手フィールドの壊獣カウンターを3つ取り除いて発動できる。相手フィールドのモンスターを全て破壊する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
「メインフェイズ1ヲ終了。バトルフェイズニ移行スル」
(邪神を出さないでバトルフェイズ?)
「ドゴランデ銀河眼の煌星竜ヲ攻撃」
怒炎壊獣ドゴラン ATK3000 VS 銀河眼の煌星竜 ATK2000
遊希 LP7700→LP6700
「っ……! 邪神じゃなくてもダメージは少なからず発生するのね」
「バトルフェイズヲ終了。メインフェイズ2ニ移行スル。私ハ天帝従騎イデアヲ召喚。イデアノ効果デデッキカラ冥帝従騎エイドスヲ特殊召喚。特殊召喚ニ成功シタエイドスノ効果デ通常召喚ニ加エテ一度ダケアドバンス召喚デキル」
(メインフェイズ2に展開……そうか、煌星竜の効果を警戒して)
遊希が光子卿の効果で2体目の光子竜を手札に加えたのも、煌星竜の効果を発動するためだ。煌星竜は相手ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を破壊することができるのだが、その効果の発動コストはフォトンおよびギャラクシーモンスター2体と重いが、銀河眼の光子竜をコストにすれば1体で賄える。もし相手が強力なモンスターを出してきた場合は、煌星竜の効果でそのモンスターを未然に処理するつもりであった。仮に相手がメインフェイズ1にイデアを召喚していれば、イデアの効果にチェーンして煌星竜の効果を発動し、イデアを破壊することで3体のリリースが必要な邪神のアドバンス召喚を阻害することができていた。
(邪神に操られているにも関わらず、邪神を確実に降臨させるための的確なプレイングができている……相手は相当のデュエリストなのかもしれないわね)
―――感心したくなる気持ちはわかるが、来るぞ!
「フフフ……私ハドゴラン、イデア、エイドスヲリリース」
3体のモンスターの魂が邪神の生贄に捧げられる。地中に現れた黒い渦からは人型の巨大なモンスターが現れる。そのモンスターが現れると同時に、立っていることすら辛くなるような重圧が遊希に襲い掛かった。遊希はここで膝を屈してはならない、と自分の意志を強く持とうとするが、手足の震えを抑えることができなかった。
(何……これ……)
―――“神ヲ制スルタメニ産ミ落トサレシ第二ノ邪神ヨ。全テヲ恐怖デ包ミ込メ。全テノ生キトシ生ケルモノニ永久ノ恐怖ヲ!”―――
―――降臨セヨ!《邪神ドレッド・ルート》!!―――
《邪神ドレッド・ルート》
効果モンスター
星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
このカードは特殊召喚できない。自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外のフィールドのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。
「邪神ドレッド・ルートハ恐怖ノ象徴。コノモンスターガ存在スル限リ、ドレッド・ルート以外ノモンスターノ攻撃力・守備力ハ半分ニナル!」
「なんですって!?」
海亀壊獣ガメシエル ATK2200/DEF3000→ATK1100/DEF1500
「ドレッド・ルートの攻撃力4000を超えるには……攻撃力8000を超える必要がある、ということなの?」
「ソウダ。モットモ……効果デ破壊スレバイイノダガナ私ハコレデターンエンドダ」
髑髏 LP7700 手札0枚
デッキ:27 メインモンスターゾーン:1(邪神ドレッド・ルート)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:10 除外:6 EXデッキ:9(0)
遊希 LP6700 手札5枚
デッキ:30 メインモンスターゾーン:1(海亀壊獣ガメシエル)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:7 除外:0 EXデッキ:12(0)
髑髏
□□□□□
□□ド□□□
□ □
□□□海□□
□□伏□□
遊希
○凡例
ド・・・邪神ドレッド・ルート
海・・・海亀壊獣ガメシエル
☆TURN04(遊希)
「私のターン、ドロー!」
デッキからカードをドローする手の震えが止まらない。同じ邪神にも格差が存在するのか、イレイザーの時に感じていたものとドレッド・ルートのそれは明らかに違いがあった。恐怖の象徴、と髑髏が言ったように、対峙するだけで鳥肌が発生し、身体の震えが止まらない。思えば遊希の過去にはトラウマとなって今もなお彼女に影響を及ぼしている出来事は少なくない。
(ドレッド・ルートと対峙しているだけで、頭の中に嫌なことしか浮かばない……怖い、怖い)
―――遊希。恐れているのか?
(……こんな時に強がりを言ってもなんにもならないから正直に言うわね。うん、私はあいつを恐れている。怖いし、出来るならば逃げ出したいくらい)
―――そうか。ならば大丈夫だな。
光子竜の言った言葉に遊希は思わずえっ、と言葉を漏らす。
(何が大丈夫なのよ)
―――人に限らず、知能のある生き物は恐怖心を素直に受け入れることを拒む。だが、本当に大事なのは恐れていることを自分で認識することだ。恐れている自分を素直に受け入れる。それが恐怖に打ち克つために必要な第一歩となるのだ。
(……論法が無理矢理過ぎないかしら)
―――無理矢理でもいい。お前を恐怖から解き放てるのであれば、私は適当な嘘だってついてやる。
改めて自分の中に宿るデュエルモンスターズの精霊がわからなくなった遊希。合理的な考えをするのかと思えば普通の人間でもしないような適当さでこちらを惑わせてくる。しかし、この局面ではその適当さが助けになった。
「……ドレッド・ルートを正攻法で攻略するのは難しい。だからと言ってそう都合よく効果で破壊できるカードを引きこむことはできない。あんた、それをわかっていて効果で破壊すればいい、とか言ったのね」
「ダッタラドウダトイウノダ?」
「どうということもないわ。私は……目の前のそいつを倒すだけ。私は手札の銀河剣聖の効果を発動! 手札のフォトンモンスターである銀河眼の光子竜を相手に見せることで、このカードを特殊召喚する! そして剣聖の攻撃力は墓地のギャラクシーモンスター1体と同じになる。対象はもちろん銀河眼の光子竜よ!」
銀河剣聖 ATK3000
「ダガ、ソノ効果ノ後ニドレッド・ルートノ効果ガ適用サレル!」
銀河剣聖 ATK3000→ATK1500
「構わないわ。どっちにしてもドレッド・ルートを上回れないもの。私は手札の銀河戦士の効果を発動! 銀河眼の光子竜を墓地に送り、このカードを特殊召喚する!」
銀河戦士 ATK2000→ATK1000
「そして特殊召喚に成功した銀河戦士の効果でデッキから銀河の修道師を手札に加え、このカードを召喚!」
銀河の修道師 ATK1500/DEF600→ATK750/DEF300
「召喚に成功した修道師の効果を発動! 墓地の光子竜、煌星竜、光子卿、銀河騎士、フォトン・スラッシャーの5枚をデッキに戻しシャッフル。そして2枚ドロー! 自分フィールドにフォトンまたはギャラクシーモンスターが存在する時、フォトン・バニッシャーを手札から特殊召喚するわ!」
フォトン・バニッシャー ATK2000→ATK1000
「特殊召喚に成功したバニッシャーの効果で私はデッキから銀河眼の光子竜を手札に加える」
「随分トデッキヲ回スモノダナ。フィールドヲ全テ埋メタトコロデドレッド・ルートヲ倒スコトナド不可能デアルノニ……」
「本当に不可能かしらね?」
「何?」
「私は銀河戦士とフォトン・バニッシャーをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! 銀河眼の煌星竜をリンク召喚!」
銀河眼の煌星竜 ATK2000→ATK1000
「リンク召喚に成功した煌星竜の効果で墓地の銀河戦士を手札に加える。そして手札から魔法カード、銀河遠征を発動! デッキから銀河眼の光子竜を守備表示で特殊召喚!」
銀河眼の光子竜 ATK3000/DEF2500→ATK1500/DEF1250
「そして銀河剣聖とガメシエルでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 再び現れなさい、No.90 銀河眼の光子卿!!」
No.90 銀河眼の光子卿 ORU:2 ATK2500/DEF3000→ATK1250/DEF1500
「そして光子卿でオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築! エクシーズ・チェンジ! ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン!!」
ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ORU:3 ATK4000/DEF3000→ATK2000/DEF1500
「ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン……ヨモヤ本当ニ除去効果持チノカードヲ出シテ来ルトハ」
「X素材を1つ取り除き、FA・フォトン・ドラゴンの効果を発動! 相手フィールドの表側表示のカード1枚を破壊する! 消えなさい、恐怖! ドレッド・ルートを切り裂け!!」
FA・フォトンの放った斬撃が、巨大な邪神の身体を両断する。断末魔の叫びと共に邪神は消え、フィールドを覆っていた恐怖の波動、そして遊希の身体に圧し掛かっていた圧倒的なプレッシャーも消える。
ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ATK2000/DEF1500→ATK4000/DEF3000
銀河眼の光子竜 ATK1500/DEF1250→ATK3000/DEF2500
銀河眼の煌星竜 ATK1000→ATK2000
銀河の修道師 ATK750/DEF300→ATK1500/DEF600
「これで邪魔者は消えた。バトルフェイズに移るわ! 銀河の修道師でダイレクトアタック!」
銀河の修道師 ATK1500
髑髏 LP7700→LP6200
「続けて煌星竜でもダイレクトアタック!」
銀河眼の煌星竜 ATK2000
髑髏 LP6200→LP4200
「グッ……!!」
「一気に追い込む! FA・フォトン・ドラゴンでダイレクトアタック!“壊滅のフォトン・ストリーム”!」
ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ATK4000
髑髏 LP4200→LP200
「グアアアッ!!―――」
FA・フォトン・ドラゴンらモンスター3体の攻撃をもろに受ける形となった髑髏は後方に大きく吹き飛び、地面に顔面から叩きつけられる。総攻撃力7500のモンスターからのダイレクトアタックはかなりの衝撃のようであり、それは遊希を襲おうとした髑髏からしてみても同じようだった。
身体を震わせながら立ち上がった髑髏であるが、叩きつけられた衝撃でその仮面の下半分が砕け、鼻から下が見えるようになっていた。輪郭から察するに髑髏もまた千春同様遊希と同年代の少女のものと推測できる。
千春もそうだったが、自分と同年代かつ女性のデュエリストを操り人形として自分に差し向けてくる辺りに遊希は一連の事件の黒幕の底知れぬ性の悪さを感じた。この相手もまた黒幕の被害者。同情すべきところはあるが、今は相手を倒すことだけを考えなければならない。
「まだデュエルは終わっていないわ。立ち上がって、あんたにはこのデュエルの後で聞きたい事が山ほどあるんだから」
遊希はこのデュエルに勝ち、一連の事件の黒幕の正体、そして鈴と皐月がどこへ行ってしまったのか聞き出さなくてはならない。少なくともここで情報を得るために負けてなどいられないのだ。しかし、聞きたいことの一つはすぐにわかった。いや、わかってしまった。
―――遊……希……さん。
髑髏から遊希の名前を呼ぶ声がした。髑髏のエコーが掛かっていない素の声を聴いた瞬間、遊希は背中に冷たいものを感じた。千春の時と同じように、その声はやはり聞き覚えのあるものだったからだ。
―――遊希……
(……なんで、なんでこんな時に限ってあんたの言うことが当たるのよ、千春)
*
話は今日の昼間に遡る。遊希が見舞っている最中に目を覚ました千春は遊希の手を持てる力を振り絞って握りながら、とある言葉を遊希に伝えた。
「千春っ……千春っ……!」
「遊……希……お願い……」
「何? どうしたの? 何でも言って?」
―――鈴と皐月を―――助けて―――
*
最初は千春のその言葉の意味を正確に理解することが出来なかった遊希。しかし、今こうして髑髏の仮面と対峙してその真意を知った。一度ひびが入った仮面の崩落は止まらず、やがて粉々に砕け散って髑髏の仮面の素顔が明らかになった。覚悟はしていた。しかし、心の何処かでそんな小説のような展開はまさか起こるまいと思っていた。それでも遊希はやはりショックを隠せなかった。
「遊希……さ……ん―――」
「そんな……あなたも、あなたもなの?―――ねえ、答えてよ。皐月」