銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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変貌の邪神

 

 

 

 

「彼女は、日向 千春と共に遊希の親友である織原 皐月……まさか彼女まで」

 

 遊希からは事前に「私が倒れされるまで介入しないで」と念を押されていたエヴァは後方で遊希と髑髏のデュエルを声すらも出さずに見守っていた。幻魔同様に失われていたと思われていた邪神のカードを使いこなす相手を持ち前のタクティクスで圧倒していた遊希に、彼女は改めてかつて自分が憧れに憧れたデュエリストの姿を見ていた。

 だが、前回遊希とデュエルをしたのが操られていた彼女の親友・千春であったのと同じように、またしても親友とこのような形で相見えなければならない、という運命の悪戯に、彼女は天を仰いだ。

 

(……もし、神というものがこの世にいるのであれば。なんと悪趣味なのだろうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊希……さ……ん―――」

「そんな……あなたも、あなたもなの?―――ねえ、答えてよ。皐月」

 

 遊希がこれまでデュエルをしていた相手―――それは紛れもなく皐月であった。遊希は千春に続いて皐月とも心身を削り合うデュエルをしていたこととなる。

 千春の告げた言葉の真意。それは自分と同じように捕らわれ、洗脳されてしまったため図らずもこのようなデュエルをさせられている皐月を助けてほしい、ということだったのだ。ただ遊希は皐月に再会できたことについては喜んでいたが、このようなシチュエーションでの再会など当然望んでいなかった。

 

「ごめんな……さい……私は……私は―――あっ、あああアアッ!!」

 

 涙を流しながら何かを訴えようとした皐月であるが、突如叫びながら頭を抑えて蹲ってしまった。三邪神のうち2体を破られたことで、洗脳が解けかけていたのだろう。それでも洗脳をかけたと思われる者の力か、それとも皐月を操っている三邪神の力か、何者かによって再度洗脳が施されそうとしていた。

 

「皐月!? 負けないで、皐月!」

「アアアアッ……天宮 遊希ィィ!! 貴様ヲ倒スッ!!」

「っ!」

 

 自分の中に巣食う敵と戦っていた皐月であったが、そんな彼女の意志はまたしても悪しき力に屈してしまった。いつもとは180度違う鬼気迫る表情の皐月に思わず遊希はたじろぐ。皐月はあまり積極的な性格ではないが、その根底には正しく清い心がある。その心が逆に彼女を強い洗脳状態へとさせてしまっていたのかもしれない。

 

「……メインフェイズ2に移行」

(千春の言葉は正しかった。でも本当に皐月だと思わなかった……)

―――だからと言って、手心を加えるなどと思ってはいけないぞ。

(光子竜?)

―――もしお前が千春から聞いたことを信じ、相手が皐月だと確信していたならば。このデュエルで傷つけることを恐れてはいけない。ここで邪神から彼女を解放するんだ。そうすれば、千春と同じように皐月を取り戻すことができる。

(……うん。そうだね。そうだけど……)

 

「私は守備表示のFA・フォトンでオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築! エクシーズチェンジ! No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン! エクシーズ召喚に成功したダークマターの効果を発動! デッキからドラゴン族3種類を墓地に送り、相手はデッキからモンスターを3体を除外する。私はデッキから巨神竜フェルグラント、アークブレイブドラゴン、嵐征竜-テンペストをゲームから除外するわ」

「……私ハデッキカラ《魔界発現世行きデスガイド》《スケープ・ゴースト》、灰流うららノ3枚ヲ除外スル」

「私はカードを2枚セット。ターンエンドよ」

 

 

皐月 LP700 手札1枚

デッキ:23 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):0 フィールド:0 墓地:12 除外:10 EXデッキ:9(0)

遊希 LP6700 手札3枚

デッキ:24 メインモンスターゾーン:1(No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン ORU:3)EXゾーン:1(ヴァレルソード・ドラゴン)魔法・罠(Pゾーン:青/赤):3 フィールド:0 墓地:11 除外:0 EXデッキ:9(0)

 

 

皐月

 □□□□□

 □□□□□□

  ヴ □

□□ダ□□□

 □伏伏伏□

遊希

 

 

☆TURN05(皐月)

 

「私ノターン! ドロー!!」

「このスタンバイフェイズに墓地のアークブレイブドラゴンの効果を発動。巨神竜フェルグラントを墓地から特殊召喚する! そして墓地からの特殊召喚に成功したフェルグラントの効果を発動。皐月の墓地から邪神ドレッド・ルートを除外し、そのレベル分攻撃力・守備力をアップする!」

 

巨神竜フェルグラント ATK2800/DEF2800→ATK3800/DEF3800

 

 フェルグラントの力でドレッド・ルートが墓地からも消える。対峙していた遊希の身体が少しだけではあるが、軽くなったような気がした。仮に撃破しても、墓地にいるだけでこの有様なのだから、改めて邪神というカードの力を味あわされる。

 

(除外されたことで邪神の波動が弱まった気がするわ。これなら……)

「……ドウヤラコノデュエルハマダマダ終ワリソウニナイナ」

「なんですって?」

「私ハ手札ヨリ魔法カード、強欲で貪欲な壺を発動! デッキトップヲ10枚除外シ、2枚ドロースル! ソシテ魔法カードヲ発動! 全部壊レテシマエ!《妨げられた壊獣の眠り》!」 

 

《妨げられた壊獣の眠り》

通常魔法(制限カード)

「妨げられた壊獣の眠り」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):フィールドのモンスターを全て破壊する。その後、デッキからカード名が異なる「壊獣」モンスターを自分・相手のフィールドに1体ずつ攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは表示形式を変更できず、攻撃可能な場合は攻撃しなければならない。

(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「壊獣」モンスター1体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

 遊希のフィールドのダークマター、フェルグラント、ヴァレルソードの3体は地中から噴出した水流と溶岩に飲み込まれて消えていく。そして遊希のフィールドには攻撃力2200のガメシエルが、皐月のフィールドには攻撃力3000のドゴランが入れ替わるように現れた。

 

「っ……私のモンスターたちが」

「フィールドノモンスターヲ全テ破壊シ、デッキカラカード名ガ異ナル壊獣モンスターヲ自分・相手ノフィールドニ1体ズツ攻撃表示デ特殊召喚スル。ソシテ墓地ノエイドスノ効果ヲ発動。コノカードをゲームカラ除外シ、墓地ノ攻撃力800・守備力1000ノモンスター1体ヲ守備表示デ特殊召喚スル! 私ハイデアヲ特殊召喚! 特殊召喚ニ成功シタイデアノ効果ヲ発動!」

「イデアの効果にチェーンしてリバースカードを発動! 罠カード、戦線復帰!」

 

チェーン2(遊希):戦線復帰

チェーン1(皐月):天帝従騎イデア

 

「墓地の銀河眼の光子竜を守備表示で特殊召喚する」

「イデアノ効果デデッキカラ2体目ノエイドスヲ特殊召喚スル!」

 

 皐月のフィールドにはドゴランと2体の従騎が揃う。そして彼女はまだ召喚権を残している。妨げられた壊獣の眠りの効果で特殊召喚されたドゴランは攻撃可能な場合は攻撃をしなければならないという制約があるが、攻撃力3000のためそう易々と超えることはできない。だが、イデアとエイドスはアドバンス召喚を補助するために存在するモンスターと言っていい。そんなモンスターをフィールドに出すということは、皐月の狙いは一目瞭然であった。

 

(イデアとエイドスを出したということは……あの手札には)

「サア、最強ノ邪神ノ前ニ滅ビルガイイ! 私ハドゴラン、イデア、エイドスノ3体ヲリリース!!」

(来る……っ!?)

―――気を引き締めろ。やはり大トリとあってか、力が前の2体より強い!!

 

 3体のモンスターを闇に引きずり込んで生まれたモンスター。それは巨大な漆黒の球体状のモンスターだった。その様は例えるならば、漆黒に染まった太陽というべきか。三幻神の中で最も神格の高いラーの翼神竜を元に作られたモンスターがこの邪神であった。

 

 

 

 

 

―――“神ヲ制スルタメニ産ミ落トサレシ第三ノ邪神ヨ。全テヲ暗黒デ包ミ込メ。何人ヲモ触レルコトスラ許サヌ絶対的ナ力ヲ示セ!!”―――

 

 

 

 

 

―――降臨セヨ!《邪神アバター》!!―――

 

 

 

 

 

《邪神アバター》

効果モンスター

星10/闇属性/悪魔族/攻?/守?

このカードは特殊召喚できない。自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。

(1):このカードが召喚に成功した場合に発動する。相手ターンで数えて2ターンの間、相手は魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードの攻撃力・守備力は、「邪神アバター」以外のフィールドの攻撃力が一番高いモンスターの攻撃力+100の数値になる。

 

 

 

 

 

「邪神アバター……存在は知っていたけど、本物の殺気は言葉で言い表せないわね」

「邪神アバターハ特定ノ姿ヲ持タナイ。ソシテソノ力ハフィールドノ攻撃力ガ最モ高イモンスターノ攻撃力ニ100ヲ加エタモノトナル」

 

 球体状の邪神アバターの姿が、光子竜のものへと変化していく。互いのフィールドで最も攻撃力の高いモンスターが攻撃力3000の銀河眼の光子竜であるため、その姿をアバターは写し取るのだ。

 

邪神アバター ATK3100/DEF3100

 

「攻撃力3100……」

「バトルダ。邪神アバターデ攻撃表示ノガメシエルヲ攻撃!“破滅のフォトン・ストリーム”!!」

 

邪神アバター ATK3100 VS 海亀壊獣ガメシエル ATK2200

 

遊希 LP6700→LP5800

 

「きゃあっ!」

 

 受けたダメージは900であり、現状のライフではあまり気にならない数値ではある。しかし、最も強い力を持つ邪神アバターの攻撃で生じる影響は900ダメージのそれではなかった。

 

「チナミニアバターガ召喚ニ成功シテカラ数エテ2ターンノ間、オマエハ魔法・罠カードヲ発動デキナイ。ソノ2枚ノセットカードガナンダカシラナイガ……ハタシテアバターヲ防ゲルカナ? カードヲ1枚セット。ターンエンドダ」

 

 

皐月 LP700 手札0枚

デッキ:11 メインモンスターゾーン:1(邪神アバター)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:12 除外:22 EXデッキ:9(0)

遊希 LP5800 手札3枚

デッキ:24 メインモンスターゾーン:1(銀河眼の光子竜)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):2 フィールド:0 墓地:16 除外:0 EXデッキ:9(0)

 

皐月

 □□□伏□

 □□ア□□□

  □ □

□□□□銀□

 □□伏伏□

遊希

 

○凡例

ア・・・邪神アバター

 

 

☆TURN06(遊希)

 

「私のターン、ドロー!」

 

 フィールドの最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力に100足した数値が攻撃力・守備力に変化するアバターは単純な攻撃力の差を比べ合う戦闘においてはまず負けることがない。しかし、他の邪神同様効果に対する耐性はないため、戦闘以外の方法での撃破は十分に見込めるのだ。

 

(でも、アバターが召喚に成功してから数えて2ターン……私は魔法・罠カードを発動できない。そして壁モンスターを出しても光子竜の攻撃力を加算したアバターを倒すことは……)

「私は、何もせずにターンを終了するわ」

 

 

皐月 LP700 手札0枚

デッキ:11 メインモンスターゾーン:1(邪神アバター)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:12 除外:22 EXデッキ:9(0)

遊希 LP5800 手札4枚

デッキ:23 メインモンスターゾーン:1(銀河眼の光子竜)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):2 フィールド:0 墓地:16 除外:0 EXデッキ:9(0)

 

皐月

 □□□伏□

 □□ア□□□

  □ □

□□□□銀□

 □□伏伏□

遊希

 

 

☆TURN07(皐月)

 

「私ノターン、ドロー。私ハ墓地ノ妨げられた壊獣の眠りノ効果ヲ発動。墓地ノコノカードヲゲームカラ除外シ、デッキカラ壊獣モンスター1体ヲ手札ニ加エル。私ハ3体目ノガメシエルヲ手札ニ加エル。ソシテ銀河眼の光子竜ヲリリースシ、ガメシエルヲ貴様ノフィールドニ特殊召喚!!」

「っ……光子竜まで!!」

「フィールドノ最モ攻撃力ノ高イモンスターガガメシエルニ変化シタコトデ、アバターノ攻撃力モ変化スル」

 

邪神アバター ATK2300/DEF2300

 

「ソシテ私ハEXデッキノ残リノカード全テヲ裏側表示デ枚除外。《百万喰らいのグラットン》ヲ特殊召喚スル!」

 

《百万喰らいのグラットン》

特殊召喚・効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻?/守?

このカードは通常召喚できない。自分の手札・フィールド・エクストラデッキからカード5枚以上を裏側表示で除外した場合のみ特殊召喚できる。

(1):このカードの攻撃力・守備力は、裏側表示で除外されているカードの数×100アップする。

(2):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、リリースできず、融合・S・X召喚の素材にもできない。

(3):1ターンに1度、このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。その相手モンスターを裏側表示で除外する。

 

「私ガ除外シタカードノ数ハ9枚。ヨッテ除外サレテイル私ノカードノ数ハ合計デ32枚。ヨッテグラットンノ攻撃力・守備力ハ3200トナル!」

 

百万喰らいのグラットン ATK3200/DEF3200

 

「更ニアバターノ能力モ変化スル!」

 

邪神アバター ATK3300/DEF3300

 

「攻撃力3300……」

「バトルダ! 百万喰らいのグラットンデガメシエルヲ攻撃!」

 

百万喰らいのグラットン ATK3200 VS 海亀壊獣ガメシエル ATK2200

 

「ダメージステップ時ニグラットンノ―――!!」

(グラットンは戦闘を行う相手モンスターを裏側表示で除外する……)

「効果……ハ……発動しない」

「えっ?」

 

遊希 LP5800→LP4800

 

 ここで遊希は皐月のプレイングに違和感を覚えた。グラットンノ効果デガメシエルを除外すれば、元々皐月のデッキのモンスターであるガメシエルは除外されることで皐月のカードとして除外される。そうすれば更にグラットンの攻撃力がが上昇し、それは同時にアバターの強化にも繋がるはずなのだ。

 

「邪神アバターで……ダイレクトアタック!“ディメンション・グラトニー”!!」

 

邪神アバター ATK3300

 

遊希 LP4800→LP1500

 

「があっ……!!」

 

 グラットンの姿を写し取ったアバターの牙が遊希に直撃する。直接ダメージが発生するデュエルであるため、まるで巨大な猛獣にでも噛まれたかのような激痛が走った。

 

―――遊希!

(……あはは、ちょっと視界が霞んできちゃった)

―――笑いごとではないだろうが!

(うん。わかってるよ。わかってるけどさ……)

「私はバトルフェイズを……終了。ターンエンドだ」

 

 

皐月 LP700 手札0枚

デッキ:10 メインモンスターゾーン:2(邪神アバター、百万喰らいのグラットン)EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):1 フィールド:0 墓地:11 除外:32 EXデッキ:0(0)

遊希 LP1500 手札4枚

デッキ:23 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン:青/赤):2 フィールド:0 墓地:17 除外:0 EXデッキ:9(0)

 

皐月

 □□□伏□

 □□ア百□□

  □ □

□□□□□□

 □□伏伏□

遊希

 

○凡例

百・・・百万喰らいのグラットン

 

 

 

 

 

 

 

 

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