銀河の竜を駆る少女   作:Garbage

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精霊の奇跡

 

 

 

 

 二人が諦めかけたそんな時、彼女たちの脳裏には若い少女の甲高い声が響いた。遊希とエヴァは脳裏に響く怒声に驚いて互いの顔を見合わせる。

 

「遊希? 今何か……」

「エヴァ、今の声が聞こえたの?」

「ああ。しっかりと」

「……! ねえ、目をつぶって精神を研ぎ澄ませてみて」

 

 こんな時に何を、と思いつつエヴァは目を閉じ、無心になろうとする。次の瞬間、エヴァの目の前には灼熱のマグマが溢れかえる世界が広がっていた。

 

(こ、ここは……一体……)

―――……こっちよ、こっちを向いて。 

(誰だ!!)

 

 戸惑うエヴァを呼びかける声。素直に声のした方に振り返ると、そこにはよく見知ったドラゴンの姿があった。傷を負った真紅の身体、折れた片方の角、プロテクターによって分厚く覆われた右腕。紛れもなく自分がずっと会いたいと思い続けていたドラゴンである。

 

(お、お前は……!)

―――まさか、こんな状況になって初めて会えるなんてね。あたしもビックリよ。もっとタイミングやムードってもんを理解してほしいわよね。

(レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト! 私は……やっと精霊と……)

 

 目の前に悠然と立つスカーライトの姿を見たエヴァが嬉しさのあまり感涙しそうになる。今までどうやっても遊希と光子竜のようにコミュニケーションを取ることが敵わなかった存在。その精霊が目の前にいる、ということは自分も遊希と同じように精霊使いになれたということ。しかし、それについてはまだスカーライトは懐疑的な見方を示していた。

 

―――待った。あたしはまだあんたを正式にマスターとして認めたわけじゃないし。

(なっ、私ではダメなのか……?)

 

 スカーライトはエヴァをまだパートナーとして認めてはいない。そんな彼女の言葉に対し、エヴァの両目には涙が浮かぶ。そんなエヴァを見たスカーライトはいやいやいや、とそれを否定する。

 

―――い、いやそうじゃないんだけどさ。今は目の前の現実を直視しようよマジで。

 

 スカーライトの世界の空には精霊の世界においても強大な力を発揮し続けるWiraqocha Rascaの姿が映し出されていた。

 

―――あれ。どう思う?

(ど、どう思うと言われても……)

―――キモくない? なんかでっかくて真っ黒で!

(キ、キモい?)

 

 確かに地縛神の姿は異様そのものであり、決してそれが美しいかと言うとそうは言えない。だが、そんな邪なる神を捕まえて「キモい」とはっきり言ってしまうところにスカーライトの性格や価値観が現れていた。

 

―――あのキモい神をぶっ潰してあのキザ男に根性入れる。あたしたちがパートナーになるのはそ・れ・か・ら!

(そ、そうか……でもどうやってあのモンスターを倒すんだ?)

―――あんたが本当にあたしに相応しいデュエリストなら、次のドローカードでこの状況を覆すことができる! 今から元の世界に戻すから、ドローカードとエクストラデッキの一番上のカード。そのカードであいつぶっ倒してみなさい!

 

 エヴァが目を開いた。そして隣で見守る遊希の顔を見てニッコリと微笑んだ。遊希もエヴァが何を感じたか理解できたようだった。

 

「遊希。デッキトップのカードが……」

 

 眼を閉じる前まで何の変哲もないカードだったエヴァのデッキトップのカードが光り輝いていた。そしてデュエルディスク内のエクストラデッキを収納するスペースからも眩い光が溢れ出している。

 

『何ダ、コノ光ハ……不愉快ダ』

「エヴァ!」

「ああ!」

 

 エヴァは手を伸ばし、遊希と二人でデッキトップのカードを掴む。そして、二人の力でそのカードをデッキから引き抜いた。

 

 

 

 

 

―――私たちの……ターン、ドロー!!―――

 

 

 

 

 

 二人がドローしたカード。それは見たことも聞いたこともないカードであった。

 

「行くぞ、遊希! このカードを召喚してくれ!」

「わかったわ。私は手札からこのモンスターを召喚する!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――チューナーモンスター! 《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遊希とエヴァのフィールドに現れたのは桃色の身体をした小さなドラゴンであった。そのモンスター自体の力は決して強いわけではないが、その内には誰もが知らない未知なる力を秘めていることが感じられた。

 

 

 

《救世竜 セイヴァー・ドラゴン》

チューナー(効果モンスター)

星1/光属性/ドラゴン族/攻0/守0

このカードをシンクロ素材とする場合、「セイヴァー」と名のついたモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

 

 

 

『救世竜……ダト!!』

「「私たちは、レベル8の《レッド・デーモンズ・ドラゴン》としても扱うレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトとレベル1のバトルフェーダーに、レベル1のチューナーモンスター、救世竜 セイヴァー・ドラゴンをチューニング!!」」

 

 翼を広げたセイヴァー・ドラゴンは回転しながら天空に舞い上がり、光を発しながら巨大化する。そしてシンクロ素材となるスカーライトとバトルフェーダーの2体がセイヴァー・ドラゴンの身体に取り込まれていく。セイヴァー・ドラゴンとその命を一つとしたスカーライトの身体はそれまでの悪魔を模したものから四枚の翼にルビーの如く光り輝くものへと変化した。その光はまさに【救世】と名を持つに相応しい輝きであった。

 

 

 

 

 

―――“研磨されし孤高の光、真の覇者として大地を照らす!”光輝け!!―――

 

 

 

 

 

―――シンクロ召喚!!―――

 

 

 

 

 

―――大いなる魂!!《セイヴァー・デモン・ドラゴン》!!―――

 

 

 

 

 

《セイヴァー・デモン・ドラゴン》

シンクロ・効果モンスター

星10/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守3000

「救世竜 セイヴァー・ドラゴン」+「レッド・デーモンズ・ドラゴン」+チューナー以外のモンスター1体

このカードはカードの効果では破壊されない。このカードが攻撃した場合、ダメージ計算後にフィールド上に守備表示で存在するモンスターを全て破壊する。

1ターンに1度、エンドフェイズ時まで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してその効果を無効にし、そのモンスターの攻撃力分このカードの攻撃力をアップできる。

エンドフェイズ時、このカードをエクストラデッキに戻し、自分の墓地の「レッド・デーモンズ・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。

 

 

『《セイヴァー・デモン・ドラゴン》!?……馬鹿ナ、レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライトガ更ニ進化シタダト……!?』

「「セイヴァー・デモン・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、エンドフェイズ時まで相手フィールドに表側表示で存在するモンスター1体を選択し、その効果を無効にする!!」」

『何ダト!?』

「「さらにこの効果で無効化したモンスターの攻撃力分このカードの攻撃力はアップする! 対象は当然Wiraqocha Rasca!大いなる光の前に屈しなさい!“パワー・ゲイン”!!」

 

 セイヴァー・デモン・ドラゴンの吐き出した煌めく炎を浴びたWiraqocha Rascaは真紅の宝珠に封印される形となってしまい、その力を失った。そしてその失った神たる力の分スカーライトの攻撃力が上昇する。

 

地縛神 Wiraqocha Rasca ATK3100→ATK100

 

セイヴァー・デモン・ドラゴン ATK4000→7100

 

『馬鹿ナ。我が神ガ、地縛神ノ力ガ……』

「「バトル! セイヴァー・デモン・ドラゴンで地縛神 Wiraqocha Rascaを攻撃!! 大地に還りなさい! 地に縛られし邪神よ!“アルティメット・パワー・フォース”!!」」

 

 

セイヴァー・デモン・ドラゴン ATK7100 VS 地縛神 Wiraqocha Rasca ATK100

 

 

ジェームズ LP3500→0

 

 

 

―――やった! 最っ高じゃない!……だいぶ遅くなっちゃったけど、これから宜しくね、エヴァ。世界にたった一人の……私のマスター。

 

 

 

 地縛神が破壊されたことにより、ジェームズの身体に憑いていた闇の力が失われる。正気に戻ったジェームズはその場に力なく倒れた。

 

「良かった、これで……ジェー……ムズ……は」

「エヴァ!?」

 

 一方で精霊の正式な所持者となり、かつセイヴァー・デモン・ドラゴンというスカーライトの新たな一面を引き出したエヴァも体力を使い果たして倒れてしまった。倒れたエヴァの介抱をしようとした時、遊希のポケットにしまってあったスマートフォンが振動する。画面には「星乃 鈴」の名前が表示されていた。

 

「うふふっ、凄いデュエルでしたね。私、感動してしまいました」

 

 電話に出ると、相手はやはり先ほどと同じ相手だった。あまりの白々しさに遊希は電話口から思い切り聞こえるように舌打ちをする。

 

「あら、舌打ちとは女性らしくないですね。やめた方がいいですよ?」

「……ねえ、こんなことして満足なの?」

「はい?」

「こんなデュエルを見続けて本当に楽しいのか、って聞いてるのよ」

「……愚問ですね。とても愉しいです。私はデュエルが大好きですから。でも……私が一番好きなのはあなたですよ、天宮 遊希さん。うふふっ」

 

 電話相手はまるで恋人に囁くかのような歯の浮いた言葉を投げかけてくる。それに対してあからさまな嫌悪感を浮かべる遊希。

 

「っ、気持ち悪い……そんなにデュエルが好きならあんた自身が出てきなさい。ぶっ倒して皆の前で惨めに謝罪させてやる」

「それには至りません。私のもとにはまだあと一人……戦力がいますから」

 

 電話相手の言う「最後の戦力」が誰を指すのかは言うまでも無かった。

 

「さすがに連戦でお疲れでしょう? なのでお時間をあげます。3日後の夜21時……一人でアカデミアの屋上デュエル場に来てください。そこであなたの親友が待っていますよ」

「……!!」

「それでは、さようなら。うふふっ」

 

 遊希は通話の切れたスマートフォンを握りしめ、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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