―――ライディングデュエル・アクセラレーション!
その言葉と共に2台のDホイールが爆音を上げて走り出す。それは世界初のライディングデュエルが行われた歴史的瞬間であった。先攻は最初のカーブを先に曲がったデュエリストに与えられる。スタートはほぼ同時であったが、カーブを先に曲がったのは真九郎のDホイールだった。
やはりDホイールの操縦、という点に関しては元プロのレーサーである真九郎に軍配が上がったのである。それでも遊希は真九郎に負けてやるつもりなどない。運転では負けてしまったとしてもこれはレースではない、デュエルなのだから。
真九郎 LP8000 手札5枚 SC(スピードカウンター):0
デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)
遊希 LP8000 手札5枚 SC:0
デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)
真九郎(SC:0)
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遊希(SC:0)
☆TURN01(真九郎)
「先にカーブを曲がったことで、先攻は俺がもらう!」
真九郎 SC:0→1
遊希 SC:0→1
「俺は手札から魔法カード、おろかな埋葬を発動。デッキからモンスター1体を墓地へ送る。俺が墓地へ送るのは……《B・F-毒針のニードル》!」
「【B・F(ビー・フォース)】……」
【B・F(ビー・フォース)】とは風属性・昆虫族で統一されたテーマであり、低レベルモンスター複数体を以て高レベルのSモンスターのS召喚を狙うデッキだ。そしてその名の通り、モチーフとなったのは蜂。名実ともに真九郎にはぴったりのテーマデッキであると言えるだろう。
―――新進気鋭のSテーマが相手か、相手にとって不足はないな。
(……)
―――遊希?
光子竜の言葉に遊希は何も返さない。普段のデュエルならともかく、初めてのライディングデュエルであるため、緊張しているのだろう、と光子竜は思った。最も彼は何故遊希が大人しいのかを後に知ることになる。
「そして俺は手札から《B・F-早撃ちのアルバレスト》を召喚!」
《B・F-早撃ちのアルバレスト》
効果モンスター
星4/風属性/昆虫族/攻1800/守800
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル3以下の昆虫族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
(2):このカードが相手によって破壊された場合に発動できる。手札・デッキから「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。
「召喚に成功した早撃ちのアルバレストの効果を発動! 墓地の毒針のニードルを守備表示で特殊召喚する!」
《B・F-毒針のニードル》
チューナー・効果モンスター
星2/風属性/昆虫族/攻400/守800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「B・F-毒針のニードル」以外の「B・F」モンスター1体を手札に加える。
(2):このカード以外の自分フィールドの昆虫族モンスター1体をリリースし、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。
「特殊召喚に成功した毒針のニードルの効果を発動! デッキからニードル以外のB・Fモンスター1体を手札に加える。手札に加えるのは《B・F-連撃のツインボウ》。そして俺はアルバレストとニードルをリンクマーカーにセット!」
SモンスターはEXゾーンに特殊召喚される。そのため一度S召喚を行うとそのままでは2体目以降のSモンスターをS召喚することができなくなるのだ。となれば真九郎のデッキも当然リンク召喚を頼ることになる。
「召喚条件はチューナーモンスターを含むモンスター2体! リンク召喚! 来い、水晶機巧-ハリファイバー!」
―――やはり来たか、ハリファイバー……
「リンク召喚に成功したハリファイバーの効果を発動! デッキからレベル3以下のチューナーモンスター1体を特殊召喚する。俺は2体目のニードルを特殊召喚! そして連撃のツインボウの効果を発動。このカードを手札から特殊召喚する!」
《B・F-連撃のツインボウ》
効果モンスター
星3/風属性/昆虫族/攻1000/守500
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は昆虫族モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
「ツインボウの特殊召喚効果を使った後、俺は昆虫族モンスターしかEXデッキから特殊召喚できなくなる」
―――ツインボウの効果は発動後。つまり、ツインボウを出す前であれば昆虫族以外のモンスターを出すことができる、というわけか。
(……)
―――遊希、私は無視されることをした覚えはないのだが……
デュエルに集中している、とはいえここまで返答がないことに流石の光子竜も焦りを覚える。遊希と共にある光子竜は彼女の体調の変化もある程度は感じ取ることができる。少なくとも今の時点で遊希の体調におかしなところはない。健康に問題がない、ということは原因は別にある。
「そして手札の《B・F-必中のピン》の効果を発動。自分フィールドに昆虫族モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚する!」
《B・F-必中のピン》
効果モンスター
星1/風属性/昆虫族/攻200/守300
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに昆虫族モンスターが存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
(2):自分メインフェイズに発動できる。自分フィールドの「B・F-必中のピン」の数×200ダメージを相手に与える。
「そして俺はレベル3のツインボウに、レベル2のチューナーモンスター、ニードルをチューニング!“解き放たれしは神秘の一矢。目にする全てを射抜け!”シンクロ召喚! 来い、シンクロチューナー《B・F-霊弓のアズサ》!」
《B・F-霊弓のアズサ》
シンクロ・チューナー・効果モンスター
星5/風属性/昆虫族/攻2200/守1600
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカード以外の「B・F」モンスターの効果で相手がダメージを受けた時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
(2):このカードが墓地に存在する状態で、自分の「B・F」モンスターの戦闘でモンスターが破壊された時に発動できる。このカードを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
「必中のピンの効果を発動。俺のフィールドのピンの数×200のダメージを受けてもらおうか!」
真九郎のフィールドに存在するピンは1体のみ。よって受けるダメージは最小値の200である。わずか200であるが、されど200。この200が響くのがデュエルモンスターズであった。
遊希 LP8000→LP7800
「きゃっ!」
「そしてアズサの効果。このカード以外のB・Fモンスターの効果で相手がダメージを受けた時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けてもらう!」
遊希 LP7800→LP7600
「そしてレベル1のピンに、レベル5のシンクロチューナー、アズサをチューニング!“その槍は何者をも恐れぬ一番槍。己が手で真実への道筋を切り拓け!”シンクロ召喚! 羽ばたけ!《B・F-突撃のヴォウジェ》!」
《B・F-突撃のヴォウジェ》
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/昆虫族/攻2500/守 800
昆虫族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがこのカードの攻撃力以上の攻撃力を持つ相手モンスターに攻撃するダメージ計算時に1度、発動できる。その相手モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ半分になる。
(2):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。自分フィールドの「B・F」モンスターの数×200ダメージを相手に与える。
「俺はカードを1枚セット。これでターンエンド。さあ、伝説のデュエリストの実力、見せてくれ!」
真九郎 LP8000 手札1枚 SC(スピードカウンター):1
デッキ:32 メインモンスターゾーン:1(B・F-突撃のヴォウジェ)EXゾーン:1(水晶機巧-ハリファイバー)魔法・罠(Pゾーン青/赤):1 墓地:7 除外:0 EXデッキ:12(0)
遊希 LP7600 手札5枚 SC:1
デッキ:35 メインモンスターゾーン:0 EXゾーン:0 魔法・罠(Pゾーン青/赤):0 墓地:0 除外:0 EXデッキ:15(0)
真九郎(SC:0)
□伏□□□
□□突□□□
□ 水
□□□□□□
□□□□□
遊希(SC:0)
○凡例
水・・・水晶機巧-ハリファイバー
突・・・B・F-突撃のヴォウジェ
☆TURN02(遊希)
「わ、私のターン! ドローっ!」
遊希 SC:1→2
真九郎 SC:1→2
B・Fの効果で先手を取られたとはいえ、まだまだデュエルが終わるレベルではない。しかし、後攻を迎えた遊希はやはりどこかぎこちなかった。
―――思い出したぞ、遊希。お前そう言えば幼い頃にスズメバチに追いかけ回されたことがあったな。
(!?)
遊希の出身地は蜂に関する話が多い県だった。それはもちろん食用として蜂の子や蜂蜜を産出するという意味でのことなのだが、経験を積んだベテランは働き蜂に紐を括りつけて放し、巣を特定するという離れ業もやってのける者もいた。
―――あの時は大変だったな。逃げても逃げても追いかけ回されて……あわや刺されるところだったぞ。
(……笑いなさいよ。私が蜂を苦手だってこと)
―――笑うか、そんなことで。蜂が苦手な者は多いと思うぞ? 現に刺されて亡くなる者だっている訳だが。
(だからよ。だって、刺されたら痛いじゃない! 死んじゃうかもしれないじゃない! 怖がるなって方が無理よ!!)
幼い頃に植え付けられてしまったトラウマというものは大人になってもそうは解消できるものではない。そのため蜂を模したモンスターである【B・F】のモンスターを見ると遊希の幼少期の恐怖が蘇るのだ。
―――そうだな。ならば、いっそ受け入れてしまえばどうだ?
(受け入れる?)
―――蜂を恐れる自分を卑下するな。蜂、いや虫など女は大抵怖がるものだ。みんなも怖いんだ、そう思ってしまえばいい。第一、あの時のお前は力のない子供だったが、今はどうだ? お前には私がいるし、何より……皆がいる。
まるで父親の如く優しく遊希を悟す光子竜。長年かけて培われた恐怖心はそうは消えるものではない。しかし、光子竜の言葉―――今の遊希には光子竜がいるし、鈴がいて、千春がいて、皐月がいて、エヴァがいる。多くの人が味方になってくれる。孤独ではないのだ。気休めの言葉ではあるが、その気休めが遊希の身体からすーっと力を抜いてくれた。
(……ありがと、光子竜。蜂が怖いのは変わらないけど、だいぶ落ち着けた)
―――いいってことだ。それより、反撃の手立ては?
(もちろん、立っているわ!)
「私のフィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる! 来なさい、フォトン・スラッシャー!」
空間を大剣で切り裂き、フォトン・スラッシャーが現れる。通常召喚できないが、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、という非常に緩い特殊召喚条件を持つフォトン・スラッシャーを初手に引き入れられたのは遊希にとって幸運なことであった。
「そして自分フィールドにフォトン・スラッシャーが存在することで、フォトン・バニッシャーは手札から特殊召喚! 特殊召喚に成功したフォトン・バニッシャーの効果でデッキから銀河眼の光子竜1体を手札に加えます!」
「だったらその効果にチェーンしてハリファイバーの効果を発動する!」
チェーン2(真九郎):水晶機巧-ハリファイバー
チェーン1(遊希):フォトン・バニッシャー
「チェーン2のハリファイバーの効果で俺はEXデッキからレベル2のフォーミュラ・シンクロンをS召喚扱いで特殊召喚する!」
「チェーン1のフォトン・バニッシャーの効果で、デッキから銀河眼の光子竜1体を手札に加えます」
「S召喚に成功したフォーミュラ・シンクロンの効果を発動。デッキからカードを1枚ドロー。早くもエースモンスターをサーチしてきたか……」
「光子竜をコストに魔法カード、トレード・インを発動。デッキから2枚ドローします」
「エースモンスターをコストに!?」
―――飽きるほど繰り返されてきたことだ……寂しいと言えば寂しいがな。
「大丈夫、すぐに戻してあげるから。墓地の光子竜を対象に装備魔法、銀河零式を発動。光子竜を特殊召喚し、このカードを装備します」
銀河零式を装備したモンスターは攻撃も行えなければ効果を発動することもできなくなる。文字通り、装備したモンスターの力がゼロになる。しかし、各種召喚法の素材にすることは可能だ。
「私は銀河の魔導師を通常召喚。そして銀河の魔導師の効果を発動。このカードをリリースし、デッキから「ギャラクシー」カード1枚を手札に加えます。私が手札に加えるのは魔法カード、銀河遠征。そして銀河遠征を発動。デッキからレベル5の銀河戦士を守備表示で特殊召喚します! 特殊召喚に成功した銀河戦士の効果で、私は銀河剣聖を手札に加えます」
「フォトン・スラッシャーを起点にここまで回せるか……さすが伝説のデュエリスト」
「ありがとうございます。ですが、まだ終わりません! 私は銀河眼の光子竜と銀河戦士をリンクマーカーにセット! 召喚条件は攻撃力2000以上のモンスターを含むモンスター2体! サーキットコンバイン! 現れなさい、銀河眼の煌星竜!!」