ハンコックがビッグ・マム   作:エロエロの実

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出会い

 俺の父は武術の達人にしてマリージョアに務める医者。サイファポールの中でも非常に重要な地位にいて、具体的な仕事内容は妻や子どもにも話せないらしい。文武両道で仕事もできる。完璧超人というやつだ。俺は父のようになることが夢だった。父は「俺の真似をするな」「医者などなるものではない」と何故か否定的だったけど。と言っても武術については積極的に教えてくれた。「強い男になれ」「この時代は強くなくては生きていけない」と言って。父の教え方が上手いのもあって、俺は13歳にして地元の町で一番強くなった。

 そんな父も、1年前に仕事で大きな失敗をしてしまったらしい。それからは仕事が増えて一度も家に帰ってきていない。町の武道大会で優勝したことを自慢したいのに。また武術の稽古をつけて欲しいのに。最近はつまらない。俺は強くなり過ぎてしまったんだ。町の子ども相手では戦いにならないし、大人にも簡単に勝てちゃう。友達には俺のトレーニングについて来れるやつさえいないし、組み手とかで手加減するのも面倒だから近頃は1人で修行している。

 海賊が攻めてきたりしないかな。実戦なら少しは楽しめるかも。そんな不謹慎なことも頭をよぎった。それがいけなかったのかもしれない。

 

 庭で修行していると、3人の大きな女の人を見つけた。この町の人間ではない。3人は長身と露出の多い服装からとても目立っている。でかい蛇もいる。それに、その中の1人、めちゃくちゃ背の高い黒髪の女性は飛び抜けた美人で、思わず見とれてしまう程だった。なんというか、威圧感というか、意識が取り込まれるようなオーラもあった。少し父に似た雰囲気。戦ってもすごく強いと思う。父の知り合いかな? 政府の重要な人? 俺はそう思った。父の知り合いなら俺も仲良くなれたりしないかな、とも。

 

 俺は自分から3人に近づいていった。3人は俺に気付き、笑みを作った。ドキっとした。こんな女性に見られるということに。笑みに黒い感情がある気がして、少し怖くもなったけど。

 

「そなた、アンドリューの息子じゃな?」

 

 黒髪のとても大きな美人が言った。獲物を見つけたような笑みをして。その目に引き込まれる。怖い。蛇に睨まれた蛙のような状態なのだろうか。体が動かない。と同時にうれしいとも思う。その目は美しいから。なんなんだこの気持ち。

 

「おい、何か言ったらどうじゃ?」

 

 無視されたと思ったのか、美人は威圧感を増す。俺は慌てて返答しようとしたが、「ひゅっ」と息を飲むことしかできなかった。体が全く動かない。なんだこれ。緊張しているのもある。だけど何か違う。胸が圧迫されるかのよう。呼吸ができない。苦しい。

 

「姉さん、覇王色出てます」

「むっ、そうか?」

 

 隣の太めの女性が言うと、黒髪の女性の表情が若干ゆるみ、威圧感も減った。途端に俺の体が動き出す。息を大きく吸い、吐いた。

 

「はひゅー、はひゅー」

「どうじゃ。これで答えられるじゃろ」

「は、はひっ。僕の父は、アンドリューです」

 

 俺は息も絶え絶えに答える。この人の機嫌を損ねてはならない。

 

「そうか」

 

 再び笑みを強める。女性。次の瞬間、何故か指をこちらに突きつける。

 

「うっ」

 

 大きな指が俺の腹に突き刺さり、体の芯に衝撃が来た。とても重い一撃。俺は思わず蹲る。父に殴られた時のよう。でも、何故いきなり攻撃を?

 

「ぐっ」

 

 蹲る俺の頭に、女性の靴が乗る。巨体だけあってとても重く、そして靴が硬い。痛い。頭が割れるかのようだ。

 

「恨むならそなたの父を恨め。わらわ達が受けた屈辱はこんなものではないぞ」

 

 女性は父の知り合いだった。でも仲間ではなく敵だったようだ。

 

 女性達は俺を痛めつけてから、裸にした。こんな時なのに俺はドキリとしてしまって息子ぉは立派だった。自分でも信じられないことだった。俺はプライドが高いつもりだった。でも気持ちいいんだよ何故か。

 女性達は悪い笑みを作り、俺の息子ぉで遊び始めた。指でデコピンしたり涎をかけたりして。これも父にやられた仕返しらしい。一体何をやらかしたというのだ、父は。そして俺の息子ぉも何なのか。恥ずかしいしピンチなはずなのに喜んでやがる。

 

 女性達は俺を丸裸にしたまま町の広場につれていった。とても恥ずかしかった。息子ぉが元気なままだったというのがまた恥ずかしい。密かに思いを寄せていた女の子にも見られちゃった。涙が出た。

 途中で町の守衛が俺を助けようとしたが全く相手にならなかった。当たり前だ。この町の人間は皆俺より弱い。俺より遥かに強い相手には何もできない。母も俺を助けようとしていたが守衛が母の口を閉ざして押さえつけていた。家族とバレると危ないと思ったのだろう。

 女性は広場につくと、大声で町の住人に呼びかけた。

 

「1ヶ月後にこの子どもを処刑する。助けたくばアンドリューが1人でわらわの元にこい」

 

 女性達は俺を人質にして父を呼び出し、殺したいようだった。

 町の住人は女性達の命令に従い、食事や必要品を与えた。風呂や寝床を貸すこともあった。不幸中の幸いか、俺は寝床でいい思いもできた。女性は性欲が強かったのだ。

 住民は女性達に従いつつもどこか安心していた。女性達の目的はアンドリュー。俺を遥かに上回る超人的な強さを持つ存在。父ならば多少背が高いだけの女性など簡単にやっつけるだろう。そんな思惑が見て取れた。俺の友人も、俺を直接助けようとすることはなかったが「あと少しだ。頑張ってね」「羨ましいぜ畜生」などと密かに声援を送ることはあった。

 

 そして3週間後、父は女性達の元に現れた。

 

「約束通り1人で来てやったぞ。息子を解放してくれ」

 

 父は俺が感じたことのない威圧感を放っていた。目を見るだけで殺されてしまうような恐怖を感じた。殺気というやつだろうか。

 美人は少し父を怖がっているようだった。しかし、その身から溢れる威圧感は父に勝るとも劣らないものだった。

 

「ふん。こんな小僧どうでもよい。アンドリュー、貴様を殺したかった」

「そうか。まあ好きに考えるといい。すぐ楽になる」

「貴様ァ!」

 

 そうして美人と父の戦いが始まった。美人の巨体は目にも留まらぬ速さで動き、父も同様だった。金属音と爆風が戦いの激しさを教える。俺は爆風に何度も転がされ、擦り傷を増やすばかりだった。

 しばらくして、疲れとダメージからか、2人が時折動きを止めるようになった。その疲れ具合、傷の様子から、戦いは互角に見えた。安心し切っていた住民も不安になり始めた。手に銃を持って美人を撃とうとする守衛もいたが、女性の姉妹によって潰された。俺は動けなかった。父を応援したいはずなのに、美人にも死んで欲しくないと思ってしまう。出会いから苛められるばかりなのに、尊敬する父と同等までに美人を貴重だと思ってしまう。惚れたら負けというやつなのか。自分でも酷過ぎると思うがどうしようもない。

 

 戦いの中で日が落ちた。いつ終わるとも分からない激戦。2人とも疲労して動きは遅くなっているが、まだまだ俺達に手出しできるレベルではない。

 しかし、拮抗は不意に終わりを告げる。父が、突然片足を失ったのだ。見ると膝の部分が石になって砕け散っていた。

 

 美人が笑みを浮かべ、父に近づいていく。父は諦めたように倒れ込み、薄く笑っていた。

 

「そなたも甘いな。生け捕りに拘らず殺す気でいれば違う結果になったやもしれぬのに」

「ふん。俺はお腹にいる子を殺したくなかっただけだ」

「何じゃと?」

「お前も母になるならちっとは気を使えよ。主治医からの忠告だ。殺すばかりの医者だったがな」

「ちっ。勝手なことを」

 

 美人は拳を振り上げる。母が止めてと泣き叫ぶ。美人が拳を振り下ろすと、父の顔は石になって砕け散った。

 

 後から母に話を聞いた。父は天竜人の護衛権主治医だったらしい。父に決闘を挑んだ女性達は天竜人の元奴隷で、父は彼女達の健康管理も行っていた。彼女は美人ゆえに天竜人の性処理もさせられており、時には子を孕むこともあった。しかし天竜人は奴隷の子を望まず、父はお腹にいる子を殺すよう命令されていた。サイファポールで働いていた頃は日常的に暗殺を命令されていて、その罪滅ぼしのつもりで医者になったのに、生かす数よりも殺す数の方が多い。奴隷を治療するのも再び天竜人の慰めものにするため。父はそのことに負い目を感じており、母に悩みを打ち明けることもあったそうだ。

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