奥沢美咲は、超能力者である   作:親指ゴリラ

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えがおのオーケストラっ! 14

 小さい頃、まだ私がただの女の子だった時のこと。

 

 一番後に産まれた弟がそれなりに大きくなり、柵のついたベビーベッドから、両親と同じ布団へと移った。そして、その代わりといってはなんだけど。それまで両親と一緒に寝ていた私には、自分の部屋を与えられた。

 

 小学生にもなって親と一緒に寝ている……というのが少し恥ずかしかった私は。かといって、それを直接伝えるわけにもいかず。時折、控えめに、自分用の部屋を求めていたから。

 

 二言目には「お姉ちゃんなんだから」と最年長としての自覚を求めてくる両親は、それと同じくらいには、私の意見を尊重してくれていて。思っていたよりもあっさりと、私は自分のための部屋を与えられた。

 

 私がそれを望むなら……あの人たちは、最初からそうするつもりだったんだろう。今思えば、あまりにも準備がよすぎるというか。当時の私では、その意味に理解が及ぶことなんて万が一にもなかったと思うけれど。

 

 それが我が子への優しさからくる配慮だったのか、それとも、その時から既に私への興味が無かったのか。色々なことを知って、視野が広がった私だけど。こればっかりは、今となってもどちらと断言することが出来ない。

 

 前者だったらいいな、とは思う。

 

 あの思い出の場所で、今でも一緒に生活できていたのなら。両親がお互いを愛し合っていて、家族の仲に亀裂が入っていなかったのならば…………なんて、思わなかった日はない。

 

 

 今でも覚えている。ドアに付けられた「みさき」のネームプレートと、水色のシリコンで包まれたドアノブ。

 

 初めて扉を開く時のドキドキは、胸を騒ぎ立てるくらい激しかったのに、とても心地よかった。

 

 人は誰かの温もりを求めているくせに、自分の領域に踏み込まれるのを嫌う生き物で。それは、私も変わらなくて。だからこそ「自分だけの場所」を与えられたということが、これ以上ないほど嬉しかった。それこそ、友達すら滅多に招き入れなかったくらい。私は長女であるということを忘れさせてくれるその場所のことが、とても気に入っていた。

 

 今までの人生で嬉しかったことをランキングにしても、十番以内に入るくらいには。年不相応に達観していた私も、素直に喜んでいたと思う。

 

 私の記憶が、間違っていないのなら。その様子を見ていた両親も、笑っていたような気がする。笑ってくれていたのなら、嬉しい。

 

 

 私のために用意された少し大きめのベッドは、私が成長しても使えるようにと、良いものを用意したんだろう。祖母のところに引き取られる時にも、処分する気になれなくて。結局、高校生になった今でも現役のままだ。

 

 今の私が寝そべっても、余裕で収まるほどの大きさだ。これを買い与えた当時の二人は、私たちの将来のことをどこまで考えていてくれたんだろう。私の願望だけど、もしかしたら…………両親も、家族全員が揃って生活できる未来のことを思い描いていたのかもしれない。

 

 当然、幼い私は大興奮だった。わざわざ綺麗にしてくれたんだと一目でわかるほどの、掃除が行き届いた一室。見慣れない学習机と一体化している本棚には、私の本が全部移されていて。丁寧に、タイトル順で並んでいた。

 

 カーテンも、絨毯も、壁紙も。私の好みを反映してくれているのは、一目瞭然で。私は「個室がほしい」という我儘が通ったことよりもむしろ、私への思いやりが行き届いた部屋の内装に、ただひたすら感動していた。

 

 私のためだけの部屋、私のために用意された家具の数々。少し大げさかもしれないけれど、その全てが「私」という個人の輪郭を浮かび上がらせてくれる特別な「世界」だったから。

 

 だから、特別な相手だけ。私が部屋に招き入れるのは、大切な人だけにしようと決めていた。

 

 

 そして…………一番最初の来訪者は。やっぱりというか、なんというか。目に入れても痛くないってくらい可愛がっていた、私の妹だった。

 

 

『ねーね、あけて!』

 

 この時はまだ、妹も『おねーちゃん』呼びじゃなかった。ぱぱ、まま、よりも早く私のことを呼び始めた妹は、ずっと『ねーね』という言葉を使っていて。私もそれが嫌じゃなかったし、誇らしいとすら思っていた。

 

 私がひとり部屋に移って、新品のベッドの中で興奮して眠れない夜を過ごしていたその日のうちに。妹は私の部屋を訪ねて、扉を叩いてきた。

 

 正直な気持ちを言えば。この時の私はちょっとだけ、寂しさも感じていた。我ながら面倒くさいとは思うけど…………それまで感じていた他人の体温がなくなって、一人では広すぎる寝床に身を預けているうちに、不安になってしまった。

 

 嬉しかったのは、間違いないけれど。同時に、早すぎる気もしていた。与えられたものに不満なんてなくて、両親の親切心は理解していたけれど。夜になって、布団に入ってしまえば。それこそ、大人だって。寂しく思う日の一つや二つ、存在しているのだから。

 

 まだまだ子供から抜けきれない私には、そこは広すぎたんだろう。小さい体から抜け出た体温が、大きなベッドに吸われていくうちに。自分でも理解できないくらい、怖くなって。

 

 

 だから、嬉しかった。

 

 扉を開けた先、電気もつけないで暗いままの廊下に。自分用の枕を抱きかかえた妹が、不安そうな顔で立ち尽くしていたことが。

 

 そんな顔をさせてしまっているのにも拘わらず、嬉しくて仕方がなかった。姉としては失格で、なんなら人としてもどうかと思うけど。自分が漠然と感じていた不安や恐怖と同じものを、大切な人も感じてくれているということに。安心して、溢れそうだった涙も引っ込んでしまった。

 

 

『あのね、ねーね、その』

 

『────いっしょに、ねようか?』

 

 その言葉を聞いた時の、妹の嬉しそうな表情を。私はきっと、忘れることはないだろう。

 

 ありがとう、そう言って笑う彼女の手を引きながら。私も、たぶん、笑っていたから。むしろ、お礼を言いたいのはこっちの方だと。口にはしなかったけれど、胸の奥には隠しきれない感謝の気持ちが渦巻いていて。でも、それを口にするのは恥ずかしかったから。

 

 姉としては、かっこ悪い姿を見せたくないって。そんな、かっこ悪い強がりを。私は必死になって、押し通して。

 

 その代わり、妹が寝るまでの間は。これ以上ないほど、彼女を甘やかした。私の持っていた絵本を読んで聞かせて、望まれればチューの一つや二つ、平然とやってのけた。今同じことをやれって言われれば、流石に躊躇うと思うけど。それを恥ずかしいと思わないくらいには、当時の私は子供だったから。

 

 子供、だったから。いつまでも、あの幸せが続くんだと。信じて疑っていなかった。

 

 私がひとり部屋になっても、妹がきてくれたように。どんなことがあったとしても、最後には家族が揃っているものなんだと。一つ屋根の下で一緒に過ごして、思い出とか、そういう掛け替えのないものを重ねていくのだと。明確に言語化して思考することはなくても、なんとなくで感じていた。

 

 たとえ、いつか離れることになったとしても。それは家族の元から自立したとか、大人になってからだと思っていて。少なくとも、望まないうちに離れ離れになることなんて、考えたこともなくて。

 

 どうしてなんだろう。私や妹たちに、何か不満でもあったのかな。

 

 あれだけ幸せだったのに、満たされていたのに。両親はどうして、それで満足してくれなかったんだろう。

 

 分からない。理解できない、したくない。築き上げたものを全部捨てて、嫌だと泣き叫ぶ子供の手を離してまで。そうしてまで手にしたいものが、二人にはあったんだろうか。

 

 そこまでしなければ、満たされなかったんだろうか。

 

 …………やっぱり、分からないよ。人の心が読めても、考えていることを知れるとしても。分からないことなんて、沢山ある。

 

 それを理解することが、大人になることだというのなら。私はずっと、子供のままでいたい。人を好きになることに理由なんていらない、子供の理屈で生きていきたい。

 

 

 妹たちの笑っている顔を思い出そうとするたびに、あの日のことが頭をよぎる。

 

 妹と弟がそれぞれ母と父に引き取られて、私が祖母の家に暮らすことになったあの時の。この世の終わりを目にしたような、涙を浮かべた悲痛な表情。

 

 大丈夫、きっとまた会える。なんて、心にも思っていない慰めを投げかけながら。力一杯抱きしめてきた二人を抱きしめ返した時の、胸元を濡らした涙の冷たさを。

 

 そして、それを感情のない瞳で見つめていた。情とか、温かさとか。そういったものとは無縁の、両親の視線が。頭の中から離れなくて、いっそ、忘れてしまいたいとすら思っているのに。

 

 私はどうして、思い出してしまうのだろう。心の奥底で、希望を捨てきれないんだろう。

 

 もうとっくに全てが終わってしまって、また全員が揃う機会なんてくるはずもないのに。諦めきれなくて、忘れられないのは…………きっと、誰かの影響を受けているからで。

 

 

 昼に、夜に。一人になって、考える時間が出来て、嫌なことを思い出してしまう度に。それを上書きするように、大切な友人達の姿が心に思い浮かぶ。最初は一人だけだったそれも、今では両手の指に収まりきらないくらい増えた。

 

 私が笑顔を取り戻せたように、あの二人にも。そう考えられるようになって、後悔ばかりの過去にも、ようやく向き合えたから。

 

 暗くて見えていなかった、大切な記憶も。みんなが照らしてくれたから、見つけられる。

 

 だから今度は私も、そうなりたい。

 

 こころが作ってくれた場所で、みんなと繋がったこのバンドで。こころが望んでいるように、私もみんなを笑顔にしたい。

 

 この歌で、笑顔を取り戻したい。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 はぐみの額から手を離して、そっと胸元へと置く。不規則だった呼吸が安定していて、寝顔も穏やかになっている。ついでに、彼女の体から余計な汗を弾く。暖かくなってきたとはいえ、まだまだ安心できないから。汗をかいたまま放置して風邪をひかれるくらいなら、こうしたほうがいい。

 

 結局、彼女の頭の中を覗き込むのはやめた。弱気になったとか、怖気付いたわけじゃなくて。なんとなく、そうするつもりになれなかったというか。

 

 こうやって、私以外の人が私の布団に入っているという事実が。ちょっとだけ、感慨深くて。こころで慣れたつもりだったけど、やっぱり気になってしまう。

 

 ちょっとだけ、妹のことを思い出した。心地よくて、温かい、私にとって大切な記憶。こころの時はそれどころじゃなかったのに、はぐみが相手となると頭の中をチラついてしまうのは。やっぱり、そういう事なんだろう。

 

 私の家を訪ねてきた時のはぐみと、私の部屋を訪ねてきた時の妹の顔が、あまりにもそっくりだったから。顔は似ても似つかないけど、その内心に抱えているものが近かったから。だから、知りたいと思ってしまった。

 

 はぐみを救うことで、不安を取り除くことで。私が妹へと抱えている罪悪感の、その一部でも取り除こうと。自覚はなかったけど、そう思っていたかもしれないから。

 

 なんていうか、それは失礼だし。はぐみの悩みを利用しているようで、落ち着かない。

 

 

 だけど、妹とはぐみを重ねてしまうのは。今この瞬間に限っては、好都合だった。

 

 はぐみの不安を取り除きたいと思うなら、まず私自身が平静を保っていないといけない。感情を触れ合わせようという時に、雑念が混じっているようだと。かえって悪影響を与えかねない。

 

 そういう意味では、この状況は悪くなかった。穏やかな気持ち、家族に対する情を思いこそさせるはぐみの姿は…………はっきりいって、保護欲を掻き立てられるというか。無条件で甘やかしたくなるから。

 

 大切だという気持ち、この際、それが不純な理由でも構わない。苦しんでほしくない、そう思うことに、間違いなんて存在しない。

 

 温かい気持ちを思い浮かべて、それをはぐみの中へと送り込むイメージで。彼女の胸中を満たす暗然とした感情を、ゆっくりと押し流して、軽減する。

 

 いつもよりも深く、普段より優しく。決して、形そのものを崩してしまわないように気をつけながら。無防備で、柔らかくて、可愛らしい、そんな彼女の心の中を、私の力で満たして。

 

 

 どんな夢を見ていたのか、今は知ることも出来ないけど。きっと、これでいい。

 

 だって、私の目の前で目を閉じている彼女は。いまはこんなにも、楽しそうな表情を浮かべているから。

 

 

「本当に、幸せそうな寝顔」

 

 起こしてしまわないように気をつけながら、指先で頬を突く。子供のように柔らかい頬は、ちゃんと手入れされているようで。見た目よりもハリがあって、指を押し返すような弾力を兼ね備えている。

 

 それが、なんだか面白くて。少しだけと思っていたのに、いつまでも指が離せなくなってしまって。

 

 

「ん、ミッシェル…………」

 

「わ…………ビックリした」

 

 煩わしかったんだろう。突いていた私の指ごと、はぐみが手を握りしめてきた。口から溢れた言葉は、私のもう一つの姿の名前を呼んでいて。

 

 商店街でバイトするたびに抱きついてくるから、なんとなく察していたけれど。はぐみって本当に、ミッシェル…………可愛いものが好きなんだなって。こころといい、はぐみといい。案外、高校生になっても。女の子の趣向というのは、大して変わらないのかもしれない。

 

 視界の端に映り込んでいるミッシェルのマスコットを引き寄せて、はぐみに渡す前に、ちょっとだけ見つめる。

 

 まぁ…………たしかに、愛嬌はあるかもしれない。ピンク色のクマって、言葉にしてみれば随分とサイケデリックというか、インパクトが大きいけれど。子供たちからの人気を考えると、デザインした人の感性は間違っていなかったんだろう。目立つし、妙に馴染みやすい。

 

 

「はいはい、みんな大好きミッシェルさんですよー?」

 

 そんな小芝居を、挟みながら。いつのまにか私の手を抱きかかえたはぐみの、強く抱きしめてくる腕を動かして、空いた隙間の中に、ミッシェルのマスコットを入れる。

 

 そのまま私の腕をするりと引き抜けば、代わりを求めるはぐみの体は、自然とミッシェルのマスコットを抱き寄せていって。

 

 なんか、前にも似たような光景を見た気がするけど。私が思っている以上に、抱きつき癖というのは一般的なのかもしれない。なんなら、私も時々テディベアを抱いて寝ることがあるくらいだし。

 

 

「ミッシェル…………みーくん…………」

 

「いい夢、みなよ」

 

 うわ言のように名前を呼ぶはぐみに、ちょっとだけ照れながら。まるで親のような気持ちで、布団をかけた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「ご、ごめんねみーくん! はぐみ、すっかり眠っちゃって…………」

 

「いやいや、気にしなくていいって。ご飯食べた後って、どうしても眠くなるしさ」

 

「それに、送ってもらうなんて」

 

「いやまぁ、起こさなかった私も悪かったしさ。寝かせておいた方がいいかなーって思ったんだけど、こんな時間になっちゃったから。あんま遠くないけど、一人で帰らせるのもなんだし」

 

 意気消沈といった様子で歩くはぐみは、本当に落ち込んでいるんだろう。両腕で握りしめたミッシェルこそ離さないものの、どこか足の動きが覚束ないというか。

 

 やっぱり、付いてきて正解だった。こんな状態のまま一人で帰したら、家族に心配をかけさせてしまうし。それこそ、はぐみが思考の悪循環に陥らないとも限らない。

 

 

「うぅ…………はぐみ、また(・・)迷惑かけちゃったよ」

 

「また、って? 私、そんな覚えないけど」

 

「あっ、えっと、その…………ほら、前にみーくんがライブ観に行こうって言ってた日。はぐみ、ドタキャンしちゃったから」

 

「えー…………そんなの気にしなくていいって、むしろ覚えてたことにビックリだよ。私、完全に忘れてたし」

 

「う、うん…………でも、はぐみ、ちゃんと謝ってなかったから。みーくん、本当にごめんね?」

 

「だから、謝んなくても────」

 

 

「ううん、はぐみに謝らせて」

 

 謝らなくてもいい、そう言おうとした私の言葉を遮ったのは。

 

 はぐみの言葉…………ではなく、その表情が。とても印象的だったから。笑っているはずなのに、寂しがっているような。あるいは、泣いているような。そんな、言葉にできない顔をしていたから。

 

 

「はぐみ────」

 

「あー! はぐみちゃん!」

 

 どうして、そんな風に笑うのか。そう尋ねようとして、今度は別の声に遮られた。

 

 元気で、大きな、子供の声。知らないはずなのに、どこか聞き覚えのある……そんな声。

 

 私が呼び止められた訳じゃないけれど。気になって、声がした方に振り返った。

 

 

 沈みゆく夕焼けを、背中にして。一人の少女が、走っていた。小さな体を大きく動かして、片手を振りながら駆け寄ってきている。

 

 その手も、視線も。私の隣のスペースへと向けられていて。釣られて視線を動かせば、そこでははぐみが驚いた様子で固まっていた。

 

 

あかり(・・・)!? どうしてここに…………?」

 

 その名前を聞いて、思い出した。

 

 はぐみのソフトボールチームの子だ。前にミッシェルのバイトの時にきて、はぐみにサボりを怒られてた子。

 

 私が記憶を探っているうちに、あかりちゃんははぐみの前までたどり着いていて。ソフトボールチームなだけあって、運動は得意な方なんだろう。それなりの速さで走ってきたのにも関わらず、息切れしていない。

 

 

 あかりちゃんははぐみを見て、そのあと私を見て、もう一度はぐみを見た。そのままはぐみの背中へと回って…………何故か、私の方をジト目で睨みつけてきた。その様子に、はぐみも戸惑っている。

 

「はぐみちゃん、この人だれ? あかりが折角はぐみちゃんの家に遊びに行ってあげたのに、はぐみちゃんはこの人と遊んでたの?」

 

「あかり? どうしたの?」

 

「答えて、この人だれ?」

 

「み、みーくんは、みーくんだよ?」

 

「…………ふーん、この人がはぐみちゃんの言ってたみーくん? なんか、普通だね」

 

「あ、あかり!? みーくんに失礼なこと言っちゃダメだよ!」

 

「…………だって、本当だもん。かっこよくないし、運動できなさそうだし」

 

「あかり…………?」

 

 覚えのない恨みでも、買ってしまったんだろうか。あかりちゃんはあからさまに不機嫌な様子で、私の方へと近づいてきた。

 

 はぐみに視線を向けても、おろおろしているばかりで。どうしてこうなったのか、彼女にも心当たりがないのかもしれない。

 

 私の目の前まできたあかりちゃんは、そのまま下から睨めつけるように私の顔を観察して。

 

「ふーん…………」

 

 と、一言。興味なさそうな声音で感嘆符を呟いてから。踵を返してはぐみの方へと駆け戻った。

 

 視線を合わせようと、膝を下げかけていた姿勢で固まる。はぐみに怒られながらもツンと他所へと視線を向けているあかりちゃんを見て、思わずにはいられない。

 

 

 私…………なにか、した?

 

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