腰の低いマスターと愉快なサーヴァント達   作:70-90

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腰の低いマスターはぐだぐだになる

 僕がマスターになってから1週間も立たぬ内に、カルデアは未曾有の危機に襲われた。

 

――一言で言うなら、何もかもぐだぐだになっているのだ。

 

 まず、契約したサーヴァントにスタッフの方々が訳のわからないことになっている。男の娘好きが爆発したり、グルメになったり…、また名前が過去の日本の偉人っぽいのに変わってるし…。一大事なのか、ギャグなのか…。

 

 また、『ノッブ!』と鳴く二頭身のエネミー…。何これ、かわいい…。僕はああいうデフォルメ系のものには昔から弱いんだよなぁ…。ああ、かわいい…。持ち帰りたい、もふもふした――

 

――ああっ、いけない…! ぐだぐだ粒子を吸い込んだせいで…!!

 

 閑話休題。

 そこに救世主みたいな形で現れたのは、織田信長さんである。

 背丈は自分より小さな女の方で、赤と黒を貴重とした軍服を着ている。しかし、彼女こそが多くの戦国大名を下し、天下統一の一歩手前まで追い詰めてみせた織田信長さんであった。

 あのエネミーはどうやら信長さんの分身らしく、聖杯の暴走でぽこじゃかと増えてしまったらしい。また、何もかもぐだぐだになってしまったのも聖杯だと…。そしてダ・ヴィンチさんはぐだぐだ粒子を発見したそうだ…。

 何はともあれ、聖杯が関わっているならば放っておくことはできないだろう。今後の士気に関わってくるだろうし…。

 

 そして、もう1人の助っ人が突如現れた。沖田総司さん――新選組一番隊隊長を務め、最強の人斬りとして恐れられた()()。もう一度言う、()()なのだ。

 ピンクと赤の着物を着た、桃髪の沖田総司さん。信長さんとは因縁があるらしく、何かやらかしたと聞き付けてついてきたそうだ。

 信長さんに会えば漫才のような会話が繰り広げられ、一方で戦場に経てば素早い動きでエネミーを倒していった。なんと恐ろしい人なのか、アーサーさんも関心を持っていた。

 ところが、沖田さんには致命的な弱点がある。彼女は病弱であり、生前に若年で没している。戦闘中に喀血、信長さんとの漫才で感情が高ぶりすぎて喀血…。焦らないことなど一度もなかった。いやだって突然僕の前で血を吐いちゃうし、「いつものことですから」って…!?

 

 こうしてちびノブの一群を掻い潜ったり、途中で沖田さんとはぐれてしまったり、もはやぐだぐだな状況の中…。

 

***

 

「なんですか、その、本能寺ポイントって…」

「うむ、よくぞ聞いてくれたな!」

 

 僕は今、呆然と立ち尽くしている。

 目の前には屋台を開いて、素材を売りさばいている信長さん。そして背後には轟々と燃え盛る本能寺…。あまりにもカオスな光景だ…。

 あのエネミーにはそれが入っているらしく、貯めれば貯まるほど特典がつくそうだ…。…なにがどうなってるやら…。

 でも、1つ惹かれることがある。ポイントが特定点数を超えると信長さんが契約してくれるというのだ。

 

「信長さん、これって…」

「それか。儂は1つ試しておきたくてな」

「試し…、ですか?」

「そなた、儂らが築き上げた人理とやらを直すためにこの戦いに身を投じてきたのじゃろ?」

 

 急にシリアス調になってきた。これは聴く価値は大いにあるだろう。

 

「はい、そうですが…」

「折角の機会じゃ。このポイントを集めて、儂にその意気とやらを見せてみるがいい」

 

 前言撤回…。シリアスなのか、それとも…。

 こうして、本能寺ポイントを集めることになった。

 人理修復を始めたばかりの自分達には大変だ。しかし、貯めるごとに素材が手に入る。サーヴァント達の強化のためには集めておく必要はあるだろう。

 

***

 

 地道に貯めていった結果、10万ポイントが貯まった。それはつまり、信長さんの加入が確定となったということだ。

 新しい仲間が入るのは嬉しいことだ。報告しようと信長さんのもとに駆けつけて――

 

「信長さん、やりました! 僕やりまし――」

「阿呆ォォッッ!!」

「おぶっ…!?」

 

 突然、ひっぱたかれた。

 

「な、何するんですか!」

「よく見てみい、ワシの素材を!」

 

 信長さんは怒鳴りながら、1枚の紙を突付いている。

 

「悲しいことに…、それでしかワシは再臨できん」

「……はい?」

 

 再臨とは、サーヴァントが強くなる手段の1つで、完全になるには4回も必要になる。そのためにはピースやモニュメントを素材として集めなければならない。

 どうやら、信長さんはそれを必要としていない。必要とするのは髑髏だけ…。

 …待てよ…。髑髏だけ…? ピースはいらないの?

 

「……ピースは?」

「いらん」

「モニュメントも…?」

「いらん、ていうか髑髏だけなんじゃが…」

「ああ、意外と楽なんですね…。なら周回で――」

「阿呆! その髑髏は屋台に置かれてる、これらだけじゃ!」

 

 信長さんが怒りながら指を指す。屋台に置かれてる金色の髑髏4つ。交換アイテムが違う4つ。……えっ、ここでしか手に入らないの? いつもの訓練では落ちてこないの…?

 そして、僕はようやく事の重大さを思い知った。頭を抱えて打ちひしがれた。

 

「マジですかぁっ!? それを早く言ってくださいよぉぉっ!!」

「言われる前に自分で気づけ馬鹿マスタァァーーッッ!!」

「それ無理だからぁっ!?」

 

 ぐだぐだやないか。

 ポイントチェック表をよく見てみると、4人の信長さんの絵が描かれている。何故被っているのかと悩めば、後にそれが信長さんのステータスに大きく関わってくると知らされることになった。

 

***

 

「あ〜どうしよう…」

 

 ベッドに転がる自分。

 信長さんを中途半端なステータスにしないためには、ちびノブ―信長さんが命名した―からポイントや素材を集めなければならない。

 僕は申し訳なく思いながらも、サーヴァントの方々を結集して周回に集中してきた。でも、現状は厳しい。ダ・ヴィンチさんやロマンさんの分析によれば、ぐだぐだ粒子に惹かれやすいサーヴァントであるほど集まりやすいそうだ。分析の結果、信長さんやランサーのクーさん、弁慶さんがそうだったようで尽力を注いでくれているが、相性などの問題でなかなか厳しい。

 

――こうなったら、新たにサーヴァントを迎えるしかない。

 

 僅かな石を抱え、召喚室に向かう。

 石を放り込み、召喚を行う。

 

――すると、金色の輪が現れた。

 

 取り出し口から現れたカードの裏は――セイバーだった。

 

「新撰組一番隊隊長、沖田総司推参。貴方が私のマスターですか?」

 

 沖田さん…。沖田さんが来た…。

 

「おや、見たことあると思ったら藤丸さんじゃないですか! なるほど、今日から貴方がこの沖田さんのマスターというわけですね!」

「……うそ…」

「ま、マスター…? どうしたんです…?」

 

 沖田さんと再会できたという喜びはなくはない、むしろ強いものだ。

 だから、あの人に言っておかなければならない気がする。気づけば、僕は沖田さんと一緒に廊下を全速力で走っていた。

 

「マスター!? そんなに走ってどこに行くんです!?」

「信長さぁん! どこですか信長さあああん!!」

「えっ、ノッブもいるんですか!?」

「あった、あそこが信長さんの部屋です!」

 

 まさにドタバタ劇が現実になったかのような風景。

 後にマシュから聞いた話だが、やはり「何事か」と僕達のことを見ていたという。

 

「一体なんじゃ、騒がしい…」

「沖田さんが、沖田さんが来ました!」

「なんじゃ沖田かぁ…。……はぁあ!? マジで言っとるのか!?」

 

 だるそうに扉を開けて出てくる信長さん。しかし沖田さんが来たことを報告すると、一気にそのけだるさが吹き飛んでいった。

 

「ああっ、ノッブ先にいたんですね! やっぱり沖田さんがいないと駄目ですねぇ!」

「なんじゃと!? お前病弱クソステセイバーのくせに!」

「病弱クソステセイバー!?」

「コフッ…!? 人が気にしていることを…!」

「うわあああ沖田さああああん!?」

「大丈夫です、いつものことですから…!」

「いやいやいや! サンソンさん! サンソンさんどこですかあああ!!?」

 

 ぐだぐだやないか。

 

***

 

 2日後、沖田さんがもう1人召喚され、宝具が強化された。

 「配布鯖のワシを差し置いて宝具強化とかどういうことじゃあ!? さすがきたない! さすが壬生狼きたない!」と信長さんに沖田さんがドロップキックをかまされたのは別の話。

 

 そして、無事に信長さんの素材をすべて回収することに成功した。




ナポレオンさん来てほしいわ…。
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