「はあ………」
いつもと変わらない学園生活。午前の授業が終わり、クラスの生徒達はお昼にしようと弁当箱を広げている者等、教室の中はすっかり昼食時間の雰囲気であった。そんな空間に一人、教室の片隅にポツンと座っているミライはおにぎり片手に学校の教科書を読んでいた。傍から見たら勉強熱心な優等生に見えるかもしれないがミライ自身ははっきり言って退屈なものだった。複雑な計算式、表世界の歴史、ミライ達が話すのとは別の言語。
元々頭の回転や切り替えの速いミライは何とか表世界の勉学についてきてはいるが、学ぶ必要の無い表世界を態々学ばなきゃいけないのか、ミライは少々憂鬱な考えを元に勉強をしていた
(これはもう終わりだな。次は……)
食べ進めていたおにぎりはすっかり小さくなり、残った小さなおにぎりを口に放り込み、別の教科書を出そうと鞄を漁り始める。すると突然廊下側が騒がしくなる。何事かと思って見てみると、何やら教室の扉付近に人混みが出来ていた。それを見たミライは日常的にあるその光景に興味が失せたのか視線を鞄から取り出した教科書へと向ける。そんなミライに一人の女生徒が近付いて来る
「ねぇ、渕刃くん。貴方に会いたいって人が来てるよ」
「俺に?どっちがきたんだ?」
「ううん、射命丸さんでも犬走さんでもないよ。取り敢えず、行ってみれば分かるんじゃないかな」
「??」
女生徒にそう言われ、首を傾げながらも扉に視線を向けると何故かクラス中の生徒達がミライの事を見ていた。
この学園に入って既に半月近くが経っており、ミライに話しかける生徒は何人か居るが、皆ミライの独特の雰囲気に押され積極的に関わろうとしていなかった。そんなミライを訪ねて来るのは忍仲間である椛か文の二人だけである。そんな二人以外に来る奴が居るのかと不可思議に思いながらも席を立って扉に向かうと、そこには見覚えのある少女が立っていた。以前ミライが学園を一目見ておこうと訪れた時にミライに接触して来た白髪の少女である。少女を見た瞬間明らかにミライの表情が変わり、まるで少女を嫌悪しているかのような目を少女に向ける。そんな表情に臆すること無く少女はミライに話しかける
「話があります。ちょっと付き合ってくれませんか?」
「「キャァァァァァ!!!」」
「告白?告白なのかな!?」
「あの転入生に気があるの!?」
「くそっ!!顔がいいからなのか!?」
少女がそう発した瞬間周りにいた女生徒達が黄色い声を上げる。悲鳴にも聞こえる甲高い声にミライは思わず耳を塞ぐ。叫んだ後は女生徒達は何やらコソコソと話し始め、男子生徒達は何やら嘆きながらミライを睨みつけていた。そんな状況に耐えきれず、ミライは少女に近づいて小声で話す
「どういうつもりか知らないが場所を考えろ。こいつらは色濃い沙汰になると面倒な事になるぞ」
「なら場所を変えましょうか。付いてきてください」
他の生徒から逃げる様に早足で人気の無い場所へと移動し始める。途中他の生徒からの目線がミライ達に刺さっていたが、二人は無視して歩いていた。そして人気の無い旧校舎近くに来ると、ミライが少女に話しかける
「で、一体何の用だ?」
「貴方に警告した筈です。何故学園に来たんですか、それも仲間を連れて」
「こちらの事はバレてるのか。元妖怪だからか?他の悪魔の連中とは違ってチャクラ感知が出来るみたいだな」
明らかに自分の事がバレていると知ると明らかに態度を変える。隠していたクナイを取り出し、相手の出方を見ながら話す。その姿を見た少女はミライの事を射抜くような鋭い殺気を出しながら睨みつける
「死にますよ。部長達悪魔は妖怪とは違います。すぐに撤退した方が身の為です」
「敵の能力を見極められない奴に言われたくは無いな。その言葉、そっくりそのまま返してやる。にしても、仲間が居ないな。他の連中には話してないのか?」
ミライがそう言うと少女は力強く地面を蹴り、ミライに向かって殴りかかる。ミライは難なく余裕な表情で避けるがその時の少女の表情には何やら必死さが伝わって来るが見て取れた。諦めずに殴りかかり、蹴りを繰り出してくる少女を赤子の様にあしらい続け、スキを見つけては少女の身体に体術によるカウンターを浴びせていた。
そんな事を続けて行く内に、少女の息は上がり身体はミライのカウンターによってボロボロになっていた
「はあ、はあ……」
「弱すぎる。これが悪魔の力を得た妖怪の力か?この程度なら、妖怪の時も対して強く無かったみたいだな」
「っ!!」
「遅い」
「かはっ…!!」
ミライの蔑みを聞き感情に任せて突撃して来た少女はミライの腹部へのカウンターによって地に伏せる。すぐに起き上がって来た少女はまたもや体術による攻撃を仕掛けてくるが、難なく交わされミライは瞬時に少女の首を掴み地面に叩きつける。それと同時に少女に写輪眼による幻術をかける。幻術に掛けられた少女は幻術によって意識を失い、微動だにしなくなる
「ぁ……ぅ……」
「無駄に攻撃を仕掛けてこのザマか。案外、殺しとなったら楽な任務かもしれないな」
少女の事を放置し、ミライはその場を立ち去る。難なく事を終えたミライだが、いくつか気に掛かる事があった。それは仲間が待機していなかった事と謎の警告である。歴戦の猛者ならともかくミライに簡単にあしらわれる程弱いのに、何故かそれらの行動をしてきたのである。それに、誘い込むなら複数で叩くのが常識だ。
行動と実力が伴ってない状況に心底理解出来ないなとミライの中で悪魔の強さの軽く標準を決めた所で今日の学園生活を終えた。いつもとは違い多少は有意義な学園生活であったと、ミライは頬を緩めた
拠点にて……
堕天使勢の拠点を視察し、監視を殺害、拉致し得たものは多かった。
光の剣 同じく光を弾として撃つ銃
どちらも光と呼ばれる天使、堕天使が持つ力で
拠点に帰還後、にとりはすぐに手に入れた銃を一つ一つの部品別に分解していた。刀身の無い柄だけの剣は柄にあるスイッチを入れると光が刃として現れる仕組みになっており、にとりはそれを見るなり目を輝かせて地下に椛の土遁で作って貰った地下の工房に閉じこもってしまった。対してミライは地下にある別室に拉致した監視を鎖で腕を壁に付けて拘束していた。
ミライの幻術にかかっているせいか抵抗する素振りを見せず、目は気が抜けたように光を失っていた。そんな姿を気にする様子も無くミライは監視の尋問を始めた
「さて、お前は何者だ?」
「堕天使…さまの……護衛だ」
「仲間の数は?」
「に、二十……」
「護衛する堕天使については?」
「至高の力を……手に入れようと……」
「至高の力か。他には?」
「そ、それだけ……だ」
「……これ以上しても無駄だな」
これ以上尋問しても得られる物は無いと判断したミライはクナイを取り出して目の前の監視の首を切り裂く。首から大量の血が吹き出し、監視は力が抜け、その拍子に鎖が緩み脱力して倒れ込む。クナイに付いた血を払って部屋から出ようとすると地下室の扉が勢いよく開く。咄嗟にミライは持っていたクナイを扉を開けた者へと向けるが、扉を開けたのが何故か慌てた表情をしている文だった。それを知ったミライはため息を吐いてゆっくりとクナイを下ろす。
「そんなに慌てて、一体なんだ?」
「さっき、表からの連絡鴉が来たので鴉からの文書の内容を見たら中にこんな物が……」
「表から?なんでこっちに………なっ!?」
文から渡された一枚の紙を渡され、読んでみるとミライは驚愕する。本来なら表と裏の伝令や文書はそれぞれの上から届く。表が裏の者へと連絡鴉が来る筈は無いのだが、内容を見てミライは何故表から来たのかを理解する。ミライが持っているの一枚の紙は紙の半分は顔写真で埋まっており、写真の下には小さく8桁後半の数字が書かれおり、何故その者がその紙に記される事になったのかの経緯が書かれていた。ミライ達はこれに見覚えがあった。里から抜けた忍、抜け忍と呼ばれる者、国の民に殺しや略奪等の罪を犯したもの。凶悪な妖怪等、そのリストにはそれらの事を犯した賞金首の情報が書かれている紙束『ビンゴブック』ミライが持っているのは正に犯罪者等重大な何かを抱えた者を示す手配書その物であった
しかし、問題なのはその写真に写っていた者だ。白髪で、白と薄い水色の袴を纏っている小柄な少女。身体には猫の耳と二本の尻尾がある事から妖怪である事が見て取れる。紙には細かくこう書かれていた『同族殺しの共犯。里抜けの裏切り者であり敵勢力への情報提供等のスパイ行為。それらの里の掟を破り、大罪を犯した特級大罪者『猫魈 白音』またの名を『悪魔 塔城小猫』を拘束または抹殺せよ』
「はあ……この追加任務、もっと早く知らせてくれていたら達成出来たな」
ミライが奇しくも遭遇してしまった半妖半魔の少女。今日も駒王学園で話しかけられたその少女が表側では特級と最上位の位をつける大罪人であった事にミライは絶句してしまった
次に続く………