ここ、文月学園では試験召喚システムを導入している。科学とオカルトの偶然によって生まれたそれは、テストの点に応じた召喚獣を召喚し戦う、最先端の技術である。
そしてこの学園は、完全実力主義でもある。1年の終わりに振り分け試験を行い、A~Fクラスの所属を点数によって決定する。より点数の良いものはAクラスに、より点数の低いものはFクラスへとなる。クラスによって、部屋の設備や待遇が大きく変わるため、生徒達は振り分け試験に向けて、勉強に励んでいた。もちろんこの男も…
「…寝坊したああああ!!?」
励んでいた!!
俺、畠山蓮はただいま走ってます。大変な状況に陥ってます。やばいです。まさか文月学園で生活する上で重要な振り分け試験を寝坊してしまうとは思っていなかった。遅刻、欠席、早退などをしてしまえば0点扱い。即Fクラス決定という鬼畜設定なので遅刻するわけにはいかなかったのだ。
「いや、ほんと昨日の自分を殴りたい」
そう零してしまうほど危機的状況にあった。
ふと顔を上にあげれば、青空が広がっていた。所々に浮かぶ雲に目を向ければ、何故か級友の顔が浮かんだのでとりあえず中指を立てておいた。自分の状況を思い出し、こんなことしている場合じゃないと叱咤して、歩を早める。右腕につけている腕時計で時間を確認すると、針は8時58分を指していた。
────勝った。
思わず笑みをこぼしてしまう。元々朝起きた時から計算はしていた。学校までの距離、走るスピード。これを保てればギリギリだが間に合う可能性があった。そして今、計算はしっかりと合っていたことが証明される。少し遠いが、俺に安心と安全を与えてくれる校門が見えてきた。俺はさらに速度を上げ、だんだんと近づく校門が────
ガシャアアン!そんな勢いのある音と共に、門は閉じてしまった。
「は?」
そんな間抜けな言葉と共に、顔を上げると、そこには腕を組み、仁王立ちしている厳つい教師がいた。
「ちょっ!何してんですか鉄人!!」
「誰が鉄人だ、西村先生と呼べ!」
趣味がトライアスロンという少しやべえ肉体派の教師鉄人、もとい西村先生は俺の顔を見て大きなため息をつく。
「まったく、何をしているんだはこっちのセリフだ。この大切な時に何を遅刻してるんだ貴様は」
呆れたような声を出す鉄人に俺は思わず怒りを覚えた。
「はあ!?遅刻してないですよ!」
「何が遅刻していないだ!遅刻してるではないか!」
何を言っているんだこいつは!?運動のし過ぎでとうとう脳までも筋肉になったのではないかと心配せざるを得ない。それまでのことをこいつは言っている。なぜなら俺がついた時間は
「まだ2秒あっただろうが!!」
確かに本来の計算では5秒前についてたはずだから少し遅いけど。そう言おうとした瞬間、遅刻ではないか。そんな大きな怒声が聞こえたかと思えば、いつの間にか自分の家のベットにいたことが不思議で不思議でたまらなかった。