俺みたいな天才はバカといる方が丁度いい   作:Re:Yuu

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10話

「そういえば坂本、次の目標なんだけど」

「ん?試召戦争のか?」

「うん」

地獄の昼食を終え、なんとか復活した俺達は、皆でお茶をすする。特に俺はお茶を何度も飲む。よく知らないがお茶には殺菌成分が含まれているらしいから、飲んでいて損は無いだろう。

ちなみに、俺が目を覚ました後、明久達に涙を流しながら感謝され、お茶だけにしかありつけていない島田に怒られた。こちらとしては明久達のように感謝してもらいたいけれど、事情の知らない彼女にそれを言っても仕方ないだろう。明久を盾にしたから、どうでもいい。

「相手はBクラスなの?」

「ああ。そうだ」

昨日DクラスにBクラスの室外機壊せって命令したからな。Bクラスじゃなければ酷い嫌がらせだ。

「どうしてBクラスなの?目標はAクラスなんでしょう?」

「正直に言おう」

雄二が神妙な顔をつきになる。

「どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」

雄二らしくない降伏宣言。

まあ、無理もない。何せ相手はAクラスだ。勝てる要素なんて一つもない。五十人いる生徒のうち、十人の次元が違いすぎる。特に代表の霧島翔子、次席の久保利光が厄介だ。

運が良ければ、俺は久保に勝てるかもしれない。けれど、霧島には勝てない。姫路と協力しても勝ち目はないだろう。

「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」

「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」

「雄二、さっきと言ってることが違うじゃないか」

Aクラスに勝てないのに、Aクラスに挑む。雄二がだしたのはそんな矛盾した答え。

確かにAクラスには勝てない。けれどそれは、クラス単位での話。

「クラス単位では勝てないと思う。だから一騎討ちに持ち込むつもりだ」

「どうやって?」

「Bクラスを使う」

ああ、なるほど。AクラスにBクラスをけしかけるぞとでも言うつもりなんだろう。

学年二番手のクラスの後に連戦はキツイだろうし、得られるものは何も無い。それに不満という原動力で動いている俺達とのモチベーションの差は明確だ。

「試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか知っているな?」

「え?も、もちろん!」

絶対に知らないなこいつ。後ろでこっそり姫路が教えてるし。

「設備のランクを落とされるんだよ」

「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備の設備に落とされるわけだ」

「そうだね。常識だね」

よく言えるなこいつ。

「では、上位クラスが負けた場合は?」

「悔しい」

「ムッツリーニ、ペンチ」

「僕を爪切り要らずの身体にする動きがっ」

確かに悔しいけどそういう事じゃない。

「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」

すかさず姫路のフォローが入る。

「つまり、うちに負けたクラスは最低の設備と入れ替えられるわけだね」

「ああ。そのシステムを利用して、交渉をする」

「交渉、ですか?」

姫路の疑問に雄二が答える。大体は俺が予想した通りだった。

BクラスにAクラスを攻め込むよう交渉し、それをネタにAクラスと交渉する。

上手くいけば勝てるかもしれない。けれどBクラスに勝てなければ何もかも終わる賭けみたいなもの。それに、問題はそれだけじゃない。

「Aクラスが一騎打ちに乗る可能性は低いだろ。あっちからしたら試召戦争の方が確実だ」

負ける可能性がある勝負より、確実に勝てる戦争をAクラスは選ぶはずだ。

「仮に一騎打ちに持ち込めたとして、Aクラスが出してくるのは霧島だ。俺たちでどうこうできる相手じゃない。そのへんはどうするつもりだ?」

Dクラス戦で俺と姫路の存在は知れ渡っているはずだ。なら、何らかの対策は練っているはず。そうなると勝てる可能性がさらに低くなる。かといって他の奴を出すのは論外だ。

「そのへんに関しては考えがある。心配するな」

俺の問いに自信満々に答える雄二。少し心配だが、雄二がそう言うなら多分大丈夫だろう。悪知恵だけはよく働くやつだからな。

「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはその後に教えてやる」

雄二はそう言ったあと、明久の方を向いた。

「で、明久」

「ん?」

「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告してこい」

「断る。雄二が行けばいいじゃないか」

昨日あんなにボコボコにされたし、そりゃ断るわな。

「やれやれ。それならジャンケンで決めないか」

「ジャンケンか。……OK。乗った」

「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦ありでいこう」

雄二がそう提案する。

騙し合いや心理戦とかは、雄二の得意分野だったりする。けど、よく雄二と一緒にいる俺と明久は雄二に騙される前提でいるので、逆に裏をかいたりすることができる。

これは面白い戦いになりそうだ。

「わかった。それなら、僕はグーをだすよ」

「そうか。それなら俺は────」

明久は正直にグーをだすのか。はたまた裏をかいてくるのか。雄二はどう読むのか。

「お前がグーを出さなかったらブチ殺す」

それは心理戦ではない。脅迫と言うんだ。

「行くぞ、ジャンケン」

「わぁぁっ!」

パー 雄二

グー 明久

明久は脅しに屈してしまった。たが、負けて正解だと思う。勝っても負けても殴られる運命にあるなら、殺されることは無いという信頼があるBクラスの方がマシだろう。

「決まりだ。行ってこい」

「絶対に嫌だ!」

さすがに納得いかないないのか、明久は行きたがらない。

「Dクラスの時みたいに殴られるのを心配しているのか?」

「それもある!」

「それなら今度こそ大丈夫だ。保証する」

真っ直ぐな目で雄二は明久を見る。

以前もそんなことを言って騙した癖に。今度はどんな根拠があるのだろうか。

「なぜなら、Bクラスは美少年好きが多いらしい」

「そっか。それなら確かに大丈夫だねっ」

どこに大丈夫な要素があったのかは知らんが、掌を返すように明久が了承する。

明久は自分のことを美少年だと思っているのか?

「でも、お前不細工だしな……」

そしてこいつは上げて落とすのが本当に好きなようだ。

「失礼な!365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」

「5度多いぞ」

「おっ。確かに微少年だ」

「実質5度じゃな」

「三人なんて嫌いだっ」

明久涙目になりながら走り去って行った。

「とにかく、頼んだぞー」

そんな明久の背に声をかけ、昼食はお開きになり、再びテスト漬けの午後が始まった。

 

 

 

 

 

「……言い訳を聞こうか」

午後のテストが無事終了し、放課後。

ボロボロになりながら帰還した明久は、Bクラスの暴行で千切れ欠けた服の袖を押さえながら雄二に詰め寄った。

「予想通りだ」

「くきぃー!殺す!殺しきるーっ!」

「落ち着け」

「ぐふぁっ!」

雄二の拳が明久の鳩尾に刺さる。音からして結構な強打だ。

「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」

爽やかに言い残して教室を出ていく雄二。

今自分がした行動を思い出して欲しい。何故そんな何もなかったかのように出来るのだろうか。

「うぅ……腹が……」

痛くて動けないのか、明久は未だに起き上がらない。そんな明久を放っていくクラスメイトはともかく、姫路なら駆け寄ってきそうなものだが、珍しいこともあるもんだ。

そんなことを考えていると、明久と目が合った。

「……蓮」

「……明久」

俺の名前を呼ぶ、か細い明久の声。俺は明久の名前を呼び返すことで答える。そして笑みを浮かべ、親指を立てる。

数秒の沈黙の後、俺は教室を出ていった。後ろからなにか騒がしい声が聞こえるがきっと無視しても大丈夫だろう。うん。

「優子と秀吉待たせてるから、早く帰らないと」

そう呟いてから俺は、帰路へと辿るのだった。

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