俺みたいな天才はバカといる方が丁度いい   作:Re:Yuu

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14話

「昨日言っていた作戦を実行する」

翌朝、開口一番に雄二はそう告げた。

「作戦?でも、まだ開始時刻じゃないよ?」

明久の言う通り、今はまだ午前八時半。開戦予定時刻は九時だ。ということは、

「Cクラスの方か」

「あ、なるほど。それで何をすんの?」

「秀吉にこれを着てもらう」

そう言って雄二が取り出したのは、うちの女子制服。色んな年齢層に人気のある品だ。

問題は、何故雄二がそれを持っているのかってことなのだが……。

「なあ、雄二。まさかそれって……」

「言っとくが俺にそんな趣味はないからな」

何が言いたいのか分かったのか、心外だと言わんばかりの目で見てくる。

良かった。とうとうイカれたわけじゃなさそうだ。

「それを着るのは構わんが、ワシが女装してどうするのじゃ?」

本題に戻すように、秀吉が口を開く。

「秀吉が女装したところで、優子と見分けが付きにくくなるだけだぞ?」

ただでさえ美少女な秀吉がより美少女になるだけだ。それで何か変わるわけじゃないはずだ。

しかし雄二は、俺の言葉に笑みを浮かべる。

「それが狙いだ。秀吉には木下優子として、Aクラスの使者を装ってもらう」

ああ、なるほど。Aクラスとして圧力をかけるわけか。自分で見分けが付きにくくなるって言っといて、なんで気づかないんだ俺は。

「と、いうわけで秀吉、用意してくれ」

「う、うむ……」

秀吉は雄二から制服を受け取り、そのまま生着替えを始める。男とはいえ、美少女と遜色ない秀吉の生着替えに、男共が興奮して目を輝かせる。

「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」

康太に至っては尋常じゃないくらいの速さでカメラのシャッターを切っている。

本来なら秀吉の着替えシーンなど、写真を取らせるどころか見るのでさえ禁ずるのだが。

「よし。着替え終わったぞい。ん?皆どうした?」

残念。演劇で鍛えられた秀吉の早着替えは常人のそれじゃない。視認することは不可能と言ってもいい。証拠に、Fクラス男子(雄二以外)がとても複雑そうな顔をしている。

「さあな?俺にもよくわからん」

「おかしな連中じゃのう」

秀吉や。少しくらい見せてくれてもよくない?

「んじゃ、Cクラス行くぞ」

「うむ」

「あ、僕も行くよ」

「俺も着いていくわ」

雄二が秀吉を連れて教室をでる。俺と明久はそれを慌てて追いかけていく。

しばらく歩き、Cクラスを目の前にして立ち止まる。

「さて、ここからは済まないが一人で頼むぞ、秀吉」

「気が進まうのう……」

優子に変装して相手を騙すのは気が乗らないか、少しため息をつく。

「気持ちはすごい分かるが頼むよ、秀吉」

「悪いな。とにかくあいつらを挑発して、Aクラスに敵意を抱くよう仕向けてくれ。お前ならできるはずだ」

「はぁ……。あまり期待はせんでくれよ……」

力なくCクラスに向かう秀吉。まあ、このあとのことを考えたら、そうなるわな……。

「ねぇ、秀吉は大丈夫なの?別の作戦を考えた方が……」

全く気が乗ってない秀吉が気になるのか、明久がそう聞いてくる。確かに、あんな秀吉は珍しいし、メンタル面とかが心配なのだろう。

「大丈夫だ、明久。秀吉は演技だけは本当に凄いからな。ちょっとそっとじゃ演技に支障はない」

数々の舞台で演じ抜いてきた経験が秀吉にはある。気が乗らないだけで崩れるほど、秀吉はヤワじゃない。それに──────

ガラガラガラ、と秀吉がCクラスの扉を開ける声が聞こえてくる。

『静かになさい、この薄汚い豚ども!』

「優子の悪評を広めるのは、秀吉の特技だからな」

しかも今回は挑発だから何時もの倍は酷い。優子に対する評価がまた一つ下がっていったことだろう。

普段の秀吉からは考えられない罵倒が飛び出し、明久が本気で引いている。

「え、秀吉のお姉さんってあんなこと言うの?」

「流石に誇張はしてるが、概ね間違いじゃない」

家での優子は何時もあんな感じだし。

俺の言葉に明久は何故か悲しそうな顔になる。

「僕、秀吉のお姉さんって、もっと天使な人だと思ってたよ。だって、秀吉のお姉さんだし」

「優子は天使で合ってるぞ」

まあ、秀吉を見てたら考えられないって話か。

『な、何よアンタ!』

声からしてCクラス代表の小山だろう。既に怒りの声を上げている。いきなり豚呼ばわりだし、仕方ないだろうけど。

『話しかけないで!豚臭いわ!』

『アンタ、Aクラスの木下ね?ちょっと点数良いからっていい気になってるんじゃないわよ!何の用よ!』

何の用か聞いてくれる辺り小山は優しいんじゃないか……?

そんなことを考えながら二人の会話に耳を傾ける。小山は秀吉を完全に優子だと思ってるようだ。女装してるし、冷静な観察力を奪ってるから、見分けがつくわけない。

『私はね、こんな臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの!貴方達なんて豚小屋で十分だわ!』

『なっ!言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?』

誰だ小山が優しいとか言った奴。全然そんなことないじゃねえか。なんで豚小屋=Fクラスの認識なんだよ。もうちょっとマシだぞ。

『手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、特別に今回は貴方達を相応しい教室に送ってあげようかと思うの』

それにしても、秀吉の演技のレベルがすごい高い。なんかいつもより活き活きしてる。色々と溜まってんのかなぁ。

『ちょうど試召戦争の準備もしてるようだし、覚悟しておきなさい。近いうちに私達が薄汚い貴方達を始末してあげるから!』

そう言った後、秀吉はどこかスッキリした顔で秀吉が教室から出てくる。

「流石だ、秀吉。素晴らしい仕事だった」

『Fクラスなんて相手にしてられないわ!Aクラス戦の準備を始めるわよ!』

雄二の評価どうり、作戦は上手くいった。小山のヒステリックな叫び声が聞こえてくる。

作戦は上手く行ったのだが。

「秀吉。お前ちょっとやりすぎ。優子の耳に届いたら普段の折檻じゃすまされんぞ」

秀吉の身体的には大失敗だ。そもそも、なんで秀吉は毎回優子の外面じゃなくて家での優子を演じるんだ。そりゃ折檻されるわ。

「分かっておったのなら、早く止めて欲しかったのじゃ……」

いや、流石に登場するわけにはいかないし、秀吉、すごいノリノリだったから……。

「まあ、黙っておいてやるよ」

「そうしてくれると助かるのじゃ……」

「よく分からんが、作戦も上手くいったことだし、俺達もBクラス戦の準備を始めるぞ」

あと十分で試召戦争が始まる。ここでのんびりしてる場合じゃない。

俺達は早足でFクラスに向かった。

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