『試験召喚戦争』通称試召戦争は、様々なルールに基づいて行われるテストの点数を用いたクラス団体戦である。各科目の教師の立会いの下、召喚獣を召喚し、戦い、各クラスの代表の敗北をもって勝敗が決定する。上位のクラスに勝てば設備を交換。又は条件を提示して、引き分けにすることが出来る。上位のクラスに負ければ設備が一ランク落ち、三ヶ月間戦争を仕掛けることが出来なくなる。つまり、つまりだ。ドベの俺達が今Aクラスに勝負を仕掛けたところで秒殺されて設備のランクが落ちるのがオチ。やるだけ無駄なんだ。
「勝てるわけがない」
「これ以上設備を落とされるのはゴメンだ」
「姫路さんがいれば何もいらない」
俺と同じ考えだったのだろうか、周りからも不満の声が上がる。あれ?今誰かラブコールしてなかった?気のせいかな⋯気のせいだよな?
「そんなことは無い。俺が必ず勝たせてみせる」
自信ありげに宣言する雄二。絶望的な戦力をひっくり返す戦略でもあるのだろうか。
「馬鹿なことを」
「できるわけないだろう」
「なら根拠を見せてくれ」
否定の意見は止まらない。乗り気じゃないこいつらを雄二はどう動かすのか。
「いいだろう。根拠を見せてやる」
雄二は不敵な笑みを浮かべ、一人の男を呼ぶ。
「おい康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないでこっちに来い」
「⋯⋯⋯!!(ブンブン)」
「え?はわっ!/////」
指名され康太は手を左右に振り、否定の行動をする。流石だな康太。今更手遅れなのに否定するとは。
姫路はスカートを押さえながら遠ざかる。それに意味はあるのだろうか。それにしても、果たして何色だったのだろうか⋯。
犯人である康太は顔についた畳の跡を隠しながら壇上へと上がる。
「土屋康太。こいつがあの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」
「⋯⋯⋯⋯!!(ブンブン)」
土屋康太自体は何も有名ではないが、ムッツリーニとなると話は別である。男子からは畏怖と畏敬を。女子からは軽蔑を以て挙げられる。
「ムッツリーニ⋯だと!?」
「やつがそうだとでも言うのか!?」
「見ろ。あそこまではっきりしている証拠をまだ隠そうとしているぞ⋯⋯」
「ムッツリの名に恥じない姿だ⋯⋯」
とりあえずムッツリには恥じた方がいいと思うのだが⋯。しかしあそこまで堂々と自分の行動を隠そうとしているのは流石だと言える。ちなみに姫路はよく分かっておらず、首をかしげている。なにこれ可愛い。知らなくていいよ。ずっとそのままでいて。
「姫路と蓮は説明するまでもないだろう。皆もその実力は知っているはずだ」
「フッ。当たり前だな」
「えっ?わ、私ですか!?」
「二人ともうちの主戦力だ」
俺が最大の戦力なのは確定。姫路も頭いいから主戦力なのは当然だ。
「そうだ。俺達には姫路さんがいるじゃないか」
「これならAクラスにも引けを取らない」
「姫路さんさえいれば何もいらない」
おいおいお前ら。俺を忘れてんぜ?俺の方が頭いいんだぜ?ほら、俺にもなんか声かけろよ。にしてもさっきから姫路にラブコールしてるのほんと誰?度胸あんなお前。
「木下秀吉だっている」
秀吉は演劇部のホープなのと、成績優秀な優子の弟で有名だ。それに俺が教えてるからな。戦力になるのは確実。俺が教えてるからな!
「当然、俺も全力を尽くす」
雄二は以前神童と呼ばれていたほどの実力者だ。期待はできる。それにカリスマ性もすごい。それだけでも十分な戦力だ。
今クラスの士気はすごく高まっている。
「吉井明久だっている」
⋯⋯シン────
そしてその士気は一気に下がりました。上げて落としやがったよこいつ。
「どうしてそこで僕の名前を言うのさ!全くそんな必要ないよね!?」
「吉井明久って誰だ?」
「全く聞いたことないぞ?」
まあ知らないのも無理はない。というか明久は康太と同じ、別の意味で有名だからな。
「ほら!せっかく上がりかけてた士気が下がったし!僕は雄二たちとは違って普通の人間なんだから、普通の扱いを⋯って、なんで僕を睨むの?士気が下がったの僕のせいじゃないでしょ!」
「そうか、知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは《観察処分者》だ!」
本来召喚獣はほかの召喚獣しか触れない。しかし、教師の雑用や力仕事をするために物を触れることができる特別な召喚獣を扱うことが出来るのが《観察処分者》。その肩書きは、成績不良で学習意欲のない問題児にしか与えられない。つまるところ
「バカの代名詞ってことだな」
「ち、違うよ!ちょっとお茶目な十六歳に付けられる愛称で」
「何度もガラス割ったり、鉄人のもの盗んだり水ぶっかけたりするやつがお茶目ねぇ⋯」
俺の呆れ声に明久はシーッ!と黙らせようとしてくる。
「おいおい。《観察処分者》ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?」
「それっておいそれと召喚できないやつが一人いるってことになるよな」
観察処分者にはメリットとデメリットが存在する。
メリットは観察処分者は教師の雑用をするために召喚獣を使うため、操作性が長けていること。
デメリットは召喚獣が受けた負担の何割かが自身に返ってくるフィードバックがあること。
だから観察処分者は基本戦闘には参加しない。
「気にするな。いてもいなくても同じような雑魚だ」
「ねえ雄二、そこは僕をフォローする台詞じゃないの?」
「とにかくだ。俺たちの力の証明として、まずDクラスを征服してみようと思う」
ワオ。こんなにも大胆に無視するか。
「皆。こんな境遇は大いに不満だろう?」
『当然だ!』
「ならば全員筆を執れ!出陣の準備だ!」
『おおーーっ!!』
「俺たちFクラスの真の実力をAクラスに見せつけてやろうぜ!」
『うおおーーっ!!!』
「お、おー⋯」
再び有頂点に上がったクラスの士気に圧されたようで、姫路も小さく拳を作り掲げていた。ちなみに俺は叫んでもいない。だって参加するつもりないし。
「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
「⋯⋯下位クラスの使者って大抵ひどい目にあうよね?」
「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることは無い。騙されたと思って行ってみろ」
「本当に?」
「明久。いくら雄二でも友達を騙すことはしねえよ。友達はな。ほらお前ら!明久をちゃんと送り出してやらねえか!!」
歓声と拍手。俺とクラスのやつらの後押しで明久は決意を決めて、使者らしい毅然とした態度で出ていった。
「ありがとな」
「言うなよ。いつものことだろ?」
その時の俺と雄二は、とても悪い顔をしていたと秀吉は後に語った。