『ワアアアアアアア!!!!』
外から凄まじいほどの喧騒が聞こえる。試召戦争が始まったのだろう。
昼休みのミーティングの後、俺と姫路は雄二に補充試験を受けるように言われ、今教室でテストの準備をしている。姫路は時間たっぷり使っていいらしいが、俺は序盤から戦争に参加するため、早めに切り上げないといけない。数学、科学、現文、英語といったところだろうか。全く、ふざけた理由で戦争をサボろうとしたことは認めるが、この扱いの差はなんなのだろうか。まあ、テスト自体は嫌いじゃないし、むしろ好きだと言ってもいいくらいだから別にいいのだ。アイツらを、あの人を思い出すから。
「それでは、補充試験を始めます」
先生の合図でテストが始まる。目の前の数学のテストは、計算、図形、資料などといった強い問題ばかりだ。俺はそれを見据えて、笑みを浮かべる。
「さあ、殺しの始まりだ」
今日はどうやってこいつらを、殺そうか。
姫路side
私は今、補充試験を受けながら前の席に座る畠山君に視線を向けています。畠山君は頭が良く、翔子ちゃん以外に私が越えようと思っている目標の一人です。でも、いくら勉強しても、後一歩彼には追いつけなくて、どんな人なのかずっとと気になっていました。だから私は、『恥ずかしいから』なんて理由で試召戦争を参加しようとしない畠山君に少なからず失望しました。なんでこんなふざけた人が、私よりも頭が良くて、吉井君や坂本君に信頼されているのかわかりませんでした。
『あー、蓮って僕たちと一緒にバカなことするからノリが良いって思われがちだけど、実はそうでもないんだよ。まあ、あんな理由で参加しないとは思わなかったけど』
『アイツは俺にもよくわからん。でも、知っての通り頭がいいのは確かだ。バカする時もルールにギリ反しないようちゃんと考えてるしな。何故か鉄人にイタズラする時は度を超えてるけど』
畠山君のことを聞いたら、そんな風に吉井君と坂本君は言っていました。それでも私は胸に残る不満が無くなることはありませんでした。本当にこの人に任せてもいいのか、頼りにしていののか、この人は真面目にしてくれるのか。そんなことを思っていたから私は、驚愕したんだと思います。畠山君が解くスピードは、とても速い。でもそこじゃありません。問題を解いているスピードの速さではなく、その顔。テストを受けている時は基本的に悩むか、普通に解くか、諦めるか。けれど彼は笑顔で解いている。問題に躓いても、その笑みが消えることはありませんでした。むしろより楽しそうに解いています。その異常さに私は恐怖と、もっと知りたいという彼への興味が強くなりました。途端畠山君は手を止めると、試験終了の意を告げ席を立つ。そして私の横を通り過ぎる時に、
「頑張れよ姫路。お前が要なんだからしっかりしてくれよ。俺がめんどくさくなる」
「畠山君。試験途中の人に話しかけないでください。今の試験無得点にしますよ」
先生の注意にすいませーん。と、適当に返事をしてヒラヒラと手を振りながら教室を出る。彼の行動に、言葉に思わず笑ってしまい、私はどこかスッとした気持ちで問題を解いていくのでした。
畠山side
「おーい、明久。戦況はどう?」
「あ、蓮いいところに!ちょっと助けて!」
テストを終えた俺は、雄二の命令で誠に憤慨なことに明久隊につくことになった。なので明久のところへ向かい声をかけると、よほど苦戦していたようでかなり焦っている。
「数人やられているな。藤堂は……諦めた方が良さそうだ」
藤堂の召喚獣がやられそうになり、助けに行こうとしたが間に合わない。明久もそう判断したのか藤堂を諦める形で陣形を指示をする。
「俺はどうすればいい?」
「蓮は全体のサポートしてもらっていい?」
「了解。さ、試獣召喚……」
顔を赤くして少しいい淀みながら召喚獣を召喚する。やっぱ恥ずかしい……。
召喚されたソレは、俺に似た顔立ちで黒いコートを羽織り、タコのような絵が描かれた緑色のナイフを一本を手に、一本を腰に装備している。なるほど、つまりはあれだな。
「ごふっ!」
「蓮!?どうしたのいきなり!?」
突然吐血しそうになった俺に明久が心配そうに駆け寄ってくる。
「大丈夫だ明久。ちょっと昔の病が再発しそうになっただけだから」
「ええ!?大丈夫それ!病院行く?」
なんで真っ先に保健室じゃなくて病院なのかは知らんがよほど心配してくる明久に大丈夫だと伝える。
「さて、来いよDクラス」
俺の挑発に二人くらいが乗ってくる。
「Fクラス畠山蓮、Dクラス二人に数学勝負を申し込む」
Fクラス 畠山蓮
数学 259点
VS
Dクラス×2
数学 103点 96点
「な、何!?」
ま、時間少なかったしこれでも上出来かと思いながら二人を瞬殺する。その後も苦戦している仲間達の手助けをするが、一人ではさすがに無理がある。そもそも雄二に出された指令は時間を稼ぐことだ。やたら無闇に倒していくわけにはいけない。だからといってこのままじゃ押されて終わりだ。敵を倒す許可をもらおうと明久に視線を向けると、いつの間にか現れた須川に明久が何か指令を出していて、須川はそれに従いどこへと向かっていった。
「何言ったんだ明久?」
「偽情報を流してって頼んだんだ」
偽情報?それは意味があるのだろうか。というか、すぐにバレるのではないのだろうか。
「偽情報ってのはDクラスにか?」
「ううん、先生に。どっかいってもらうためにね」
「なるほど効果的だな」
明久に頼もうとしていことを忘れてDクラスに立ち向かう。その中でふと思いついたことを、明久にバレないようにある人にメールを送っておいた。そして、後方で指示を出す明久を見て、
「なあ、明久。お前戦闘に参加しないの?」
目を逸らされたんだけど。
適度に敵を倒しながら拮抗した状態が続いていると、こちらとしては好ましくない会話が聞こえる。
「塚本、このままじゃ埒が明かない!」
「もう少し待ってろ!今数学の船越先生も呼んでいる」
ここで船越先生を呼ばれると戦線が拡大して実力差が出てしまう。明久もどうしようかと悩んでいる。だが心配しなくてもいい。そろそろ、来る。
ピンポンパンポン《連絡致します。船越先生、船越先生》
放送で須川の声が流れる。しかも呼び出し相手は今話題に上がった船越先生だ。それに明久も喜んでいてる。
《吉井明久君が体育館裏で待っています》
明久はよく分かっておらず、困惑の表情になって、それで、
《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》
途端に青く染まる。船越女史は婚期を逃し、単位を盾に生徒に交際を迫るようになってしまった可愛そうでヤバい人だ。だから明久の貞操と引き換えに確実に体育館裏に行ってくれるだろう。しかもDクラスが勝てるか不安になったり、Fクラスの士気が上がったりと、戦場にいい影響を与えている。明久は最後の頼みの綱と言わんばかりに俺を見てくる。そんな明久に俺は親指を立てて、
「Good Luck」
「須川ぁぁぁぁぁぁ!!」
彼の悲痛な叫びが木霊した