全く、史上最凶の嫌な1日だったよ。
だが今日の夕方に異世界転移した俺が日帰りするにはまだ時が掛かる。日帰りという意味が若干違うのは当時の俺が間違って使ってたからだ。だからタイトルに文句は言うな。
あの後、俺は何も言い返せないまま、その日は終わってしまった。レッカ大先生も大満足したようだし、アムルはいつもの謎テンションだしと決して間違っている訳ではない自称普通と名乗る五次元世界に対して俺の堪忍袋の尾が切れようとしたその時、1つの突破口が見つかった。まぁ単純な話だが、この世界から脱出して元いた場所に戻ることだ。誰、又は何が原因でここに来たかは分からないが、理由なく存在するものは何一つない。ならば、可能な限りそれを解き明かすことだろう。では何をすれば良いのか?全く分からない。あいにく俺は文系なので異世界転生についての科学的思考をすることはできない。ただ一つだけ思いついたことがある。アムルやレッカに普通という概念を破壊して、非常識な可能性の素晴らしさを感じさせることぐらいだろう。この世界の住人に何かイレギュラーな状態にさせればトリガーはきっと発動する。
それに、俺は心から教えたいと思った。俺がいた普通じゃなかった世界の可能性を、アムルとレッカに。
でもって現時刻深夜0時13分。帰る所がない俺はアムルの家に居候させてもらった。どうやらこの世界には親というものは存在しないらしい。どうやって生活してんだよ。しかし、アムルやレッカの家を見て気づいたのだが、2人とも家の造りや大きさ、インテリアやデザインまで一切変わっていない。やはり普通というものによって統一されてんだね。そしてそして、午後9.00に就寝時刻となった異世界に捕らわれた囚人、俺氏は寝てるふりをしてアムルも布団に入るのを待った。この時刻に布団に入ったことやこの後やることに関して一応いっておくが、この時はまだ思春期に入る前のガキだ。少しは見逃して欲しいね。この社会の人はどういうわけか、老若男女全員が深夜0時に寝るらしい。普通とはなんなのかそろそろ分かってきたよ。なんか基準を作って全人類が統一すりぁいいんだな。おっ、アムルが自分の部屋に入ったか、じゃあ行くか。俺はアムルの部屋に入った。アムルはベッドで今まさに眠りにつこうとしていた。
「ではおやすみにゃさ……」
「よう、邪魔するぜ。」俺は容赦なくベッドに座る。
「ふぇ!?!?!?ちょちょタンマ!!」
この後、俺がフルボッコにされたのはいうまでもない。
「………で、何の用なの。」
「痛たた…はぁ、お前強ぇよ… あのさぁ、お前、本当に普通が良いって思ってんの?」
「はぁ?あったりまえじゃない。」
「正直に言え。本当に楽しいか?普通って。」
「だからぁ、普通が1番良いんだよ~」
「俺はそうは思わない。俺だって普通が1番だって思ってた。非日常な世界に憧れつつ、そんな迷惑ごとには巻き込まれたくない。そう心から思ってた。でも、この世界に来てからわかったよ。普通って何もかもが同じで面白くも楽しくもない、みんな違うから面白くて楽しいんだ。」
「……」
「だから、俺は戻りたい。元にいた場所へ。普通じゃない非日常が待ってる世界へ。」
「 だからって…なんで私に…」
「お前に教えたいんだよ。どこにでもない、嘘が本当になる世界の可能性を。」
「え……」
「アムル、俺はお前に出会ってまだ少ししか経ってないが、沢山世話をかけたし、共にこの時間を過ごした、大切な友達だ。もちろんレッカだって。だから俺はお前と一緒に帰りたい。見せたい。俺のいた世界を。」
俺は思うままに伝えた。当然、しばらく沈黙の時間が続いた。どれだけたったのは分からないがアムルの溜息が聞こえて、ようやく返答が帰ってきた。
「はぁぁ…全く、きっしーは私がいないとダメな様だね。分かった、行くよ。きっしーがいた世界ってとこに。あ、決して非常識を認めたって訳じゃないからね!どれだけ普通じゃないのか拝ませてもらうだけだよ。」
後に知った言葉だがこれをツンデレというらしい。
まぁ鈍感な主人公属性を持っている俺には関係の無い話だね。
アムルの回答を聞いたあと視界が真っ暗になっていた。どうやら俺は疲れていた様だ。
「あっ…ちょっときっしー?」
眠いのを我慢して普段より長く起きていたからな。無理もない。
『全く、期待外れだったよ。日常しかない己の世界に1番飽き飽きしているお前ならば、このアバター世界で自らの世界を破壊し、本来の世界を復元する力を手にして我の計画が成功すると思ったのだが…お前を選んだのは失敗だった。元々いた自分の世界を気に入るとは。こうなればお前はもう捨て駒だ。貴様ごとこのアバター世界をシャットダウンさせてもらう。』
なんだ、今のは。
俺は辺りを見回した。
ベッドに横たわる俺。
床で寝てるアムル。
そうか、俺はベッドで寝ていたのか。
それも気絶(?)してそのまま。
多分アムルにベッドに運ばれたのだろうな。
おーい、アムル。もう朝だ。起きよう。と言ってカーテンを開けた。
そこには普通とは思えないような光景が広がっていた。
崩壊している。
何もかもがぐしゃぐしゃだ。
今まで1度も戦争や争いをしなかったというこの世界で一体何があったんだ。
まるで特撮のセットの中に迷い込んだ気分だ。
「ふぁー。おはようきっしぃ……え?」
アムルは驚愕していた。まぁ普通の世界の住人だし、当たり前だよなぁ?
「ウェ⁉︎…どうして…」
「分かんねぇ…朝起きたら、こうなってた…」
あとそれ以上滑舌を悪くするなよ。理由は聞くな。
「嘘だ…嘘だ…」
おいやめろっ頼むから。今からでも遅くない、早く冬の雪山に行ってくれ。
「ウゾダドンドコドーン!!」
オォイ…モアイ!(もういい!)今はそんなしょうもない作者の悪ふざけに付き合う場合ではない。
たまたまこの家の付近は被害はでてなかったみたいだが地図でこの場所を東京と見ると埼玉と神奈川と山梨と千葉、いわゆる東京の周りは全滅しているとアムルがスマホで開いていたニュースに書かれてあった。
ラッキーといえばラッキーだな。
だが辺りは青空ではなく真っ暗でブラックホールみたいなのがある。それで徐々に町々が吸い込まれて崩壊しているらしい。行方不明者は既に四桁を越えている。
ここがやられるのも時間の問題のようだ。
アムルはスマホの電源を消して言った。
俺も今のアムルの動作を見て言った。
「レッカを…探さねぇと。」
「レッカを…探さないと。」
あ、ハモった。