この静かに暮らしたい殺人鬼に平穏を! 作:究極生命体になりかけた男
この空前の吉良吉影ブーム()に乗っかってようやく執筆しました。
吉良吉影好きの私としては執筆欲が抑えられませんでした。
一話という名のプロローグです。どうぞ。
BREAK DOWN
一九九九年、日本のM県S市杜王町は『奇妙』な夏を送った。
『スタンド使いは引かれ合う』
その法則に従うかのように杜王町でスタンド使いによる事件が巻き起こる。
杜王町に迫る危機にジョースター家の血統を受け継ぐ空条承太郎と東方仗助、杜王町の『黄金の精神』を持つ者達が立ち上がった。
気づかない内に奪われていた罪の無い命、音を立てる事なく崩れ去ってゆく平穏な日常。
そして、何年もの間杜王町の日常に平然と溶け込んでいた殺人鬼吉良吉影がその姿を現す。
吉良吉影はスタンド使いである。
表向きはただのサラリーマン、裏向きは凶悪な殺人鬼だ。
十七歳の時に起こした杉本鈴美殺人事件をきっかけに、四十八人もの女性を殺してきた。
消された目撃者の数を含めれば、それよりも多くの人々が殺されてきただろう。
人を殺さずにはいられないという殺人衝動と、女性の綺麗な手に異常な執着を持つ性癖を併せ持つ『
吉良吉影とのスタンドバトルは熾烈を極めた。
空条承太郎と広瀬康一は遠隔自動操作の爆弾スタンド【シアーハートアタック】との戦いを経て、吉良吉影を追い詰める。
しかし、吉良吉影を倒すまでには至らず、あとほんの僅かというところで逃げられてしまう。
顔も住所も変え、追跡はほぼ不可能となってしまった。
中身以外は全て赤の他人と入れ替わってしまった吉良吉影に気づく者は誰一人としていない。
だが、少年川尻早人だけは吉良吉影という殺人鬼の正体を知ってしまった。
自分の母親を守るために孤独に吉良吉影に挑む。
しかし、吉良吉影の【キラークイーン】第3の能力【バイツァダスト】を前に希望は儚く崩れ去る。
川尻早人は諦めなかった。
川尻早人が咄嗟に起こした勇気ある行動により無敵の能力【バイツァダスト】は破れ、再び東方仗助は吉良吉影を見つけ出した。
東方仗助は重傷を負いながらも決死の攻防を繰り広げた末に吉良吉影を追い詰める。
決戦は最終局面へと突入する。
極限状態となった吉良吉影は再び【バイツァダスト】を発動させ東方仗助を爆殺を謀った。
だが、その場に駆けつけた広瀬康一と空条承太郎の活躍によって【バイツァダスト】の発動を阻止する事に成功した。
そして、吉良吉影は非常事態に駆けつけた救急車に轢かれ、誰の手にもかかる事なく死亡した。
こうして杜王町に再び平穏がもたらされた。
♦︎
杜王町にあるとある小道にて。
その小道には振り向いてはいけない場所がある。
その場所で振り向いてしまったら最後、謎の無数の手にただひたすらに真っ暗な闇へと引きずり込まれてしまう。
その行方は振り向いた者にしか分からない。
そんな小道で吉良吉影は、幽霊の杉本鈴美とそのペットのアーノルドと対峙していた。
「私は…どこに…連れていかれるんだ……?あ…ああ」
振り返ってはならない場所で振り返ってしまった吉良吉影は謎の無数の手に強い力で引っ張られていく。
【キラークイーン】で抵抗するも、虚しく終わり吉良吉影は恐怖のあまりに声を上げる。
「さあ……?でも……『安心』なんて
杉本鈴美は残酷に、冷酷に返答する。
犠牲になった人々の代わりに吉良吉影に裁きを下す。
それが彼女の使命だった。
だが、吉良吉影が犯した罪は
「うわああああああああああ』
吉良吉影は断末魔を上げながら闇へと葬られていった。
これこそが何人もの人間を殺してきた吉良吉影が受ける報いなのだ。
勿論これで吉良吉影の犠牲になった者の全てが報われる訳ではない。
杜王町の人々が心に負った傷の痛みが現れるのは、これからなのだから。
吉良吉影はこの後本来ならば記憶を失い、幽霊でありながら殺し屋として『心の平穏』を求め現世に留まる(デッドマンズQ)のだが、そのルートと分岐して別の世界線の吉良吉影を描いていく。
なおここで挙げた別の世界線とは、一巡した世界や某大統領が行き来できるような世界を指すものではない。
♢
突然だが自己紹介させていただく。
私の名前は吉良吉影、三十三歳独身。
住所は杜王町浄禅寺一の…そこまで言う必要は無いな。
M県S市杜王町に住んでいてカメユーチェーンのデパートで
おっと、勘違いしないでくれたまえ。
私は会社をクビになった訳じゃあないし退職した訳でもない。
……私は
直接的な死因は救急車に轢かれたっていうのが原因な訳だが、そんな事はどうだっていい。
屈辱なのは、この私があのクソカス共によって追い詰められてしまった事、私の平穏な日々をかき乱されてしまった事だ。
ただ『植物の心』のような『平穏』な生活を送りたかっただけなのに………。
これは嘘なんかじゃあない、事実だ。
頭のイカれた野郎だなんて思ってくれるんじゃあないぞ。
そういう輩は【キラークイーン】で吹っ飛ばしてやるッ!
そうそう、振り向いてはいけないあの小道で私の【キラークイーン】は消滅したと思っていたが、何の支障も無く出す事ができた。
少々疑問に残るところだが、そんな事を気にしていてもしょうがない。
これは私の勝手な想像なのだが、死後の世界というのはただ真っ暗で意識や苦痛も無く延々と彷徨い続ける、そんな世界だと思っていた。
意識が無いのだから『喜び』は感じられないが、その代わりに『絶望』さえ無く平穏に過ごしていける。
仮に私の想像する通りの死後の世界があるのなら、その世界に存在するという事は果たして幸せな事なのだろうか、私の目指す平穏な日々を送っている事になるのだろうか。
いいや、そんなはずがない。
平穏というのは生きていてこその平穏、起こりうるトラブルを回避し静かに暮らす事こそが平穏なのだ。
闘争の無い世界での平穏など何の意味も価値も成さない。
私としては本末転倒だ。
…という風な死後の世界についての考えを持っていた訳だが、所詮は無意味な事だった。
私は気がつくと謎の空間にいた。
おそらく振り向いてはいけない小道の先が、今私がいる所なのだろう。
つまり死後の世界という事だ。
見たところ出口のような場所は無い。
おそらく元の場所にはもう戻れないのだろう。
引きずり込まれる時に感じていた恐怖や不安もすっかり消え失せていた。
元の世界に戻れないという絶望感はあるが、現状を受け止めるしかない。
そこは真っ暗で暗闇の奥は全く何も見えず、地面はモノクロのタイルが敷き詰められてあり、光がスポットライトのように一ヶ所に差しているだけの至ってシンプルな空間だった。
光が差している場所には、二脚の椅子が向かい合うような形で設置されている。
奥側の椅子に白髪で青い法衣を着た少女が座っていた。
その少女は清楚感漂う可愛らしい手つきをしている少女だった。(私好みの手ではない)
私はそんな彼女を警戒していた。
こんな訳の分からない空間で、平然と居座っているのだから怪しむなという方が無理な話だ。
もしかしたら彼女が新手のスタンド使いである可能性だって十分に考えられる。
「ようこそ、死後の世界へ。私のあなたを新たな道へと進める女神エリス。吉良吉影さん、お気の毒ですが不幸にもあなたは死んでしまったのです…」
女神エリスを名乗った少女は私に死を宣告した。
死を告げる彼女はどことなく悲しげな様子だった。
なんて怪しい小娘だ。
見ず知らずの人間の死を本気で悲しんでいるとは、ますます怪しい。
嫌いだった友人が死んでしまい、初めてその友人の大切さに気付きそれを悲しむというのならまだ分かる。
だが、彼女は赤の他人の私の死を悲しんでいる。
はっきり言って彼女はただ者ではない。
まず『女神』を自称している時点で怪しい臭いがしてくる。
「貴様今なんと言ったッ!!」
私は彼女が言った事に驚きのあまり目を大きく見開いた。
「ショックで現実をどうしても受け止めらないのは分かります。私はあなたのような人達を沢山見てきました。だから、お辛い気持ちはお察しします。ですが、あなたはもう亡くなってしまったのです」
「そんな事は分かっている!私が聞きたいのは
「へ、名前ですか!?吉良吉影さんとお呼びしましたが間違えていましたか?」
彼女は予想の斜めをいくであろう質問に取り乱す。
彼女自身今のような質問をされた事が無いはずだ。
今の私の姿は
鏡は無いが、顔の形や肉付きの触れた感覚からしてそう判断できた。
それにも拘らず、彼女は私の正体を知っていた。
私の正体を知っているという事は彼女は間違いなくスタンド使いだ。
今すぐに始末しなければならない。
【キラークイーン】で少女に触れようとする。
【キラークイーン】は『触った物を何でも爆弾に変える』事ができる。
彼女の場合、彼女自身を直接爆弾に変える。
しかし、私はそれをやめた。
心が痛むからとか、そんな人を想うような善良な心があったからではない。
彼女は【キラークイーン】を見るどころか、【キラークイーン】の存在に気づいてすらいなかったからだ。
私の【キラークイーン】が見えないという事は、つまり彼女はスタンド使いではないという事。
私が勝手に警戒し過ぎていただけなのか…?
だとするのなら、何故この吉良吉影の正体を知っている?
疑問は深まるばかりだ。
「いや、間違っている訳じゃあない。ただ何故私の名前を知っているのかが気になっただけだ」
「死んだ魂を導く女神として、死んだ方の名前を把握する事くらい当然です」
「死んだ魂を導く女神だと。これはたまげたなあ。……貴様!この吉良吉影を馬鹿にしているのかッ!私自身、自分がもう死んでいる事は理解している!だが貴様もあの杉本鈴美のように私をハメようとしているのは分かっているんだ!」
「お、落ち着いてください。あなたを馬鹿になんかしていませんし、あなたを陥れようだなんて考えていません」
怒鳴りつける私に対し彼女は真摯に答える。
威張るだけの能無し野郎には血反吐が出る程イラつくものだが、状況が状況なのだからそう言わずにはいられなかった。
杉本鈴美といい彼女といい、死んでも平穏を与えてはくれないとでもいうのか。
「ではその証拠を見せてもらおう。場合によっては【キラークイーン】の能力を使わざるを得ない」
【キラークイーン】を煙を上げるようにそっと出現させる。
少女には【キラークイーン】の存在に気づく様子はない。
「【キラークイーン】…?証拠にはならないかもしれませんが、信用してもらえればいいわけですね。いいでしょう」
彼女は目を瞑る。
そして、両手を膝に置いて立ち上がる。
「不幸な死の代わりにあなたには天国に行くか異世界へ転生する権利があります。前者か後者のどちらかを選んでください。死んだ魂を導く女神として、あなたを選んだ道へと導いて差し上げます。そもそも私があなたをここに呼び寄せたのは、それらの内どちらかへの道へと導くためだったのです」
やはり頭がお花畑のようにめでたいだけの少女のようだ。
だからといって、相手にしなければこの空間からは抜け出せないだろう。
おそらく彼女はこの空間から抜け出す方法を知っているはずだ。
その方法を聞き出すまで、適当に受け答えして我慢をするのだ。
「天国に行けるというのは魅力的だが、そもそも死んでしまっているのだから、平穏な暮らしは意味をなさない。トラブルを避けて静かに暮らしてこその平穏。その点転生するとなれば異世界とはいっても、生きていられるだから私の求める平穏な日々を送れるかもしれない」
「異世界へ転生する、その選択で良いという事ですね?」
私が胡散臭さを感じながらも異世界への転生を選択すると、彼女の表情は真剣なものになった。
もしかして、してはならない選択だったのか?
いきなりこんな選択を迫られたんだから仕方ないじゃあないか。
「私が導く異世界はあなたが生きていた世界に存在しえなかったドラゴンや魔獣、そして魔王という脅威が存在するという非常に危険な世界です」
ドラゴン、魔獣、魔王?
なんとも馬鹿げた話だ。
異世界に転生するって話だけでも嘘臭い話だというのに。
この吉良吉影を馬鹿にしているのか?
「ですので異世界に転生されるという方は転生しても記憶はそのままで、特典として一つだけ好きなものが何でも与えられます。大金から魔法、特別な能力まで何でも持っていく事ができるのです。お望みのものを何でもおっしゃってください。」
ファンタジーやメルヘンじゃああるまいし。
よくは分からなかったが、お伽話の世界にいけるとでも言いたいのか。
記憶もそのままで大金でも何でもただで恵んでやるだと。
随分と虫が良過ぎる話じゃあないか。
これじゃあ自分から嘘ですと言ってるようなレベルだ。
ここまでくると呆れを通り越してだんだん腹が立ってきた。
しかし、この空間から抜け出すために辛抱強く彼女の質問に答えるのだ。
ここで彼女を爆破してしまえば、この空間で永遠に彷徨い続ける事になるだろう。
「そんな特典はいらない。私はただ『植物の心』のような『平穏』な生活さえ送れればそれでいい。金や力が無くたって幸福にくらしていける」
「え…!?私の聞き間違えでしょうか?いらないと聞こえたのですが…」
「ああ、確かに私はいらないと言ったのだ。それとも私が望みを言わなかったらマズい事でもあるのか?」
「い、いえ決してそんな事は…。でも本当にそれでいいんですか?」
「それでいいと言っているのだ。あまりしつこいと逆に怪しまれるぞ」
「わ、分かりました。特典無しでの異世界転生という事でいいんですね?」
「しつこいぞ、何度もそう言っているだろう。言っておくが私はまだ君を信用した訳じゃあない。本当にそんな事が出来るのならさっさ異世界でもどこでも連れて行ってくれたまえ」
「それでは吉良吉影さん、あなたを異世界へと転生させます。私はここからあなたの幸運、いや平穏を願っています」
彼女が聖人のような台詞を言うと、私の足元からは青い光が溢れ始めその光に沿うように透明な壁が生成された。
私の体はたちまち宙へと浮かび上がった。
その壁はいくら拳で叩こうとも壊れる気配は無い。
細心の注意と警戒をしたつもりだったが迂闊だった。
「うおおおおおおお!何だこれは!私は最初から小娘の術中にハマっていたとでも言うのかッ!一か八かだ!【キラーク…」
♢
吉良吉影は【キラークイーン】で抵抗しようとするが、間に合わず謎の空間から消え失せてしまった。
少女は吉良吉影の幸運を祈るかのように手を合わせる。
その少女は正真正銘本当の女神だった。
吉良吉影はその事を知らないまま消えてしまった。
いや、異世界へと転生していったのだ。
しかし、ここで少女は自分がとんでもない失態を犯してしまっている事に気づく。
「………あ、あれ、嘘でしょ。異世界に転生させる人を間違えちゃってる…。先輩の代わりにきた天使の方の手伝いだっていうのに…。これじゃあ上に怒られるちゃうな………」
To Be Continued
第1話はプロローグということで次回から吉良吉影のこのすばの世界での冒険が始まります。
メルシーボーク お目通し恐縮のいたり………