この静かに暮らしたい殺人鬼に平穏を!   作:究極生命体になりかけた男

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前話の前書きでジョセフのネタやったのにフィギュアスケートのようにスベってしまい悲しさのあまりノイローゼになりかけました。(大嘘)
アニメ版ジョジョ五部PVが発表されテンション上がりまくりの作者でございます。
作画、声優云々の話は置いといて超楽しみ!!
それと同時に石塚運昇さんがお亡くなりになってとても悲しく思います。
ジョジョは関係無いですけどリーアム・ニーソンが演じる役の吹き替えが石塚運昇さんじゃなくなるのが非常に悔やまれる。
というかポケモンのオーキド博士は誰がやるんだよ!!


ゾンビ退治に行こう!

「清々しい朝だ。しかし覚悟はしていたがこんなのは私の求める平穏な生活ではない……」

 

私はベッドから起き上がりカーテンを明けると眩しい太陽の光を浴びた。

普通だったらもうこの時間帯には朝食を済ませ会社に出勤している時間だが今は会社員なんかやっていないので休日の時のようにのんびりしている。

その代わり冒険者というものをやっているがね。

冒険なんて私の趣味ではないしここでの冒険といったら化け物を薙ぎ倒し獣道を嗅ぎ分け突き進むというものであり遊び感覚で行うとは断じてない。

私は昨日キャベツの収穫に参加したのだがそれだけの作業にはかなり苦労させられた…。

何とこの世界のキャベツは空を飛び収穫しようとする者に襲いかかってくるのだ。

そしてそのキャベツにぶつかりでもすれば最低でも骨折程度の重症を負いかねない。

たかがキャベツの収穫でさえそれだけ命懸けの仕事なのだ。

キャベツ狩りの後に小耳に挟んだ話だがこの世界では秋刀魚は畑で採れるという。

早速もう訳が分からない…。

スタンドも月までブッ飛ぶような衝撃を受けた…。

 

「何故平穏な生活を送りたいだけのこの吉良吉影がこのような事態に巻き込まれなければならんのだ………」

 

おもわず愚痴をこぼしてしまう…。

精神衛生上では良くない事だが私は危険な冒険をしなければならない。

平穏な生活を求める私が何故こんな危険を冒して冒険者をするかというと杜王町に戻ってそこで平穏な生活を送りたいからだ。

冒険と私の願望に何の関係があるのか、それはこの異世界に君臨する魔王とやらを倒せばどんな願いでも叶えてもらえるらしいのだ。

日本にいた時の私ならば馬鹿げた話だと一蹴していただろうがスタンド能力のように魔王を倒す事がその願いを叶える為のきっかけ(・・・・)になるのではないかと考えた。

この理由だとまだこじつけ程度の理由にしかならないが同じ(・・)転生者だという小僧とその仲間の小娘が魔王を倒せば何でも願いが叶うと言っていたから否定はしきれない。

それが嘘だったとしても私はこうして異世界に来れたのだから元の世界に戻れてもおかしくはない、だから私は冒険者として冒険をする事を通しその方法を探し出せると考えている。

宛てがある訳ではないが……。

そんな事を気難しく考えながら日課(・・)である爪切りをする。

 

「まあ………行くか……」

 

洗顔や歯磨き、身支度を済ませ宿屋を後にした。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

吉良吉影は冒険者ギルドの酒場のテーブル席の隅の方に居座っていた。

これといって特に用は無いのでとりあえず朝食を食べている。

昨日のキャベツの件で数十万エリスの報酬を得ていたのでしばらくお金に困る事は無いだろう。

あまりに乗り気ではなかったがキャベツ狩りではあったが【キラークイーン】のスタンド能力を上手く使って何気に結構な量のキャベツを収穫していた。

とはいっても吉良吉影は現在宿屋暮らしであるのでお金を長持ちさせる為にも金策を考えていかなければならない。

まあ定期的に討伐クエストをすればいいわけだし何より吉良吉影と同じ転生者佐藤和真にパーティメンバーとして雇われているのでその雇用料でどうにかなるだろう。

最低でも食費くらいならどうにでもなる。

最低の場合の話だが。

 

「な、何だこのサラダはッ!」

 

吉良吉影は朝食として注文した定食を食べていると突然、その定食のサラダの野菜が暴れ始めたのだ。

そのサラダには昨日収穫されたばかり(・・・・・・・・)のキャベツが使われていた。

この世界の野菜は収穫されまいと必死に暴れるという常識は吉良吉影にとって嫌な教訓になった訳だがサラダになってまでも(死してなお)暴れるというのはさらに彼の気分を害した。

 

「何処まで常識外れなんだこの野菜どもは!」

 

常識外れといってもこれがこの世界では常識なので諦めるしかない。

吉良吉影が食べようとしているサラダは採りたてほやほやの新鮮な野菜を使っていたので尚更、野菜の生命力は溢れていた。

 

「【キラークイーン】ッ!コイツらを止めろ!」

 

『しばばばばばばばっ!』

 

吉良吉影は大慌てで【キラークイーン】を出現させ野菜の暴走を止めようとする。

【キラークイーン】はフォークを器用かつ素早く突き刺し野菜の暴走を確実に止めていく。

吉良吉影の声に反応してギルドの職員や他の冒険者達は【キラークイーン】を物珍しそうに見ながらも苦笑いしていた。

中には吉良吉影の気も知れず「おぉあれが噂の【キラークイーン】か!すげえ!」と興奮している者もいた。

吉良吉影はそんな彼らをギラッと睨みつけると野菜をそのまま口の中に放り込むと気難しそうな顔をして【キラークイーン】を戻した。

 

「チッ、こんな事で【キラークイーン】を使う羽目になるとは………。やはりこの世界は『安心なんて無い所』なのだな……」

 

吉良吉影はポツリとそう呟くと後は何事も無く食事を終えた。

だがそれは顔には出ていないだけで吉良吉影は赤っ恥のこきっ恥をかいていた。

食事でさえ落ち着いて出来ないのかと諦めムードだ。

杜王町にいち早く帰りたいと思った出来事となった。

 

 

 

吉良吉影は食事という名の野菜との戦いを終えるとクエストカウンター側に向かった。

そこにある掲示板にはバイトの求人広告のようにクエストの依頼やパーティの募集の用紙が張り出されていた。

吉良吉影は張り出されているクエストの依頼の用紙をまじまじと眺めどのクエストを受けようかと悩んでいる。

 

「昨日は化けカエルを吹っ飛ばしたからなあ、何か別のクエストを受けてみたいものだ」

 

クエストなどという野蛮な事は吉良吉影に向いているとは言えないが受けるからには変化があるものが良い、単調なものばかりではつまらないというのが人間として当然の心理だと言えよう。

吉良吉影とて例外ではない。

一応報酬金などを目安として見れば分かるのだが吉良吉影は自分がどのクエストを受ければ丁度良いのか決めかねていた。

極端に難しいクエストであれば重大な怪我を負いかねないし簡単なクエストであればつまらない。

そんな事もあって吉良吉影はクエスト依頼の掲示板の前に立ち尽くしていた。

 

「誰かと思えばあなたはヨシカゲではないか」

 

「こんな所に居たのですか。同じパーティメンバーなのに顔も見せてくれないなんてあんまりではないですか」

 

吉良吉影に話し掛けてきた二人の少女。

二人の少女はそれぞれ吉良吉影と同じパーティのメンバーのダクネスとめぐみんだ。

正直言って吉良吉影は二人の事を好ましく思っていない。

出会ってまだ間もないが二人の振る舞いからして嫌な感じばかりしていた。

 

「ああすまない。ただの雇われ冒険者だから無理に関わるのは良くないと思ってね」

 

正しくは無理に関わりたくないというのが本音だが。

吉良吉影は人付き合いが嫌いではあるがだからといって嫌われるというのも嫌なのである。

だからあまりそういった嫌悪感を表情には出さない。

 

「雇われ冒険者でもパーティメンバーはパーティメンバーですよ。仲間です!」

 

「その通りだヨシカゲ。めぐみんの言う通り仲間なんだからそんな堅苦しくしなくても良いのだぞ」

 

「そうか…ありがとう……」

 

吉良吉影に仲間の友情は必要ない。

吉良吉影は孤高の存在なのだ。

彼にとって彼女達の心配は余計なお世話という言葉がよく当てはまる。

さらに言えば馴れ馴れしく話し掛けてくる二人が気にくわない。

だが決してその事は口には出さない。

あくまで平穏に暮らしたい訳であり余計な敵は増やすつもりは無い。

社会に溶け込むとはそういう事だ。

 

「で、ヨシカゲはここでクエストでも探しているのですか?もしクエストに行くなら一緒に行きましょう」

 

「私からも頼む。結局ヨシカゲのスタンドが戦っているところを見ていなかったのでな」

 

「そうですね。私も見てなかったので見てみたいです」

 

(コイツら、スタンドを何かの芸と勘違いしているんじゃあないのか……?)

 

めぐみんとダクネスは吉良吉影を期待の眼差しで見つめる。

スタンドでの戦いをねだられる吉良吉影は少し困った顔をする。

その能力や正体について明かしはしているもののスタンドを何度も見られるというのは気分の良い事ではない。

 

「雇われている身としてそのくらい見せるのも義務といったところか……。いいだろう、まだ行くクエストは決まった訳ではないし君達の好きなクエストに同行させてもらうとしようかな」

(後からスタンドでの戦いを見せてほしいと言われるのは面倒だから一度見せて満足してもらうしかないか……)

 

「ありがとう、感謝する。でも手頃なクエストが無いなあ…。やはりカズマに聞いてみるか」

 

「確かにしごたえの無いクエストばかりですね。思いっきり爆裂魔法を放てるヤツがいいのですが…」

 

(何だとオ…ッ!この小娘、昨日の爆発を起こすつもりでいるのか…ッ!?)

 

「一旦、カズマの下に戻るか」

 

「ええそうですね。ヨシカゲも行きましょう。あ、そうそうカズマがあなたを探していましたよ。ちょむろう…、いや【猫草(ストレイキャット)】を返しそびれたって」

 

吉良吉影は『ちょむろう』という単語に疑問をおぼえながらもギョッとする。

昨日のキャベツ狩りでは目の前で大規模な爆発を起こされたのだから無理も無い。

【キラークイーン】の爆弾も強力な爆発を巻き起こすがめぐみんの放つ爆裂魔法【エクスプロージョン】の威力の前ではその足元にも及ばない。

そんな事は吉良吉影自身も理解しきっている。

 

「…分かった」

 

めぐみんに若干引き気味になりながらも吉良吉影は二人についていく事にした。

二人についていくとそこにはギルド酒場のテーブル席に突っ伏せて泣くアクアと暴言を吐いているカズマの姿があった。

アクアの側には【猫草(ストレイキャット)】が置かれている。

今さっきまでここで何があったかは知らないが知りたいとも思わない。

 

「二人とも何をしてるんですか。カズマは口撃力が高いですからね、あまり言い過ぎると大体の女の子は泣きますよ」

 

呆れた様子でめぐみんは言った。

 

「アクアの事は気にするな……吉良さんッ!?」

 

めぐみんと同じ様に呆れた様子で反省していなかったカズマの吉良吉影のいきなりの登場にはビビった。

 

「ねえヨシカゲ!このクソニート、私には回復魔法しか取り柄がないなんて暴言を言ってきたのよ!」

 

「ああコイツ!吉良さんが来たからって調子に乗りやがって!」

 

先ほどの落ち込みっぷりは何処へやら、吉良吉影が来た事に気づいたアクアは伏せていた顔を上げ勝ち誇ったような顔をして吉良吉影に泣きついた。

吉良吉影による制裁に期待したのだろう。

しかし吉良吉影は特に怒るような素振りを見せなかった。

 

「まあ同じパーティメンバーなんだ…。仲良くしような……」

 

意外な吉良吉影の対応にカズマは不意をつかれたように間の抜けた表情をする。

アクアは期待外れと言わんばかりに頰を膨らませる。

吉良吉影は冷静だとかそういう訳ではなくただ単に面倒臭く思っているだけのようだ。

 

「そうですよカズマ。いちいちこんな感じでいたらまともにパーティを組めたものではありませんよ」

 

「冒険者たる者、仲間を大切にするべきだ。それにだ、口汚く罵るなら仲間を守るクルセイダーである私に…」

 

(何て品の無い女なんだ…。これからこんな奴らと過ごしていかなければならんのか………。美しい顔と手をした女だが『彼女』にするのはこちらから願い下げだ………)

 

めぐみんは真面目にカズマを諭すがダクネスは諭すというよりも勝手な妄想をしてモゾモゾとしている。

めぐみんはともかくダクネスの様子を見て吉良吉影は今にでも【バイツァダスト】を発現させそうな気分になっていた。

 

「二人には色々と言われたくない。…そういえば吉良さん、昨日【猫草(ストレイキャット)】を忘れていましたよ。それとこの子がキャベツを仕留めた分の報酬が飼い主の吉良さんに出てるみたいなんで受け付けまで取りに行っておいてください」

 

「そうか、了解した。それはそうと君達、これからクエストに行くつもりなんだろう?私も同行させてもらう」

 

アクアとめぐみんとダクネスの三人はカズマの方をじっと見る。

その視線は「もちろん承諾するよな?」と威圧をかけているようだった。

 

「そ、そうですね。せっかくですのでお、お願いします」

(出来れば吉良とのクエストは避けたかったがあの三人の視線が妙に気になる。断ったらアイツら面倒臭そうだしなあ…。いや俺は雇い主なんだ。雇い主は雇い主らしくドンと構えてればいいんだ)

 

上つった声でカズマは答える。

少しオドオドしながらも心の中で自分自身に言い聞かせている。

 

「クエストに行くならアンデット族のクエストにしないか?そのクエストなら攻撃の手段に乏しいプリーストでもアンデット族のモンスターならば回復魔法でダメージを与えられるからアクアのレベル上げにうってつけなんだ」

 

ダクネスが提案する。

 

「私は自分達に見合う難易度のものならば異論は無い」

 

「私も構いません」

 

「俺もそのクエストでいい。アクアのステータスも気になるしな」

 

アクア以外の全員がダクネスの意見に賛同する。

しかし肝心のアクアはそれに答えなかった。

だからといってそれに反対する声さえ上がらない。

不思議に思ってその場合の全員がアクアを見ると彼女はすでテーブルの上にすぴーっとうつ伏せで寝ていた。

満場一致で「お前は子供かよ!」でツッコミを入れたくなった。

 

 

 

そこは街の外れにある丘の上の共同墓地。

そろそろ夕方になろうとしている時に墓場でアンデッドモンスターの活動時間である夜を待つべくカズマ一行はキャンプをしていた。

今回カズマ一行が引き受けたクエストはゾンビを操る悪霊ゾンビメーカーの討伐。

初心者でもそんなに難しいクエストではないらしい。

アンデッドモンスターは言ってしまえば俗に言うゾンビではあるが屍生人(ゾンビ)ではない。

故に血管針による攻撃の心配は無い。

波紋呼吸法を利用した攻撃によるダメージの有無は変わらないであろう。

吉良吉影にとっては関係の無い事ではあるが。

ゾンビメーカーの出現まで時間があるとはいえ墓場でキャンプするのは異様な光景だが誰もそれにツッコもうとしない。

吉良吉影は「この世界ではこれが常識なのか?」と疑問に思っていた。

この世界に関しては疑念が深まるばかりである。

その一方で同じ世界的から来た【猫草(ストレイキャット)】はこの状況を気にすることなく空を飛んでいる小鳥に向かって呑気に空気弾を当てる遊びをしていた。

 

「ヨシカゲも一緒に食べないのー?」

 

「この肉、結構イケますよー」

 

「遠慮しなくてもいいのだぞ」

 

「私は構わないでくれ。私はここで見張りをしているさ。いつ何処からモンスターが襲ってくるか分からないな」

(何とも鬱陶しい奴らだ…)

 

「お前ら、吉良さんが困っているだろが!」

 

木陰でのんびり【猫草(ストレイキャット)】の様子を見ている吉良吉影に楽しそうな声でアクア達が話し掛ける。

それを慌てて止めるカズマ。

カズマ以外はまだ吉良吉影の気を知れていない。

 

「自分から進んで見張りをしようなんて冒険者の鏡だわ。何処かのヒキニートとは違ってね」

 

「誰がヒキニートだと!この駄女神!」

 

「ああ!一番言ってはならない事を言ってくれたわね!」

 

「二人ともそんな些細な事で喧嘩しないでください」

 

アクアは何か勘違いしているようだったが吉良吉影は気にしない。

勃発したアクアとカズマの口喧嘩に呆れるめぐみん。

そんな光景を見て吉良吉影は改めて心からこう思った。

静かに暮らしたい、と。

 

「念の為、敵の体温を感知し自動追尾出来る(・・・・・・・)【シアーハートアタック】を出しとくか」

 

 

 

カズマ一行が共同墓地に到着して数時間後、夕方はすっかり過ぎてしまい夜になっていた。

夜の墓場は昼間の墓場の雰囲気よりもより一層不気味さが引き立っている。

今にでも白い着物を着た女の幽霊でも出てきそうなそんな不気味さだった。

この世界では一般的に幽霊はごく普通な現れ出るものだが。

 

「吉良さん、もうそろそろ行きますよ」

 

カズマは吉良吉影に呼び掛ける。

しかし返ってくるのは沈黙のみで吉良吉影の返事は無かった。

少しして【猫草(ストレイキャット)】の『ウニャ?』と安心しきった気怠そうな鳴き声がしたので吉良吉影が何処かへ行ったという事は無さそうだ。

時刻は深夜、この暗い中での【猫草(ストレイキャット)】の声にカズマはビビり上がる。

 

「まさか、モンスターに襲われているって訳じゃないんだろうな?」

 

カズマの心に不安がよぎる。

 

「どうしたのカズマ?」

 

「どうしたのじゃねえよアクア。【猫草(ストレイキャット)】の鳴き声はするのに吉良さんの返事が返ってこないんだよ。もしかしたらモンスターに襲われてるのかもしれない」

 

「馬鹿ねえカズマ。チート特典持ちのヨシカゲがモンスターに襲われたとしても平気に決まってるじゃない」

 

「そうだろうけど吉良さんはチート特典なんか持ってない」

 

「心配し過ぎよ。…は?今なんて?」

 

カズマはアクアに吉良吉影のスタンドについて自身の考察を交えて話した。

スタンドは魔法と同様に人類がその存在を忘れている、もしく知らないだけで誰でも潜在的には使えるか可能性がある事など。

半分合ってて半分外れている考察であるがアクアを納得させるには十分な考察だった。

 

だが断る

 

「どういうやり取りしたら今の答えが出るんだよ!」

 

「いや、何か言ってみたかったの」

 

「…取り敢えずあそこの木陰まで吉良さんを呼んでくる」

 

カズマはせっせと木陰まで駆け寄る。

そこには木にもたれかかって眠っている吉良吉影の姿があった。

猫草(ストレイキャット)】が気怠そう鳴いているのも頷ける。

余計な心配をしていたカズマは心配して損したと溜め息をつく。

 

「吉良さん、起きて下さい。ゾンビメーカーの討伐に行きますよ」

(見張りをしてるんじゃなかったのかよ)

 

「おっとすまない。私としたことが眠ってしまっていたようだ」

 

吉良吉影にして珍しく申し訳無さそうに立ち上がると【猫草(ストレイキャット)】を抱えてカズマについて行った。

カズマ一行はさっきまでキャンプをしていた場所に集合するとすぐに墓場内へと向かった。

暗闇の中カズマの敵感知スキルを頼りに進んでいるとカズマが何かに気づいたのか急に立ち止まる。

 

「どうしたんだカズマ?」

 

「敵感知スキルに反応があった。墓場内にゾンビが三体、いや四体いるぞ…!」

 

カズマはとある違和感に気付く。

ゾンビメーカーを取り巻くゾンビは多くても三体というのが一般的なのだが今回カズマの敵感知スキルに引っかかったゾンビの数はそれを上回っていたのだ。

誤差の範囲内ではあるがカズマはこの状況をおかしく思った。

 

「あれがゾンビメーカーという奴か。人に請われて見せるものではないがここで君達に私のスタンドを見せて上げよう」

 

カズマ一行の視線の先には怪しげに青い光を放つ魔法陣があった。

その魔法陣の中央には黒いローブを着たゾンビメーカーと思しき姿がある。

カズマを除いて興味津々のメンバーを目の前にして吉良吉影が【キラークイーン】を出現させた。

【キラークイーン】は恐る恐るゾンビメーカーと思しき者に近づく。

 

「亜人の幽霊なんてここらへんじゃ珍しいですね。しかも見たことの無い種類の亜人だわ」

 

ゾンビメーカーと思しき者はボソボソと呟く。

【キラークイーン】はそれに構うことなくゾンビメーカーと思しき者を取り押さえる。

今回のクエストの目的はアクアのレベル上げ。

【キラークイーン】はゾンビメーカーを取り押さえるだけでこれ以上の事はしない。

後はアクアにトドメを刺させるだけだ。

 

「え!?これって幽霊じゃないの!?実体化してる!?」

 

ゾンビメーカーと思しき者は驚く。

スタンドとは場合によって『幽波紋』と書いて『スタンド』と読むことがある。

初めてスタンドを見た者はそれを悪霊や守護霊と勘違いされる。

あくまでスタンドとは精神エネルギーが形あるヴィジョンとして現れたものでありそれ以上でもそれ以下の存在でもない。

今回の場合、ゾンビメーカーと思しき者は【キラークイーン】をただの幽霊だと勘違いしたようだ。

 

「ああああああああ!!あれってゾンビメーカーなんかじゃなくてリッチーじゃない!!」

 

アクアが突然、大声を上げる。

そして一人で走り出す。

リッチーとはアンデットの中でも最上位に立つ存在。

ノーライフキングと呼ばれることもある。

そんな大物アンデットモンスターがカズマ一行の目の前に現れたのだ。

 

「リッチーなんてこの水の女神様が浄化してやるわ!!【ターンアンデッド】!!」

 

「痛い痛い!やめてええええ!!」

 

【キラークイーン】で拘束されたリッチーは抵抗出来ずアクアの浄化魔法【ターンアンデッド】を受ける。

浄化魔法を受けたリッチーは一溜りもない。

 

「待って!私は未だに成仏出来ない魂を天に還しているだけなのおおお!!」

 

「うるさいわね!!リッチーのくせにこの私に逆らう気!!アークプリーストの私としてはアンデッドの王を野放しにしておく訳にはいかないのよ!!」

 

「ちょっと待ってアクア!一旦落ち着け!」

 

リッチーは助けを請うがアクアは容赦無く浄化魔法をかけようとする。

そんなアクアを見てカズマは真っ直ぐにアクアを引き止めに行く。

吉良吉影も【キラークイーン】による拘束を解いた。

「やめてやれ!」

 

「あんたまでうるさいわね!邪魔立てする気!?」

 

この騒ぎにめぐみんとダクネスは急いで駆け寄る。

その後を吉良吉影は【猫草(ストレイキャット)】を持ってゆっくりとついていく。

 

「おい、リッチーのあんた、大丈夫か?」

 

「私は大丈夫です。それよりも私を助けてくれてありがとうございます。…あ、名前はウィズです」

 

「礼なんて良いよ。ところであんた、こんな所で何をしてんたんだ?成仏出来ない魂を天に還しているとか言ってたけど」

 

「私は迷える魂の話を聞くことが出来るんです。ここの墓地に埋葬された多くの方々はお金が無いばかりにロクに葬式なんかを執り行なわれず成仏しきれなかった魂は夜な夜なここを彷徨っているのです。そこでアンデットの王として私は彷徨う魂を天へと還す御手伝いをさせて頂いているのです」

 

「あんた、滅茶苦茶良い奴じゃねえか」

 

カズマはリッチーのウィズの予想外の行いに感心する。

 

「そんな、とんでもないです。ただアクセルの街のプリーストは何と言いますか、お金の無い方々の葬式なんかは後回しにされちゃって…私がこうやって定期的にここに行かないと彷徨える魂で溢れかえってしまうんです」

 

その時だった。

吉良吉影は左手に違和感を感じる。

痛かったり痒かったりするわけではないがつっかえたようなものを感じた。

 

「しまった………」

 

【キラークイーン】の能力をリッチーに対して使わなかったので気付くのに遅れてしまった。

その違和感の正体は【シアーハートアタック】だ。

吉良吉影は夕方に【シアーハートアタック】を射出したまま寝落ちしてしまった(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

オイ、コッチヲ見ロォ

 

くぐもってはいるが不気味な声と共にギャルギャルギャルと聞こえてくるキャタピラ音。

 

「ねえカズマ、何か聞こえない?」

 

「俺も聞こえた。なあウィズ、ゾンビってこんな不気味な物音を立てて動いたりするものなのか?」

 

「い、いえ…。リッチーの私でもこんな物音を立てるゾンビなんて見たことも聞いたこともありません」

 

ウィズの返答を聞いて一同は震え上がる。

間違い無くヤバい何かがいる、カズマ一行はそう思った。

吉良吉影は焦っている。

早く不気味な物音の正体、【シアーハートアタック】を回収しなければならない、と。

 

コッチヲ見ロッテ言ッテルンダゼ!

 

(非常にマズイ…ッ!まさかこの私が【シアーハートアタック】をそのまま回収し忘れてしまうとは………)

 

遠隔自動操縦型の爆弾スタンド【シアーハートアタック】。

その性質故に大雑把な位置は分かるがスタンドの本体にも細かい位置まで特定出来ない。

しかもスタンドの本体の思考通りではなく自律して動くので吉良吉影自身でも制御は出来ないのだ。

だからといってこのまま放置していてもカズマ達に危害を加えかねないので後で回収する訳にはいかない。

吉良吉影は自分のスタンドが災いするとは夢にも思わなかった。

 

「ここここ、こっちに向かって来てないか……?」

 

コッチヲ見ロォ!!

 

「お、お前ら逃げろおおおおおお!!」

 

カズマの叫び声を合図に一同は一目散に共同墓地から走り去る。

真夜中の墓場に響き渡る絶叫。

まさに阿鼻叫喚の光景だった。

どさくさに紛れて吉良吉影は【シアーハートアタック】を回収する為に辺りをウロウロとする。

 

(今だ!今、【シアーハートアタック】を回収するのだッ!)

 

「何をしているのだヨシカゲ!早く逃げろ!」

 

「私が得体の知れない何かを足止めするから君は逃げるんだ…」

(チッ…、面倒な奴だ…)

 

ダクネスがその場に残った吉良吉影を心配して引き返して来た。

何としてでも【シアーハートアタック】を誰にもバレることなく回収したい吉良吉影は【キラークイーン】に戦闘の体勢を取らせて不気味な物音に対しての戦意がある風に見せる。

 

「そんな事はクルセイダーである私の役目だ!」

 

「私に構うんじゃあないッ!」

 

「し、しかし…っ!」

 

「私は足止めすると言っているのだッ!!」

 

「あなたという者は何て仲間想いな人なんだ…。分かった!必ず戻って来るのだぞ!」

 

「ああ……」

(【シアーハートアタック】の細かな見た目などを誰にも見られずに済んだのは不幸中の幸いというべきか………)

 

引き返して来たダクネスを吉良吉影は逃げる時間を稼ぐふりをしてそのまま帰らせた。

吉良吉影はダクネスがいなくなるのを確認すると【シアーハートアタック】を無事回収し置いてけぼりにされた【猫草(ストレイキャット)】と共に街に帰った。

この一件で冒険者の間では殺人鬼でありながら吉良吉影は寡黙な男だが仲間想いの良い奴と認知される事になった。

元から誰にも打ち明けるつもりは無いとはいえますます不気味な物音の原因が全て自分にあるとは言えなくなっていた。

ちなみにクエストはノルマであるゾンビメーカーを討伐出来なかったので失敗である。




いやあ今回ゾンビメーカーは出ませんでしたがシアハがトラブルメーカーになりましたね←(何言ってんだ……………?…こいつ……)
ただ言いたい事が思いつかなかっただけです。
何でもはしないけど許してください。

アニメ版このすばのシーンが変わる時のアレ

カズマ アクア「こ」

めぐみん ダクネス「の」

キラークイーン『しばっ』

吉良吉影「このクソカスどもがァーッ!!」
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