ロアナプラから来た男   作:天膳桜

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プロローグなので少ないです。
本当に申し訳ない(メタルマン)




プロローグ

俗に言う輪廻転生をした。

日本で生まれ、普通に生き、普通に働き、普通に事故で死んだ。

 

前世に関して覚えている事はその程度。

どうも思い出がポロポロと言う具合に記憶が抜けている。

 

神に会うでもなく、徳を積むでもなく気づいたら赤ん坊。

 

まず、意識が戻った時に初めて見たのは四人組。

 

 

スキンヘッドにサングラスをかけた髭面の黒人の男。

金髪を後ろで纏めたアロハシャツの白人の男。

緊張した様な面持ちの日本人らしき男。

そして・・・・・・・・。

 

「あー・・・・・・・・タバコ吸いてえ。ロック」

 

「バカ! 子供がいるんだぞレヴィ!」

 

「オギャアアア!(ブラックラグーンかよ・・・!)」

 

どうやら神は俺を地獄に叩き落としたらしい。

くたばれ。

 

 

 

ブラックラグーン。

悪逆の溜まり場であるロアナプラで活躍する運び屋に誘拐された主人公、岡島緑郎が困難を乗り越え悪党に成長していく物語。

 

 

最悪だ。

何が最悪って、この町が。

 

ロアナプラ。

曰く、世界中の悪と言う悪が集まった場所。

 

死人が出るのは当たり前の無法地帯で死体が残れば幸運な方。

 

原作でもメイドに酒場が爆破されたり、ロシアンアラレちゃんが戦争したり、アメリカとメイドとソ連が戦争したりとスケールが大きすぎる。

 

しかし、そんなロアナプラを俺は何とか15歳まで生き残った。

 

それも今世の体のスペックの高さと戦闘に関する手本が沢山あったからだろう。

子供特有の柔軟な頭と体はどんどん技術を吸収した。

 

母に銃の扱いを叩き込まれたり、父に語学や交渉を実地でやらされたり、ククリナイフの扱いや人体の解剖のバイトで吐いたり、教会でギャンブルしたり、ネオナチに追われたり、火傷おばさんの演習にぶちこまれたり、眼鏡メイドに訓練を受けさせられて地獄を見たり・・・・・・・・。

 

「––あれ? 何かおかしいのが無いか?」

 

まぁ、いいか。

 

そんな物騒なブラックラグーンの世界だが基本的に物語は両親が絡まなければ進まない。

 

つまり、親から離れれば問題はないのだ。

 

 

 

 

ブーゲンビリア貿易の貨物船に揺られに揺られて、ああ、懐かしき日本の大地よ。

 

私は帰ってきた。

 

「リク、銃なんかはいつでも海兵特急便で届けてやるからな」

 

「オーケイ、マジありがとうな。バラライカおばちゃんによろしく頼むよ。サハロフさん」

 

「大尉をそんな風に言うなんて命が幾つも合っても足りやしねえよ」

 

バラライカさんからは猫可愛がり(ロアナプラ基準)されたからな。親が親だから子も期待された訳だ。 

 

だからと言って軍訓練にぶちこまれたりしたのは許さない。

 

 

 

「さて、荷物は・・・・・・・・お、入ってる」

 

キャリーバッグからファイルを取りだし開く。

 

「岡島リク。孤児院で生活しながら通信で中学卒か」

 

ベニーが用意してくれた戸籍のお陰で今日からは岡島リクとして銃や暴力とは無縁の世界へ。

 

学園生活。

良い響きだ。

ロアナプラだとまともな女の子居なかったしな。

 

 

「とりあえず、張さんの知り合いが勤めてる学校に寮があるから、そのまま入る事も出来るって話だったよな」

 

張さんは中華系マフィア「三合会」のロアナプラ支部長をしているギャグのセンスが壊滅的なオッサンだ。

 

どうも、知り合いの娘が教師をしているらしい。

 

たしか、東京なんちゃら高だったか?

張さん曰く、暴力とは無縁の学校を選んだと言っていた。

 

 

 

 

「おー、こりゃすげえ。人工島か」

 

久方ぶりに見た賄賂を要求しない、警官に道を聞き進むこと十数分。

ようやく見えてきた。

 

みえている島一つが丸々学園とかスケールでかいな。

 

俺と同じ様に入学試験の書類を持った奴が何人もいる。

 

 

 

「さて、まずは張さんの知り合いを探すか」

 

とりあえず学園の正門と言う目につく場所に居る、タバコを吹かす女と制服を着た生徒を蹴り飛ばす女から話しかけてみるか。

 

「あー、どうも」

 

「なんや、お前。受験生かァ? もう試験まで時間が無いんやぞ。急げや、死なすぞ」

 

ガラわるいな、この女。

 

「蘭豹って方を知りませんか? 張さんからの紹介で来たと伝えていただければ・・・・・・・・」

 

「あ? なるほど、お前が張の言ってた奴かァ」

 

え、張さん。知り合いは世間知らずのお嬢様って言って無かったか?

 

これ、お嬢様って感じじゃねえだろ。

ロアナプラにいそうな位、凶暴そうなんだが。

 

「なら早速これに着替えておけや」

 

そのエラく巨乳のアホみたいな女が学校の制服を投げ渡してくる。

 

分厚さ、繊維の質。これは間違いなく。

 

「・・・・・・・・なんで防弾なんだ?」 

 

「はァ? ここ武偵高やぞ。当たり前やろうが」

 

武偵・・・・・・・・?

 

「武装探偵。自由捜査とぉ逮捕権。発砲の許可をもつ探偵の事だー。知らないでここに来たなら笑えるなー」

 

匂いからして薬をキメている女が説明してくれる。

なるほど、理解した。

 

「張ンンン! あの黒目野郎が!」

 

空の彼方には笑いながら白い歯を光らせる張の姿を幻視した。

いずれ尻にC4しかけて月まで吹き飛ばしてやる。

 

「おお、元気ええやないか。さっさ行って殺しあえィ!」

 

「え、マジすか」

 

「マジもマジ、二、三人死ぬまで殺しあえや!」

 

――悲報、日本もロアナプラと変わらない。

 

 

 

 

その生徒はトボトボと制服を持って試験会場に歩いていく姿はもう見えない。

 

タバコを吸いきった私は隣に居る蘭豹に聞いてみることにした。

 

「蘭豹、あいつ何者だー?」

 

「あー、なんや綴。知り合いのツテでな。ウチもどないなくらい腕が立つかは知らん」

 

蘭豹が少し、言いよどんだ事から間違いなく香港マフィアのツテだろう。

 

「見た目は目付き以外は普通の感じだったけどなー」

 

「それはウチも思うがなぁ、張があれだけ推すって事はゴッツイ何かを隠してる筈や」

 

多分なと笑う親友に若干呆れる。

 

「それより、あいつ銃持ってんのかー? 行かせた場所、武偵中学からの試験会場だろー」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

親友は無言で走り出し、私はもう一本タバコに火をつけた。

 

 

 

 

ビルでの人狩り(マンハント)。

殺さず無力化する事。

 

「あー、なんで日本もこんな物騒になっちまったかな」

 

制服に着替えて指定されたビルに入ると一階には同じデザインの制服を着た奴らが60人程度は居た。

 

彼らの無駄のない動きを見る限り、誰もがある程度鍛えられているようだった。

……ロアナプラのチンピラ程度には。

 

あー、適当に頑張って張さんの面子を立てたらリタイアしよ。

 

つか、最悪バックレるって手もあるが後が怖いしな。

 

「試験開始三分前! 武偵は時間厳守だ! 所定の位置へ!」

 

出入り口が塞がれ、生徒の波に流される。

さてと。

 

「いて! おい、足踏むなよ・・・・・・・・」

 

「おっと、と。すまんすまん。もし試験で当たったら手加減してやるよ!」

 

根暗そうな生徒に謝りながら階段を上がり所定の位置に着いた。

 

俺は懐から銃を取りだして点検する。

 

「ふーん、ベレッタか。手入れもしてある。弾は実弾か・・・・・・・・」

 

足を踏んで気を反らし生徒からスリ盗った銃をベルトに挟み開始の放送を待つ。

 

あの生徒には悪い事をしたかもしれないが俺も悪党だ。流石に銃相手に素手でボクシングは勘弁願いたい。

 

 

「気づいたら直ぐにリタイアするだろ」

 

楽観的に構えて待つこと二分程度。

 

ブザーが鳴り響く。

 

人狩りの始まりだ。

意識を深く沈めて行く。

 

拿捕が目的、殺さず武装解除と拘束。

 

「さぁ、躍るとしようか!」

 

 

 

 

 

「アカン、間に合わんかったか!」

 

ウチは試験官が試験を監視するためのモニタールームに駆け込んだ。

 

昨日の夜に綴と飲んだ勢いで携帯を握り潰して無ければ試験を止めさせられたんやが。

 

流石に張の秘蔵っ子でも銃が無いなら話にならん筈や。

 

「あー、試験はどないや」

 

「蘭豹さん、今年は豊作ですよ。もう既に試験官が三人倒されてます」

 

「は?」

 

受験生には学生たちだけでゴチャマンさせる、ゆうとるが実は隠れた試験官が生徒を襲う手筈になっとる。その試験官が倒された?

 

「仮にもプロ武偵やろが! どいつや、どの受験生がやったんや!?」

 

「二人です、一人は素手で。もう一人は銃で」

 

素手。もしや張の秘蔵っ子か?

 

モニターを確認すると素手で受験生を拘束しているのは知らん奴。

 

なんや、アイツやないやんけ。 

 

銃を使い、制圧してる奴は今さっきの奴。

 

「おい、銃持っとるんかい!」

 

ここまで走らせて無駄骨やとぉ?

あとでジャーマンスープレックスで頭蓋骨ベコベコ言わしたろ。

 

 

 

 

「んー、今いやな予感がした」

 

不吉が近づいていそうだ。

 

生徒を7人、オッサンを2人程気絶させたが終わりが見えない。

 

残弾も後3。

 

「使いきったらリタイアするか」

 

次に合った奴をぶちのめして終わりにする事に決めた。

 

階段を上がり広間に入ると複数人がワイヤーで拘束されている。

 

銃の硝煙が匂わねえ。

素手か武器か。

 

銃を使わないってシェンホアか銀二の様に拘りがある奴がいるらしい。

 

そして、気配がする。

この部屋に潜んでやがる。

 

「よお、かくれんぼかよ。俺も混ぜてくれ」

 

「ああ、その前にそいつは俺の銃なんだ、返してくれるか?」

 

「誰かと思えば色男(ロメオ)じゃねえか」

 

隠れていたのは銃を頂いた生徒だった。

 

「返して欲しいのか?」

 

ベレッタを地面に落とす。

 

「ああ・・・・フェアにッ!」

 

嘘だろ、隠し持っていたコルトパイソンで一発撃ったが完全に避けられた。

 

「いや、バケモンかよ」

 

ほぼ、不意討ちに近いはずだぞ?

 

「いや、簡単な推察さ」

 

「いいね、いまからシャーロックみてえにご高説垂れようってか? 勘弁してくれ」

 

ベレッタを蹴り上げ階段の後方へ捨てる。

 

「手加減してくれるんじゃ?」

 

「はっ、俺は銃の弾丸を斬る奴と避ける奴、そしてメイドには容赦はしないって決めてるんだよ!」

 

一気に決める。

俺は色男の顔を剥ぐ位の気持ちで奴の懐に突っ込む。

 

奴は突っ込んできた俺に対して、身を低く、素早く動きフェイントをかけ、死角である左に駆け抜ける。

 

「くたばれ!」

 

放つは全力コロンビア式殺人メイドキックだ。

コンクリを蹴り砕くほどの威力がある。

 

 

「フッ!」

 

その一撃を色男は紙一重で反らした。

その蹴りを重心移動に使いながら空を舞う。

 

 

階段へ走る後ろ姿に一発撃つが、当たる気がしねえ。

 

当然の様に回避。

やるねえ。

 

「メイドに容赦はしない? それは聞き捨てならないな。女性は守り愛でる存在だ。そうだろう?」

 

「そりゃ、強い女性を知らんから言える言葉だな?」

 

キンタマ蹴り砕かれそうになってもそう言えるなら本物だな。

俺が捨てたベレッタを片手に奴は帰って来た。

 

「ベレッタを回収されちまったか」

 

「こいつは俺の手に収まるべきだからね」

 

まぁ、ベレッタには弾は入ってないし銃にも細工をして壊してあるからいいんだが。

撃てば暴発は必至。

 

「もういいだろう? 銃ではなくこいつで勝負をしよう。どうやら弄られてる様だしな」

 

奴はバタフライナイフを構える。

 

 

「バレてるか。お前、何で俺に銃をスラれたんだ?」

 

俺はオッサンが持っていた分厚いコンバットナイフを構える。

 

「あの時はまだ『なって』いなかったからさ」

 

上段、下段。

 

喉と太股。

回避をしにくい中心線を狙い半身で攻める。

 

「『なって』ねえ。ジキルとハイドにでもなったつもりか?」 

 

「さぁ、どうだかな!」

 

綺麗にバタフライナイフで受け流す。

奴は笑っている。

 

俺も笑っている。

 

「いいな。ここまで拮抗しているのは初めてだ」

 

「俺もここまで仕留めきれないのは初めてだよ、くそったれ」

 

「名前は?」

 

「岡島リクだ」

 

この会話の間にもナイフは交差し互いに浅い切り傷を残している。

 

「俺は遠山キンジだ」

 

「墓に刻む名前は覚えたぜ。キンジ」

 

ナイフを投げる。

当然、回避されるが予想の範囲。

 

ボクシングといこうぜ。

 

「オラァ!」

 

拳は頬にクリーンヒットし、キンジはナイフを落とした。

 

「グッ! まだだ!」

 

「ガッ! やってくれたな根暗が!」

 

「なんだと? チンピラ!」

 

一発、一発に最大の力を込めて殴り合う。

技術もへったくれもない殴り合いだ。

 

最後に拳がキンジの顎を粉砕する直前。ブザーが鳴り響く。試験終了の合図。

 

キンジの拳は俺の目の前で止まっている。

 

「ペッ、命拾いしたな石頭」

 

「続けたらこっちが勝っていたさ」

 

キンジは手を差し出して来た。

 

「多分、二人とも合格だろうしな。これからよろしくな、リク」

 

「・・・・・・・・そうだな。少しはこの学校に興味が湧いてきたぜ」

 

キンジの手を握り笑った。

 

今思えば、これが後に世界を股に駆ける戦争に巻き込まれていく最初の1ページとなるのだろう。

 

しかし、この出会いを俺は後悔しない。

 

物騒で危なくて――だがそれ以上に楽しい青春の始まりでもあったのだから。

 

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