ロアナプラから来た男   作:天膳桜

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色々と説明臭い部分もありますが、お兄さんゆるして。


邪道の闘争

遠山キンジはツイて無かった。

朝一、自転車に爆弾を仕掛けられる世にも珍しいチャリジャックを受けた。

そこで空から降って来た女の子に助けられるが強猥犯と勘違いされる。

その女『神崎・H・アリア』は自分を武偵のパートナーに仕立て上げようとしている。

さらには部屋に押し入りキンジは追い出されてしまった。

 

「リクに相談しよう・・・」

 

 

去年、事件で死亡した自分の兄『遠山金一』は乗客からの訴訟を恐れたクルージング・イベント会社により無能な武偵として異様なバッシングを受けた。

沈没した船から乗員・乗客を避難させたにも関わらず。

 

身内である俺も当然、鬼の首を取ったかの様に非難された。

 

人のために死ぬ程頑張っても恨みを言われる損な仕事はもうしたくない。

 

そんな時、相談に乗り解決策を一緒に考えてくれたのが岡島リクだった。

 

マスコミ各社に話を持ちかけ、最終的には逆にツアー会社の方がバッシングを浴び、正式に謝罪会見がなされた。

 

『金で操れるモノはそれを上回る力で動かせるもんなんだぜ? キンジ』

 

そう言って兄の墓に女性用ブラジャーを供え、女装好きの変態へと紙に書いたリクは笑った。

 

墓の前でリクと殴り合いになった。

 

 

チャイムを鳴らすが全く反応がないし、電話にも出ない。

 

「またか、あいつ」

 

ドアを開けると、中から酒の匂いがする。

 

廊下にはゴミ袋が複数並べられていて、それを避ける様に奥へ進む。

 

リビングに入ると大量の酒瓶が並べられてタワーを作っていた。

岡島リクはその中で埋もれるように倒れて眠っている。

 

「おい、起きろよ」

 

揺さぶりをかけるが起きない。

これは相当飲んだらしいな。

 

こいつに対するクリティカルワードを使う時が来た様だ。

 

「メイド」

 

「ッ!?・・・ ってキンジかよ」

 

眠っていたはずのリクは両手にしっかりとカトラスを握り跳ね起きた。

 

「やっぱりメイドはだめなのか?」

 

「いや、正確には車に走って追いつき拳で鉄を歪めるターミネーターだからな。それがバインバインのメイドだってだけだからよ」

 

コイツの中のメイドはどうなってるんだ?

 

 

 

 

俺が気持ちよく寝ていた所を叩き起こされた。

 

メイドと聞くとどうもロベルタを思い出してしまう。

 

悪を駆逐しろ。

お前の母親の様になるな。

坊ちゃんと遊んでくれ。

 

どうもコロンビアでの訓練が未だに俺の心に深い傷を残している。

 

「んで? ご用件は?暴力団相手にカチ込み? 麻薬カルテルの摘発? 売春グループの壊滅か? もしくは、ジン・ラミーとでもしけ込むか?」

 

「いや、違う。実はな」

 

キンジの口から語られたのは糞どうでもいい悩みだった。

 

「は、アホくせえ。んな事自分で解決しろや」

 

「いや、アリアが急に押しかけて来て強引に! 実力を勘違いされてるし困ってるんだ!」

 

実力を勘違いって事は『なった』のか。

 

「お前、キンジ言ってるだろ。実力の出し惜しみはやめろって。お前が女を優先して動こうがヘマしようが俺やレキが支えてやるからって。お前が本気なら最低限一人でもチャリジャックから逃れられたんじゃないか?」

 

「だけど・・・!」

 

「キンジ。だけど何て修羅場じゃ通用しねえ。お前も俺もレキも三人でこの一年間どんだけ死にかけた? お前だってわかってるだろ? 絶対絶命の時に俺がレキのスカートめくって『なった』事もあるだろうが」

 

コイツのトリガーは性的興奮。

一年間の間にキンジは俺とレキに自身の能力に関して話していた。

 

「兎に角、お前のランクがEに下がり、俺も素行でBまで下げられた。そんな中、パートナーになって欲しいと突っ込んでくる様な奴なんだろ? 間違いなく切迫しているんだろうよ」

 

「切迫?」

 

「早急にパートナーがいる。つまり自分の腕では立ち向かう事が困難な敵がいるんだろ。少しは落ち着いて事情を聞いてみたらどうだ?」

 

正直言って面倒だ。

痴話喧嘩の仲裁なんぞやってられるか。

 

「・・・ああ、わかった」

 

「そうしろ。俺は明日も二日酔いで寝坊する予定だから」

 

キンジはショボくれた背中を向け部屋から出て行った。

 

「まったく。依頼でもないのにやってられねー」

 

俺は更に酒をグラスに注いで一気に流し込んだ。

 

 

 

 

 

 

「アンタが岡島リクね? キンジから聞いてるわよ!」

 

朝起きて部屋から出るとガキがいた。

ピンクのツインテール顔立ちは恐ろしく整っている。

 

「アンタ、酒臭いわ・・・」

 

「はいよ、すいませんね。お嬢ちゃん。ここ男子寮だぞ?」

 

キンジから聞いている?

もしかしてだがアイツ。

 

「ひょっとして、神崎か?」

 

「良く分かったわね! そう、キンジとパーティを組んでいた岡島リク。ランクはS。銃撃戦、格闘戦ともにレベルが高い人材だってキンジに教えてもらったわ!」

 

あの野郎、売りやがったな。

 

「キンジを殺す事は確定したんだが俺に何の用だ」

 

「アンタ強襲科でしょ? 今日少し相手して貰えるかしら」

 

相手してやってもいいが、強襲科行くとうるせえんだよなぁ。

二日酔いに響くし。

 

「勘弁してくれ。今日は依頼が入ってるんだ」

 

「嘘ね。レキからアンタのスケジュールは聞いてるわよ」

 

「は?」

 

怖っ。

何故、レキは俺のスケジュールを知っているのか。

 

「報酬は出ますかね、プリンセスライミー?」

 

「アンタ、風穴開けるわよ! このイエローモンキー! はぁ、三万円で良いかしら・・・」

 

んー、まぁいいか。

 

「いいぜ、5限でいいか?」

 

「もちろん、楽しみにしておくわ」

 

俺は怠い身体を起こし、キンジを殺す為に武偵高へ登校する事に決めた。

 

 

 

 

「おはよう、死ね」

 

朝一番の教室に銃声が響き渡る。

 

「ガッ!? 何すんだリク!?」

 

登校すると即座に座っていたキンジの腹にカトラスで発砲した。

 

「お前な、人に相談しといて人の事を売ってんじゃねーよ! 額でタバコ吸わないだけマシだと思えや!」

 

「だからって撃つか!? 大体、アリアは元からお前にも目をつけてたんだよ! 時間の問題だろうが!」

 

殴り合い一歩手前だが周りは荒くれた景色に慣れた武偵。

騒ぎにすらならない。

 

「リクさん、キンジさん」

 

そんな俺たちの横に何時の間にかレキは立っていた。

 

「「なんだ!」」

 

「騒がしいです」

 

鶴の一声。

俺もキンジもレキには頭が上がらない。

 

「チッ、このぐらいで勘弁してやる。次やったら知り合いの変態ホモランドにぶち込んでやるからな」

 

「言ってろ」

 

お互いに軽く拳をぶつけたら遺恨は流す。一時的にな!

 

「あんたら仲良いのね」

 

「アリアか、仲が良いのは当たり前だ。パーティを組んでたからな」

 

チッ、キンジめ。

また余計な事を言いやがった。

 

アリアと話しているキンジに巻き込まれない様にこっそりと移動しようとした時に話しかけられた。

 

「実際、伝説だったよね」

 

「不知火、テメエ揶揄ってるだろ」

 

不知火亮。

強襲科Aランク。

全てソツが無いが、突出はしていない万能型の武偵。

顔も性格も良い為、女にモテる奴だ。

 

「実際、高難易度の依頼達成率100%なんでしょ? しかも、学年で片手くらいしか居ないSランクのトリオ。これは凄かったよ」

 

「アホか。既にキンジはEランク。俺もBだ」

 

「お前、それは試験受けて無いからだ。あんまりふざけると轢いてやるぞ」

 

「武藤、お前は早くSになれや。この三流ドライバーが。お前のヘリのミスでこっちは一度ヘマしてんだぞ」

 

武藤剛気。

車輌科のAランク。

車、船、ヘリ、新幹線なんでも運転できるゴミ。

女にモテたいならまずはその顔を変えてこい。

 

「あれは、整備がサボってたからだろうが! 逆にあそこから綺麗に着陸させた俺の腕を褒めろよ」

 

「ああ、着陸地点が敵のど真ん中じゃなけりゃな!」

 

既に弾も消費してたし、キンジは能力が切れていた。レキは別方向から撤退している。まさに地獄だったぜ。

 

「うーむ、じゃあ何か埋め合わせするからよ」

 

「ならお前の妹紹介してくれ」

 

「いい加減轢くぞテメェ!」

 

「リクさん。どう言う事でしょうか」

 

後ろから死神が現れた。

 

「じゃあな、武藤、不知火。俺はトイレ行くから!」

 

「お伴します」

 

「男子トイレだ! 着いてくんな!」

 

俺は狙撃銃を下ろし始めた死神から逃げる為、窓から飛び出した。

 

 

武偵高は1から4限が通常授業であり、それ以降は専門履修。つまり、武偵の技術を学ぶ時間の筈だ。

 

しかし、今日はグラウンドにかなりの人数が集まってやがる。

 

「来たわね、リク」

 

「金が貰えるなら月まで飛んでいくぜ。こっちはよ」

 

流石に騒ぎにならない方がおかしいか。

 

アリアは現役の強襲科Sランク。

その腕と実力を見て、あわよくば盗もうとする向上心がある奴らばかりだ。

 

「おうこら、岡島! お前死ぬ気で勝てやァ! 英国武偵局から散々嫌味言われとるからなァ! 一発死ぬ気でやったれェ!」

 

蘭豹が煩い。

後で流れ弾一発行っとくか。

 

「ルールは気絶と降参だけ」

 

「オーケイ。レディファーストだ、先手をどうぞ」

 

カトラスを両手に握る。

アリアもガバメントを両手に握った。

 

「奇遇ね、あんたも双銃(ダブラ)?」

 

アリアは小さい体からは考えられ無い程の加速で突っ込んでくる。

 

「はっ、ちげえよ。俺のは二丁拳銃(トゥーハンド)だ!」

 

左からの銃撃、右からの振り下ろし、回し蹴り、右の銃撃。

 

流れる様な連撃をいなしていく。

このままだと余裕で制圧されそうだな。

仕掛けるか。

 

「そろそろ・・・踊るぜ!」

 

鋭く、素早いアリアの行動を先読みする。

 

「そこだ」

 

カトラスから放たれた弾丸は正確にアリアの腕に吸い込まれていく。

 

「ウッ!」

 

腕が逸らされたアリアの体に全力で蹴りを叩き込む。

ウェイトが40もないアリアはピンボールの様に吹き飛んで行く。

 

「おいおい、もうギブか? お姫様よう」

 

追撃に二発速射で叩き込むが、転がって回避された。

 

「ゴホッ、あんた咄嗟に後ろに飛んだのになんて脚力してんのよ!」

 

横に走りながらガバメントの連射、身をかがめ直線で走る。

 

タフネスは上だ。

ゴリ押していけ。

 

「ハロー、アリア。もう一回お空を飛びてえだろ?」

 

「お断りよ!」

 

弾幕をぶち破り現れた俺にアリアは怯む事なく蹴りを放って来た。

至近距離での銃格闘(ガン=カタ)。

 

一発、二発と徐々に当たる弾数が増えて来ている。

流石に一流だ。

俺の動きに対応しているらしい。

 

しかし、綺麗すぎる。

 

「靴紐–––」

 

「えっ?」

 

視線が逸れた瞬間に三発。

アリアの腹部、蹴った位置に叩き込んだ。

 

「ッツ!?!?」

 

アリアの顔が痛みで歪む。

 

「こいつでチェックだ」

 

左手のカトラスをアリアの目の前に放り投げる。

 

視界を塞ぎ意表をつく為の布石。

そして腰からナイフを抜こうとしたが、アリアは背中から刀を二本抜き放った。

 

なるほど、痛みで前が見えて無いのに気配で読んで攻撃してるのか。

 

「ハァ!」

 

刀は左右別の動きでこちらに迫る。

おいおい、二刀流まで達人かよ。

このままだと真っ二つだな。

 

「こんな時は冷静にだろ? 張さん」

 

振り下ろしのタイミングでショルダータックルをアリアにぶち当て距離を取らせる。

 

アリアが体勢を立て直す前にカトラスを拾う。

 

「アリアちゃーん、腹の具合はだいじょうぶでちゅかー?」

 

「あんた、絶対に風穴開けるわ!

風穴に風穴を重ねるデュアル風穴!」

 

アリアは刀をしまい改めてガバメントを握りしめた。

銃撃戦。

アリアは一流のガンマンだ。

正確に放たれる弾丸は正確が故に読みやすい。

 

腕、肩、足。

 

全て、身を交わしながら距離を詰めて行く。

 

そして、ついに。

 

「ガバメントは弾切れだな」

 

「シャッ!」

 

今日最高の速度のストラキング。

しかし、悲しいかなリーチが足りねえ。

 

軽く後ろに下がりながら連撃をかわしていく。

 

「にーげーるーな!」

 

「わかった」

 

カトラスの残り残弾全てをアリアに放つ。全て肩、足、腕。

アリアが狙っていた位置に当たる。

 

衝撃でアリアは一瞬、空に浮き転がった。

 

「どうだいビリー・ザ・キッド並みだろ? このままレスリングでもするか? 俺は女の子相手なら歓迎するが」

 

「・・・これは降参ね。負けたわ」

 

グラウンドからは大歓声と蘭豹の賭けに勝ったという叫びが響き渡った。




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