ロベルト(偽)がオラリオに。 作:ゴゴゴゴマダレ
僕は死ぬのだろうか。
まだ実感ができないまま、もう微かにしか動かない右手で空を仰いだ。空はなんとも美しい星空で、初めて空を恨んでしまうくらいだった。
どうして僕だったんだろう。
いるかどうかもわからない神様のことを考え、そんな言葉が頭の中に浮かび上がってきた。いたるところの骨が曲がり、頭からは血を大量に流してアスファルトの地面に横たわっている僕。はたから見れば滑稽、いやこの場合は恐怖か。けれど僕の頭の中で、そうして倒れている自分を想像すると滑稽で仕方なかった。
単なる事故だ。交通事故。居眠り運転をしている運転手にはねられこうなっている。
「ぁ…」
まるで虫の羽音のように小さな声。それもまた情けなく自分の耳に入った。
『君の願いはなんだ』
ふいに、頭の中で声がした。あぁ、ついに思考さえもおかしくなってきたか。けれど、これが本当に僕の幻ではないのなら。
次は、
もっと楽しく生きたいな。
『了解だ。君の人生私が変えて見せよう』
もう見えていない瞳で、星空を眺め、僕は人生を終えた。
***
「おい!君、大丈夫か!?」
声が聞こえる。
「目立った外傷はない。……
声が聞こえる。
「リヴェリア…彼、ステイタスがない」
また別の声が聞こえる。
「…なっ!どういうことだ!ステイタス無しでここに来たというのか!?」
「分からない。でも、このまま彼を放置しておくわけにもいかなそうだ」
二人の男女の声。そして何かに持ち上げられるような感覚。助かったのか。身体にはまだ力が入らず確認する術はない。けれど、二人の声は死により孤独を感じていた僕にはどんなものよりも安心感があった。
意識が浮上する。
そして、耳に聞こえたのは先程の二人の声だった。いや、一人、関西弁まじりの女性の声も聞こえる。二人の友人か何かなのか。
ボロボロだった身体は、病院に連れて行ってくれたのか何か分からないが先程よりも軽くなっていた。
ゆっくりと身体を起こす。そして、目も開ける。見える。動く。聞こえる。感じる。当たり前のことが、今この瞬間はとても幸福に思えた。
自分の無事を確認していると、ガタリと椅子が倒れる音が近くから聞こえてきた。その方向を見ると、金髪の小柄な少年に緑髪の女性。そして、その二人とは雰囲気が違う赤髪の女性が皆一同に立っていた。
「なんや、起きたんか!」
「良かった…気づいたんだね」
三者三様。赤髪の女性はこちらを勘ぐるような視線で。金髪の少年は良かったと安堵するような表情で。緑髪の女性はほっとした表情で頷いていた。
何この状況。
僕が運び込まれた部屋もどうやら病室では無いようだし、なんだかいきなり別世界にぶち込まれたような感じがする。それにこの三人の格好もおかしい。何か、RPGのような格好をしている。
僕が困惑しているのが分かったのか、赤髪の女性一歩前に出て、薄く目を開いた。
「今から質問するから、
僕はその威圧感の篭った声に頷くしかない。
「まず最初の質問や。なんでステイタスも持たずに中層にいたんや?」
ステイタス。中層。よく分からない単語。だが、嘘をつかない方がいいということだけは分かった。
正直に全てを話そう。そして口を開いた僕は、また困惑することになる。
声色が違う。
自分の声はこんなに高くなかったはず。年齢的には成人していたし、声変わりでもっと低い声だった。それなのに、今自分の口から聞こえた声は聞き覚えのある少年のような声だった。
そんな困惑した中、それでも助けてくれたこの三人に疑いはかけられたくない。構わずまた口を開いた。
「その…ステイタスってやつもわからないし、中層ってやつも聞き覚えが無くて、というか僕はどこで倒れてたんですか?」
「…………」
ピクリと赤髪の女性が反応する。
「質問を質問で返すな。と言いたいところだが、流石にそれを伝えないのは酷なことだろう。君は
答えたのは金髪の少年。
そして金髪の少年が言ったおかげで薄々感じていた予感が確信に変わった。
ここは僕がいた世界じゃない。なんの因果なのか奇跡なのか、別世界に来てしまったと確信した。
「僕は多分別の世界の人間だと思います」
「何やて…?」
「僕はダンジョンっていうのに行った記憶はないですし、僕が最後に覚えている記憶は、車に轢かれて道路に倒れた記憶です」
「嘘は…ついてないみたいやな」
身の潔白を晴らせたのか、赤髪の女性は疑って悪かったなぁと言いながら僕の肩を軽く叩いてきた。金髪の少年と緑髪の女性は驚愕の表情を固まらせているが。
「あ、そうや。君、名前は?」
答えようとする。が、まるで名前だけがぽっかりと抜け落ちたように思い出せない。なぜだ、なぜ他の記憶はあるのに。そう思って、家族の名前や友人の名前などを思い出そうとしてみるも、やはりダメだった。
「わか…りません」
それは情けないくらい弱々しい声だった。大切なものが思い出せない感覚。苛立ちと悲しみが混ざり、気持ち悪かった。
そんな僕を見て、赤髪の女性は優しげに声をかけてくる。
「そうか…大丈夫や。多分ステイタスを刻んだら名前はわかる。だから、うちのファミリアに入らへんか?」
「ロキ!?」
「はぁ…」
ファミリアに入らないかとそう言った彼女に僕よりも早く反応したのは二人だった。金髪の少年は更に驚いたような表情に。緑髪の女性は呆れたようにため息をついていた。
「は、はぁ。ファミリアっていうのは何か分かりませんけど、助けてくださった方々のお願いなら断る理由なんてないですよ」
「…ほんまいい子やなぁ」
「いえ、当然のことです」
別世界には来たといえ、彼女たちが僕の命を救ってくれたのは事実。僕が倒れた場所、
「じゃ、上脱ごか」
「へ?」
ロキ。そう名乗った彼女は、うつ伏せの状態の僕の背中に跨り、自分の血を落とした。僕の背中が少しだけ光り、背中が暖かくなる。これがステイタスを刻むという行為なのだろう。
ロキさんは僕の背中から降りると一枚の紙を渡してきた。
「これは…?」
「ステイタスの写し出した紙や。ほら見てみ」
ロベルト・ハイドン
Lv1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【
・
・即効魔法。
・現実にする理想の強さにより、消費する
【神器:
・攻撃魔法。
・詠唱【一ツ星神器、
《スキル》
【天界からの祝福】
・成長により、使用可能な神器が増える。
・魔法発動の際のアシスト。
【生への渇望】
・早熟する。
・
・
「ロベルトォ!?」
自らのステイタスに書かれていた名前を見て、思わず叫んでしまう。ロベルト・ハイドンといえば僕が好きだった漫画『うえきの法則』の登場キャラクターだ。しかも、このステイタスを見るに丁寧に能力と神器まで貰っているようだ。
「お?自分の名前見て記憶戻ったか?」
「あ、あのあの、鏡ってありますか…?」
「ん」
ロキさんが指差した方に、まだ少しだけ痛む身体を無視して近づいた。鏡に映った自分は、ロベルトと容姿も同じ、
格好も同じ。漫画で見たロベルト・ハイドンそのまんまだった。
予想できていたため、さっきよりかはあまり驚くことはなかったが、それでも驚くことは驚く。
「中々イケてるやんロベルト」
ロキさんが僕の頬をつきながら茶化してくる。
「あ、あはは。ありがとうございます」
そりゃそうだ。だってロベルトさん美少年だもん。
交通事故による痛みとは別の痛みが頭を襲う。
「はぁ…」
「ほら!そんな暗い顔せぇへんの!折角天下のロキ・ファミリアに入ったんやで?もうちょっと明るく行こや!」
ロキさんの無邪気な声が、やけに心に響いた。それもそうか、と。確かに前の記憶と身体が消えたが、今自分の意識はロベルト・ハイドンとして生きている。
そして、それを助けてくれた三人が今、目の前にいる。
「ですね、ありがとうございますロキさん。貴女のおかげで迷いが晴れました」
だったら、この力をロキさんのために使おう。このファミリアのために使おう。
僕はこの日から、ロキ・ファミリアの一員となった。
ロベルトくん、流石に使うたびに寿命を縮めるのはやばいのでMPくんで肩代わりさせるようにしました。ただ、今の状態で使うと、大したことない理想でも一発でマインドダウンします。神器は数回程で。
神器がどれくらいで増えるのかはまた追々。