ロベルト(偽)がオラリオに。   作:ゴゴゴゴマダレ

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第二話 迷宮

 

 

 ロキさんから恩恵(ファルナ)を貰ったその後、この世界のことを色々と教えて貰ったりした。基本的なことや、ダンジョンのこと。ロキさんの話を聞くに、ランクアップというやつをするまで上層にいた方が良いそうだ。というか、上層に居ろとまで言われた。

 

「っと、ここがギルドか…!」

 

 考えながら歩いていたためか、いつのまにかギルドについていた。大きな外観。本当に別世界に来てしまったと改めて感じる。深呼吸をして、その大きな扉を開ける。

 

 

 そこには想像していた通りのギルドが広がっていた。

 賑わしく、たくさんの冒険者たちが食事をしたり談笑をしている様子は僕の胸を躍らせた。

 

 僕はその冒険者たちの様子を横目に、受付へと向かう。そして耳の尖った女性に声をかけた。

 

「あの、冒険者登録をしたいんですけど…」

「あ、はい。分かりました。じゃあここにお名前と所属ファミリアをご記入ください」

 

「ロベルトさんですね。所属ファミリアは……ロキ・ファミリア!?」

 

 いきなり大声を出した受付嬢さんのせいで、少しの注目を集める。確かにロキさんは天下のファミリアと言っていたが、それほどまでのものなのか。凄いなぁ、と何処か他人事のように僕を見る視線を受けていた。

 

「嘘じゃ、ないんだよね?」

「はい。これ、エンブレムです」

 

 僕は念のためと思って持ってきていた、道化師をモチーフにしたロキ・ファミリアのエンブレムを受付嬢さんに渡した。

 

「本物…ですね。分かりました。ようこそギルドへロベルトさん。私はエイナ・チュール、貴方の専属アドバイザーです。よろしくお願いします」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 

 

 ギルドで登録をすませた後、ダンジョンへ潜れたのはそれから数時間後だった。理由はエイナさんからしつこく「冒険者は"冒険"してはいけない」と言われたり、下層で出てくるモンスターの名前や特徴などを詳しく聞かされたからだ。

 

 確かに少し度が過ぎているものだったが、僕にとってはありがたかった。特に急いでいるわけでもなければ、戦いになれているわけでもない。ぶっつけ本番で戦う際、敵の情報を持っているというのは大きなアドバンテージになる。だからこそ、僕もエイナさんの話を真剣に聞いていた。

 

 エイナさんから聞かされた話を脳裏に浮かべながら、ダンジョンを歩く。ゴツゴツとしている壁と薄暗い通路は、恐怖を駆り立てられる。ステイタスという魔物に抵抗する術を持っていても、その恐怖は緩むことはない。

 

 そうして暫くの間、歩いていると奥の方に一匹の群れからはぐれたコボルトを見つけた。エイナさんから聞かされていた特徴とも合致している。獣のような風貌を持っているコボルトは、僕を見つけると直ぐ様武器を構え、こちらに突撃してきた。

 

 遠くからきていたため楽に避けることができるが、やはり身体や能力はロベルト・ハイドンと同じと言っても、精神や身体の使い方などは一般人のまま。次の近くからの一撃は避けることは先程の突進よりも困難になることが予想できる。

 

『グギギャアア!』

 

 コボルトが武器を振り下ろしてくる。その速度はかなりの速さだが、何とか見える範疇。しっかりと身構えたためもあってか、何とか避けることができた。

 

 腰に携えていた剣を抜く。これはギルドが支給している剣だ。特殊な効果も絶大な攻撃力もない。けれど、剣を握ると不思議と力が湧き上がってくるような気がした。

 

「セイッ——!」

 

 不恰好な構えからの一閃。だがコボルトはそれを易々と受け流す。だろうなと舌を巻き、弾かれた腕の力を利用してその場で一回転しながら再び斬る。

 

『グギギギ!?』

 

 流石にこれは予想できなかったのか、コボルトは断末魔を上げながら倒れた。けれど、まだ死んではいない。生きるためには、強くなるためには、殺すしかない。そう決心する間もなく、僕の本能はコボルトの頭を剣で突き刺していた。

 

 消失するコボルトの身体。残った魔石と呼ばれる換金アイテム。

 

「勝った…のか」

 

 ダンジョンでの初めての勝利。そして始めて生き物を殺めた瞬間であった。

 

 

 

 ***

 

「なあフィン」

 

 翌日にある遠征のため、装備の確認や回復アイテムの類の確認をしていたフィンは突然ロキから声をかけられた。

 ロキの表情は少しだけ影が指しており、何かあったことが直ぐに分かった。

 

「どうしたの?」

「ロベルトのことなんやけど…」

 

 ロキは重々しく口を開いた。

 曰く、ロベルトは神器と呼ばれるスキルを持っていること。

 曰く、ロベルトはその神器というスキルで神すらも殺せる域になる可能性があること。

 

「そうか……それで?ロキはどうしたいんだい?」

 

 フィンはロキの返答を分かりきった上でそれを告げた。

 

「それでもあの子はうちの眷属(こども)や。何があっても守ってみせる」

 

 そして予想通りのロキの返答にフィンは満足そうに頷いた。

 

「だったら僕らも同じ気持ちだよ。見る限り、ロベルトは神を殺すような性格じゃないだろうしね」

「それもそうやな」

 

 ロキはロベルトとの会話を思い出しながら神としてではなく、一人の主神(おや)として笑みを浮かべた。

 

 

 

 ***

 

「ロベルト〜!お帰りぃ!」

 

 ロキ・ファミリアのホームである黄昏の館の入り口を開けたと同時にロキさんが僕に飛びついてきた。そして僕の無事を見ると、安心したように笑って僕の手を取る。

 

「さ、初めての更新しよか」

 

 

 腕を引っ張られながらロキさんの部屋まで連れていかれた僕は、ステイタスを刻んでくれた時の同じように、うつ伏せになっていた。ロキさんって結構強引な所あるんだなぁなどと考えながら、ロキさんのステイタス更新を待つ。

 

 少しすれば、背中が光った。どうやら更新が完了したようだ。

 ロキさんはまた僕に一枚の紙を渡してくる。

 

 

 ロベルト・ハイドン

 Lv1

 力:H62

 耐久:H41

 器用:H67

 敏捷:H50

 魔力:I0

 

 《魔法》

理想を現実に(イデア・リアリゼーション)

 ・付与魔法エンチャント。

 ・即効魔法。

 ・現実にする理想の強さにより、消費する精神マインドが増大。

 

【神器:(くろがね)

 ・攻撃魔法

 ・詠唱【一ツ星神器、(くろがね)

 

 《スキル》

【天界からの祝福】

 ・成長により、使用可能な神器が増える。

 ・魔法発動の際のアシスト。

 

【生への渇望】

 ・早熟する。

 ・懸想おもいが続く限り効果持続。

 ・懸想おもいの丈により効果向上。

 

 

「ロベルト、あんた今日何層まで潜ったんや?」

「え、2層までですけど…」

「そうか…」

 

 ロキさんは真剣な表情で僕を見た後、ホームに帰ってきた際と同じような笑みを浮かべ、優しい手つきで僕の頭を撫でてきた。

 

「ロベルト。今日は疲れたやろ?もう寝てええよ」

「はい、ありがとうございます。その、ロキさんも、おやすみなさい」

「ん、おやすみぃ」

 

 

 ロキさんの優しさに心の中で嬉し泣きしながら、自身の部屋へと向かう。フィンさんとリヴェリアさんやその他ロキ・ファミリアの精鋭の方々は今日から遠征へ行っているそうで、辺りは静かだった。それと自己紹介できなかった。遠征出発前、自己紹介くらいはしたかったとフィンさんに言うと、遠征後にな、と困ったように笑っていたことを思い出す。

 

 やがてついた自身の部屋の扉を開け、部屋へ入ると、僕はベッドに身体を倒した。

 天井のランプを見ながら、右手を上へと仰ぐ。

 

 生き物を殺した。

 生命を殺した。

 

 その事実がどうしても頭から離れなかった。あの後も何体かコボルトが襲ってきて迎撃した結果、数体の命を奪った。

 正直に言えば、怖かった。一体殺すごとに、自分の理性が消えていくような気がして。

 

「でも。僕は決めたんだ」

 

 けど僕の口から出た言葉は、後悔なんかじゃなく、決意の言葉だった。

 

「あの人を、ロキさんを守るって」

 

 それは一種の誓いの言葉。

 無一文の僕を、記憶の不確かな僕を、笑って受け止めてくれた神様。

 

「強く、なろう」

 

 胸を張って、ロキ・ファミリアの一員だと言うために。




何か変な箇所やアドバイスなのがあれば、感想で伝えてくれると嬉しいです…!
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