ロベルト(偽)がオラリオに。 作:ゴゴゴゴマダレ
ミノタウロスとの死闘から一日が経った。
僕はあの時、圧倒的なレベル差と自身の弱さを痛感した。
早くアイズさん達に追いつきたい。そんな一心で、今日は朝早くからダンジョンへ潜っていた。
「【
右手が淡く光る。次いで右手を大砲が包む。
大砲をしっかりと相手に向かって構え、
先程の
少し足もふらつくし、頭もぼーっとしてきている。
「ここらが限界か……」
余裕があればもう一つの魔法の【
念のため予備として持ってきていたマジックポーションを飲む。すると不思議なことか、先程までのふらつきや倦怠感は亡くなっていた。
「よし。今日は帰ろう」
昨日はミノタウロスとの戦闘で疲れ果ててステイタスの更新も出来なかったし、ロキ・ファミリアの団員さん達に挨拶もできなかった。ロキさんも、もしかしたら心配してくれてるかもしれないから早めに帰ろう。
道端に落ちている魔石を回収し、僕は早足でホームへと戻った。
***
ホームの扉を開けると、見覚えのある赤髪の女性が僕に飛びついてきた。いきなりのことで後ろに倒れそうになるが、ギリギリのところで踏ん張る。
「ロベルト…ッ!」
僕の胸に顔を埋めたロキさんは僕を心配そうに見上げてきた。心なしか目が潤んでみえる。
「ロ、ロキ…さん?」
「心配した……ロベルトが、ロベルトがいなかったからダンジョン内で死んだかと思うて…」
確かにここ最近はホームに戻るなり部屋に直行し、そのまま爆睡してしまった。それに、今日も朝早くからダンジョンに潜っていたためロキさんとはあまり顔を合わせていなかった。
もう一度下を覗くと、今度は確かに泣きそうな目をしたロキさんがいた。
「……ごめんなさい」
「…あんな、ウチはロベルトのこと大事に思ってるんや。だから、あんまり心配させるようなことせえへんでや…」
「……分かりました」
僕の答えに満足したのか、ロキさんは笑みを浮かべて僕から離れていく。
「全く…
「ははは…返す言葉もないです…」
「それとアイズたんから聞いたんやけど…ミノタウロスとも戦ったらしいな?」
「はい」
「はぁ…まあええ。取り敢えず昨日できひんかったからステイタス更新しよか」
ロベルト・ハイドン
Lv1
力:H140
耐久:H91
器用:H120
敏捷:H106
魔力:H198
《魔法》
【
・
・即効魔法。
・現実にする理想の強さにより、消費する
【神器:
・攻撃魔法
・詠唱【一ツ星神器、
《スキル》
【天界からの祝福】
・成長により、使用可能な神器が増える。
・魔法発動の際のアシスト。
【生への渇望】
・早熟する。
・懸想おもいが続く限り効果持続。
・懸想おもいの丈により効果向上。
「やっぱり成長が凄いなぁ」
「…これ、異常なんですよね…」
「ん?まあ、そうやな。なんやそんな暗い顔して」
「いや、なんか…ズルしてるような感じがして…」
「そんなことない。確かにスキルの影響もあるんやろうけど、ロベルトは新入りの冒険者にしては頑張ってる方や。これは、ロベルトが頑張った結果やから気にせんでええ」
僕が気落ちしたのを気にしたのか、ロキさんは優しく笑い頭を撫でてくる。こそばゆい感覚に目を細めてしまうと、その僕の反応にロキさんは更に笑みを深くした。
「なんか子猫みたいやな」
「こねッ!……んん!もう大丈夫です!失礼します!」
揶揄うように言ったロキさんに顔が赤くなるのが分かるほど恥ずかしくなり、そのまま立ち上がってロキさんの部屋を後にした。
「大丈夫や。アンタはウチが守ってみせる」
***
———君には守りたい存在がいるかい?
頭の中で声が響いた。
それは何処か聞いたことのあるような声で、とても安心する声。
勿論だ。
僕は、ロキさんやロキ・ファミリアの皆を守りたい。
まだ守られる側だけど、いつかはフィンさんやリヴェリアさんの隣で戦いたい。
———ふふっ、そうか。君は何処か彼に似ているね。
彼?一体誰のことだ?
———まあそれはどうでもいいんだ。何はともあれ、君の覚悟受け取ったよ。
覚悟?ちょっと待ってくれ、なんの話だ?
———頑張ってくれよ。
***
「…ッ!」
いつのまにか寝ていたのか。疲れていたのか変な夢まで見てしまった。
軋む身体に鞭を打ち、無理やり身体を起こす。やはり身体が少し怠い。今日は結構無理をしたからだろう。
「…何だったんだ?彼に似てるとか覚悟とか…」
ただの夢、そう思えればいいのだが何かが引っかかっている。聞いたことのある声、それに最近よく耳に親しんでいる声。
ん?ちょっと待てよ。最後、声はなんて言った?
—–——僕?
「ロベルト起きてるかい?」
扉の方からフィンさんの声が聞こえてきた。
瞬時に思考を変え、フィンさんに返事をする。
「はい、起きてますよ」
「入っていいかな?」
「ええ、どうぞ」
遠征帰りなのにピンピンしているフィンさんは扉を開けると僕の側へ腰掛けた。なんだかこうしているとフィンさんは親戚の子供のように感じるのは気のせいだろうか。
「…今何か変なこと考えなかったかい?」
「へっ!?いえ!そんなことないです!」
「…まあいい。早速だけどここに来た理由を話すね」
「は、はあ。……あ、もしかして」
「いや、君がミノタウロスの右腕を消し飛ばしたというのは聞いたよ。僕が話すのはそれと関係していることだ」
フィンさんは真剣な表情で僕を見つめる。
まるで嘘をついたら許さない、そう言っているようだった。
「君ははなぜ、アイズが助けようとした時に『こいつは僕らがやる』そう言ったんだい?」
「………それは、皆の足手まといになりたくなくて…早く強くなりなかったんです」
「…君がもし魔法を失敗させてたら、もう一人の彼、ベルと言ったかな?彼も死なせることになったんだぞ?」
「はい……」
「いや、すまない。怒りたいわけではないんだ。僕もロキも君のことが心配なんだよ。…ロベルト。早く強くなりたいという気持ちは分かる。けど、それに別のファミリアの子を巻き込んじゃいけない。それは分かるね?」
「…分かります」
「……分かっているならいいんだ。…よし、じゃあ次で最後だ」
フィンさんはふと、剣幕だった雰囲気を和らげ僕の頭に手を置いた。
まるでロキさんのようなそんな様子に少し戸惑いを覚える。
「もっと僕らを頼ってくれ」
そういえば、この世界に来てからというもの僕はただ一人で強くなろうとしていた。ただ早く強くなろうと、フィンさん達に並べるような強くなろうと。
「…っ、はい…!」
けれど、それは間違っていた。
一人で強くなる。それは確かに良いことかもしれない。
だが、それでは彼らと同じ列で並んで戦うことはできなくなる。
彼らを頼り、また彼らから頼られる、そんな関係に僕はなりたかったのだ。
「……あ、あのっ!僕に、剣術を教えてください…!」
「ああ。勿論だ」
だから僕は、彼らと一緒に強くなっていこう。
(´∀`)