和人は人のいない広い場所を探していた。しばらく歩いて、弓道の練習場で精神を研ぎ澄ませている少女を見つけた。
「よお、詩乃。」
「あら、和人。今から練習じゃないの?」
「そうなんだけど、たまには外でやりたくてさ。でもなかなかいい場所が見つからないんだよ。そっちこそ今日は休みじゃないのか?」
そう、弓道部主将・朝田詩乃は活動日でない日にもかかわらず練習場にいるのだ。
「ただの自主練よ。」
「さすがは主将様だな。俺だったら真っ先に家に帰ってるよ。」
「アンタも主将なんだからしっかりしなさいよね。」
段々足音がこちらに近づいてくた。
「お兄ちゃん、いい練習場所見つかった!?」
剣道部副将・桐ケ谷直葉が少し息を荒げてこちらに走ってきた。
「それが見つからないんだよ。外での練習は無理っぽいな。」
「ええ!?今日体育館は使わないからって他の部に譲ったよ!?」
「マジか...じゃあ今日は練習無しだな」
「お兄ちゃんがいきなり外でやりたいっていうから~」
主将のきまぐれのせいで今日の剣道部の練習はなくなった。
「おい、練習はまだ始まらないのか?」
剣道の道着を着た青年が少し苛ついているような表情で言った。
「鋭二さん、すいません」
直葉が頭を下げて謝った。
「いや、アンタは悪くない。悪いのはそこのいつもきまぐれで動く身勝手な主将だ。」
「へいへい、そりゃあ悪うございました。」
「ところでお兄ちゃん、今日何か用事あるって言ってなかった?」
和人は何かを思い出したのか、急に焦り始めた。
「やっべ!スグ、今日は何曜日だ?」
「木曜日。」
「何月何日の?」
「11月6日。」
「あ~~~~!!!!!!今日凛子さんのところに行くんだった!」
「ここにいても大丈夫なの?」
「お~~~い!キリト~~~!!!」
振り向くと最愛の人がいた。
「もう!今日は凛子のところに行くって言ってたでしょ!」
『そーだよ。今日は大切なメンテナンスをするんでしょ?』
ストレアの肩に乗った機械からすでに現実の体を失い仮想世界に生きる少女の声がする。
「ごめんごめんストレア、ユウキ。スグ、鋭二あとは頼んでもいいか?」
「しょうがないなぁ。早く行きなよ。」
「嫌と言っても聞かないんだろう。」
部員に練習中止の旨を伝え、その後の予定が無くなった直葉はどうしようか迷っていた。
ちなみに鋭二は恋人と出かけるらしい。
「詩乃さん、練習終わったらパフェでも食べに行きません?」
「いいけど明日奈と里香は誘わなくていいの?」
「明日奈さんはアーチェリーの練習があるそうです。里香さんはお墓参りに行くって言ってました。」
「そう、今日で3年経つものね。」
今日は2025年11月6日、ソードアートオンラインの正式サービス開始からちょうど3年なのだ。
部活は私のイメージで勝手に決めました。鋭二の恋人ってだれなんですかねぇ…