ケレンツェラ~世界の墓場・異常者の楽園~ 作:(´・ω・`)レンジ
2話が完成したのでよろしければお付き合い下さい。
入島検査は普通の健康診断と大差なく進んでいった。たった一つを除いて…。
「番号22番!! 藤城歩くんどうぞお入り下さい。」
医者から入室の指示が出され、俺はそれに促され入室する。
「・・・・なっ!!」
俺は絶句した…。入室した医者の姿…、そして手に。
しかし、医者はその反応を気にせずに着席を促した。
「どうしたのかな? 私の顔に何か付いているのかな? もしかして私の姿に驚いているのかな?」
歩はその医者の姿に驚いていたのだ。
全身が包帯まみれで、腕は古傷であろう物も含めても夥しい数の傷があった。
医者は笑いながら話を続けた。
「こんなの普通だよ? 私はね、医者なんだよ? 血が怖くては治療は出来ないんだよ? だから普通なの、解るかな?」
何なんだその考えは!? ありえない!! この島は医者までもがこんなにも異常なのか!?
入島してからまだ数時間しか経っていない歩にとっては衝撃的な姿であり、発言であった。
そう考えてる内に医者が催促の言葉を入れてきた。
「早く座ってもらっていいかな? それとも私を誘ってるのかな? 君の血は何色なんだろうね?」
俺は慌てて席に着いた。
「そうそう、お利口だね~。そういう子は私は好きだよ~♪」
「君の驚いてる事はまた後で説明してあげるから、今は気にしないでいいよ~。」
そう言って医者は一つの機械を渡してきた。
「はい、これが君のレートを調べる機械だから君の利き腕に着けてね~。」
俺は無言で腕に着けた。いや…、着けさせられたんだ。
この医者…完全に狂ってる!! 医者が隠してる左手に青白い光が見えたのを歩は見逃さなかった。
スタンガンを隠し持ってる医者なんか聞いたことないぞ!!
そんな事など気にせずに医者は検査の説明を始める。
「君の経歴はグロヴィッツから聞いてるからね♪ その中から何個かの質問をさせてもらうよ~。」
俺は無言で頷く事しか出来なかった…。
「じゃあ、質問させもらおうかな…。その前にもう一つあったね。私の質問の返答は簡素な答えでもいいけど必ず私の(目)を見て答えてね?いい?ゼッタイだからね?」
最後の言葉にはもの凄い威圧感…、いや殺意すらも感じた。
人はこんなにもあっさり殺意を表面化できるものなのかと歩は戦慄した。
「君は父子家庭だったんだね?」
歩は即答で答えた。
「はい。」
医者は上機嫌そうに言葉を続ける。
「いいよ~、その調子だよ♪ じゃあ、次だね…。君は虐められてたのかな?」
歩は予想していた、必ず心を抉る質問が来る事を。
「はい。」
医者は淡々と質問を続ける。
「君は神って信じるかい?」
「いいえ。」
「詳しく聞いてもいいかな?」
「神がいるなら家族は離婚なんかせず、虐められず……。こんな事になんか…。」
医者は笑った。
「君は悲観的だね~、確かにねこの世に神なんて居ないさ!! 私だってそう思ってるさ!! 馬鹿でも解る!! けどね…、ここは違うんだ。もう悲観的にならなくていいんだよ…なんたってここは楽園なんだから! 神は居なくても楽園は人の手で創れるんだよ!! 異常者の楽園を!! だから曝け出そう!! 君の異常性を!! 私は楽しみだ!!」
「そして、君は最初に私の姿を見て驚いたよね? 理由が知りたいよね? 教えてあげるよ!!」
医者は冷静を取り戻したかのように話し出す。
「私はね元々、血が苦手だったんだよ…。可笑しいでしょ? だから慣れようとしたんだ…自分の血でね? それを何年か続けてきたけどね。痛いんだよ、傷跡が…。だから考えたんだよ。」
予想は出来ていた…。だけど歩はただ医者の話を聞くだけしか出来なかった。
「他人の血で克服すれば良いんだってね♪ まずは手短な死体でやったんだ!! けどね…生きてる人間みたいに血が出なかったんだ…。だから今度は、学校の友達で実験したんだ!! そしたらね!! 首の付け根を切った時に、…鮮やかな赤色だったんだよ!! 今も忘れられないよ!! あの時の興奮を!! だから私はここで医者をしてるの!! あの興奮がまた経験できるから!!」
俺は目を離すことが出来なかった…。完成された狂気を目の前に震える事しか出来なかった…。
医者が紙にペンで書き込んでいって完成された紙を渡してきた。
「診断終了!! ごめんね、私の話に付き合ってもらって。」
そして、医者がアナウンスマイクで放送をする。
「番号22番藤城 歩はレートDに所属する事になる!! 繰り返す!! 番号22番藤城 歩はレートDに所属する!! 以上。」
レートD? 俺は解らなかった。
「レートDとは一体何なんですか?」
医者は上機嫌に答える。
「この施設には異常レートがあってA~Gまであるの、Aが一番の落ち零れかな。そして、レートGは紛れもない最凶クラスの異常者だよ♪」
「しかし、最初からレートDは優秀だよ!! 最初は大概Bか高くてCなのに凄いね!! 私が驚いちゃった♪ 君は本当に才能あるよ!! 私が保障するよ!!」
「レートAとかBはすぐ自我を無くしちゃうから困っちゃうんだよね~。…だけど、君は私の威圧、いや…殺意に反応した上で自我を残した!! そして目をみた!! こんなの私が担当した中では始めて!! それが理由でレートD!! おめでとう!!」
俺は絶望した…。大丈夫だと思っていた…正常だと思っていた…。
「俺は…、異常者なのか…。」
医者は告げる。
「異常者でなにが悪いの!? 良いじゃん!! 人間誰しも異常じゃない奴なんて居やしないんだから!! ここは楽園なんだから!! 落ち込むんじゃない!! 笑おうよ♪」
「おっと、もうこんな時間だ、早いもんだね~♪ 君にはまた会いたいから私から名前を名乗らせてもらうよ…。君なら知ってるよね? 私の名前は…。」
「島越 藍(しまごし あい)」
俺はその名前を知っていた。まさかこんなところに居るなんて…。
そしてドアが開き黒服の男にレートD区域に誘導された…。
俺は解らなかった…。何で、何で彼女が…この島に…。
「彼女は…、2年前に行方不明になった先輩じゃないか!!」
島越 藍(しまごし あい)
歩の2つ上の先輩であったが、歩が高校1年の冬に行方不明となった先輩。
当時は傷など無く、容姿端麗の美少女であった。
生徒会長も務めていた。
歩との接点は彼女が何度か話しかけた程度。