ケレンツェラ~世界の墓場・異常者の楽園~ 作:(´・ω・`)レンジ
「歩よ……。何故、彼女にこだわるのだ? 何故……。彼女だったのだ?」
デスタはそう言って口を開き始めた。
「彼女は永遠の歪姫……。何もかもが歪んでしまったんだ…。」
デスタは言葉を続ける。
「彼女の出生は、ヨーロッパ王族の血筋で……。まぁ、本当のお姫様と言っても
良いぐらいだな。」
「だが……。彼女の一族は、旧制の王族の体制を重んじる過去思考主義の思考を重んじていたらしい…。」
「過去思考主義?」
俺はデスタに疑問をぶつける。
「あぁ…。中世ヨーロッパの王族は純血を美徳として扱い、自らの階級の保持や権力を確実のものにしようとしていたのだよ…。」
「今の時代で言うと、近親相姦を完全に推奨していた時代だ……。」
「そんな、時代はもう過去の物だと思われ風化されていくはずの忌むべき文化だ……。しかし、その過去に取り付かれたかの様にその思考を信じ……。」
「彼女はワーデン家の第2王女として生まれた……。私の考えとしては……。生を与えられなかった方が彼女の為だったかもしれないと思う……。」
一体、彼女の家系に何があって……。
これだけ聞いていれば、彼女がここにいる理由が全く判らない…。
俺は、デスタの話に只ただ無言で聞いていることしか出来なかった。
「最初は、家族円満な生活を送っていたらしい……。しかし、それは最初だけだったと彼女は言った…。」
「彼女が生まれて5年の月日が経とうとしてる時に……。最初の事件が起きた。」
「母の急逝だ……。夫であり弟であった父は、その死を真実と捉える事を拒絶した。」
「彼女の母は貴族院の最大決定権を持つ人物であったらしい……。」
「そして、彼女の父は初めて、権力を失う事を知り錯乱したのだ……。」
「そこからは、悪夢の様な日々が始まったと聞く。」
彼女が、この島に来た原因は少なからずその父によるものがあると俺は認識した。
しかし、疑問もあった。
「少し待ってくれ!彼女の父の妻は彼女の父の姉でもあったのだろう?何故、権力を
失う事になってしまったんだ?」
デスタは表情を変えずに言った。
「理由は簡単だ、その一族の体制に決定的な綻びがあった事だよ……。」
「通常の王族や貴族は王や公使は外様から姫を招き結婚する……。つまり、招く事は常に男性が権力を持ち、その姫に世継ぎに王になる教育を施すのだ…。」
「しかし、彼女の一族の場合、前提が違う……。完全に隔絶された、閉鎖的な一族の場合、優秀な方に権力を集中させれば一族の血を守れた上で一族の繁栄が約束される事になる…。」
「しかし、優秀な片割れが欠けてしまった時ほどこの体制の弱みが出るのだよ。」
「端的に言おう…。彼女の父は只のお飾りの無能だったのだよ。」
「その無能はあろう事か狂気の考えに至ってしまったのだ…。」
「まだ10の娘……。彼女の姉の幼すぎる体を使い、姉の復活を実行したらしい。」
戦慄した……。あまりにも、行き過ぎた狂気の結論に……。
失われた権力…。
決して戻らぬ最愛の妻…。
その二つを失った時……。人はここまで正常な判断ができなくなってしまうのかと…。
「これは、彼女本人から聞いたのだが……。この言葉はあまりにも生々しかったな。」
一体……。狂気に取り付かれた王は何を……。
「メイは死なない……。お前の腹の中に眠っているのだろう? 早く出てきておくれよ……。そして、また私を叱っておくれよ……。子供もまた作ろう!!だから……。こんな出来損ないなんて、生贄にでもするからさ……。」
信じられない……。彼女の父は、彼女たちを只の物としか認識していなかったのだと。
「そして、彼女に更なる悲劇が襲った……。」
もはや、予想するのも難しくなかった…。
「彼女の姉の自殺だ。」
「彼女の姉の死は彼女にとってどれだけの衝撃だったかは図りかねるが…。」
「残された彼女はどれだけ…。苦しかったのであろうな…。」
「狂気に取り付かれた父の手によって、あまりにも惨たらしく殺されたと言っても
いいほどの姉……。」
「それでも、彼女は強かったのだろうな……。」
「彼女は、父に考えを改めるように言ったのだよ……。祖父や祖母に頼みながら…。」
「だが、彼女の頑張りとは逆に状況は悪化していく……。」
「彼女が8つの誕生日……。父は祖父・祖母を殺害したのだ…。」
「父は言葉少なくにこう言ったらしい。」
「血族では無いものが私に口を聞くな。」
「そう……。彼女の父の中では既に血族とは妻……。姉だけであったのだよ。」
「王族の政治不安等で、治安が悪化していく中で……。父は言ったらしい…。」
「全てはディーナが悪いのでは? そうだ!!! そうに違いない!! 貴様は魔女だ!!」
「中世ヨーロッパであった、魔女狩りの魔女の汚名を実の娘に着せたのだ…。」
「狂気に囚われた王は……。彼女を独房に閉じ込めた。」
「まともな食料を与えられず……。水分すら満足に取れなかったと聞く。」
「そんな生活は2年も続いたある日……。彼女の運命を変える時が来たのだ。」
「彼女が10になり、もうすぐ11になる時だったと聞く。」
「王の政治に対して、不満や怒り等を抱えた民が反乱を起こしたのだ。」
「王は自らの命を守るべく、衛兵を出動させたが……。政治不安の元凶を守るのは
たかが知れている……。」
「王の残された道は、民に今までの政治不安を払拭させる為に、自らの政治責任
彼女に向けたのだ……。」
ふざけるな……。何故……。自らの娘をこんなにも……。
俺は拳を強く握りこみ、唇を強くかみ締める事しか出来なかった。
「王は実の娘を魔女と罵り、全ての責任を押し付けて且つ彼女を処刑するという
事で今までの政治不安を解消しようと図ったのだ。」
「王は民に彼女の処刑日を宣言し、彼女を始めて公の場に出さしたのだ……。」
「王はここで完全に安心したのであろうな……。」
「数日間の猶予を設けて、行動範囲を限定した上で自由の身にしたのだ。」
「今までの愛を全て奪われ……。大切な家族をたった一人の男に殺され…。
悪の象徴である魔女の汚名を着せられ……。2年余りの時を暗い独房で過ごし……。
自らの政治不安が招いた責任を全て押し付けられた……。」
「彼女は既に正常な判断など捨てていたのだよ……。」
「彼女は感情を完全に無くし……。それ以降の記憶を曖昧だったと聞く…。」
「その後ではっきり覚えていたのは……。」
「自分が憎みに憎んだを男が十字架に貼り付けられ燃えている時だったらしい。」
「彼女は笑いもせず……。泣きもせず……。只ただ……。悲鳴をあげてて燃える男を見ていたらしい。」
「まぁ、当然の報いだな……。我でも当然だと思う。」
「しかし、周りは当然との判断が出来なかった……。」
「彼女は王殺しの名を着せられ……。処刑を行うのも恐れられた彼女は、国家永久
追放としてこの島に収監されたのだ…。」
俺は気が付いたら思いっきり壁を殴って叫んだ。
「彼女は何も間違っていない!! 例えそれが間違いであってもそれは異常でも何で
もない!! それが正常なんだ!! 俺がこの島の思考に染まってなくても解る事だ!!」
「彼女があのまま処刑されることが正常と言うのなら!! 俺はその世界の正常を
否定してやる!! 彼女は俺を少なからず人して見てくれた!! 不器用なりに世話や
ルールを教えてくれた!! 彼女は異常じゃない!! 俺がそれを証明する!! それが
俺の出来る恩返しだ!! 時間なんて関係ない!!」
デスタは笑っていた……。
「その言葉を口にするのはまだ早いのではないのであろうか?」
「我はまだアリッサやJの存在を話していないぞ……。」
「この島からだよ……彼女の本当の異常性が開花したのは……。」
不敵な笑みを浮かべるデスタ……。
俺は、本当の彼女の異常を知るときがきたのだ…。
(´・ω・`)レンジです。
ここまでお付き合いありがとうございます。
今回は3000文字を超える長さとなり、少し予定より遅れてしまいましてすいません。
次はなるべく早めに書けるように努力します…。