闇吉備津で遊ぼう!   作:聖華

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▶移動:病室

 現在。あなたの前には、布団に押し込まれた闇吉備津が居るだろう。

 

「……」

 

 闇吉備津はあなたが病室に入ってきた辺りから、そっぽを向いている。

 

 結果として、闇吉備津は無事であった。いくらかインクを消耗してしまって、こうして一時的に治療を施されているが、それでも消滅などという事態は避けられたのである。

 援軍に向かったキャスト曰く、『深追いしなかった分、重傷を負わず済んだのだろう』と。あのヴィランは図書館側も意図せぬ存在であったらしく、下手に交戦していれば、どうなっていたか分からないとも聞いた。

 

「あの時」

 

 頑なに視線を合わせてくれなかった闇吉備津が、こちらに声を掛けてきた。

 

「何故、逃げなかった」

 

 放っておけなかったといった旨を話すと、再び闇吉備津は黙ってしまった。

 あなたはここで、自分の気持ちをきちんと伝えておこうと考えた。

 

 

 

選択肢【あなたの気持ちは?】

①テイルマスターとして、一緒に戦えるようになりたい。

②一人の人間として、交友を深めていきたい。

③憧れの存在になったので、舎弟か何かにして欲しい。

④これ以上関わるのは、やめようと思う。

 

 

 

【②きっと彼を初めて見た瞬間から、気持ちは決まっていたのだろう。】

 

 

 

 あなたはここで、自分の気持ちをきちんと伝えておこうと考えた。

 ――【一人の人間として、交友を深めていきたい。】

 

「お前の筆捌きならば、恐らく吉備津彦の方が合うだろう」

 

 立ち上がったあなたに、闇吉備津はそう言葉をかけてくる。

 

「一度声を掛けてみるが良い。あれは扱い易い――」

 

 あなたは黙って闇吉備津に詰め寄ると、彼に手をあげた。ビンタだったかもしれないし、拳だったかもしれない。胸板をやたらと叩いたのかも。何にせよ、痛くなるのはあなたの手の方で、闇吉備津はその程度の攻撃微動だにせず、ただ呆気に取られた様子で見送っていた。

 キャスト相手に取り乱すなど、テイルマスターとしては失格かもしれない。

 

「何をしている」

 

 それでも、あなたはその言葉に食ってかかったに違いない。

 

 もっと周りを見ろ。無意味に自虐するな。自分を大切にしろ。道具として扱われたいならもう少し道具らしくしてろ。本当は優しい癖に。

 

 口についた言葉は、闇吉備津というキャストの設定から考えれば、残酷なものだったかもしれない。彼には真っ当な人間であった頃の痕跡がいくらか見えた。後天的な孤独から関わりを避けている人間を、一般論の範疇に置くべきではない。

 それは分かっている。分かっているが、

 

「お前は何様だ。いかなる肩書を振り翳せば、そのように偉そうな口が聞ける」

 

 これは友人としては、全くもって当然の心配事だ。当たり前の気遣いだ。

 大凡、人間関係という物は、善意の押し付け合いと両者の妥協で回っている。あなたは純粋に思ったのだろう。『この闇吉備津に人間らしさがあるのなら、それを取り戻す手伝いをするのが友情だ。それが彼にとっても幸せに通ずるはずだ』。馬鹿正直に、自分の感情を信じたのだ。

 

 この時も、闇吉備津はあなたの言い分を全て聞いてから、行動に移した。

 

「常々戯けた輩だとは思っていたが、ここに来て極まったか。お前、我と顔を合わせるのはこれで何度目だ。片手で足りるではないか」

 

 闇吉備津はあなたを鬱陶しいとばかりに振り払ったばかりか、おもむろに病室のベッドから起き上がり、服の首後ろをむんずと掴み上げると、部屋の外に追い出した。

 

「帰れ」

 

 ばたん、と。目の前で、勢いよく扉を閉められる。

 とはいえ、無理もない反応だ。今のは大概、自分勝手な物言いだった。

 

 とぼとぼと病室を後にしようとした、その時――わずかに扉の蝶番が鳴る。

 

「我を和室に移すよう、申請しておくがよい。ここはどうにも落ち着かん」

 

 振り返った時には、もう扉は固く閉ざされていた。

 

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