ヒッパーに赤いマフラーをプレゼントしたい 作:なし
おでんなし、日常回
他なんか食べてるキャラいたっけ?思い出せない。
ビンタされるまでが未だにブラックボックス
きっと多分明日も投稿する無理でした
ヒッパーをサンディエゴの舞台に乗せると踊らないし、胸を隠すし、泣くし、可愛い。
僕はあまり占いを信じていない、なのに大体毎日自分の順位を確認している。
それを言うとなんで見るのかと尋ねられる、見る必要がないじゃないかと。
それでも見る意味はあると答える、占いと現実の差を見るのが楽しいのだ。占いで最下位を引いた時に見つける少しの幸運は、幾分か大きく見えるものだ。
そう言うわけで今日もいつものように、食パンをかじりながら朝のニュースを眺めていた。さて僕の獅子座は何位だろうか。
ひつじ座、ふたご座、さそり座、やぎ座……。
目覚まし時計の形をしたマスコットが大きな声で結果を喚く。11位から順番に発表されていくも、なかなか獅子座は発表されなかった。
結局1位と12位の二択になる、こう言う時に1位になるのを期待していると決まって最下位になる。
溜めに溜めてめざ◯しくんが1位を読み上げようとした時、電話が鳴った。
「はい、もしもし」
丁度いいところで、そう思いながらテレビを消して受話器を取る。こんな朝方に僕に電話を掛ける人は思い浮かばない、誰だろうか。
『…………』
「もしもし?」
無言なのを疑問に思い問い掛けるも、帰って来たのはブツッという音とプーと言う電話が切れたことを伝える音だった。
いたずら電話か、そう思い番号を確認するも非通知。この電話機の番号を知っている人はかなり限られていたはずだが。
深く考えるのをやめ、テレビを再度付ける。
無性に腹立つ顔でボロクソに獅子座が言われてたので、再度テレビを消した。
まあそういう日もある、気を取り直して頑張ろう。食パンを手早く食べ終え私室から出る。
扉を開けると誰かがバタバタと逃げる音が聞こえた。誰だろうか?音がする方を見ると、曲がり角に吸い込まれる金髪がチラリと見えた。
●
昨日が運勢のどん底だろう、というかおでんが来てから毎回最悪な気がするが。
そのような事を考えてながら執務をする、そうそう悪い事が起きるはずないじゃないか。まあおでんがスタンバイしているわけだが。
それよりなんか冷房の効きが悪くないか?異音がしているとはいえ治したばかりだぞ。
ピッピッピッとリモコンを操作し、設定温度をさらに下げる。
特に変わった様子はない、寧ろ更にぬるい空気がました気がする。
除湿ではなく冷房になってるのを再度確認。
一旦切って、もう一回起動しよう。
運転ボタンを再度押した瞬間、
突然ボンッという音がしてエアコンが止まった。
「は?」
己の一連の行動を振り返る。設定温度を下げる、運転を切る、入れる、なんの問題もないはずだ。
運転ボタンを連打する、まだ希望はある。
送風口がゆっくりと開いた。
やはり祈りは通じる、そう思った。
送風口からクワガタのオスがぼとりと落ちてきて、すごい勢いで水が滴り始めるまでは。
一人ため息をつき、運転を停止させた。
●
明石商店に向かって、一人赴く。
扇風機程度ならあそこにも置いてあった気がする、エアコンの修理の要請を頼むのと一緒に買おう。
商店は執務室がある建物の離れた向こう、艦船少女達が住んでいる寮のさらに奥にある。
外を歩かなくても寮舎を通れば多少は涼しい道だが、今は何となく外を歩いてみようと思った。結果から言えばそれは失敗だったが。
時刻はまだ11時にならない程度。されど既に日差しを遮る雲はなく、ぐんぐんと気温は上昇していた。直ぐに汗が噴き出してくる。白い軍帽を団扇がわりにパタパタと仰ぐ。
熱せられたアスファルトから、ユラリユラリと陽炎が立ち昇っているのが見えた。
少しでもましになるかと街路樹の木陰を歩いていても、湿気を伴った熱が迫る。
街路樹からは蝉時雨が降り注ぐ。ふとその中に自分を呼ぶ声が気がした。
「……しきかーんさーん」
回りを見渡すとマッコールが、寮舎から呼んでいるのが見えた。彼女に向かって手を振りそのまま行こうとするも、ちょいちょいっと手招きをしているのに気づく。まあ少しぐらいはいいだろう、そう思いながら一階の窓に寄る。いつものようにマッコールはアイスを咥えていた。
「やあ、クレイヴンは?」
「姉ちゃんはまだ寝てる、休みの前に重桜のちびっこ達と遊んで疲れちゃって。起こした方がいい?」
いや二人も十分ちびっこだろ、そういう無粋なツッコミをするほど馬鹿ではなかった。
「いやいい、なんか用があったか?」
「何もないけどこんな熱いのにどこに行くのかと思って」
「冷房が壊れたんだ、それで商店に扇風機かなんか置いてないか見に行こうと」
「それは御愁傷様だね……ちょっと待ってて」
言うなり食い差しのアイスキャンディーをぱくぱくっと一気に食べて、部屋内に戻っていった。
待つ事数分、二本のアイスキャンディーを持って来た。
「はい、当たらないアイス」
「どうも」
当たらないアイス、敵の弾に当たらないと言う験を担いでいるらしい。こんな名前だが一応あたりはあるらしい、自分は一度も当たったことがなかったが敵に当たると言うことでそっちでも験を担げるとの噂だ。
「さっきのは当たった?」
「いや、当たらなければどうと言うことはないってさ」
無駄に豊富な外れの種類が人気らしかった。
「昨日は大変だったね指揮官さん」
「ああ、ハムマンにビンタされてな」
「ヒッパーの方だよ、わかってるでしょ?」
「……まあね」
バレバレじゃないか、心の中でため息をつく。
「指揮官はぬるいよね、本当に」
そのぬるさに救われてる人も多いけど。
どうだか、そう思った。僕じゃなければもっと上手くやれるんじゃないかという思いはいつでもあった。それが偽善だというヒッパーからの言葉もあった。
「それが偽善だとしても?」
「だとしても、そのお陰で私達姉妹は重桜の子達と仲良くなったんだから」
何と無く気恥ずかしくて、アイスを咥えたまま黙りこくっていた。なんでこうも僕への評価が高いのか。
「ヒッパーのことだって避けては通れない道だと思ってるんでしょ?」
「彼女のことを放置するとは思わないのか?」
「指揮官は放り出さないよ、それが変わらない指揮官の美徳だもの」
「ヒッパーには他人から嫌われたくないだけの偽善と言われたんだけどな」
「偽善だというけどそれが善ではないという事はないよ、そうだと思ってても他人から見ればそれは善だよ指揮官」
一息に長台詞を喋って、慌てて垂れそうなアイスを舐めた。彼女と比べて僕の方がアイスを食べ進めるスピードは早かった。
「そうか」
話すこともなく、二人黙々とアイスを食べる。
「こういう風に二人でアイスを舐めながらぼーっとする日が続けばいいのにね」
「……そうだな」
おでんを食べ続ける日常に比べれば、それはずっとマシに思えた。
●
アイスを食べ終え、棒を確認する。
当たり、シンプルにそう書いてあった。
「……当たりだ」
「……へぇ、本当にあるんだ、当たり初めて見た」
あんまり感情が表に出ないマッコールでさえ少し驚きの感情が見て取れた。いつもアイスを食べてる彼女でさえ、当たりを見たことないってどんな確率だよ。彼女は当たりの棒を物欲しげに見ていた。
「当たりだともう一本貰えるの?」
「うん、それに加えて金の当たれ棒が貰えるって」
当たり棒じゃなくて当たれ棒なのか、何と無くアタレという小銃の願掛けを思い出した。
「成る程、じゃあ僕の代わりに受け取っといてくれ」
袋にしまって当たりの棒を返す、僕には必要ないものだなと思った。
「……いいの?金の棒もらえるよ?」
「元々もらったものだし、当たれ棒は僕には必要なさそうだからね」
そろそろ商店にまた向かうべきだろう、少しだけ前よりは楽な気持ちになった。
「アイスありがと、それじゃまた」
「また悩み事あったら相談に乗るから、クレイヴンも応援してくれるよ」
「応援はいらないかな……」
後ろから来る、またねという声に手を振り返しながら、僕はまたゆるゆると商店に向かって歩き始めた。