ヒッパーに赤いマフラーをプレゼントしたい 作:なし
おでん禁断症状が出てしまう!
汎ブリの活用法が見つかってない世界線、あると思います
ヒッパー行方不明、次には出るはずたぶんきっと
句読点がすごいことになってたので修正
明石商店は何処にでもあるコンビニに適当に猫耳をつけて改装してみました、そういった外見だった。
店に入ると冷風が吹きつけてきて、汗ばんだシャツが急速に冷やされる。
少しエアコンが効き過ぎているように思えた。でもまあようやく一息つける、そう思いながら1つくしゃみをした。
とりあえず明石を探す、レジには明石の姿が見えなかった。
いつもならばそこで船を漕いでいるのが習慣だったが、何処に行ったのだろうか。
そんなことを考えていると入り口からは見えない店の奥から、彼女の声が聞こえてきた。
「……それじゃないにゃ、そっちはハロゲンヒーターにゃ」
「同じプリン、何が違うプリン?」
「考えなくていいからこっちをもってくにゃ」
不満げな声とともにダンボールを乗せた台車が、一人でゆっくりとこっちにやってきた。
多分ブリが台車を押しているのだろう。
ダンボールより背が小さいせいで、その姿は見えなかったから予想はできた。
多分あの癖はまだ治ってないだろう、そう思い此方から挨拶をする。
「ブリ、久し振り」
台車の動きが止まる、数秒間の沈黙。
やっぱりダメだったか。恐る恐るダンボールの横からブリが、こちらを覗こうとするのが見える。
それを眺めていた僕とブリの目があうのは必然だった。
そして彼女の動きは完全に静止した。
どうしようもないな、これは。
そう思いながら目の前でおーいと手を振る。
「プリーン!!」
ハッと我に帰ったブリはそう叫ぶなり、バックヤードへと駆け込んで行った。
「あ、指揮官じゃないかにゃ。何か用かにゃ」
何事かと明石が顔を出したのは、一人ため息をついているすぐ後のことだった。
●
とりあえずと出された椅子に座りながら話す。
「いつになったらブリと仲良くなるんだにゃ」
「僕に聞かれてもなぁ……」
ブリ、正体不明の艦船少女。
気づいたらこの母港にいた。
その言葉に偽りなく、本当に突然現れたのだ。
彼女が言うには金色の姉がいるらしいのだが、いまだ確認されたことはなく。
とりあえずブリという名前を与えられて明石商店の手伝いをして今に至る。
一度だけもしかしたらブリはものすごく強いのでは無いかという勘違いと何時もの大口から、ジャベリンと模擬戦闘を組まされたことがある。
結果から言えば戦闘力は皆無だとわかったのだが、あのジャベリンから判定勝ちをもぎ取った。
そういう訳の分からないものなんだと、僕はその一件から深く考えるのをやめた。
多分その後からだろう。
模擬戦闘を組ませてから、こちらの姿を見るたびビクビクと怯えた様子を見せるようになった。
まああの戦闘狂とやらせたのは僕が悪いとわかっていたが。
「まあそれはいいにゃ、要件を聞くにゃ」
「扇風機かなんかないか?また冷房が壊れたんだが」
「直したばっかじゃなかったかにゃ?」
「クワガタが中から出てきたよ」
「何がどうしてそうなるんだにゃ、前壊れた時に扇風機持ってけばよかったにゃ……」
「うん、そこまで頭が回らなかった」
全く扇風機、扇風機と明石はまたバックヤードに引き返して行く。開いた扉の向こうから、ブリがこちらを覗いているのが見えた。
応じてくれるか分からないが手招きをする。来なかったら来なかったでまた今度にしよう、そんな軽い気持ちで。
そんな心配をよそにととと、とブリが駆け寄って来た。僕の目の前に立ち止まり、恐る恐る口を開く。
「……何か用プリン?」
そんな怯えなくても良いのに、とって食いやしないのだからと思う。まあ日頃の行いが悪いのだろう、苦笑しながら言う。
「いやなにもないけどね、最近話をしてなかったからさ」
「そう言えば、だいぶ久し振りっぽい?」
「うん、だから何かこうしたい、こうして欲しいってのが無いかと思ってね」
「……じゃあ前みたいに頭撫でて欲しいの!」
腹に衝撃が走る、呻き声を上げそうになるのを必死に抑えこむ。
少し考え込んだと思ったら、勢いよく膝の上に飛び乗って来たのだ。それを予想していなかった無防備な腹筋に、彼女の膝が突き刺さった。
胸に押し付けられた頭をゆっくりと撫でる。白い髪はとても撫で心地がよく、ワシャワシャと掻き回したい欲に駆られたが必死に堪える。
「プリン〜……」
「何やってるんだにゃ……」
くぐもった声で喜びの声を上げる一方で、じとっとした目で見られてることに今更気づいた。
「いや、撫でて欲しいって言われたから撫でてただけなんだが」
「ふーん、仲良くなれて結構なことだにゃ」
その割には不機嫌そうな声だった。
「それよりそれが扇風機か?」
扇風機と言うにはあまりにそれは異形だった。
一言で言うならば、箱だった。
大きくて白いサイコロ状の何か。
「違うにゃ!これは指揮官のエアコン改造してる時に閃いた温度調節装置にゃ!」
「そうか、欠点を聞こう」
嫌な予感がした、あまりに漠然とした何か。
それが今まで売れ残ってるのも何となくおかしい気がした。
「なんでにゃ!!スイッチオン!!」
白い箱の上部がパカっと開き、冷気が放出され始めた。エアコンが効いた店内がさらに冷え込み始める。未だに膝に乗っていたブリが寒さからプルプルと震え始めていた。
「おい、設定温度が低すぎないか?ブリが震えてる」
「無理にゃ」
「は?」
「これは設定温度が15度で固定されてるにゃ」
「そうか、帰れ」
●
泣く泣く明石が
「とりあえず冷房の修理は頼んどくにゃ、なんなら自分がやるにゃ」
「今の醜態を見せられて、任せられると思うと?」
耳が元気なく垂れ下がる、辛い言葉だと思うがそれが現実だった。
「そう言えば指揮官、ここでも女の子用のプレゼント、嗜好品を取り扱い始めたにゃ」
「そうか、それで?」
こう言う商売のセンスはあるのだが、いかんせん腕が変な方向に行っていると言うか、おっちょこちょいなのだ。補佐する誰ががいた方がいいと思うのだが、皆目検討はつかなかった。
「そしてここにマタタビがあるにゃ、さらにマタタビを買うと明石が嬉しいにゃ」
「……買おう」
「やっぱりダメ……え?」
「買うといったんだが」
まさか許可されると思ってなかった彼女は、喜びを爆発させて跳ね回っていた。ブリがドン引きする目にも気づく様子はない。
「やったにゃ!嬉しいにゃ!包装はしていくかにゃ?」
「ハムマンにプレゼント用にだから頼む」
「……そう言うことだと思ったにゃ」
一人いじけて、床を工具で引っ掻き始めた。
少しタチの悪い冗談だったかと反省する。
「冗談だよ」
「やっぱり指揮官は最高だにゃ!!」
すっと突き出された握手を求める手に応じて、こちらも手を出す。
明石の袖に僕の手が吸い込まれていき
激痛が走り、慌てて手を引いた。
「明石ぃ……工具はちゃんとしまっただろうなぁ……?」
「はっ!?指揮官大丈夫かにゃ!ブリ手当てするにゃ!」
ブリの手当てする手つきは拙く、利き手がドラ◯もんになったがまあそれでもいいだろう。
ブリの満足げな顔を見てそう思った。
●
商店を後に執務室に戻る、エアコンがついてない部屋は窓を開けてもまだ蒸し暑かった。
再び吹き出す汗を拭いながら、ブリに運んでもらったダンボールを不器用な左手で開く。
「これハロゲンヒーターじゃねえか!!」
一人執務室で叫ぶ。
最悪の日はまだまだ続くようだった。
ハロゲンヒーター、気づいたら消えちゃったね