司波達也や十文字克人の活躍によりブランシュの日本支部は壊滅した。第一高校内での戦闘や、その後の工場での戦いでは合計で五十名以上の死者を出し、ほぼ同数の敵兵を拘束している。
相手側を死亡させたのは概ね宮芝家の者たちであり、逆に拘束をしたのは第一高校の生徒たちだ。特に十文字克人は卓越した防御魔法でもって対峙した全相手を殺害することなく無力化に成功していた。
堅固な防御魔法は古式魔法が最も苦手とする分野だけに、その能力は羨ましくはあった。しかし、同時に力押しのような戦い方は古式の良さを殺すことにもなるため、真似をしようとは少したりとも思わない。
ともかく、ブランシュの襲撃を撃退したのみならず、壊滅にも成功した。それはよいが、問題となるのは事後処理である。
学校への襲撃者を撃退しただけであれば、まだ正当防衛の目もあった。しかし、拘束した敵兵は素材として使うために残らず運搬してしまっているし、廃工場への攻撃はもはや完全な報復行為である。世界群発戦争を経た現在においても、日本は無法地帯となっていないため、自力救済は認められていない。
だが、司直の手が治夏たち宮芝家に伸びることはない。十師族の一である十文字家の総領、十文字克人がかかわる事件に普通の警察は関与できないのだ。
学内の戦闘も、廃工場の戦闘も今回は克人が後始末を引き受けたため、外部からの介入はない。治夏は普段、司法当局を凌駕する十師族の権勢に忸怩たる思いを抱いているが、今回ばかりはありがたく恩恵に与ることにしていた。
これにより第一高校にとってのブランシュ事件は解決した。しかし、治夏は司直の介入とは関係なしに片付けなくてはならない案件を抱えていた。それは図書館に突入した際に殺害した第一高校二年生、早田宗泰に関しての後始末だった。
「こんなことになるのなら、殺さずに眠らせておくべきだったな」
「司波達也の到着が予想以上に早かったのですから、仕方ないかと」
これから行う面倒な処理を思うと、愚痴もこぼれもする。そんな治夏を皆川掃部は懸命に宥めようとしてくる。
現在、治夏たちは掃部、郷田飛騨守をはじめとした屈強な男たち八人と共に三台の自動車に分乗して早田宗泰の住所地へと向かっていた。生徒会からの情報提供によれば、早田宗泰は両親との三人暮らし。
つまりターゲットは二人ということだ。宗泰の他に子がいなかったというのは好材料だ。
「ターゲットは二人とも在宅か?」
「探知が得意な者に探らせたところ、二人とも在宅中ということです」
「では総員、作戦行動開始」
治夏の指示を受けて郷田飛騨が指揮する部隊が早田邸に突入する。郷田たちはそのまま瞬く間に早田夫婦を拘束。そのまま外の車へと連行して拉致をする。
この後、早田夫婦には厳しい尋問が行われることになる。二人の罪状は外国と繋がりのあるテロリストに加担していた早田宗泰に対し支援を行ったというもの。当然に、二人は息子がテロリストに加担していたことを否定しようとするだろう。だが、治夏たちはブランシュと行動を共にする早田宗泰の映像を多数保持している。
銃火器を生徒に向けるブランシュのメンバーたち。そのブランシュのメンバーを積極的に校内へと引き入れている早田宗泰。それだけで関与を示す決定的な証拠となりうる。
そして、十分に衝撃を与えたところで、二科生として一科生から下に見られることに不服を持っていたという早田宗泰の犯行の動機を伝える。それだけの動機でテロリストを校内に引き入れて学校を壊滅させようとし、実際に警備員を殺害した。あまりに軽い理由での重大な犯罪を犯したその心は、親であっても理解できないと感じるはずだ。
その結果が、倒されたブランシュメンバーの躯が随所に転がる凄惨な光景だ。学園側の警備員を殺害するブランシュのメンバー、ブランシュのメンバーを明らかに支援している早田宗泰の姿を重ねて映すことも忘れない。そして、最後の締めとして早田が手引きしていたブランシュのメンバーの死体の再放送だ。
無論、映像に加工などはしてやらない。ありのまま、素人であれば嘔吐しかねない悲惨な人体の一部まで、そのままの映像だ。
その後、早田が死んだことは口頭のみで伝えるが、両親の脳裏にはブランシュのメンバーの顔を入れ替えた映像が浮かんでいるはずだ。しかし、息子の死を悲しむ間も与えず、これだけの死者を出す重大な犯罪に手を貸した早田宗泰を責め上げる。そうした上で、本当に早田宗泰の計画を全く関知していなかったのかと尋問をするのだ。
両親は別々にされた状態で、三日ほど監禁を続けて昼夜に渡り厳しい尋問を続けられる。その後、解放されて疲労困憊の状態で帰宅した彼らを迎えるのは、家宅捜索により荒れに荒らされた我が家の姿だ。
そうして摩耗しきったところで、未成年者であることを考慮して、早田宗泰は犯罪の結果として死亡したのではなく、事故死として扱ってあげようという悪魔の申し出をする。それを受けた瞬間、両親は早田宗泰の死の責任を問う権利を失うのだ。後はテロリストに与して殺害されたという不名誉を息子と自身に与えないよう、二人は息子の死には触れることなく余生を過ごしてくれる。
「面倒は抱えることになったが、こうなれば出来レースだな」
「はっ、そのような展開になるかと」
「そうだな。では、我々は三日に渡って余計な仕事をしなければならない郷田飛騨たちに報いる方法でも論じておくとするか」
「はっ、かしこまりました」
拉致が順調に推移しているのを見て、治夏は自宅へと車を向けさせた。
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投稿前に書き溜めておいた分を使い切ったため、以後は週一での更新となる予定です。