あの後ミュアは機竜《ワイバーン》と共に例の小舟に帰還した。
すると船の下部にある金属製のハッチが一人で二開くとミュアはその中に
入っていった。
その中には幾つもの工具と武器と装飾品が所狭しと置かれていた。
「ミュアさん、お帰りなさい。」
「只今~~。」
その船の中にいる少年の一人がミュアにそう言うとミュアもそう答えた。
そして機竜から降りた後に階段を上っていくとそこには・・・ある少女がいた。
「ミュア、任務ご苦労様と言いたいところだがまた
〈愚者の万力(ジェスターズ・バイス)〉を使ったな!!」
「ミュアは悪くないもん。あんな弱い精霊をよこした軍が悪いもん!!」
「今回の任務はカミトの現在の実力を調べるだけだから別に軍用じゃなくても
良かったんじゃないの!!」
「ふん!ミュアの〈愚者の万力(ジェスターズ・バイス)〉に耐えられないん
だから有効活用した迄よ!!」
「軍用精霊はお前の玩具じゃないんだぞ!使いつぶすなら使いつぶすで
有効活用しなさい!!」
「そんな考え方してるからリリィは弱いのよ!!」
グぬぬぬぬぬぬとお互い一歩も譲らぬ気持ちで睨みあっていると・・・パンパンと何か音が聞こえ、声も聞こえた。
「はいはい、喧嘩はそこまでさね。あんたの任務はこれでお終いさね。」
そう言うのは壮齢の女性であった。
長い黒髪と右目にある傷跡。
然しそこから溢れるのは・・・並大抵とは思えない強者のオーラが滲み出ていた。
「ドラッケンさん!」
「ゲッ!ドラッケン!?」
ドラッケンと呼ばれるこの女性は二人を見た後にミュアを見てこう聞いた。
「さてと、ミュア。あんたが信頼するお兄様とやらの実力は如何さね?」
「そうだ!紅蓮卿(カーディナル)に報告しなきゃいけないのよ!
貴重な軍用精霊を失ったんだからまともな情報は聞かなきゃ!!」
そうリリィが聞くとミュアは少し考えて・・・こう答えた。
「兄さま・・・・弱くなった・・・・かな?」
「「は??」」
その言葉を聞いて二人は・・・はあと目を点にしていた。
「弱いって・・・〈デス・ゲイズ〉は中級とはいえ軍用精霊を倒したぞ。」
「昔の兄さまなら一人でやってたわ。」
「けど今は兄さまに付き纏う連中が兄さまの足を引っ張ってるの。」
「アレイシア精霊学院のチームメイトがか?・・・信じられないと言えば
嘘になるが彼がそんな連中と馴れ合っているとは。」
「このままじゃ兄さまが腑抜けてしまうわ。」
「・・・そうなると紅蓮卿(カーディナル)の計画にも支障が出るかも
しれないわね。」
リリィが何やら考えている中ミュアは笑顔でこう言った。
「大丈夫よ。兄さまの周りにいる連中はミュアが全部殺してあげるから。」
そう言うとドラッケンと言う女性が・・・頭をガシガシと撫で始めた。
「ちょ!何するのよ!!」
「ハハハハハ!その勢いさね!!欲しい物は力づくで手に入れる、それこそ
あたしららしささね!!」
ドラッケンはそう言いながらミュアを撫でている中ミュアとリリィに向けて
こう言った。
「けどね。そいつは違うさね。」
「「??」」
ドラッケンの言葉に何だとミュアとリリィは思うがドラッケンはこう続けた。
「あんたの兄さまとやらは恐らくだけど誰かに『守ることの大切さ』を
教えたんだろうね。」
「?守ることの」
「・・・大切さ・・・ですか?」
ミュアとリリィは何だと思っていた。
この二人はカミトと同じ教導院の出身だ。
殺しに精通した人間ばかりが集まるためそう言うのは教わらないのだ。
そしてドラッケンはこう続けた。
「良いかい?人間って言うのは傍から見れば足手まといにしか見えない人間でも本人からすれば大切な・・・自分の命以上に大切になっちまうものなんだよ。」
「そう言う人間のためならどんな状況でもチャンスを作っちまうから
戦いにおいては厄介何ださね。」
「だからこそあたしは情報を集めてそいつの弱点、行動、全てを把握して対策を練るのさ。」
「それにね・・・守る奴ほど・・・怖いのはいないんださね。」
「「??」」
ミュアとリリィは最後まで分からなかった様子であるがドラッケンは
こう締めくくった。
「ま、あんたらにもわかる時が来るさね。」
そう言い終えるとドラッケンは船員に向けてこう言った。
「アンタたち!取り合えず島に向けて迂回しつつ着陸するよ!!」
『『『ォォォォオオ!!』』』
船員全員の掛け声が船中に響き渡った。
「それとミュア、あんた依頼主にあれを持って行かなければいけないん
じゃないのかい?」
「はあああい。」
ミュアはドラッケンの言葉を聞いた後、リリィは後を追うように行くと
ドラッケンはその二人を見てこう言った。
「・・・出来ればあの子達にもそう言う道を見つけて欲しいね。」
「・・・それにしても未だあの子のドラグナイトとしての実力は
見てないからね。もう少し情報が必要さね。」
そう言いながらドラッケンは空を見上げていた。
船の中には幾つか部屋がある。
船員の寝場所。
調理場。
物置。
そして来客用の部屋。
その部屋をリリィはノックした。
その来客用の部屋の一室にてある女性がそこにいた。
長い腰まである黒髪。
黒いマントを身に纏い、緋色の鬼面の仮面を付けていた。
「誰だ?」
「わたしだ。リリィだ」
「入れ。」
リリィはその声を聴いて部屋に入った。
「体の調子はどうだ?」
そう聞くと女性はこう答えた。
「問題ない。」
それを聞いた後にリリィはこう言った。
「もうこれ以上は止めた方が良いぞ紅蓮卿(カーディナル)。これ以上は
貴様の」
「問題ないと言ってる。」
カーディナルはそう答えるとリリィはため息ついて先ほどの報告をした。
「それで・・・あれは?」
カーディナルはそう聞くとリリィはミュアを入れた。
するとミュアはある事を聞いた。
「ねえさ、本当にやるの?別に止めないけどさ、あんたこのままじゃあ本当に」
「問題ないと言ってる!!」
カーディナルは大声で同じ事を言うとミュアは何やら精霊語を唱えるとある物を出した。
それは赤黒い・・・肉の塊のような物が出てきた。
しかもそれは何やら心臓の様に波打っていた。
「ほら。これでいいでしょう?」
そう言ってミュアはそれを差し出すとカーディナルは有無を言わずにそれを奪い取り、自身の仮面をはぎ取って・・・食べた。
それを見ていたミュアは少し顔をしかめっ面してリリィにこう聞いた。
「ねえさ。あれって美味しいの?」
すると隣にいたリリィは首を横に振ってこう言った。
「それはないだろうがまあ仕方があるまい。私達は彼女に雇われているん
だから。」
「全くさあ、軍の上層部が何処だっけ?「ヘリブル」か「へインブル」だっけ?変な国の軍師からあれを貰った後に一二もなく同盟結んでさあ、
いい迷惑だよねえ。」
「ミュア、『ヘイブルグ共和国』だ。それにそのおかげで我々はカミトと
同じもの手に入れられたし彼女にも出会えたんだから良いだろう?」
「それってアンタだけでしょう?私は兄さまと一緒に入れられるなら何処だっていいもおん。」
そう言ってミュアは部屋から出て行ったのを見送ったリリィは部屋から見える
大空を見てこう思っていた。
「カミト。貴様は忘れているのかどうか分からないが忘れているのなら
思い出してやる。我々のような存在が活きるのは太陽の下ではない。」
「・・・・暗い地の底なんだ。」
「その生き方を体現していたのは紛れもなく・・・
お前だったんじゃないのか?」
リリィはそう思いながら空を見つけていた。
外を自由に飛んでいる小鳥たち。
だがそれらは竜の前では只の捕食対象でしかない。
所詮は力がなければ生き残れない。
それこそ絶対の真実。
リリィのとって世界はそれだけの存在でしか・・・ないのだ。
私たちは生き残る。
誰かを殺してでも。