精霊使いの装甲機竜   作:caose

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 さてと・・・ダンスは出来るかなあ?


泳いで晩餐会。

穏やかな日の光。

 空を飛び交う色彩鮮やかな鳥の群れ。

 生い茂った木々の枝からは色鮮やかな果実が実っている。

 ここは城館近くにある湖。

 そこにいるのは普段は精霊だけだが今では・・・・。

 「・・・平和だなあ。」

 「【カミト、お前現実逃避してねえか?】」カミトが遠い目をしているので

シラヌイがそう聞くがまあ当たり前だろうな。

 何せ・・・・。

 キャッキャウフフと・・・少女達が・・・・色鮮やかな・・・水着で・・・

遊んでいるからだ。

 因みにカミトは自身の立場を考慮し、湖の畔でエストと日陰ぼっこしている。

 何でこうなっちまったんだとカミトは思ってしまった。

 思えばあのマギアルカが商売しないとは考えが付かなかった。

 まさか他国の水用の衣装を持ってきていたとは思いもよらなかった。

 するとカミトの下に誰かがやってきた。

 「ここで何してるんだ、カミト?」

 「ああ、ヴェルサリアか。」

 ヴェルサリアは今白地のビキニの水着を着ていた。

 本人的には他のが良いかなと思っていたがこれしかなかったのだ。

 するとカミトの隣に座ってこう聞いた。

 「泳がないのか?禊とかは大切だろ?」

 するとカミトはこう答えた。

 「いや、・・・女子の中に・・・なあ。」

 「・・・確かにな。」

 ヴェルサリアはそう言って目の前の光景を見ていた。

 するとヴェルサリアはカミトにある事を聞いた。

 「なあ、カミト。聞きたいことがあるのだが・・・良いか?」

 「?」

 「・・・あの〈ワイバーン〉を纏っていた少女についてだ。」

 「!!」

 カミトはそれを聞いてミュアの事だと確信するがヴェルサリアはこう続けた。

 「お前とあの子、ただならぬ関係何だと思っているのだが・・・」

 「・・・・・。」

 それを聞いたカミトだがそれを言う事とはつまり自身の過去、自身が

〈教導院〉出身であることも喋らなければならないのだ。

 徹底して殺人のための教育を叩き込まれ、実際に人も殺している。

 だがそれを聞かれたらどうなるか・・・。

 軽蔑か同情か。

 どちらにしても今までのような関係ではなくなるのは目に見えていると

思ったのだ。

 それを見たシラヌイはというと・・・。

 「【カミト・・・。】」

 心配しながら見守るしかなかった。

 付き合いが長いからこそカミトの考えにも納得しているからだ。

 だがこれはいつか来るであろうことだ。

 こればかりはどうしようもないと思っていた。

 しかしヴェルサリアが言った言葉は・・・・意外な言葉であった。

 「・・・言いたくないのならそれでもいい。」

 「え?」

 カミトはその言葉に驚いていた。

 もっと質問するんじゃないのかと思っていたがヴェルサリアはこう続けた。

 「私たちはチームで仲間だがだからといってその人間の過去にづかづかと

立ち入るのは無粋な事だ。」

 「話したくないのならいいが自分自身で話したいと思ったら・・・何時でも

話してくれ。」

 そう言いながらヴェルサリアはカミトに向けて微笑んでいた。

 するとヴェルサリアはカミトの手を握ってこう言った。

 「さあ、試合まで未だ幾ばくかの余裕があるのだから貴様も泳げ。」

 そう言ってヴェルサリアはカミトと共に湖に向かって行った。

 恐らくヴェルサリア自身はもう少し話したかったのであろうがそれはそれ。

 これはこれである。

 今は楽しませようと思うヴェルサリアの思いやりを感じたカミトは・・・

こう呟いた。

 「・・・ありがとうな。ヴェルサリア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浮遊島のどこかにある地下空洞。

 そこでは多くの人間が準備していた。

 武器を磨いている者。

 食事を喰らっている者。

 仮眠を摂っている者。

 その中でミュアは・・・一人こう言っていた。

 「もうすぐよ兄さま。ミュアが邪魔なお姉ちゃんたちを全員

消してあげるから。」

 ミュア・アレンスタール。

 元々は帝国辺境の寒村生まれであったが生まれついて精霊契約の力を

持っていた。

 村の人間は皆大層に喜びミュアを大切に育てた。

 そして彼女が4歳の誕生日の日。

 ある事件が起きた。

 村の人々はミュアを村の守護精霊と契約させようとしたのだ。

 村を繁栄させようと。

 最初はそう言う純粋な思いであったのだろう。

 だがそこから・・・全てが変わってしまった。

 ミュアが契約の儀式を交わした途端に守護精霊は・・・狂乱してしまったのだ。

 これまで村を守っていた精霊は村を・・・悉く焼き尽くしたのだ。

 自身が消える迄ずっと・・・・。

 ミュアの力は・・・精霊を狂乱させる異能であったのだ。

 これまで大切に育ててくれた村人たちは一変してミュアを村に追いだした。

 そして村を追い出された彼女は教導院に連れ去られ、呪装刻印を刻み、

殺戮の技術を覚えさせ、心を消すすべを学ばされた。

 それが幾年月が経過し・・・心が壊れかけたそんなある日であった。

 

 

 

 

 

 

 『お前、いつも一人だな。』

 『そうよ、ミュアはずっと一人だもの。ミュアが話すのは殺す人間だけ。』

 『なら僕が友達になってやるよ。』

 『ふん、バカみたい。ここで友達何て』

 「じゃあ、兄妹ならどうだ?俺が兄さんでお前が妹だ。』

 『・・・何を勝手に決めてるのよ、バカね。』

 

 

 

 

 

 

 嘗てカミトと初めて会った日に交わした言葉。

 もう当の本人は思えていないであろうがミュアにとっては自我を保つのに大切な言葉である。

 「・・・兄さまは、ミュアとリリィだけいればいいもん。」

 自身にとって世界とはカミトとリリィとシラヌイ。

 只それだけでありそれ以外はあまり興味がなかった。

 だが・・・・。

 「けど・・・・ドラッケンも・・・『竜匪族』のメンバーと一緒だったら

良いかな?」

 本人の知らぬ間に出来てしまった居場所。

 『竜匪族』は最初は仕事関係での付き合い程度であったがいつの間にか・・・

ドラッケンと一緒にいるうちに・・・消えてしまっていた感情が少しずつ・・・蘇ってきたのだ。

 血の繋がりではなく・・・心の繋がり。

 ・・・『家族』のような関係に・・・・。

 「だから許さない。兄さまはこっち側の人間だってこと・・・思い出させて

あげる。」

 竜匪族人竜隊所属の客将ミュア・アレンスタール。

 今ある居場所の為に・・・戦う人間。

 

 

 

 

 

 

 

 夕刻、代表生の宿舎(カミトは除く)となっている城館でブレイドダンスの

開会式と名を騙った夕食会が執り行われた。

 城館の大ホールには既に大勢の賓客で賑わっていた。

 中央に並んだテーブルには贅を凝らした魚、肉料理、果物が並べており、優雅な音楽と精霊鉱石をふんだんにあしらったシャンデリアが輝いていた。

 「【おうおうおうおうおうおう、こりゃあすげえな。】」

 正に金の無駄遣いだなとシラヌイがそう言った。

 何せ開会式に出席しているのは各国から出場してきた精霊使いと身分の高い

王侯貴族ばかりなのだから。

 「今回は我が国の代表が勝たせてもらいますぞ。」

 「何の、我が白の騎士団には最高峰の精霊使いがいますからな。」

 表面上は礼儀正しく挨拶しているが心中では罵りあいと自慢話が横行していた。

 「(・・・ったく、お前らの為に剣舞を奉納するわけじゃないってのに)」

 「【そう言うなよ。・・・まあ、グレイワースが表舞台を嫌う理由は

分からんわけでもないがな】」

 するとシラヌイが周りを見てこう聞いた。

 「【なあよ、カミト。出場する連中ってみんな・・・若いな。】」

 「そりゃあそうだろう。何せブレイドダンス出場者は20歳以下の姫巫女って

決まりなんだからな。」

 「【それってつまり・・・精霊も中々どうして、やっぱ年寄りの婆よりも

若い女の子ってかよ。】」

 物好きだなとシラヌイがそう言った。

 「・・・にしてもあいつら遅いな。」

 カミトは周りを見てそう言った。

 「【女の着替えなんて遅いのが通例なんじゃねえの?】」

 「【ま、そう言う時には『別に、待ってねえよ。』って言えば大体の奴は

喜ぶぜ。】」

 「【それにな・・・・】」

 シラヌイがカミトにそう言うとある所に意識を向けていた。

 「動物はご遠慮下さい!」

 「むー、獣ではないのだ!この狼は森の仲間なのだ!!」

 「仲間でも、駄目なものはダメです!!!」

 「【あれよりはマシだろ?】」

 「・・・確かにな。」

 同じ学院代表として恥ずかしいと思うカミトはなるべく目を合わさないようにホールの入り口から遠ざかった。




 次回は・・・出来るかな?
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