長時間寝てるやつを無理やり起こすのは下の下だ。
「(とうとう来ちまったな相棒。)」
『シラヌイ』が祠の前でそう言うがカミト自身もそう思っていた。
聖剣が祀られている祠は森が開かれた場所なのだがその周りを結界が
覆っていたのだ。
もうこの時点で回れ右したいのだが首に鞭が締まっていて思うに逃げられないのだ。
クレア・ルージュはその結界を指先一つであっさりと解呪するとカミトの方を向いてこう忠告した。
「ここから先は本当に危険だから一般人のあんたは私の後ろに着いてきなさい。」
「(じゃあ解けよ首の鞭。)」
「あんた危険って分かってんならやめとけよ。≪封印精霊≫は気性が荒くて隙あらば
自分を使役する精霊使いも殺すほどだぞ。」
カミトは如何やら制御に失敗した時に備えて護衛すると言っているのだ。
何言ってんだこのお人好しはと『シラヌイ』が呆れかえっていた。
「言ったでしょ。私には今すぐ強い精霊が必要だって。」
如何やらがんとしていう事を聞かないのでカミトはクレア・ルージュにこう聞いた。
「絶対に大丈夫なんだな?」
「当たり前でしょ!」
カミトは肩を竦めて駄目だこりゃと思った。
そして二人は祠の中に入った後クレア・ルージュはそっと呟いた。
「-炎よ、照らせ。」
炎精霊の初歩的な精霊魔術で指先に小さな火球を生み出して二人は進みだした。
暫く進むとその剣があった。
巨大な石に突き刺さっている抜身の剣だ。
剣自体はかなり古い物らしいが剣身自体は錆びついておらず刃こぼれも
していないという何ともさっき刺しましたーー。というくらい綺麗な剣であった。
剣の腹には精緻な古代紋様が刻まれておりその文字が淡く青白く発光していた。
「あれが学院が立てられる前からあるといわれる≪セヴェリアンの聖剣≫よ。」
「おいおいそれってあの魔王スライマンを倒したっつうあの?」
「(お前にとっちゃあ天敵だな。)」
それはかつて七十二柱の精霊を従えた唯一の男の精霊使いでありそれを殺した剣が
目の前の剣であると言われる。
然しクレア・ルージュは呆れながらこう言った。
「馬鹿ね。そんなの帝国に至る所にあるわよ。ま、本物じゃないにしろ
それなりに強い精霊が封印されているかもしれないけど。」
そのままクレア・ルージュは剣の方へと歩いていった。
「おおい、無理するなよ。」
「分かってるわよこのハイグレード変態!!」
「(まだそれ言うようだな。)」
カミトはクレア・ルージュに注意しても聞く耳持たずの様だ。
カミトは封印精霊を刺激しないようにそしていつでも『シラヌイ』を出せるように
構えるとクレア・ルージュは深呼吸した後詠唱した。
-旧き聖剣に封印されし、気高き精霊よ!
-汝、我を主君と認め契約せよ、さすれば我は汝の鞘とならん!
流暢に紡がれる精霊語の契約式(コンダクトル)の中彼女の周りで風が暴風のように渦巻き始めた。
そのまま契約の誓言が最終章に入るとさらに風が強くなって今にも吹き飛ばされそうになりそうであった。
更に聖剣から叩きつけるように膨大な神威が放出された。
普通ならとうの昔に失神してるぐらいの量だがクレア・ルージュはこう綴った。
「-我は三度、汝に命ずる、汝、我と契りを結び給え!」
クレア・ルージュの誓言が祠の中に響き渡った瞬間・・・剣が抜けた。
「ぬ、抜けた!抜けたわ!!」
「マジでか!?」
クレア・ルージュは抜き取った剣を歓喜の声で振っていると剣に刻まれている
古代紋様が烈しく光った。
「!!。」
「(おいカミト、やべえぞ!!)」
『シラヌイ』そう注意した瞬間・・・剣が光と共に砕け散った。
「きゃっ!」
クレア・ルージュは砕け散った影響で地面に倒れこんだ。
「おい、大丈夫か?」カミトは慌ててクレア・ルージュに近寄った。
「な、何?一体何がって・・・あたしの剣精霊は!?」
すると『シラヌイ』が凄い嫌な口調でこう言った。
「(早く逃げたほうが良いぜ相棒。あいつ・・・怒ってるぞ。)」
そこにいたのは砕け散った聖剣ではなく武骨で切れ味が良さそうな鋼の剣であった。
「・・・確かに。ありゃ怒ってるな。」
「何で精霊使いでもないのに分かるのよ。」
クレア・ルージュがそう言うとカミトはこう返した。
「ああそりゃ見りゃわかるだろ。」
すると剣がこちらを向いた。
「ありゃ完全に・・・敵意剥き出しだろうが!!」
カミトが大声で言うと同時に剣がこちら目掛けて突進してきた。
寝る子は育つ。
だが寝すぎると健康に害を及ぼすぞ。