カミト『ふざけろ!!」
数分後・・・。
「・・・・・」
「・・・驚いたわ。」
「うむ・・・儂もじゃ。」
カミトの格好を見てフィオナとマギアルカがそう言って二人でこう呟いた。
「「まさかここまで似合うなんて(のう)」」
『ギャハっハハハハハああハッハ‼!』
それを聞いてシラヌイが大爆笑する中でカミトはこう呟いた。
「・・・いっそ殺してくれ。」
そう項垂れあるしかなかった。
目の前の鏡映っているのは・・・〈神儀院〉の儀礼服を身に纏った
カミトであった。
長い黒髪の鬘
頬には白粉。
唇には薄い桜色の紅をさして・・・完全に少女になっていた。
「想像以上の出来よ。顔立ちは変わっても流石ね。その格好で街に出たら
きっと皆が声をかけるわ。」
「これは中々じゃのう、成程。確かにこれならあそこに
忍び込んでものう・・・」
フィオナとマギアルカはカミトの女装の姿を見てそう言う中で
フィオナはこう言った。
「・・・完成度が高すぎて皆に見せるか記録結晶に保存して売りさばきたいわね」
「頼む!それだけは止めてくれ!!」
カミトはそれを聞いて懇願するとシラヌイがこう言った。
『あああ、面白かったけどよ。それで、これでどうするんだよおい?』
シラヌイがそう聞くとカミトもこう聞いた。
「そうだな、これでどうするんだよ?」
そう聞くとフィオナはこう答えた。
「・・・聖域の大祭殿に侵入するのよ。」
「・・・・・・ハアアアアアアアアア!!!」
それを聞いてカミトは滅茶苦茶驚いてしまった。
何せあそこはブレイドダンスの選手程度では入る事すら出来ないのだ。
然もあそこには強力な守護精霊が番をしているのだがフィオナはこう続けた。
「大丈夫よ、大祭殿ですら感知されていない秘密の通路を使って侵入するのよ。そしてそこにいる・・・恐らく間違いなくいる彼女に頼んで解呪してもらうわ。」
そう言うとマギアルカはこう聞いた。
「もしおらなければ?」
そう聞くとフィオナはこう答えた。
「その点も大丈夫よ、あそこには呪術の資料が山ほどあるから
そこからアクションを試みるわ。」
そう言いながらウインクするがどうにもなあと思いながらカミトは
連れられていくのであった。
・・・シラヌイはお留守番。
浮遊島の地下には何時造られたのかその目的ですら分からない大空洞がある。
そこは最高位の姫巫女ですら立ち入ることが禁じられているのだが一人だけ・・そこにいた。
真紅の仮面を付けた少女。
偽のレン・アッシュベルが。
周囲が天然の洞窟であるのだがそれに対してここだけが明らかな人工物である。
さして広くないこの部屋こそが・・・この聖域の〈真祭殿〉。
地上にある大祭殿は只の見せかけの偽物である。
体の奥底から腐っていくような腐臭がたちこむ中偽のレン・アッシュベルは
ある場所を見ていた。
それは部屋の中央に安置されている黒い棺。
石で出来ている石棺である。
然しそこだけは・・・周囲から禍々しい気配を漂わせていた。
すると背後から・・・少女の声が聞こえた。
「探したわよ、『レン・アッシュベル』」
暗闇から現れて来たのは・・・『ミュア・アレンスタール』であった。
するとミュアがこう言った。
「ドラッケンから報告ヨ、四人目がやっと到着したらしいわ。今リリィが迎えに行ってるわ。」
そういう中で偽のレン・アッシュベルはこう言った。
「やっと到着したか、あのお姫様には困ったものだ。」
「ま、アンタの監視も兼ねているから別に後でも良いってことじゃない?」
そういう中でミュアは偽のレン・アッシュベルに向けてこう聞いた。
「ねえさ、アンタ・・・兄さまにナニカしたの?」
そう言いながら腰に差しているソードデバイスを抜く構えを見せた。
気に入らない、納得のいかない答えならば即座に殺すと忠告するかのように。
すると偽のレン・アッシュベルはこう聞いた。
「彼の力を解放したことが気に入らないのか?」
そう聞くとミュアはこう答えた。
「それは私とドラッケンの仕事ヨ。アンタの仕事じゃないわ。」
「私もあれは本意ではなかった。だが、計画を急ぐ必要性が出てきたのでな。」
「・・・ほら吹きも大概にしなさい。」
そう言いながらミュアはソードデバイスを抜いてこう言った。
「・・・・あんたの****が来れなかったことの逆恨みでしょ?」
「・・・貴様・・・・!!」
それを聞いて偽のレン・アッシュベルから炎が燃え上がるが
ミュアはこう続けた。
「もし兄さまの体が耐えられなかった時はどうやってお詫びするのよ・・・!」
「その時は彼に魔王の後継者としての資格がなかった」
「資格何てアンタが決められるほど小さなものなのかしらね?」
「何・・・・!!」
そしてミュアはこう続けた。
「私達『竜匪族』とそのスポンサーがあんたらアルファス教国と
『躯連盟』に協力するのはただ単に利害が一致していることのこれ1つ。」
「あたしとリリィは『兄さまに本当の居場所がどこなのかを知ってもらって
また一緒に暮らす』と言う目的があるけどアンタには何があるのかしらねえ?」
「・・・黙れ」
偽のレン・アッシュベルはそう言うがミュアはこう続けた。
「アンタの大切な****はこのブレイドダンスに出場できないどころか
深手を負って今も入院中」
「・・・黙れ」
「可哀そうにい、大切だからこそ手放しておきながら陰ながら
応援しないどころか家族をバラバラにしておきながら自分はのうのうと
然も前回優勝者の名前を使って皆からちやほやされているなんて
なんて滑稽なのよ。」
「黙れ」
「アンタに資格どうのこうの言う前に自分がどうなのよ。」
「黙れ」
「あんたにその名前の重みを本当に理解しているの」
「黙れ!」
「アンタは自分の行動に責任持てるの?」
「黙れ!!」
「あんたは自分の事しか何も考えていない」
「黙れ!!!」
「アンタは所詮責任から逃げてるだけの弱者よ」
「黙れ---!!」
偽のレン・アッシュベルは最終的に大声を上げてそう言うが
ミュアはこう言った。
「もし兄さまが死んだらアンタの大切な****を仲間に犯させてから殺すからそう思いなさい。」
生きていればだけどねと笑いながら消えていくのを見て
偽のレン・アッシュベルは・・・膝から崩れ落ちるかのように倒れると・・・
くぐもった声を出していた。
そして仮面を少し取って目を隠すかのように・・・泣き始めた。
「う・・・うう・・・・ううう」
そして暫くすると・・・もう一度仮面を付けて偽のレン・アッシュベルは
再び黒い石棺に目を向けなおすとそこに向かって歩き出した。
そして石棺の上に紐を通した勾玉と・・・懐から1枚の札を出した。
勾玉はアストラル・ゼロの聖域でしか発掘出来ない国宝級の精霊鉱石、
『ブラッド・ストーン』である。
そして偽のレン・アッシュベルは澄んだ声音で呪詛の言葉を紡ぎ出した。
「冥府を統べる精霊の王よ、今ここに、闇の御子の御霊を呼び戻せー」
仮面の奥から聞こえる精霊語は只の精霊語ではない。
それは、《神儀院〉の中でも最上級でもある最高位の姫巫女のみが唱えることを許された・・・古代精霊語(ハイエンシェント)だった。
すると・・・。
ドクン
黒い石棺から心臓のような音が聞こえた。
それと同時に石棺も震えた。
そしてそれと同時に真紅の『ブラッド・ストーン』が粉々に砕け散って
札が石棺の中に・・・取り込まれていった。
すると石棺の蓋部分に・・・『35』の数字が表れたのだ。
そして・・・。
ズズ・・・ズ・・・ズズズズ・・・!
小刻みに震えていった石棺の蓋が開いてその隙間から・・・
何かが這い出てきた。
それを見た偽のレン・アッシュベルは・・・こう言った。
「初めまして先代の魔王の後継者・・・『ネペンテス・ロア』」
「・・・我ら〈煉獄の使徒【チーム・インフェルノ】の5人目よ」
そう言う偽のレン・アッシュベルの目に映っているのは・・・・。
8つ目の目を持つ・・・化け物であった。
もう戻れないのならば・・・進むしか・・・ないのだ。