酒場のある宿に入ったレオノーラは中に入るとテーブル席ではなくカウンター席に座るとローブを脱ぐと店主に向けてこう言った。
「すみません、ホットのそうですね・・・ワインをくれませんか?それと簡単に
食べれるものを。」
「構わねえぜ、ワイン何だがついこの間アーバー産の10年物が手に入ったんだ。高えけどどうする?」
「ではそれで、それを2人程・・・そう言えばカミトはお酒飲めますか?」
レオノーラはカミトに向けてそう聞くとああ俺なと言ってこう続けた。
「まあ・・・嗜む程度はな。」
ーーまあ実際はグレイワースの酒癖が絡み酒だったから其れが原因で
飲めねえんだけどな。
ああなりたくねえって思ってたんだろうなとシラヌイがそう言うとメイルストームが
こう聞いた。
ーーあら、あの方そんなに酒癖が悪かったのですか?
ーーおお悪い悪い!何しろ帝国のあほ共とかくっちゃべりながらカミトに酒
推し進めるもんだからそれ以来だな。
シラヌイとメイルストームが何やら談義しているが当のカミトは思いだしたくねえと
思っているとあははと乾いた笑みを浮かべるレオノーラがカミトに向けてこう言った。
「まあ・・・仕方ないですね、ですけどここからキリア山脈を越えるためには
暖かくするのは必須ですからまあ一杯。」
レオノーラはそう言ってホットワインをカミトに手渡した。
生姜と柑橘系の良い匂いがするなと思って飲んでみるとこれが中々であった。
「凄い暖かくなるな・・・これは効きそうだ。」
カミトの言葉を聞いてそうでしょと言ってレオノーラも飲み始めると酒場で
声が聞こえた。
「ここ最近よく雪降るよな?もう2週間はずっとだぜ?」
「嫌になるよな?俺なんか余りの寒さで酒飲まなきゃ仕事すら出来なくて手が
かじかんで震えてんだぜ?」
「お前の場合は飲み過ぎだろうが?だけど可笑しいよなあ、帝国の代表が
ブレイドダンスで優勝したってのに何でこんな感じなんだろうな。」
そう言う声が聞こえてカミトはドキッとするがシラヌイは落ち着けと言って
こう続けた。
ーーお前の事はパンピーには知られてねえよ、其れにこの天候は偶然か或いは俺達が
偽の精霊王ぶっ飛ばした影響だろうな。なあに暫くすりゃあ精霊龍の力が
ここら辺を落ち着かせるだろうからそれまでの辛抱だぜ。
シラヌイがそう言うとそれでもとカミトはそう思いながらチビチビ飲んでいると
カミトは店主に向けてこう聞いた。
「なあ一つ良いか?」
「お、何か注文かい?何なら鹿肉のシチューはどうだ??俺特製のこの店の
ナンバーワンメニューだぜ!」
へへへと店主は広い胸板をどんと大きな手を握り拳にして叩くとカミトは
いやそっちじゃなくてと言ってこう続けた。
「この雪なんだがキリア山脈に入った奴ッているか?」
そう聞くが阿保いうんじゃねえと大声で怒鳴ると店主はこう続けた。
「この吹雪の中キリア山脈入るなんて自殺行為だぜ!おまけにあの山には魔物が出るし何よりもここ最近じゃあ氷竜を見たって奴もいりゃあ黒い化け物が蔓延ってるって
噂なんだぜ?とてもじゃねえがあの山に向かうなんて辞めた方がいいぜ・・・!」
店主がそう言っているのを聞いてカミトとレオノーラが店主にずわっと
顔を近づかせると店主が驚いて何なんだよと聞くと2人は店主に向けてこう聞いた。
「その化け物って・・・黒いってマジか!」
「氷竜を見たと聞きましたがまさか『ジルニトラ』が関連しているとかですか!」
カミトとレオノーラが揃ってそう聞くとええととちょっと待ってろと店主が
落ち着かせると先ずはと言ってこう続けた。
「先ずはお嬢ちゃんだ、『ジルニトラ』についちゃあだが氷竜はかの守護精霊の
眷属だからな。ねえって訳もねえし何よりも昔はここいらも氷竜が住み着いてたからな、絶滅したってのは聞くが本当かどうかは誰にも分からねえ。それと兄ちゃんなんだが
遠目で見ただけだしはっきりと見たって奴はいねえが黒くて
でけえ翼生やした奴がいたってのはこの店で聞いた話だ、詳しい話は他にも聞きゃあ
分かると思うが悪い事は言わねえ。今はあの山に行くのは辞めておきな。」
其れを聞いて不味いと思っていた、アビスが近隣にいる事は間違いないと思った
レオノーラは・・・顔面蒼白してあの時の事を思いだしていた。
仲間たちが次々とアビスの餌食となって食いちぎられる光景と断末魔と・・・
地面に落ちるあのアカイカタマリが・・・
ーレオノーラ・・・レオノーラ!
「は!」
「・・・大丈夫かお前?」
「カミト・・・すみません、メイルストームもすみませんでした。ちょっと
昔の事を思いだしてしまって。」
レオノーラの言葉を聞いてそう言えばとカミトは何故レオノーラがこの国にいるのかを思いだした。
仲間や家族をヘイブルグ共和国やアビスに奪われた事を思いだして済まないと言うと
いいえとレオノーラはカミトに向けてこう続けた。
「これは私の問題ですし何よりも・・・もうあの時の様にしたくないですから。」
レオノーラの言葉を聞いてそうだなとカミトはそう言うとカミトは知っていた。
今のレオノーラの表情は・・・疲れ切った人間そのものの表情である事を。
そして泊まる事と相まって。