「まさかあの剣の〈封印精霊〉がこんな女の子とはなあ。」
カミトはレオノーラとエスト、グリムゲルデを連れて学院の中庭でそう言う話を
していた。
因みにエストは現在アレイシア精霊学院の制服を構築して着ている。
グリムゲルデの服もそれなのだ。
だが本来精霊はアストラル・ゼロに帰還して力を回復させるのだがエストの場合は
カミトの強い思いに共鳴した際に『シラヌイ』が持っていた「玄海」を経由して
疑似的な精霊魔装になったのだがカミトが意識を失ったと同時に回路(パス)が
閉じたのでアストラル・ゼロに帰る事が出来なくなったのだ。
「然しどうしてパスが繋がらないんだ?契約は結んだはずなのに。」
「(あの時は仕方なくって言う思いがあったんじゃねえの?)」
カミトの疑問に『シラヌイ』が仮説を述べるとエストがこう答えた。
「それは、私の存在が強大過ぎるというのもありますが・・・恐らくカミト自身が
無意識のうちに私との契約を拒んでいると思います。」
「(それって・・・あれだな。)」
「(ああ・・・あれだな。)」
エストの答えに肯定する部分があったのかカミトと『シラヌイ』はカミトの黒い
革手袋に覆われた左手を見た後カミトはエストにこう言った。
「・・・悪いな。別にお前と契約したくないととかそういう意味じゃねえけどお前らからすればストレス溜まるもんな。」
現在のエストの力は殆どアストラル・ゼロに残してしまったため本来の力を
発揮することが出来ないのだがエストはどこ吹く風というようにこう返した。
「構いません。これまで53人の精霊使いを袖に振りながらも何百年と封印されていたのでこの世界を愉しみます。」
エストはそう言うとグリムゲルデを連れて遊び始めた。
それを見ていたカミトとレオノーラは微笑ましい様子で見ていると中庭にいた生徒の何人かがひそひそと呟いていた。
「見て、ほら、例の男の編入生。」
「(みての通りだろ。)」
「流石ね。もう新しい女の子を手籠めにしてるわ。」
「(・・・反論する材料がねえ。)」
「あのこ可愛いけど何処のクラスの娘なのかしら?」
「(こいつ精霊だぞ。)」
「ねえ、昨日の夜、エリス達があいつを巡って決闘したって本当?」
「(決闘はしたが理由は違うぞ)」
「まさか、この学院の女の子全員を手籠めにするつもりかしら?」
「本当だとすれば・・・淫獣ね。」
「女の子の敵ね・・・。」
「・・・俺もう帰っていいか?」
「大丈夫ですってカミト。」
周りの人間の言葉にカミトは心が折れかかっているのをレオノーラが慰めていると誰かが後ろから来るのが分かり振り返ると・・・。
「目が覚めたようだな。カゼハヤ・カミト。」
「エリス・・・。」
エリスがカミトにそう言うと遊んでいる少女を見つけてカミトにこう聞いた。
「カミト、あの子は?」
「ああ、あの封印精霊だよ。」
俺も驚いたがなと言うとエリスはカミトにこう言った。
「その・・・済まなかったな。」
「ん?」
「私は君が男だからって言うだけで君を遠ざけていたんだ。そのことを
謝りたくてな。」
エリスは顔を赤くして謝るとカミトはこう返した。
「大丈夫だ。狂乱した精霊相手なら何度かやり合ったことがあるからな。
経験だよ。」
カミトは照れ隠しに頭を掻いていると花火の音が外から聞こえた。
「(何だ?祭りか?)」
『シラヌイ』がそう言うとエリスはカミトに思い出すようにこう言った。
「ああ、そう言えば今日の午後に学院都市でオルデシア騎士団の
デモンストレーションも兼ねて〈軍用精霊〉の契約式典(セレモニー)が
開かれるんだ。」
「セレモニー?」
エリスの言葉にカミトは何だそれはと言うとレオノーラがこう説明した。
「このアレイシア精霊学院に入学している人間の大半は精霊騎士の志願者が
多い事からそう言う催しが度々開かれるんです。勿論軍属になったら騎士団の要請に
従わなければならないと言う制約がありますがそれでも魅力的なんですよ。」
それだけに参加者は多いので無制限戦闘(バトルロワイアル)でやるのですがねと
付け加えるとカミトはあの時のクレア・ルージュを思い出すとエリスにこう聞いた。
「クレア・ルージュも・・・あいつもこのセレモニーを聞いていると思うか?」
するとエリスが顔をしぶかせてこう返した。
「確かに出場すると思うが幾ら何でも無理だ。契約精霊を失った状態でエントリー
するなんて自殺行為だが・・・。」
いや然しと唸っている中『シラヌイ』がカミトにこう提案した。
「(気になるなら見に行けば良いじゃねえか?いればいたで止める手立てを
考えればいいしいなかったらいなかったでほっとすりゃいい。)」
そう言って成程と思ってカミトはエリスとレオノーラにもそう言った。
「よし、一回行ってみて確かめようぜ。もしかしたらまだ間にあうかも
しれないしな。」
するとエリスとレオノーラもこう返した。
「確かにな。ここで突っ立っていても仕方がない。」
「何事も『百聞は一見に如かず』ですしね。」
そう言うとカミトはエリスに場所を聞いた。
「学院都市のオリビエ通りを真っすぐに行った闘技場だ。」
「それじゃあ行くか。」
カミト達はエスト、グリムゲルデも連れて闘技場へと向かった。
それを見届けている少女に気づかずに。
「クスクス。」
次はクレア・ルージュサイドから。