そのクレア・ルージュはと言うと学院都市の路地を一人で歩いていた。
カミト達と別れた後クレア・ルージュはその後もあの森で精霊を求めていたが
魔精霊以上の精霊などいるはずもなく夜明け前までアストラル・ゼロで
彷徨っていたのだ。
更に言えば今のクレア・ルージュは幼馴染であるリンスレットですらも見分けが
つかないほどやつれていたのだ。
足取りは重く、前に進むことですらやっとといった状態なのだがクレア・ルージュはある目的のために強い精霊を探しているのだ。
それは・・・
「(行かなくちゃいけないのよ、スカーレットのために、そして私の願い・・・
ルビア姉さまに真実を聞くためにも!!)」
クレア・ルージュとは学院での都合上与えられた名前であり本当の名前が別に
あるのだ。
本名は「クレア・エルステイン」。
オルデシア帝国の建国以来、代々王宮に仕え、精霊使いの頂点ともいうべき存在、
五大精霊王に直接仕える〈精霊姫〉を排出する名門で・・・あったのだ。
何故過去形なのだというと四年前、火の精霊王に仕えてきた精霊姫ー
ルビア・エルステインが突然、祭壇から当代最強ともいうべき炎精霊
〈レーヴァティン〉を奪って姿を消したのだ。
精霊姫の裏切りにより炎の精霊王は怒り狂い、エルステイン領を始めとし、
オルデシア帝国の領地を幾つも焼き払って帝国は甚大な被害を被り、約一年の間、
帝国内で火を熾すことが出来なくなったのだ。
何故ルビア・エルステインが姿を消したのか理由は定かではないがオルデシア帝国の国民は憎しみと呪詛の言葉を込めて彼女をこう揶揄した。
「災禍の精霊姫(カラミティ・クイーン)」と・・・。
そしてエルステイン家は責任を取らされ、領地を没収され、夫妻は最も厳しい監獄、「バルサス監獄」に投獄された。
そして一年後その時のブレイドダンスで優勝した「レン・アッシュベル」改め
カゼハヤ・カミトのが奉納した剣舞によってようやく収拾のめどがついたのだ。
因みにこれを聞いた『シラヌイ』曰く・・・。
「(男でも女でも舞っていりゃ誰でも良いのかよ。)」と呆れ交じりで
そう言ったらしい。
だからこそクレア・ルージュは歩き続けたのだ。
最強の精霊を手に入れてブレイドダンスで優勝し、その願いで姉の真実を聞き出すと心に誓って・・・。
何物にも負けず、何も失わず、全てを取り戻すための力を得ようとするために・・。
然しそんな力など何処にもないことぐらい誰でも知っているだろうに・・・。
「-そんなに力が欲しいの?」
「!!」
クレア・ルージュはその声を聴いて振り向くとそこには・・・一人の少女がいた。
闇色のドレスを纏い、黒い髪と瞳を持つ美少女がそこにいた。
あまりの美しさにクレア・ルージュは警戒することを忘れて見惚れていると彼女は
たおやかな手をすっと差し出すとクレア・ルージュにこう聞いた。
「力が欲しいならこれを使いなさい。」
すると少女の掌から黒い靄のようなものが浮かんできた。
「これは・・・精霊!?」
クレア・ルージュはそれを見るとそれに目を奪われていた。
今のクレア・ルージュは焦りとスカーレットを失ったショックで警戒すらしなく
なったのだ。
「この子の名前は狂精霊〈ゲシュペンスト〉-。貴方のほんとうの力を
引き出してくれる精霊だけど・・・使う?」
その少女の問いにクレア・ルージュはにべもなくこう返した。
「勿論・・・貰うわ!!」
クレア・ルージュはその手を掴むと黒い靄がクレア・ルージュの手に染み渡るように入ると左手に黒く禍々しい精霊刻印が刻まれた。
「やった・・・やった・・・やったわ!!アハハハハハハハハ」
クレア・ルージュはそれを見て狂ったように笑うと少女はそれを見てこう言った。
「これでカミトの目覚めがまた一歩前進ね。」
その少女の笑顔はまるで人を騙すことに快楽を覚え始めた悪魔の様であった。
次回はあの狂精霊が・・出るのかな?