「疼く…疼くぞ……早く行こうぜ…!」
「まだ尚早」
わたしの後ろの仮面を付けた脳筋がもうガマン出来ないのか、身体を震わせながら言った。ローブを身につけているが、身長や肩幅から明らかに巨漢であると判断できる。
そこに、ガスマスクのせいか、はっきりしない声が答える。しかし、これまた人を馬鹿にしたような、ニヒルな声だ。
「それに、派手なことはしなくていいって言ってなかった?」
「ああ 急にボス面始めやがってな」
付け加えたガスマスクに別の声が答える。
「わたしはこのまま何もしたくないんですが」
「諦めた方がいいよ!きらちゃん!」
「うるさいトガちゃん」
わたしのボヤキに狂人が大きめの声で返事をした、すこしだけでも抑えていただきたい。この狂人とは付き合いが浅い。なのに懐かれてしまったのは同性だからというのもあるのだろう。
「分かってるんだろうな、キラークイーン。お前には大事な役割を果たしてもらうんだぞ」
「分かってますよ、荼毘。ですからその顔こっちに見せないでください怖いです」
つぎはぎだらけの顔をこちらに向けて荼毘が注意してくる。本当にどうしたらそんな顔面になるのか。
「分かってるならいい。今回はあくまで狼煙だ」
──── そう、これは始まりなのだ
「虚ろに塗れた英雄たちが地に堕ちる」
──── このルールに塗れた社会への反撃
「その輝かしい未来の為のな」
──── わたしの平穏のために
────────────
「ていうか これ嫌 可愛くないです」
トガちゃんが新しいマスクをガチャガチャ弄りながら文句を言っていた。
「わたしはなかなかヴィランらしいデザインだと思う」
「裏のデザイナー・開発者が設計したんでしょ、見た目はともかく 理には適ってるハズだよ」
トガちゃんのマスクは鼻の頭から下を隠す物になっていて、口元にパイプが縦に並んでいてまるで歯のようになっていた。確かにトガちゃんには似合ってないようにも見えるが、ヴィランらしいとわたしは思う。そして、いまわたしに続いてお小言を言っていたのはガスマスクつきのマスタード、こっちもこっちで学ランにガスマスクなので、すごいミスマッチになっている。
「そんなこと聞いてないです 可愛くないって話です」
そこまで言われるとどうしようもない。
「どうでもいいから早くやらせろ ワクワクが止まんねぇよ」
「そこの脳筋仮面は自制してください。」
バキバキ指を鳴らしながらマスキュラーが言う。
誰か、この脳筋を止めてくれ。1日中このままで相手するのが面倒だ。
「黙ってろイカレ野郎ども。まだだ…決行は…」
こいつもこいつで失礼だ。荼毘よりかはイカレてない自信はある。周りが異常すぎて平均的に荼毘を超えてるだけなのに。
「10人全員揃ってからだ」
そこに新たなメンツが加わる。サングラスを掛けたロン毛のオネェ、唇を全開にして歯をむきだしにしている拘束衣の死刑囚、そしてまんまヒーロー殺しの格好をしているトカゲ。
「来ましたね。マグネ、ムーンフィッシュ、トカゲ男。」
「キラちゃん、一昨日ぶりね!」
「仕事…」
「トカゲ男はやめろ!!」
なにこのトカゲ男、めっちゃキレてきた。軽い冗談のつもりだったんだけど。
「はいキラちゃん。これアイテムね」
「ありがとうございます」
貰ったのはわたしの個性を存分に発揮出来るためのアイテム。これで遠距離も多少対応できるのでありがたい。
「威勢のいいチンピラをいくら集めたところでリスクが増えるだけだ。やるなら経験豊富な少数精鋭。」
その意見には賛同する。それで死柄木さんたち失敗してたし。今回は大丈夫でしょう。
「まずは思い知らせろ…。てめェらの平穏は俺たちの掌の上だということを」
さて、準備しよう。
争いはまた次の争いを作り出すから嫌いだけど、仕方ない。
────
「…荼毘」
「なんだ?」
作戦開始は今晩。
目的はA組生徒、爆豪勝己の誘拐。
この前も言ったけど、この作戦は少数で完遂しなきゃならない。
もちろん、わたしもその1人だ。ヒーローの卵になんざ負ける気はないし、油断だってしない。
ただ、一つだけ意味のわからないことがある。
「なんですか。それ」
脳無…なんだろう。
ただ違うのが紫色のヘルメットとパイプのようなものを咥えていること。
正直キモイ
「死柄木弔に俺専用の脳無を作ってもらった。俺の命令には忠実に従う。ある意味お前より優秀だ。」
「それと比べられるのは嫌なんでやめてください。塵も残さずに消し去りますよ?あなたを」
「俺はトゥワイスが作った偽物じゃねぇんだ。やめろ」
本当に心外である。
別にわたしは自分のことを貶そうがなんだって構わない。けれどあんな汚いものと一緒にされるのはいやだ。
わたしだって腐っても女性だ。
「んで、わたしはコンプレスさんと行動して捕縛でいいんですね?」
「あぁ。それが1番手っ取り早い。お前が爆豪の動きを止めるんだ。そして…」
「そしてそっからは俺のショーだ!」
謎仮面マジシャンのMr.コンプレスが付け加える。まぁ、私の個性だとただただ人を殺すことしか出来ないからまかせよう。
あと標的の動きを止めるのに私が適任なのは事実だ。
「わたしは逃げ足が悪いから捕まえたら離脱します」
「俺は逃げる事が特技だからね!大丈夫さ」
「ん。よろしくです。」
────
俺は呼吸することすら忘れていた。
そもそも今日は驚くことが多すぎた。
クソ敵どもの襲撃
黒影の本気
そして────
敵の標的が俺だと言う事。
クソデクはボロボロだし。正直わけが分からんかった。
今もクラスのヤツらが護衛とか言って俺を守りやがっていた。
「────クソが」
「爆豪。落ち着け」
「わぁってるよッ!!!」
後ろの鳥頭がうぜぇ。
1人でもやれるんだよ。
クソデクもいっちょまえに指揮取りやがって…
でも、その後だ。
その後、いままでのこと全部吹き飛んじまうことが起こった。
「────久しぶり」
そいつは、いつの間にか横に立ってた。
クソ親父と一緒の茶髪。
クソハバアを思い起こさせる雰囲気。
そして何より…
そいつが身につけていた首飾りが、そいつが誰なのか物語っていた。
「…う…そだろ」
「────嘘じゃないよ」
嘘だ。あいつはとっくに死んだはずだ。
「バ勝己おにいちゃん」
そして、俺は気を失う寸前。
鳥頭がビー玉見てぇなのに変わるのをみた。
キラークイーン的な個性をもったヴィランがいて、それがあの人の身内だったら燃えね?
という妄想から始まりました。
鳥頭→常闇くん
かっちゃんが常闇のことなんて呼ぶのかわからない…