ヴィラン名『キラークイーン』   作:尺骨茎状突起

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ケミィかわいい。

つまりトガちゃんかわいい。…え?


困惑

 

 

割れたコンクリートから氷結が伸びる。

その氷結を利用して高く、高く飛び上がる人影。

 

よくみると3人いる。

だれだ?こんな命知らずは…。格好だけ見れば大人だが…

 

 

…いや、あれは変装をした生徒っ!

 

 

「来い!!!!」

 

 

はるか上空で赤髪の少年が手を差し伸べる。

理解が追いつかない。

何が目的だ?

「来い」と言っていた…

 

…アイツを逃がすためかッ!

 

「黒霧さん!」

「…ッ?!なんですか?!」

「わたしをあそこへ!はやく!」

 

説明してる暇はない。なぜならこの時、既にヒーローは

 

────BOOOOOM

 

飛び立っていたからだ。

 

「黒霧さん早く!」

「いまやっています!」

 

意表をつかれ、攻撃をくらった。その上もう1度意表をつかれた。無理もない。いま黒霧さんは座標の設定をしているから時間がかかっている。

 

「逃がすな!遠距離あるやつは!?」

「キラークイーンッ!黒霧!」

 

すぐに正気を取り戻したコンプレスとスピナーがわたしたちの名前を呼ぶ…が、黒霧は座標の展開で忙しい、そして既にヤツらがわたしの鉄球射程外に出てやがる。

 

「ちょっと時間をください!」

「時間稼いでくださいっ!」

「あんたらくっついて!!」

 

少しでも時間を稼いでもらえばいい。黒霧さんだってプロだ数秒かからないはず。

マグ姉は頷き、コンプレスとスピナーに『個性』を使った。

 

マグ姉の『個性』は磁力。付近の男性にS極、女性にM極の磁力を付加する能力。

 

「いくわよ!」

 

くっついていたスピナーとコンプレスは共に男性。磁力の反発を利用した移動法。もちろんこれもマグ姉の調整あってのものだ。

 

「反発破局夜逃げ砲ッ」

 

勢いよく射出されるコンプレス。

と同時に目の前で黒霧さんのゲートが開く。直ぐに飛び込む。

 

「タイタンクリフッ!!!」

 

ゲートを通り抜け、視界が開けると、コンプレスが起き上がったMt.レディに顔面ブロックされていた。すぐにもう1発打とうとマグ姉がトゥワイスとスピナーに指示をだすのが見えた。

 

ありがたいが、問題ない。わたしはヤツらの真上に送ってもらったっ!

 

「堕ちろヒーロー共。」

 

鉄球を空中でボウガンに装填。同時に爆弾に変化させておく。

ボウガンを構え、相手を見据える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────と同時に気づく。

 

 

赤髪が何かを持っている。アイツの手を握っている手とは逆の手に筒のようなものを持っているッ!

 

「切島くんッ!!!」

「まかせろ!」

 

筒、いや、小型のバスーカの様なものから射出されたのは網目の小さい網。空中での移動法がないわたしはそのまま網にかかる。

 

網目の小ささが原因で、鉄球が通らないッ!

 

「っく!」

 

あみに絡まりながら落ちていく。

すると、何かに引っ張られるように後方に戻されていく。

 

ヤツらを見ると、アイツと目が合った。

 

 

 

────次はぶっ殺す

 

 

 

 

どうやらお互い、完全にお互いのことを兄妹と見なくなったみたいだ。

 

 

そんな目をしていた。

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

『緑谷、そっち無事か?』

「うん!轟くんの方は?!逃げきれた?!」

 

僕はいま電話越しに轟くんと状況の確認をしていた。

そっちも敵が僕達に釘付けだったから逃げ切れたみたいだ。

なんにせよ、奪還は成功。オールマイトもこれで全力を振るえる!

 

「いいかっ!俺ァ助けられたわけじゃねぇ!一番良い脱出経路がてめぇらだっただけだ!」

「ナイス判断ッ!」

 

…負傷こそしているが、かっちゃんも問題無さそうだった。

 

僕らは今駅前の方にいた。大きなモニターがビルに付けられていて、まだオールマイトの様子がそこに映し出されていないが、向かっていったヘリコプターを見るにもうしばらくすれば様子が伺えるようになると思う。

 

建物の損壊がないところを見ると、ここまでオールフォーワンの衝撃波は届かなかったようだ。

 

「つか、ンだよあの網は」

「アレか!八百万に作ってもらった!」

 

そう、逃げの決め手になったMt.レディとネット。Mt.レディの体を張ったブロックは予想外だった。

でも、あの局面なら絶対にキラちゃんは追ってくるって分かってた。

 

だから予め八百万さんに作ってもらって、唯一手の空いていた切島くんに持たせたんだ。

 

「ポニーテールまで来てやがんのかよ」

 

…もしあの場に八百万さんが、いや、あの場にいた人が一人でもかけていたらと思うと、ゾッとする。

僕と飯田くんの推進力、轟くんの氷結、八百万さんの道具、そしてもちろんかっちゃんを動かした切島くんが全員いなければ僕達はまだあそこにいた。

それどころかかっちゃんがやられていたかもしれない。

 

「…ってぇ」

 

かっちゃんが痛む手を抑えている。やっぱり『個性』も限界だったみたいだ。

 

周りを見渡すと、人々は混乱と恐怖していた。そのなかで、みんな、たった一つの希望、スクリーンに映し出された平和の象徴に目が釘付けになっていた。

 

でも、これでよかったんですよね…?

僕達がたとえあの場に残ったとしても、なにも変えられない。

 

だったらせめてオールマイトやプロヒーローの邪魔にならないように遠くへ避難すべきですよね…?

 

 

 

 

 

 

大丈夫ですよね…?オールマイト…!

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

「うっぐ」

 

地面に叩きつけられたと同時に変な声が出てしまった。

どうやらわたしを引っ張ったのはマグ姉の磁力のようだ。

 

でも、おかしい、わたしは地面に叩きつけられている。

 

「?!」

 

嫌な予感がしたので振り返る。

すると、老いたヒーローがコンプレス、スピナー、トゥワイス、そしてマグ姉をひれ伏せていた。

 

「きらちゃん!」

「トガちゃん!」

 

わたしに気づいたトガちゃんが、呼びかけてくる。いま動けるのは…わたしとトガちゃん、死柄木弔と黒霧さん。

 

「さきに寝てもらうぞ、お嬢さん」

「っ?!」

 

物凄いスピードで飛んできた老いぼれが、わたしの背後に回る。

回避しようとするが、網が足に絡まってやがる。

 

「くそっ」

 

瞬時に先程撃ち損ねた鉄球を投げつけ起爆。

間を置かずに足に絡まっている網も爆弾にして、処理。

 

「おせぇよ」

「がっ?!」

 

いつの間にかまた前に回り込んでいた老いぼれの足が腹に突き刺さる。

一瞬意識が飛びそうになるが、とどまる。

 

────すると、落ちていく感覚。

 

「きらちゃん!」

 

黒霧さんがわたしをトガちゃんのもとへワープしてくれたようだ。

そして、地面に叩きつけられないようにトガちゃんがわたしを抱きとめてくれた。

 

「ありがと、トガちゃん。

黒霧さん、死柄木弔。ここは撤退を…!」

「賛成です。死柄木弔っ!」

「ダメだッ!先生が!」

 

 

 

 

────個性強制発動

 

 

 

 

有無を言わさず、磁力が気絶したメンバーを引っ張る。

黒霧さんは瞬時にオールフォーワンの考えを汲み取り、ゲートを開く。

 

「やっ!そんな急に来られてもぉ!!」

 

トガちゃんの抗議は虚しく、トガちゃんを含め、これで6人の脱出が成功。

 

たった数秒でわたしたちを逃がすことに成功するオールフォーワンはやはり異常だ。

目の前の老いぼれも相当やるようだし、なおかつオールマイトまで目の前にいるにも関わらずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…あれわたしは?

 

「待て…ダメだ、先生!!」

 

死柄木弔が地面にすがり付いて磁力に逆らおうとする…が、磁力に負け、ゲートに叩き込まれる。

 

「────俺、まだ」

 

「君は戦い続けろ」

 

最後にそんなことを言った死柄木弔。

結構一緒にいるが、未だにコイツの境遇は知らない。ただ、わたしはあの方に命令されたからそばに居る。

 

死柄木弔。

わたしは嫌いか好きかと言ったらどちらでもないとしか答えられない相手だ。いや、オールフォーワンに好かれている時点で嫌いな部類に入るだろうか。

 

わたしから見たらオールフォーワンはまるで、息子への対応を、死柄木弔にしていたように思う。

 

『個性』も触れたものを壊す。という点では、わたしと似ている。性格は似てる…といえるほど良く知らないか。

ともかく、死柄木弔はオールフォーワンに見初められている。いや、真意はわからないが少なくともわたしはそう感じる。

 

 

 

 

 

 

いいなあ。

 

 

 

 

 

 

わたしだって、あの方に好かれてさえいれば、

もっと自由だっただろうに。

 

 

あの方に好かれてさえいれば、

あんな目には合わなかっただろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…は?

 

いまわたしはなんて考えていた…?

 

 

あの方に好かれたいと思った…?

 

 

んなバカなことあるわけない。

 

 

 

 

あるわけが無い。

 

 

 

 

だってあの方はわたしをそもそも人として見ていない。

 

 

 

 

わたしはあの方に取ってただの実験道具だ。

 

 

 

 

「君はこっちだ。」

 

そんな声を聞きつつまた、わたしの視界が黒い液体で覆われる。

 

 

 

 

 

 

────目の前にはオールフォーワンの顔

 

 

盾にでもされるのだろうか?そんなことを考えていた。『個性』の性質上、わたしを盾にすることでヒーローは近づけない。触れられるのを防がなければならないからだ。

 

でも、そんなわたしの予想を裏切って、オールフォーワンは

 

 

 

 

 

 

「いままでわるかったね。姫砢。」

 

 

 

 

 

わたしの頭を撫でた。

 

 

 

 

「………は?」

 

 

 

 

 

いみがわからない

 

今までわたしはたしかにコイツに散々な目に合わされていた。正直恨んでもいる。

コイツが『実験』とかいってわたしの精神と肉体の両方を追い込んだこともあれば、死にそうな、いや、死ぬ寸前まで追い込まれたこともある。

 

コイツにとってわたしは道具でしかなくて…

 

 

でも、

 

 

 

 

 

 

 

急に、まるで、

 

 

 

 

 

 

 

まるで、父親が娘に話すような声だった。

 

 

 

 

 

 

「君も、弔も、まだまだ成長できる

 

 

 

 

 

だから戦い続けろ

 

 

 

 

 

僕のためにも

 

 

 

 

 

君のためにも

 

 

 

 

 

弔をよろしくね、姫砢。」

 

 

 

 

 

 

 

 

再び黒い液体で視界が奪われ、視界が晴れると同時にゲートに投げ入れられた。

 

オールフォーワンの顔は工業地帯のようなマスクで隠れていた。

だからわたしは表情が見えず、真意が分からなかった。

 

 

 




オールフォーワンの真意とは?!

次回お楽しみに!





ミルコをもっと…もっと出すんや
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