そろそろギガントマキアみたいですね。
「先生は行かれないのですか?」
僕に気を使って黒霧が、僕を逃がそうとしてくれる。
彼も弔と同じように、今の僕の体では敗北しかねないと分かっているのだろう。
「いや、いいよ。僕にはやることがあるんでね。」
「…」
僕の言葉を聞いて黒霧は一瞬躊躇したが、僕に忠実でもある彼だ。その躊躇は秒にも満たず、僕なしでの撤退を実行してくれる。
「逃がすかよ…!」
「させないよ。」
黒霧のゲートがとじ始めるのをみて飛び出した、志村の友人に指先の赤黒いラインを伸ばす。
「させないのはこちらも同じだ!!」
「うっとうしいね。オールマイト」
直撃するかのように思われた僕の攻撃はオールマイトによって防がれる。志村の友人は黒霧に距離を詰めることに成功してしまう。
…しかたない。
────筋骨発条化、瞬発力×4、膂力増強×3、空気を押し出す
黒霧ごと、目の前の目障りなふたりを吹き飛ばすことにした。
もちろん、黒霧も吹き飛んでしまうが、個性強制発動でフォロー、そのまま逃がしてやった。
これで、一安心だ。
「ぬぐぅおおお…!」
開幕の時の一撃と違って地面と接触していたオールマイトは体勢を崩すことはあれど、吹き飛ばされることはなかった。
しかし、はるかオールマイトの後方で志村の友人が吹き飛ばされているのを確認する。
「どうしたんだ?オールマイト。弔達が逃げてしまったよ?」
「…貴様!」
オールマイトの踏み込み。そして急接近。
しかしそれは読めている。
────転送、対象は志村の友人
オールマイトの拳が僕に叩き込まれようとしたその位置に、志村の友人の顔を出現させる。
オールマイトの拳が友人の顔面に突き刺さる。
と同時にさらなる個性を発動させ、オールマイト自身にもダメージを通す。
────衝撃反転
「────ッ!?すいませんっ!!!」
さすがはオールマイトだ。自分の拳の衝撃で腕を持っていかれることはなかった。
そして、友人の方はいくらヒーローとはいえもう若くない。そんな老害がオールマイトの拳をくらったのに関わらずまだ意識はあるそうだった。
なかなかしぶとい。
「僕はただ弔と姫砢を助けに来ただけだが…戦うと言うなら受けて立つよ。
何せ僕はお前が憎い。
かつて、その拳で僕の仲間を次々と潰して回り、お前は平和の象徴と謳われた。
僕らの犠牲の上で立つその景色
────さぞやいい眺めだろう」
もう1度彼らを吹き飛ばすよう、僕は先ほどと同じ『個性』の組み合わせで空気を押し出す。
しかし、オールマイトは僕の攻撃に合わせ、転送ゲートから友人を抜き取り、空いた手で拳をぶつけてくる。
────DETROIT SMASH
オールマイトが相殺に成功したかどうかはともかく、思ったよりダメージは通らなかった。
しかし、よくみるとオールマイトから血が出ている。いや、出血は元々あったから量が増えていると表現すべきか。
…かなり強引に打ち消したな。ハハ。
「心おきなく戦わせないよ。ヒーローは多いよなあ?守るものが。」
オールマイトに忠告しておく。ヒーローの守るべき存在がこの周りに多いことを忠告しておく。
いつでも転送して盾に出来るぞと、忠告しておく。
ワンフォーオール先代継承者の名前でも出して煽ろうかと思った時
「貴様は…!何故爆豪少女をあんなふうにした?!」
「ん…?」
「爆豪少年の家族を引き裂いたのは、何故だと聞いているッ!!」
…あぁ、オールマイトお前は盛大な勘違いをしているよ。
「ハハ。オールマイト、君は勘違いをしているよ。」
「他人の弱さに付け入るその腐った精神の持ち主が何をほざいて…!」
「あれはもともとああだったんだよ」
「デタラメを…!」
「まぁ、聞けよ。冥土の土産になるだろうしね。僕はね、オールマイト、こんな『個性』をもっているから『失敗』は怖くないんだよ。」
失敗したとして、それを補える『個性』がある。僕はやり直すことが出来るから、失敗が怖くなかった。
「当たり前だろ?『個性』で何だってどうにでも出来るんだ。この世の中、今時『個性』がない方が珍しいよね?つまり、それだけ力の種類があって、その種類が増えることで間接的に僕の『個性』をよりいいものにしているとさえ言えるよ?
…でもね、一つだけあるんだよ『繰り返すわけにはいかない失敗』がね」
────ただ、一つの失敗を除いて
僕はオールマイトを指さす。
「
今でも
僕の脅威となりうる『個性』を、ほかの誰でもない僕自身の手で生み出してしまった。
これは後悔だ。
「僕の頭を潰すほどまでに肥大化、強化されてしまったその『個性』の再誕は、どうしても避けなければいけないんだよ!」
名を皮肉にもワンフォーオールと冠されたその『個性』に恐怖していた。
たとえ助かったとしても成長するあの『個性』の性質上、論理的には一度負けたら負け続けるのだから…
「そんな話、今は関係な────」
そして、転機は訪れる
「そんな絶望の中だよ!彼女と出会ったのは!!!」
「ッ?!」
僕は思わず声が大きくなってしまった。
ハハ。仕方ないね。
だって
彼女の存在が僕の『
「最初はただ、良い『個性』をもった少女だったから、奪って殺すか、脳無に仕立てあげようと思ったんだけどね。彼女の肉体と精神は両方とも素晴らしいものだったんだよ!!」
最初に彼女の『個性』を奪ったとき、違和感を覚えた。
『個性』の受け渡しが驚く程スムーズに行われていたんだ。
「言ってなかったけどね。オールマイト。彼女が殺しに快感を覚えたのに僕は関係ないよ。まぁ、そこは利用させてもらったけどね。」
気になった僕は、しばらく彼女をそばにおいて、『個性』の受け渡しの実験を続けた。『個性』の受け渡しを繰り返す度に、彼女への負担は減り、後にタイムラグも少なくなり、『個性』を、『超再生』などといったものをすぐに渡せるようになった。
もっとも、各『個性』との相性があり、先程の『超再生』のスムーズさは彼女と相性がよかったから出来た芸当だ。
受け渡しがさらに円滑になっていく頃には、彼女の内面が理解できるようになった。
彼女は生きているものを殺す際に一種の快感を覚えていた。
もっといえば、それは薬のような中毒性を秘めていた。適度に彼女に殺人をさせ、メンタルの維持も簡単だった。
しばらく繰り返すうちに、彼女は従順な、は違うか、僕という恐怖に対して絶対服従の犬になった。
決して、なつきはしなかったがね。
「時間の経過とともに分かってきたんだよ!彼女の体は僕の『個性』との相性がいいんだ!どんな『個性』を、与えても苦しむことはあったけど最終的には馴染む!!そして、驚くべきなのは『個性』が複数同時に両立出来ていたこと!」
ワンフォーオールは『力をストックする個性』と『個性をわたす個性』が混ざりあって出来たもの。
他にもさまざまな現象が見られたけど、彼女の場合は『個性』が両立、つまり複数がそのままの状態で彼女の中で存在し、なおかつ意識を保っていた。脳無のような脳無しにはならずに。
「…それはまるで」
「そう!!!そうなんだよオールマイト!!!
まるで
奪う。という観点からしたら大きな違いはあるかもしれない。しかしワンフォーオールは『力をストックする個性』で、オールフォーワン『個性をストックし、自由に扱う』個性だ。
彼女の『性』、実に敵向きな内面であって、そこに僕もいち悪人として、魅力も感じる。
しかしそれ以上に、彼女と僕の『個性』の相性!
彼女はオールフォーワンのさらなる発展のカギだ!
僕と弔のために、役に立たせるしかないじゃないか!
「だからこそ!!
彼女を脅してでも!
人格をねじ曲げてでも!
その平穏を奪っても!
平伏せても!
嫌われようとも!
好かれようとも!
騙しても!
彼女を弔のそばにおいておきたいんだよ!オールマイト!」
実に気分がいい!
やはりいくら生きてきても興味がそそられるものはいい。
それを見ているそれについて考えているだけで楽しみを見いだせる…!
「黙れ」
「!」
いままで黙ってきいていたオールマイトがしびれを切らした。
「貴様はそうやって、人を弄ぶッ
壊し!
奪い!
付け入り支配する!」
まずい、転送を…
間に合わない。
「日々暮らす方々をッ!!!
理不尽が嘲り笑う!!!」
オールマイトが僕の腕を掴む。握力で腕が潰れる。逆の手は固く、握られて振りかぶられている。
「私はそれが…
許せないッ!!!!」
振り下ろされた拳とともに轟音。
砂煙が上がり、視界が悪くなる。
しかしあの攻撃、痛みはあれど、大したダメージじゃない。
「いやに感情的じゃないか、オールマイト。」
だからこそ、煽る。
お前の力は通じてないぞと、煽ることにした。
そして、あの名前も出す。
「同じような台詞を、前にも聞いたな…
ワンフォーオール先代継承者、
志村菜奈から。」
さぁ、ここが僕のいなくなるべきタイミングだ。
頑張って自立するんだよ、弔、姫砢。
この後のオールマイトVSオールフォーワンの話の流れは変わらないので飛ばすべきか、ちょっとずつ相違点も交えながら書くべきか迷ってる人間