ヴィラン名『キラークイーン』   作:尺骨茎状突起

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夏休み!

執筆頑張りやす!
今回は過去の話です


邂逅

 

 

 

 

 

「…みんなどこ?」

 

その日はとても晴れていた。

わたしは、小学校の行事の一つである林間学校に来ていた。最初の山登りを終えて、いざ宿舎に向かうときだったはずだ。

恥ずかしながら、わたしは迷子になっていた。よく兄に連れられ、森の中を探検したことはあったけどもその時はずっと兄にくっついていたし、森の中で周りをみる習慣はなかった。

 

「じゃま」

 

邪魔な木の枝は爆破して進路を確保する。

もちろん新たな道を開拓している時点で、元の道に戻れるはずもないのだが、当時のわたしは小5。焦りと恐怖でいっぱいだった。

 

「お兄ちゃん…」

 

兄からもらった大切な首飾りを握りしめ、心を落ち着かせようとしていた。

 

「もちょっとすすもう。」

 

が、あろう事か進むべき道は真逆。

もう2つほど爆発を起こす。進路上の邪魔なものは塵一つ残らない。

 

「あつい」

 

わたしは汗っかきだ。多汗症という程ではないにしろ、常人よりかは汗をかく。兄の個性も汗に関係するし、遺伝かもしれない。

そんな額の汗を腕で拭いつつ、さらに前へ進んだ。

 

すこし歩くと開けた場所に出た。とはいえ人が無理やり木々を切り倒した形跡もない。となると答えは一つだ。

 

動物である。

小さなものはイタチのようで、わたしが近寄ると逃げてしまう。野生動物であるからという理由は小5のわたしが知るものではない。

わたしはすこしムキになり、動物を追い回した。追い回したといっても、全力で追っかけるというものではなく、距離を置く動物に詰める、また距離を置かれる、を繰り返す感じだ。

 

そうこうしているうちに気づけば先ほどとは全く違う所にいる。

何をしてるんだろう、と自分に呆れ、また歩き出す。

 

────せぇなぁ!

 

すると声が聞こえた。

 

「ひとかな?」

 

助かった。と思った。

小5のわたしはこの時ずっと不安だったし、不審者だったらどうしようとか、全く考えていなかった。

 

「────ったくなんだってんだよ!イラつく!」

 

どうみてもイラついている。髭は伸びきっていて着てる服もボロボロ。俗にいう、ホームレスだ。

先生からは「知らない人に話しかけちゃダメ」と、よく言われるが、人は見かけによらないこともわたしは知っていた。

それ以上に皆とはぐれた事が焦りを生んでいたのかもしれない。

 

話しかけて道を訪ねてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

これが間違いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの」

「ッ?!…あ?ガキか?」

「この近くに○○という宿舎しらない…ですか?林間学校で来てて」

「…」

 

大人出なくても中学生位になればすぐにこの男の怪しさは分かっただろう。

何度もいうがこの時わたしは小5。まだ、この人に対して純粋な目を向けていた。

 

慣れない敬語も使ってみて、相手の機嫌を悪くしないように、細心の注意を払いながら、話を進める。

 

「道にでれる方向でもいいんだけど…」

「…あぁ!わかるよ!こっちだよお嬢ちゃん!」

 

ほらみろ。人はやっぱり見かけによらない。

優しい人だ。

一気に安心感が押し寄せてきた。無理もない、こんな暑い日に山の中迷子になって、不安にならない子供がいるだろうか。

なにも警戒せずにわたしは男について行くことにした。

 

 

でも、

 

 

さすがのわたしでも案内されたのが廃れたホテルだったのに違和感を覚えた。

 

「ここホテルだよ?ちがうよ。○○ってとこに────」

「うるせぇよ」

 

ガッ。と口を片手で塞がれた。怖かった。

助けを呼ぼうとした、が声が出ない。

 

「オレの『個性』は『消音』。指定した物がオレの周囲10m内にいる限り、そいつが発する音は聞こえなくなるんだよ。」

 

圧倒的な優位にいるからこそ、この男は自分の『個性』を明かした。だが、その時のわたしにとっては知ったことじゃなかった。

出ない声を出して必死にもがいていた。

 

「ガキと()()のは初めてだが…オレの『個性』ならうるさくならなくていいわ」

 

今振り返れば、この男が何をしようとしていたのか理解出来る。でも当時のわたしはそいつが服に手をかけた時点でたまらなく怖くなって────

 

 

 

 

────ドガァァンッ!

 

 

 

それが、わたしの初めての爆殺。

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

炎天下の中、わたしは後悔をしていた。

 

「ぇっぐ…ぅぅ」

 

わたしは泣いていた。

人の命を初めて奪ってしまった。

ヒーローは決してわたしを許さないだろう。それは最高のヒーローを目指す兄もまた然り、と子供ながらわたしは考えていた。

 

「…」

 

でもだ。

 

 

 

 

 

泣き止むと、おかしかった。

 

「えへへ」

 

わたしはすくなくともその当時から、死というものの「尊さ」を実感していた。

誰かが身を投げたニュースを見る度「すばらしい」と思っていた。

蟻を踏み潰す子供を見て、わたしも混ざりたいと思っていた。

 

兄に連れられ山に行った時に、内緒でセミとカブトムシを爆破したことがある。

 

とても気持ちの良い体験だった。

けど、

 

 

 

 

 

けど、こんかいのは

 

にんげんはくらべものにならない。

 

 

 

 

 

「えへ、えへへ」

 

表情にでない人間だと親からも言われていた。

 

でも、わたしはたしかにその時、わらっていた。

 

いま思い返せば、麻薬みたいな経験だったと考えられる。

自制の効かない子供だ。この幸福にもう1度浸りたいと、わたしは次の標的を探すことにした。

 

「ひひひ」

 

 

 

 

道中、あのイタチも爆破した。

 

 

 

 

 

 

 

そこからはもう。止められなかった。

 

アパートぐらしの大学生を爆破して、そのアパートで暮らした。

光熱費などが払えなく、水道を止められるとつぎの標的を探して、爆破。次の住処にうつる。

爆破時に証拠を一切残さないわたしの『個性』はうってつけだった。

 

数週間するとニュースで「連続失踪事件」が報道されていた。

そして、わたしはその『()()()』として報じられていた。

都合がいい。

 

それでもわたしの様な、小さい女の子が一人で暮らしているのを不思議がる人はいた。

まぁ、ひとり残らず爆破した。

 

この時点ですくなくとも20は殺していたと思う。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

年齢的には、中二になる頃だろうか。

あの方と出会ってしまった。

 

 

 

その頃のわたしは「痛めつけてから殺す」ことを覚えていた。

 

「や、やめてくれぇ!か、かぞくがいるんだァ!」

「そうですか。」

 

さすがに無差別に人を殺しまくっていた頃と違って、わたしは落ち着いていた。人格も、まぁ殺しを除けば、まともな人間として表を歩くことが出来るレベル。

 

この時にはもう顔を隠さなくても、表を歩くことができた。「失踪」から2年程経てば、わたしと関わりのない人なら、「そんな事件もあったな」という認識にどうしてもなってしまうから。

もちろん、殺しの際は大学生の家からかすめた、少し大きめなパーカーのフードを被っていた。

 

己の性とも、上手くやれていた。

2週間に1度の頻度で、それは訪れるようになっていて、わたしは誰にも邪魔されず、生き抜くことが出来ていた。

 

「あなた兄妹とか、います?」

「い、いる!い、妹が2人!」

「へぇ!仲良くしてますか?」

 

目の前の標的は既に右腕と両足にナイフが突き立てられていて、血が流れていた。

この会話に意味は無い、ただわたしは相当暇だったのか、あろう事か時間をかけて、殺してしまった。

直接殺さずに、血が流れていくのを見て、静かに彼は息を引き取った。

 

「兄…か。」

 

もう、関わってはいけない存在の兄が脳裏に浮かぶ。

わたしはもうあっちには戻れない。

 

さて、改めて目の前の死体を爆破して証拠をなくす。

もう何人やったかは覚えてない。ただ、『連続失踪事件』に被害者が増えていくだけだ。

 

することもないので、帰ろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

「やぁ、探したよ」

 

 

 

 

 

反応する間もなく、わたしの意識は途絶えた。

 

 

────────

 

 

 

 

 

「ああああぁぁぁああッ?!?!」

 

身体中に電流が走る。

体内を燃やさんとするそれは体の表面ではなく、内側からの焼けるような痛みだった。

 

なんとかここから抜け出そうとする。

四肢が固定されていて動けない。

頭が痛い。

 

「…やはり興味深いね。爆豪姫砢くん。」

 

何が言われるがまったくもって聞こえない。

というか、痛みで聞き取れる気さえしない。なのに、ヤツはほぼ独り言になってるソレを続けた。

 

「君の『個性』がほしくて追いかけたんだけどね。ハハ。ついでに脳無にしてやろうと思って見れば、まさか『個性』を与えられても意識があるとは思わなかったよ。」

「…はぁッ…はぁッ」

 

電流が止まる。もうそろそろ痛みも感じなくなるレベルだ。

 

「だから生かすことにしたよ。でも、交換条件で君にはいろいろと僕の()()に付き合ってもらうからね。」

 

頭痛が収まらない。

何が別のものが頭の中に直接入ってくるような痛み。

コレはなんなんだ。

 

「悪いね。『個性』を与えても意識があるヤツは前にもいたんだよ。僕の弟なんだけど。」

 

微かだが、声は拾える。

拘束も外れた。震える足で懸命に立ち上がろうとするが、無理だった。崩れ落ちた。

 

「ほっといたら自分の首を絞めることになっちゃってね。だから君みたいなのは絶対に逃したくないんだ。

 

2度と『ワンフォーオールを作らない(失敗しない)』ように。」

 

理不尽だとしか思えなかった。たまたまわたしがある条件に一致した。それだけなのに、わたしはいまこんな目にあっている。

もういっそ殺してもらえないだろうか?

 

毎回の実験で理性を失う寸前まで追い込まれる。寸前だ。そこで負荷が一気に消える。何度も繰り返すうちに負荷は大きく、強くなる。

が、寸でのところで意識が飛ばない。

痛みも、恐怖も、不安も捕まってからずっと味わっている。

 

不意にわたしの身体から白い煙が立つ。

もっといえば、わたしの傷から白い煙が立っていた。

そして、傷は目にも留まらぬはやさで塞がっていく。

こんな力わたしは知らないし、いらなかった。

 

「うんうん。『超再生』は君と相性がいいね。」

 

地べたを這いずりながらも、ヤツに向かう…。

わたしの『個性』で終わらせようと思った。

でも何故かヤツは微動だにしないから足を掴んでやる。

 

そして、スイッチを、押す。

 

押す。

 

 

 

押す。

 

 

 

 

 

押す。

 

 

 

 

 

 

 

おす。

 

 

 

 

 

 

 

「何度もいってるだろう?

 

 

 

今、君にはその『個性(ちから)』はない。」

 

 

 

「か…ぇせ。」

 

 

 

とりやがった。

 

当時のわたしは『個性』を奪ったり与えたりすることが可能かどうかなんてどうでもよかった。

ただ、目の前の男が言うことを信じるしかなかった。

 

 

わたしからあの素晴らしい力をとりやがった。

ゆるせるわけがない。ゆるすわけにはいかない。

 

わたしの『(さが)』そのものともいえる大事なものをコイツは…

 

 

ころさなきゃ。とりかえさなきゃ。

 

 

何度もわたしはスイッチを押す。

けどやっぱりヤツはしなない。

 

 

ヤツの話も聞かずに、何度もスイッチを押していると、ヤツは部屋から出ていった。

 

もうわたしは壊れていた。

 

 

 

 

ヤツも部屋から出ていったのにも関わらず、

 

爆破できないにも関わらず、

 

スイッチを押した後にくる、あの幸福を味わうために

 

 

 

 

 

わたしはただずっと、

 

 

 

 

 

スイッチを押し続けた。

 

 

 





いかかだったでしょうか。

また次回!
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