え?才子様かわいくね?
え?ヤオモモエロくね?
あっこれはいつも通りか。
「…トガちゃんどこ」
わたしは炎天下の中さまよっていた。
ここはヒーロー仮免試験会場。
格好はシンデレラに変えてもらってナイスバディになっている。
それだけなら良かったんだが…問題は入れ替わっている生徒、
「み、みえるちゃん僕たちがんばるよお」
「みえるちゃんをみんなで守るんだ!」
「「「うおおおおお」」」
…オタサーの姫かよ!!!!
いや、まぁ、こちとらプロヴィランの精神で物事やってるからこの状況に従うつもりだ。
ただ、ここでもう一つ問題がある。コイツ、先読 見得はものすごい性格をしていた。
「うん☆みんな頑張ろうね☆」
「「「みえるちゃあああああああん!!」」」
女性に嫌われるタイプの女。ぶりっ子。
それにわたしはならなきゃいけない。
…帰っていいかな?
それはともかく。まずはトガちゃんと合流しなければならない。
そもそもあまりヒーロー仮免試験について勉強する時間がなかったから情報が少ない。
トガちゃんも「んじゃ会場でね!」とかいって去っていったから、ろくに情報を共有出来ていない。
よって、わたしは当日に情報をあつめるハメになった。
本当は順番は逆が好ましかったが、訓練によって仮免試験があると知るのが遅すぎた。
幸い、トレーニング中の
とにかく、今は情報を少しでも多く集めないと。
このぶりっ子の人望を最大限利用せねば。
「ねね☆みんなは仮免試験がどういうものなのか、予想とかできてるの?」
「み、みえるちゃんに話しかけられたッ!!」
「なにぃ?!許せん!」
「とっちめろ!!」
「「「うおおおおっ!」」」
今になって…多少、いや、かなり後悔している。
────────
「試験内容は毎年変わるみたいだから、なんとも言えぬ」
「そうなんだ☆ありがと!」
先読と同じクラスの人間には、もちろんまともな人もいる。目の前の男子もその1人。
阿久須 斧生 (あくす ふう) 先読 見得とはクラスメイトで『個性』は『斧』。腕を斧に変えることもできれば、触れた物体を斧の形に変えることも出来る。丸い岩を斧に変えて仲間に配る、とかできる。
『個性』から脳筋臭が漂うが実は頭も切れるというスペックの持ち主。
「しかし、先読の『個性』でも分からぬのか?」
「いやぁ!それはズルかなって思うの☆みんなと同じ土俵にたたないと☆」
「きいたかお前ら!やっぱりみえるちゃんは天使なんだよお!!」
「「「うおおおおお!」」」
うるせぇ!
「でもです。『個性』をアドバンテージにつかうのはズルじゃないと思うです。」
赤いメガネを中指でクイッと上げながらわたしに声をかけるのは霧野 霞(きりの かすみ)。
『ミスト』という個性の持ち主で、霧を発生させて、その霧の中で何が起きているか瞬時にわかるものだ。
マスタードの『個性』と似ているが、霧に毒性がないのが違いだ。
身体付きは貧相。少しだけ同情する。
が、彼女の場合、身長も含めて小さいので需要のある人には人気だろう。
そんな娘と胸を比べるわたしって…。
「んー。確かにそうだけど、やっぱり公平でいたいよ、みえるは☆」
「うげぇ。です…いいかげんにしたらどうです?そのぶりっ子。」
やめて、わたしも「うげぇ」ってなるから。
わたしは違うから。
にしてもこのキャラ意外と便利だ。
こういうときも「裏はあるけどいつも通りか」という認識を刷り込ませられる。
『個性』を使わないという怪しい行動などもそこまで目立たないかもしれない。
「…いないなぁ」
「だれがいないのです?
「いや、そうじゃなくて☆昔なじみがいるの☆同じヒーローめざしてるんだぁ☆」
我ながらよくすぐこういった嘘が出てくるものだ。
まぁ、どこからボロがでるかわからない以上、先読 見得とその周囲の人間のリサーチはしている。それと、咄嗟に嘘をつかなくてはいけない場面はすでに数100通り、イメトレしてある。
わたしは先読 見得の前髪をいじる癖を披露してみせる。
「そうですか。どんな方なんです?」
人間はいくら外見が入れ替わっていると言えど、付き合いが長いものほど動作に違和感を覚える。
なんてことない友人の癖が見られなくなった場合、気づかなくても、なにかしらの違和感を覚えるのだ。
口癖、仕草、雰囲気。そういった要因がその「個人」を形成している。
わたしは子供の頃から、そういうのを真似ることが得意だった。
だからこそ、この中で一番気をつけなければいけない存在は目の前の2人ではない。
「み、みえるちゃんがこっちみたよ!!」
「え、うそうそぼくもみて!!」
「「「みえるちゃーーーーーん!!」」」
粗末に扱ってもいつも通りの反応をしていたところを見るに、こいつらは先読とそこまで友好関係を築けていない。
故にいつも「見ているだけ」なのだ。
そこが気をつけなければならないポイントである。自称でもファンというほど「見ている」のであれば変化に敏感なはずだ。「見ているだけ」だからこそ見た目、ボディランゲージというものにボロがでないようにしなければならない。
「…みんな頑張ろうね☆」
「「「「「うおおおおおおおお!!!がんばるぞおおおおおおお!!!!」」」」」
…やっぱ杞憂かも。
「で、さっきの話ね!士傑の子なんだよ〜☆」
「なんでそんなエリートが貴女みたいなのと知り合いなのかが謎です」
士傑高校。
西日本のヒーロー学校といったらそこだろう。
東の雄英、西の士傑とはよく言ったもので、入学するのもそうだが、カリキュラムも同様にキツイそんなエリート高校。
そして、わざわざそこの生徒を行動不能にして入れ替わってるトガちゃんの異常さが伺える。
いや、雄英在籍の緑谷出久と接触を図るなら、正解かもしれない。
「それとです。さっきから士傑の制服が見えないのです。つまり別会場なのでは?です」
…ん?
今このロリメガネなんつった?
「え、えっと〜。ごめんね霞ちゃん!聞き取れなかったからもう1回言って欲しいな☆」
「ど、どうしたですか?様子がおかしいですよ」
「先読。霧野は先読の友人が別会場なのではないか?ということをいったぞ」
「…そ、そっかあ☆そうだよね☆別会場あるもんね☆ち、ちょっとごめんね席外すね…☆」
「…?承知。」
え?別会場なんてあんの?
え?つまり、わたしはトガちゃんと合流出来ないってこと…?
先読のクラスメイトに隠れて、連合の通信手段である端末に目を落とす。
トガちゃんとの連絡を繰り返し読み通す。しかしない、会場は別だという情報もなにもない。
流石に、そんなことは…と思いつつトガちゃんにメッセージを送る。
『ねぇトガちゃん?会場って○○県の会場だよね…?』
直ぐに既読がついたと見るところ、以外と暇そうだ。
となるとまだ、あっちは試験が始まってないということになる。まだ一緒の可能性はある!
『え?違うよ?』
「ざけんな!!!!!!!」
気がつけば口に出ていた。
────────
「ど、どうしたのみえるちゃん!!」
「「「みえるちゃんしっかりして…っ!」」」
衝撃の事実を知ったわたしはトボトボと会場に戻っていった。
ここまで来たら訓練の成果はみたい。でも、トガちゃんのフォローがないと考えると少しばかり不安にもなる。
「だ、大丈夫大丈夫☆みんな頑張ろうね☆」
しまった。態度に出しすぎたか…?
少しばかり心配になってファンを見ると彼らは固まっていた。
…まずったか?
「誰だ…」
これはまずい。本格的にミスったかもしれない。
わたしはどうにかこの状況を突破出来ないものか考えた。
「え~っとぉ?みんなどうしたの?☆」
すかさず、語尾と仕草を真似る。
どうだ…?
「「「「誰だってそんなこと言われたら本気出すしかねぇええええええええええッ!!!!
うおおおおおおお!!!」」」」
…こいつらやっぱバカだわ。
しかしどうしようか。
この会場には士傑と雄英がいないとなればかなり楽ではないのか?
正直な話だが、物足りない。数々の実戦をくぐり抜けた雄英と、そのライバル校ともいえる士傑がいないなら所詮雑魚しかいないだろう。
どっかでスキを見つけて、逃げ出すべきか?
バカどもから離れて、考え事をしながら歩き出す。
もちろんそんなことをしていれば、こんな混んでいる会場だ、誰かとぶつかる。
…体勢を崩すことは無いが、ここも演技に利用させてもらう
「きゃっ?!いったーい☆」
わざと尻餅をつく。舌をペロっと出しながら自分の頭にコツンと拳を当てる。
すると、ぶつかった相手が頭を下げたのかその髪が目の前に現れる。
「…っ、ごめんねッ!って多分先輩ですよねすいません!」
彼女はこちらが声を発する前に謝罪をした。
特徴的なオレンジの髪色。
…そして、
なるほど、わたしと雄英は本当に何らかの因縁があるのかもしれない。
思わず口がニヤける。先程まで思っていたことは取り消そう。
こちらも面白そうだ。
「ううん☆大丈夫!ってその制服!雄英の人だね!!テレビみたよぉ☆」
「えっ、あっいや、恐縮です?」
実戦相手よろしくね
「えへへ☆わたしは先読 見得!お互いに頑張ろうね☆」
「はい!
雄英1年B組の拳藤一佳です!
胸を借りるつもりでいきますッ!」
B組の皆さん。
てことで主人公はB組の方に参戦!!!