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ありがとうジャイロ
「キラーちゃん、おつかれさん!」
「変な呼び方しないでください」
Mr.コンプレスが2人をビー玉らしきものに変えながら話しかけてくる。
触れなきゃ発動できない個性だからこそ、わたしが兄を止めなければいけなかった。
「それと、この後ほかの生徒をおちょくるのはいいんですが…。調子に乗らないでくださいよ?」
「調子に乗るのがマジシャンだ。ショーの邪魔はしないでくれよ?」
「…気をつけて。」
仮面の中は見えないがニヤケているのは、声からしてわかる。その後、一飛びで木の上に乗り、ほかの生徒の元へ向かうコンプレス。
Mr.コンプレスの逃げ足の速さは理解しているため失敗するとは思えないが、すこし心配だ。
さて、わたしもわたしで離脱しなければ。
────────
『開闢行動隊!目標回収達成だ! 短い間だったがこれにて幕引き!!』
Mr.コンプレスの報告を聞き流しつつわたしは黒霧さんが迎えに来るポイントまで走る。
わたしが報告すべきだったろうか?気が回らなかった。
「あっ!きらちゃん!成功したねぇ!」
横から出てきたトガヒミコと合流。いつも以上に口角がつりあがっている…なにかあったのだろうが、いまは回収地点に向かおう。
「走るよ。あのデカイ氷がこっちに向かってきたらひとたまりもない」
「そしたらぁ、きらちゃんがぶっ壊せばいいんだよ!」
「味方同士とはいえ、あまり手の内はみせたくないんだよトガちゃん。」
確かにわたしの個性は触れることさえできれば最強だろう。
でも弱点はもちろんある。それにわたしは平穏を求めている。ヴィラン連合なんて本当は興味無い。
でも、
「きらちゃん?」
「…なんでもない早くいこ。」
────────
「あれ?まだこんだけですか」
回収地点にはまだ荼毘とトゥワイスしかいなかった。
「ほかの皆さんは?まさかやられてませんよね?」
「さあな。」
「冷血! 熱いねぇ!」
一応仲間なのに「さあな」で済ます荼毘。そして意味のわからない発言をしているのがトゥワイス。全身タイツといえばいいのかわからない服装、おちゃらけた態度でトガちゃん並にうるさい。
「それよりイカレ野郎、血は採れたのか?何人分だ?」
「1人です。」
「一人ィ!?」
「え?トガちゃん手こずったの?」
これには素直に驚いた。わたしとトガちゃんが個性なしで勝負した場合、わたしは負ける自信がある。
私とて決して身のこなしが悪い訳では無いが…この狂人は異常なのだ。
「仕方ないのです。殺されるかと思った」
正直わたしが雄英生徒を舐めていたのかもしれない。トガちゃんがいうんだ、次の接的は真面目にやることとしよう。
「つーかよ!トガちゃんテンション高くねぇか!? 何か落ち込むことでもあったのか!?」
「お友達ができたのと…気になる男の子がいたのです!」
それ俺?!と勝手に勘違いしているトゥワイスは置いておこう。うるさいし。
「トガちゃん、それホント?相手はヒーローの卵だよ?」
「ほんとだよ!ボロボロでぇ、血の匂いがいっぱいしてたの!!!」
「えぇ…理解できない」
狂人は狂人でしかなかった。私には理解できない。
「私はきらちゃんの性癖の方が理解し難いけどねー」
わたしは『
この狂人は自分が変だと認識してないからダメなんだ。
──ッ!!
「!!」
突如響き渡る轟音。
そちらを見ると、何かが地面に叩きつけていた。
「だから調子に乗るなっていったのに…」
生徒の名簿リストに載っていた3人がコンプレスを下敷きに回収地点に降ってきた。
障子目蔵
轟焦凍
そして、
「これまた懐かしい顔だね」
────兄との幼馴染み、緑谷出久。
────────
「避けろMr.」
「!
声をかけるのとほぼ同時に荼毘が青い炎で攻撃する。瞬時に何をすべきか悟ったコンプレスは自身を圧縮し、荼毘の攻撃を回避する。
「ぐあぁっ!」
轟焦凍は辛うじて避けることが出来たようだが残り2人は腕を燃やされたようだ。
轟焦凍が避けた先にいたのはトゥワイス。
トガちゃんは緑谷出久に対し、距離を詰める。
「トガです!出久くん!」
緑谷出久の格好からみて彼はいま応戦することができない。両腕がそれを物語っている。
悪くない足さばきだが、いま目の前にいるのはトガちゃんだ。
「さっき思ったんですけど…」
言いつつ、トガちゃんは緑谷出久の足を払い仰向けに倒す。反応させる間も与えず、組伏せる。そしてナイフを振りかぶりながら
「もっと血出てたほうが、もっとカッコイイよ出久くん!」
「はぁ!?」
「緑谷!」
障子目蔵が邪魔に入る。
体格差もあり、障子目蔵の大ぶりの攻撃はトガちゃんを吹き飛ばす。
あっ、もしかしてわたしが止めるべきだった?
「そしたらこれあげる」
「っ!?」
轟焦凍の氷を蹴って砕き、拳ほどの大きさの氷を障子目蔵に投げる。
そのまま氷が体に当たれば爆破できたのに、緑谷出久を抱えてよけられてしまったので氷を爆破することにした。
わたしは右手でスイッチを押すような仕草をした。
「ぐっ!」
「あぁぁっ!」
拳ほどの大きさとはいえ爆風は緑谷出久にまで及ぶ。吹き飛ばされた2人を取り敢えず放置して、トガちゃんの元へ向かう。
「トガちゃん、もしかして気になる男の子って…」
「出久くんだよ!」
まぁ、すんごいボロボロだし。
そういう性癖ならあれはたまったもんじゃないのだろう。たぶん。
「っ…この『個性』はっ!」
緑谷出久が理解してしまった様だ。
彼が誰を相手にしているのかを。
しまった。流石に個性を使うのは迂闊だったか?
「まさか君は!!」
「そんなこと考えてる場合?」
彼の意識を逸らすためにわたしは今しがた立ち上がったコンプレスを見る。
────────
僕、緑谷出久がワンフォーオールを受け継ぐ前、かっちゃんを追い続けるのに背中を押してくれた人がいた。
それは幼馴染みだ。
僕には幼馴染みが
1人はかっちゃん。
暴力的で怒りっぽい人だけど、オールマイトよりもずっと近くにいた「すごい人」だ。
もう1人はかっちゃんの双子の妹。
「きらちゃん」とよく周りはよんでいた。彼女はハングリーさを全部かっちゃんに持っていかれたのか、特に負けず嫌いというわけでもなく、教室では1人のイメージがあった。
でも、やっぱり彼女はかっちゃんの妹で、頭の良さ、身体能力、そして『個性』に恵まれていた。
いや、恵まれていたとは一概に言えないような『個性』が発現した。彼女の『個性』はどちらかと言えば敵向きで、当時の僕では人の役に立つとは思えない個性だった。彼女は人を寄せ付けない雰囲気があったけど、『個性』も彼女が独りだった理由だと思う。
「おい、キラ!今日はおれに着いてこい!」
「うん」
何だかんだ、かっちゃんには気にかけられていた様に覚えてる。「キラ」とかっちゃんが呼ぶ度にくっついて回っていた記憶がある。僕は彼女と友人といえる様な関係性ではなかったのは確かだろう。
でも、1回だけ、かっちゃんがいなかった時に、1回だけ話しかけたことがある。
「あの…きらちゃん?」
「…なに?デク」
かっちゃんに習って僕のことはデクとよんでいたし、かっちゃん以外には心を開いてない印象があった。ちょっと口が悪いのも今思えばかっちゃんに似ていたからかもしれない。
基本無口で、大した会話にはならないだろうと僕は思っていた。
けれど、
「バ勝己もデクもオールマイトに憧れてるんでしょ?なら、一緒だね」
「えっ?」
彼女が放った言葉は特に彼女に意味は無いのだろう。
でも、僕には衝撃的だった。
「おにいちゃんはかっこいいよ。性格クソだけど、負けないんだよ。オールマイトが好きだから。
したらデクもオールマイトが好きなら頑張るべきだよね?無個性でも、オールマイトみたいになりたいなら、なおさら。」
────せめておにいちゃんに追いついてみれば?
彼女はそう僕に言って、小5の林間学校で姿を消した。
私ツンデレがすきなのよ。
私かっちゃんがすきなのよ。
つまりかっちゃんはツンデレ。
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