ヴィラン名『キラークイーン』   作:尺骨茎状突起

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がんばるぞい



共闘

爆豪勝己という名前は仮免許取得者一覧の画面になかった。

デクのことで頭がいっぱいだったわけじゃねぇ、ただ言動が『救助』に向いてなかった。

 

だが、事実上、俺はこの時点でデクの後ろにいる。

 

いつまでもあのクソナードの前を歩けると思った過去の俺が現状を知ったなら、どんな反応をしたか。

あのあとバスで雄英に戻った。

俺は試験で落ちたことに気を使ってることにイラついて制服姿のまま飛び出てきた。

 

悔しい。

なんで、俺はこんな弱いんだ…。

俺が弱いせいでオールマイトまで…。

 

「クソッ!」

 

目の前に転がっていた缶を蹴り飛ばす。

カコンカコン とそれはいい音を鳴らして自販機の前のゴミ箱に入っていった。

 

 

 

────罪を増やす前に…捕まえてくれッ!!!

 

 

 

涙ぐんだ親父の顔が脳裏に浮かぶ。

こんなんじゃアイツを捕まえられない。

ぜってぇ補習を速攻で片付けて仮免とったる…!

 

少ししたら戻ろうと思ってそこらの公園のベンチに腰掛ける。

デクと俺、何が違ったんだ…?

何であいつなんだ?

同じ人に憧れたんに、憧れの形は違えど、だ。

 

つまり俺の憧れは間違いだったのか?

 

「…わかんねぇよ」

 

その時何かが聞こえた。

 

 

 

────助けてッ!!!!

 

 

 

考えるよりも先に、体が動いた。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

「久しぶりってほどでもないか」

 

なんてことない会話のようにキラークイーンは落ち着いた声で俺に話しかける。

俺は仮免許を持ってねぇから『個性』を使った攻撃ができねぇ。例え敵だとしても。

 

足元の女を見る。出血量がマズイ。

時間稼ぎがしたかったが、それだとコイツがくたばる。

 

こういう事があるからいち早く取らなきゃなんねぇのに…!

 

「てめぇ、そいつをどォするつもりだ?」

「殺すよ」

 

なんの躊躇もなくキラークイーンはその言葉を口にした。

 

「逆に殺さないって思った?無理無理趣味だもん。」

「気色わりぃ趣味だ」

「分かってもらおうとは思ってないよ、ただ…

 

殺せればいいッ!!」

 

俺に気も留めずキラークイーンは持っていた鉄球を女に投げつけた。アイツの指先をじっと見る…がスイッチを押そうとしない。なぜだ?

 

「…っ接触弾だよ☆」

「ッ」

 

いまはこの女を信じるしかなかった。鉄球が地面につくより早くターボで女を抱えて離脱。

その際爆風で鉄球の滞空時間を延ばし、爆発を防ぐ。

十分な距離をとった時、再び女が口を開く。

 

「これじゃ足らないっ!もっと離れてッ!☆」

「チッ」

 

爆発を起こし後方へ大きく退る。

俺が着地したと同時に、鉄球も着地した。

 

 

────ドガァアアアンッ!!

 

 

俺の手弾砲着弾にも劣らない規模の爆発が起きた。

 

「ンだこれ…!」

「危なかったね☆」

「るせぇッ!!状況わぁってンのか!?」

 

爆発は起きたが状況自体は悪くない。

大きな爆発が人を引き寄せないわけがない。もしかしたら既に通報もされているかもしれねぇ!

加えてあの爆発にキラークイーンも巻き込まれるのを防ぐために距離を開けたはずだ。

すこし時間がある。

 

腕の中の女は見た感じ未来がわかる『個性』だ。これなら離脱できる…!

 

「オイクソ女!退路を伝えやがれ!」

「く、クソはいいすぎじゃないかな☆」

「サッサとしろ性格ブス女ァ!」

「ひどいや☆」

 

ふざけた態度は変わらなかったが、女は急に真面目な顔をして目を閉じた。『個性』の発動条件だろう。

 

「右から鉄球ッ!」

「ッぶねぇ!」

 

右頬に鉄球が叩き込まれる寸前に背中をそらして躱す。そしてアレが爆弾かもしれねぇからその場から離れることも忘れない。

 

「今度は右斜め後ろッ!」

 

「左ッ!」

 

「2時の方向ッ」

 

「あれは爆発しないよッ!」

 

「3つの鉄球のうち右のが爆発するッ!3秒前ッ」

 

正直この女を舐めていた。

よく分からねぇがキラークイーンは新たな芸当を身につけていた。

全く気配が感じられないという訳では無いが、どこにいるのか予測がたてられねぇ。

 

つまり、認めたくはねぇが、俺1人だったら最初の爆発に巻き込まれていただろう。

今は無傷ですんでいるのもこの女の『個性』のおかげだろう。

 

相変わらず目を閉じている。

発動条件が「瞼を閉じる」事なのだとしたら、近接戦闘で瞬きをして一瞬先を読める強個性だろう。

 

「左に2歩あるいて!そのあとは右から爆破しない鉄球!」

 

俺は反射神経に自信がある。

しかし、この女も相当な反射神経だろう。

少し先のビジョンからどの方向から攻撃が来るか、どう動くべきか、すべて考えた上で言葉にしている。

加えて出血量の問題だ。普通なら意識がなくなっても可笑しくねぇ。

並の反射神経ではない。

 

「ッ左上、鉄球!爆発するやつ!」

 

無理な動きを繰り返している。これ以上は俺のフットワークが持たねぇ。

が、この女が気張ってンだ。俺もやんねぇと。

 

壁を蹴って飛び上がる。一瞬女が浮く。そのスキに爆破で距離を稼ぐ。足元に転がっている鉄球も爆破で吹き飛ばし足のスペースを確保して再び女を抱える。

にしてもコイツ…

 

「テメェなんでこんな重いんだよ!」

「はぁ?!みえるは重くない!!…右後ろ!」

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

また爆発をよけられた。

 

流石にわたしも焦ってきた。

コレがわたしが先読見得に苦戦を強いられた理由だ。

文字通りわたしの騙しが全て「読まれる」んだ。

 

ではわたしがどうして彼女をのすことが出来たのか。それは、気配を隠して視界から外れることで相手に目を開かせるように仕向けたからだ。

 

しかしこの状況だと、目を開ける必要が無い。

あの憎きヒーローが代わりに動くからだ。全神経を『個性』に回せているこの状況だ。

簡単には突破できまい。

 

それにアイツがその先読を抱えている。

反射神経と戦闘センスが頭一つ抜けているアイツだからこそ先読の指示に瞬時に従えている。

 

こちらの有利な点としては彼女の視界から外れているいま、わたしの位置は読まれないことが一つ。

もう一つはアイツが先読を抱えているから攻撃ができないこと。

 

鉄球も無限じゃない。これは退くしかないか?

 

 

 

 

いや、もう一つ選択肢がある。

 

「ねぇねぇ、お兄ちゃん!」

「テメェよくもまぁぬけぬけとォ!」

「…ッ!ダメ耳を貸さないで!」

 

 

 

 

 

「仮免落ちたんでしょ?デクは受かったのに。」

 

 

情報はトガちゃんからもらっている。

「おにいさん落ちてたよー」ってかなり軽く言われたが、ここはこれを利用して兄を煽ることにした。

 

防戦一方だが、彼らにとってそれが勝ち筋。

その勝ち筋を潰すという手段にでる。

 

「最高のヒーローがさ…落ちるかなぁ?普通。お兄ちゃん実はデクより弱いんじゃないの?」

 

アイツの精神を崩しに行く。

状況を知っているためすこし心苦しい気もするが、いや、全く心苦しくない。

これすら利用してわたしは勝つ…!

 

「…まれ」

「君!話し聞いちゃダメ!早く逃げて!」

 

「お兄ちゃんもデクもオールマイトに憧れたのにね?」

 

1歩、また1歩とヒーローに近づく。

これは賭けだ。そのためあまり接近するのはマズイのだが、プレッシャーを与えるためにも近づく。

 

「お兄ちゃんは昔から何やっても凄かったのにね、何でだろうねぇ」

「君!今は時間を稼ぐことに集中してッ!」

「チッ!」

 

先読の言葉のとおりに再び先ほどのように距離を置かれる。しかし、わたしはそれを負うこともせずにゆっくりと近づく。

 

 

 

「実力じゃデクに勝ってるもんね!だとしたら心、気持ちだよね」

 

 

 

デクの名前を出すと少しだが、ピクとアイツの方がはねた。このまま続けよう。

 

 

 

「勿論ヒーローへのパッションとかそういう話じゃないよ」

 

 

不意にアイツの足が止まる。

先読の表情も絶望に染まりそうな顔だ。しかし必死に希望にすがり付いてる。

 

「違う!君!しっかりしてッ!誰しも原点は違えど────」

 

「デクはオールマイト(笑顔で助けるヒーロー)に憧れて、お兄ちゃんはオールマイト(最後に必ず勝つヒーロー)に憧れた!」

 

 

 

兄の目の前で止まり、言葉を続ける。

ゆっくりと手をあいつに近づける。

 

 

 

「もしかしてさ、その憧れ方が間違って────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは違うッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

緑色の閃光。

 

 

 

 

 

 

その蹴りがわたしの肩に突き刺さろうとしたが、すんでのところで回避。

 

「寮からいなくなったから心配して追いかけたんだ」

 

緑色の稲妻をみに纏いながら、ソイツはわたしを見据えてファイティングポーズをとる。

 

トガちゃんから聞いたが、ソイツは蹴りメインに移行したらしい。

 

「すぐに雄英の教師も駆けつける!それまでは守るからッ!」

 

ソイツとも最近あったばかりで「久しぶり」ではないだろう。

 

 

 

 

 

「それときらちゃん。かっちゃんの憧れは間違ってなんかないっ!」

 

緑谷出久。

わたしとアイツの幼馴染み。

 

 

 

 

そして、おそらくいま1番アイツに関わってはいけない人だ。

 

 

 

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