「…」
「…」
僕もかっちゃんも敵がその場を後にしてから、雄英に向かって歩いていた。
その間、どちらも喋らない。
というか、僕らは喋れなかった。
僕達は幼稚園から小学校、中学、そして高校と、ずっと一緒にいた。
それでも1度も、僕らは本音で語り合ったことがない。
だからどう、お互いに話しかければいいのか分からなくなっていた。
────人を殺したいってのにィッ!
きらちゃんとかっちゃんの間ではどうだったのかは知らないけど、僕がきらちゃんの本音を聞いたのはアレが初めてだった。
いま思い出しても、ゾッとする。
僕やかっちゃんと同じように育ったきらちゃん。なのに目指したところは僕達の正反対。
「君たち!大丈夫だったかい?!」
視線を上げると、僕らの向かう先にオールマイトが立っていた。
「爆豪少年がいなくなったって相澤くんから聞いたんだがその怪我────」
「なァ、オールマイト。」
オールマイトをかっちゃんが遮る。
多分これからかっちゃんが話すことは、『ワンフォーオール』のことだ。
僕は止めることも出来たけど、
────いつかこの『個性』をちゃんと自分のモノにして、僕の力で君を超えるよ!
あの時のツケがここで回ってきたのだと思うと、止めるに止められなかった。
「デクの『個性』、アンタがあげたんだろ。」
────────
数時間遡る。
デク達がまだ、仮免試験で奮闘している中、オールマイトはオールフォーワンと『タルタロス』にて面会をしていた。
「…貴様のいう、『オールフォーワン』の進化とはなんだ。」
「ははは。やっぱり気になるよな?」
直球の質問。
キラークイーン、爆豪姫砢については質問するという遠回しの質問をすることも出来たが、オールマイトはそもそもそういったものが苦手な人。
搦手で勝負したらオールフォーワンに分がある。
故のド直球の質問。
「答えろ」
「はは。わかったわかった。そうだねぇ…君は犬って知ってるかい?」
いきなりの事で、オールマイトは少し困惑した。
犬…?イヌとはあの犬でいいのか?
「ふふ、意味がわからないって顔だね。そうだよ、わんわん鳴くあの犬さ。」
「それがどうした」
「繰り返し訓練すれば主のいうことを聞く動物ってのは他にもいるが、躾が簡単だからか、一般的にも飼われる犬について話すよ。さっきも言ったけど、訓練や躾に繰り返せば必ず芸ができるようになるんだ。
姫砢もいっしょさ。最初こそ『個性』を受け入れるだけで意識を失いそうだった。けど彼女は耐え抜いた!それどころか耐性を毎度の如く強めていった。」
繰り返された『個性』の譲渡。
姫砢は最初、脳無のようにされるかと思われた。『個性』の負担に耐えることが出来ず、ただ命令に従うだけの怪物。
「芸と一緒だよ。させればさせるほど完璧になっていくんだ。彼女の場合、『個性』の許容数が少しずつだけど増えたんだよ。」
「それって」
「そうさ!『オールフォーワン』という個性とのコンビネーション!要は『個性』の貯蔵庫になる素質があるんだ!受け渡しもスムーズだから僕と一緒にいれば、それこそ瞬時に必要な『個性』を彼女から引っ張り出し、要らないものは捨てる、戻す。そんな可能性を秘めてるんだよ!姫砢は!」
『オールフォーワン』という『個性』は他人からその『個性』を奪い自分のものとすることと、他人に『個性』を与える能力だ。そこに、『個性』の貯蔵庫であり、『個性』の受け渡しがスムーズな爆豪姫砢がいたとする。
必要な『個性』を必要な時に取り出す。
これだけでも強力だ。
しかし、そこじゃない。
恐ろしいのはそこじゃない。
「貯蔵…するということは…」
「そうだね!オールマイト!今のところ彼女の限界は見えない。つまり、集めれば集めるだけ、いずれは
全ての『個性』を溜め込むことが出来るかもね!
言葉を返せば、僕は全ての『個性』を使える!」
全ての『個性』の貯蔵。
『個性』をもった人は年々増加している。理論上は不可能だ。
しかし、ヒーロー社会を覆し、人々を支配できる力は身につけることが可能だろう。
「…しかし、それは脳無を使えば出来るんじゃないか?」
「わかってないねぇ。オールマイト。僕がロボットじゃなく、犬を例にだした理由は、彼女が自ら考え行動出来るからだ。僕が与えた『個性』を自らの意思で使えるんだよ!」
それはつまり…
オールフォーワンが二人いるのと一緒だ。
『個性』の移動が行えるのは目の前の巨悪のみだが、ほぼ同じ量の『個性』を使えるものがもう1人、命令されずとも動ける人がいれば、絶望的だ。
問題はその膨大な力同士の衝突だが、
知ってのとおり、巨悪は人を従えるのが得意だ。
────────
爆豪少年から、全てが語られた。
緑谷少年が私から力を授かったのではないか?
自分のせいでオールマイトが終わったのではないか?
私はただ黙って聞いていた。
「アンタは秘密に言おうとしてた。誰にも言えなかった。
なァ、オールマイト。俺ァどぉすりゃよかったんだ?」
声は落ち着いていた。
顔は、思ったよりも吹っ切れていた。
「…答えは見つかっているんじゃないか?」
「…認めたくねぇが、あぁ…キラークイーンに気付かされた。」
キラークイーン。
爆豪少年がその名前を出した。
「まさかその怪我は」
「…僕らはきらちゃんに襲われたんです。」
「きらちゃんというのは?」
「あ、あだ名です。デク、かっちゃんと一緒で、爆豪姫砢だから、きらちゃん。」
きらちゃん…か。
オールフォーワンの進化のカギを握る要注意敵がそんなふうに呼ばれていると知って、何だか肩の力が抜ける。
ともかく、
「ともかく、無事でよかった。」
「そんなん聞きてぇわけじゃねぇ…何でコイツだ。それだけがどォしてもわかんねぇ」
私は爆豪少年に全てを打ち明けた。
緑谷出久という少年が非力で、誰よりもヒーローで
爆豪勝己という少年は強く、その強さにかまけてしまったこと。
彼もまだ少年だというのに、私はなんてことを…
「君たち、多分、お互いがどういう風に接すればいいか、分からないんだろう。
なら、今度、私の目の届くところでなら、やり合いなよ。」
「はっ、えっ?!どうしてそうなるんですか?!」
緑谷少年は慌てたように声が裏返る。
しばらく歩くと爆豪少年が口を開いた。
「…ずっと、気色悪かった。
何考えてるかわかんねぇし、俯瞰した目が、本気で俺を追い抜くつもりの目が、目障りだった。」
「そんな風に、思ってたのか。
そりゃ普通は、馬鹿にされ続けたら関わりたくなくなると思うよ…でも、何も無かったからこそ、嫌なところと同じくらい、
君のすごさが鮮烈だったんだよ。」
2人の顔つきは、以前と違い、真っ当なライバルだった。
────────
「あ、あのきらちゃん!ほら元気だして!」
「…ぅう。」
しくった。
まじやらかした。
なにが「ヒーローどもォ」だよ。不意打ちでボコボコにされてんじゃん。
あんなに頭の中で「油断しない油断しない」言ってたのに、わたしは最後の最後で油断してアイツに爆破された。
なんやねん。わたし雑魚キャラやん。泣きたい。
もう泣いてるけど。
「…まだ、泣いてんのかそいつ」
荼毘がいい加減苛ついた態度でトガちゃんにきく、ちなみにトガちゃんは私が目を覚まして、記憶がハッキリしてから、わたしに泣きつかれてる。
申し訳ないけど今は許せ。
「あー、お兄さんを今まではよくコントロール出来てたみたいなんですけど…、出来てたことが出来なくなるってアレですよね。」
「…気持ちはわからんでもない。そいつ、
「もういうなぁぁぁあ…」
しかも、今回はそれが直結的に敗北に繋がったわけで。
これじゃ、先生に顔向けできない…。
わたしは流す涙も流し尽くしたのか、泣き止んでからムクリと起き上がり、部屋の外へ向かう。
「きらちゃんもう平気なの?」
「…ネコにエサあげてくる。」
「あっ、それは私がやっておきました。」
「…ありがと。」
くるりと、反転して再びトガちゃんの胸の中へダイブ。
泣きつかれたので泣く訳じゃないが、いまは何もしたくない。
くっ、コイツ意外といい体しやがって…。
「おぉーい!キラちゃん!今日は訓練しねぇのか? やったぜ、ゆっくりできる。」
と、ここで
「あ、仁くん。いまきらちゃんぐずってて難しいかもです。」
「ぅぅ…」
「なんでこんな落ち込んでんの? 嬉しそうだな!
てか、紹介したいヤツいるんだよね! 集合!」
きらちゃんは連合最年少、実力は『個性』ありきでトップクラス。
でも、連合のみんなからは可愛がられてます。
さて、遅くなった理由は時期を考えていただければ分かるかと!
ようは新学期です。
いまでは落ち着いていますのでこれからも執筆していきたいと思います!