あぁああ!
リアルの方で一段落ついたと思った瞬間やることが増える。
人生ってそんなもんよね…
一部始終みてしまった。
僕はいま飯田くん、轟くん、切島くん、八百万さんと共にキラちゃんが地面に叩き伏せられるのを見ていた。
「ベストジーニストつえぇ…」
切島くんが呟いた。
触れなきゃいけない『個性』に対してベストジーニストのファイバーマスターは最強とも言える対策だろう。
相手が服を、繊維を身につけている時点で圧倒的優位に立てる。キラちゃんがまず彼を潰そうとしたのはそういう事だろう。
「俺たちがここに来る必要はなかったんだ!さぁ、みんな早く帰ろう!」
飯田くんはさぞかし安心した様子だ。それも当然、もし僕達がキラちゃんと遭遇していたら…戦闘をしたとしても、5人いたとしても勝てただろうか…?
そんなことは後で考えよう。
「うん。帰ろう」
そう僕は返した。ほかの3人も頷いた。
────だれだッ!止まれ!
虎の声だ。
見れば、誰かがゆっくりとキラちゃんの方向へ歩いている。
顔は見えないけど、スーツ姿なのは暗くてもわかる。
────悪いねジーニスト。彼女は離して貰うよ。
そいつが行動するより早く、ベストジーニストはそいつを拘束する。
Mt.レディが彼を一般市民だったらどうするんだと心配している。でもジーニストが糸を緩めることは無かった。
────彼女もまた弔の大事なコマになるからね。
閃光、突風、地響き、爆発、轟雷。
どう表現してもあっているような力がそのひとから吹き出した。
────────
「失敗したね、キラークイーン。」
「ぅっぐ、まだ行けます…!!」
「動かなくていいよ。その代わりちょっと実験させてね。」
「え?」
いまの会話の中で、脳無を一匹残らず弔の所におくる。もしかしたら手遅れかもしれないけど、どこにいようが弔たちはこちらに転送できる。
それより、ちょっとした実験をしよう。
素早く『超再生』を爆豪姫砢に与える。続いて赤い筋を指から伸ばし、彼女に突き立てる。
「────ァァッ?!くっ…なん…で?!頭がッ?!?!いたいいぃ。」
「『個性強制発動』」
『超再生』を無理やり発動させる。するとみるみる爆豪姫砢の傷は治る。さて、彼女のメンタルが壊れる前に『超再生』を回収しよう。
「はぁっ…はぁっ…けほっけほっ…」
「ハハハ!やっぱり君は面白いね。キラークイーン。
本当にこの子は面白い。初めて会った時からずっと彼女には驚かせられる。やはり彼女には弔に負けず劣らず素質がある。
「ぁっ…あたまが…ぃたい。」
「うーん。負傷してるのもあって痛みが長引いているのかな?
なんにせよ、ほら。助けてやったんだ。お礼の一つは欲しいね。」
「ぁっ、あり…っぁぉう…ござ…い…います」
ふふ。
語尾が段々と正常に戻っている。やはり彼女は興味深い。先ほどの『個性』の受け渡しも回収も彼女ほどスムーズに、スピーディーに行える対象はいなかった。
そしてあろう事か、僕の『個性』への耐性ができ始めている…そのうち完全に、ノーリスクで『個性』を渡すことができるかもしれない。
「にしても、流石だよジーニスト。全員殺すつもりで撃ったんだけどね。君が引き寄せたから全員
僕の目の前には横たわるベストジーニスト、ギャングオルカ、虎、Mt.レディがいる。後方に備えていた警察や『移動式牢』も吹き飛んでいる。
「…話が…違う…ッ!からなんだッ…一流は────カハッ」
「そこまでその『個性』を扱えるとは…並の神経と努力量じゃないね。
────いらないな君のは」
腹から空気が抜けるような音だ。まぁ、腹に風穴を開けたんだ。間違ってはいない。
「ふぅ…っく…はぁ…はぁっ」
「ハハハ、復活が早いねキラークイーン」
「…お、おかげっ、さまで」
彼女の歪み、この異常性もまた僕がどうしてもそばにおいておきたかった理由だ。弔のそばにいて欲しい理由だ。
爆豪姫砢。
きみ
「また、実験させてね」
「────っ!」
「ハハハ!」
さて、彼女をからかうのもいいが、弔を助けなくては。
転送。
────────
俺たちはヒーローに圧倒されていた。
木のようなものに巻き付かれ身動きが取れない。その上嫌なのは俺の五指に触れられないように拘束されている事だ。
「黒霧ィッ!」
「っく!」
ゲートを体の周りに展開して辛うじてヒーローからの攻撃を防いでくれている。先ほどエッジショットが黒霧を行動不能にしようとしたが、黒霧が反応できた。
「やっぱり黒霧ってのが厄介だな」
「そうですね先生」
目の前では平和の象徴と白と黄色の老いぼれが喋っている。拘束さえされてなけりゃ、こいつらを粉々にしてやったのに…
平和の象徴、オールマイト。
こいつが全て悪いんだ。
こいつが笑ってるのが気に食わない。
こいつ自体が気に食わない。
こいつはなんで笑ってるんだ。
こいつはなんで、まるで誰も救えなかった人がいなかったかのように、ヘラヘラ笑ってるんだぁ?!
────おれはこいつが心底嫌いだ
「…」
心は憎悪燃え盛っているが、外面は冷静だ。どこかスキはないのか?いや、
「…トガ。」
「はい!」
「何?!────っぐぅ?!」
トガが俺たちを拘束しているシンリンカムイに背後からナイフを突き立てる。
しかし、木が緩まない。
「なんで、離さないんですか?」
「フッ…No.1に言われたからな…何があっても離すなって!!」
あぁ、やっぱりヒーローってのは虫唾が走る。
正義は脆弱なのに、こいつは頑固にそれを認めようとしない。
「落ちろい。嬢さん」
「おぉ〜、はやいですね」
「っ?!消えただと?」
「上です」
トガは『個性』が戦闘向きじゃない。なのにここまで動けているのは、アイツには技術があるからだ。
相手の視界、いや認識そのものから瞬時に外れる技術。
「刺しますね」
「食らうかよ」
だが、あのちっこいの。空中移動できるだけじゃなく、早い。
「先生!」
「俺ァ大丈夫だ。俊典。お前は死柄木に集中しろ。拘束が解ける。」
「何?!」
トガの攻撃でシンリンカムイは確かに大きく木を緩めはしなかったが、背中をぶっ刺されたんだ。指を動かすスキは一瞬だがあった。
「す、すいません皆様ーッ!」
「いや、気にするな。俺だってあの女の気配が読めなかった。」
木が崩壊し始めた部分から先を切り離すシンリンカムイ。あとは他の仲間を解放するだけだ。
「黒霧」
「はい。死柄木弔」
長い付き合いだからか、俺の意図をすぐ察してくれた。目の前に展開されたゲートに腕を突っ込む。そのゲートは他の仲間を拘束している木付近で開き、俺はその拘束を崩す。
「っく!すいません!一度離します!」
「大丈夫だ!私が来てるからなぁ!」
シンリンカムイはたまらず他の拘束を解いた。
こちらで動けないのは荼毘ぐらいか。
もう1度ゲートが目の前に開く。そこに腕を突っ込む。
つながった先は爆豪勝己の首元!
「させないっ!」
「ちっ」
オールマイトは目にも止まらぬ速さで距離を詰めてきた。が、対応はできる。仕方ないから回避。しかし象徴はまだ詰めてくる。
「マグネ」
「了解!」
マグネが俺とオールマイトに磁力を付加。男はN極になる。当然磁力が反発しオールマイトと俺の距離は開く。
再び木が来ないか心配して、横を盗み見るが、あちらはスピナーが木ごと斬り倒す武器でシンリンカムイを抑えている。
トガの方は劣勢だ。
いくら気配を消せるからって攻撃を避け続けられる事で消耗している。これは撤退か?
「死柄木ィッ!」
「ッ!オールフォーワンはどこにいるッ?!」
「知らないね」
もちろん嘘だ。
「知っていても答えないさ。だって、
────俺はお前が嫌いだ。」
────ォオッ!
俺の真横から黒い液体が発生する。
何だこれは?中から脳無が次々と現れる。俺は悟った。先生だ。形勢逆転だ。
ほくそ笑むまもなく、俺の視界は同じ液体に包まれる。
爆豪勝己もまた黒い液体に包まれるのを見届けて、安心だ。
ざまあみろ。ヒーロー。
いま、大学の方で昔のバンドについて、英語で学んでるんですけど、改めてQueenって素晴らしいバンドだなって。