担任がやたらくっついてくるんだが……   作:ローリング・ビートル

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第35話

「今日はお仕事…………彼は若葉さんと二人っきりになる…………でも、行かなきゃ………」

 

「じゃあ、眠ってる間に行ってきますの……いえ、さすがにそれは……昨日、あんなにアプローチしたし……」

 

 ******* 

 

「お兄ちゃん、このゲームは何?説明して」

「…………まだ朝6時なんだけど」

 

 どうしてすっかり着替えて、僕の上に跨がっているんだ、こいつは。昨日の出来事もあって、あまり眠れてないのに……。

 僕は、眠たい目を何とか見開き、欠伸混じりに、若葉が差し出してきたゲームを手に取る。

 それは、この前先生に薦められるままに買ったゲームと同じ制作会社が去年発売したゲームだ。中古で安く売っていたから買ったのだ。

 

「お兄ちゃん、ダメだよ……」

 

 若葉は何だか残念そうに目を伏せる。まあ、確かに従兄がこういうゲームをやっているのは、あまりいい気分はしないのかもしれない。

 とはいえ、やめるつもりもないけど。

 

「若葉。個人の趣味にあれこれ口を出すのはよくないよ。お兄ちゃんだって、こういうゲームを通じて、女心を少しでも理解しようという勉強熱心さがあるからこそ……」

「違うよ。そんなクソみたいな事情はどうでもいいよ」

 

 なんかちょっと汚い言葉で罵られた……!

 

「何で……何で、このゲーム……ヒロインに年下が入ってないの!?」

「そこ!?」

 

 確かにこのゲーム、攻略キャラは皆同い年か年上だ。大抵の恋愛シミュレーションゲームは年下のヒロインがいるんだけど、このゲームはやや年上推しな気がする。

 しかし、そんなこと言われたって……。

 

「お兄ちゃん、おかしいよ!こんな可愛い年下ヒロインが傍にいるのに、ゲームですら攻略しないなんて!」

「若葉、落ち着け。お前は今、よくわからないことを言ってるから」

「しかも……ヒロインに女教師が……!!」

「たまたまだよ」

「……何だか、お兄ちゃんが洗脳されている気がする」

 

 若葉は何やらブツブツ言いながら、ようやく体をどけてくれる。しかし、もう完全に目が覚めてしまったので、ひとまず体だけ起こすことにした。

 

「先生はもう仕事に行ったのか……」

「うん。残念だったね。先生、眠ってるお兄ちゃんの隣で着替えてたよ」

「え、本当に!?」

「ウ・ソ♪」

「…………」

 

 やめてくれよ……お前まで……。

 

「じゃあ、お兄ちゃん。朝御飯食べたら、二人で私が持ってきたゲームやろうよ」

「ああ、いいよ。シューティングゲーム?パズルゲーム?」

「じゃ~ん!これだよ♪」

「えーと、どれどれ……これ、恋愛シミュレーションゲームじゃんか……」

 

 そもそも二人でやるゲームではない。もっと言うなら、従妹が薦めてくるゲームでもない気が……。

 

「これ……一人でやるゲームじゃんか。つーか、何でお前、こんなの持ってんの?」

「お父さんのベッドの下にあったよ!」

「…………」

 

 聞きたくなかった!

 叔父さん、何やってんの?いや、娯楽は自由だけど、隠すならちゃんと隠そうよ。ベッドの下とか……それじゃあ、僕と一緒か……。

 

「あれ?確か叔父さんって、叔母さんより年下じゃなかったっけ?」

「うん、なんか無いものねだりって言ってたよ♪」

「そ、そうなんだ……」

「最初は年下だと思ってたらしいよ。話した後で、お小遣いもらっちゃった♪」

「…………」

 

 今、日高家の闇を垣間見た気がする……。

 

「さ、お兄ちゃん。そんな話は置いといて、朝御飯食べたら、ゲームするよ!」

「えっ?だから、まだ朝の6時……ちょっ、おま……ジャージ引っ張らないで!シャツ脱がそうとしないで!」

 

 *******

 

 若葉に言われるままに顔を洗い、朝御飯を食べ、ゲームをセットした僕は、ソフトの説明書を読み、ヒロインの設定だけ頭に入れた。

 

「本当に全員年下なんだ……」

「何、そのやる気なさそうな言い方。年下の魅力に気づかないなんて、お兄ちゃんの人生損しかしてないよ」

 

 絶対にそんなことはない。

 昨日だってあんなに……。

 

「お兄ちゃん?」

「いや、何でもないよ」

 

 かぶりを振って、ぽわぽわと浮かんでくる昨日の映像を振り払う。しかし、全部を振り払う事は出来なかった。今、説明書をパラパラ捲っている右手には、先生の感触がしっかり蘇っていた。

 さらに、胸元にも柔らかな感触と……

 いや、待て待て……!!

 

「あ~もう!!何、一人で顔真っ赤にしてるの!?」

 

 *******

 

「おっはよ~ゆいゆい!!!」

「……楠田先生。朝から元気なのは結構ですが、頭をわしわし撫でないでください」

「なになに?やけに他人行儀ねえ?せっかくMAXハイテンションで話しかけてあげたのに」

「職場ですから」

「でも、その職場の廊下で、さっきまで顔赤くして思い出し笑いしながら歩いていたのは誰?」

「お、思い出し笑いなんて……」

「あの子ににおっぱいでも触らせたとか?」

「っ!」

「あなた、脱いだらすごいもんね~」

「……私が生徒にそんなふしだらな真似をするはずないじゃないですか。学校とは神聖な場所で、教師と生徒の関係というのは……」

「これほどわかりやすいウソもないわね。ま、頑張りなさい。何かあったら、この経験豊富なお姉さんに相談してね♪」

「……ありがとうございます。二つしか歳変わりませんけど」

 

 *******

 

「よし……私は帰ってきた……!」

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